サウザー!~School Idol Project~   作:乾操

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お久しぶりです。
久々の投稿なところ悪いけど、今回早足です。
許せっ!


第13話 アイドルの魂燃ゆ!壮絶ハロウィン!!

+前回のラブライブ!+

 次なるステージに向けてインパクトを模索するμ's。

 しかし、インパクトの塊であるサウザーと共に行動しすぎたせいで『インパクト』に疎くなってしまっていた。

「ちくビーム!」

 そして、ついには海未が犠牲になってしまう。

 果たして、μ'sはインパクトを見出すことは出来るのか?

 そして、5MENは次こそ勝つことが出来るのか?

 

 

 

 

 絵里は言った。

 敢えてアイドルという概念を打ち砕くことをすればいいのではないか?

 なるほど、それはインパクト抜群だ。

 

 翌朝。

 

 続々登校してくる音ノ木坂の生徒たち。

 そんな彼女たちを狙う者がいた。

「本当に大丈夫なんですか……?」

「ここまで来たらやるしかないよ! やるったらやる」

「よし、じゃあせーのでいくわよ? ……せー、の!」

 その人影たちは登校してくる生徒の前に勢いよく躍り出た。そして一言叫ぶ。

「ヒャッハー!」

「!?」

 躍り出た人影、それはμ'sの一同であった。

 全員が肩パッドを装着し、頭をモヒカンにしている(断っておくがズラである)。

「ヒャッハー! 生まれ変わった、μ'sだぁー!」

 アイドルという概念を打ち破るにはアイドルと真逆の事をすればいいのである。

 つまり、それはモヒカンになるということ。

 それこそが絵里の導きだした答えであった。

 モヒカンエリーチカは登校してきた後輩たちに迫る。

「次のライブ観に来ねえと、ブチ殺すぞぉ~!」

 そう叫びながら彼女は輸入したAKを空に向けてぶっ放した。

 だが、しかし。

「やだなー絢瀬先輩」

「観に行くに決まってるじゃないですか~」

「……うん?」

 思いのほか反応が普通である。

 試しに他の生徒へもアプローチをかけてみた。

「ヒャッハー! 水だぁー!」

 しかし、反応は同様で、

「あ、おはようございます」

「穂乃果、この間貸したノートちゃんと持ってきた?」

「園田先輩、今日の部活の時間訊きたいことが……」

「ライブ、頑張ってね!」

 まるで、μ'sのスタイルが何らおかしくない、日常とまるで変わらないかのようなリアクションである。

「どういうことだにゃー」

「……もしかして」

 花陽がふと気が付いた。

「学校の周辺って割と野良のモヒカン見るよね」

「そうだね……あ」

 そう、音ノ木坂学院に通う女学生にとって、モヒカンは日常なのだ。エブリデイ・モヒカンなのだ。

 つまり、音ノ木坂周辺におけるμ's一同の格好というのはビジネス街でスーツを着こんでいるようなものなのだ。

「なるほど、それは盲点だったわね」

 コイツは参ったゼ、とでも言わんばかりに絵里は笑う。

 だが、学生間で想像以上の浸透を見せている格好でも、だからと言って公序良俗に反しないかと言えば答えはNOである。

 一同は即刻理事長室に呼びだされた。

 

「……なんでまたこんなことを?」

 整列したモヒカンガールズに理事長は問いかける。

「迷える若人なんです、私達」

 穂乃果は訴える。

「迷うにも限度があると思うのだけど……誰が言い出したのそんなの」

 理事長が問うた瞬間、一同は一斉に絵里を指さした。

「躊躇なく売ったわね? 呪うわよ?」

「絢瀬さん……らしくないんじゃなくて?」

「いやぁ、エリチこんなんですよ実際」

「希ィ!」

「とにかく、私達は次に向けて模索してるんです。応援されはすれど、怒られるなんて心外です!」

 穂乃果は理事長に声を強めて訴えた。

 しかし、彼女の若き訴えは理事長の一言で覆された。

「じゃあそれで出場するのね?」

「着替えてきます」

 

 

 

 

 結局本選前日まで彼女たちは新しきインパクトを見出すことが出来なかった。

 一同は浮かない表情でハロウィンイベントへ赴く。

 数日にわたって開催される秋葉原のハロウィンイベント。その最終日、つまり明日、μ's、A-RISE、そして南斗DE5MENは歌と踊りを披露するのだ。

「凄い人ですね」

 路上はお魔女やら吸血鬼やらモヒカンやら……モヒカンのそれは普段着なのだが……様々なコスプレをした人々でごった返していた。制服のμ'sが逆に浮いているともいえる状況だ。

「あら、μ'sのみなさん」

 歩いていると、見知った人物が声を掛けてきた。

「あっ、ツバサさん」

 A-RISEの綺羅ツバサと他2名である。みなそれぞれハロウィンのコスプレをしている。

「すごく似合ってるニコ~!」

「ふっ、ありがとう」

 そう答えながらマントを翻すのは英玲奈である。吸血鬼のコスプレのようだ。あんじゅは魔女のコスプレのようで、胸元に見える大胆な肌色に海未なぞ顔を真っ赤にしている。

 一方、ツバサはというと……。

「あの、ツバサさんはなんの格好なんですかそれ」

「カボチャよ」

 いつもの様にクールに微笑むツバサ。しかし、その姿は巨大なカボチャから手と足が生えている、といった風体で、非常にシュールであった。

「バボちゃんだにゃ」

「どこかで見たと思ったらそれね」

「はぁ、クールだけど愛嬌もあるツバサさん素敵です……!」

 花陽はメロメロである。

 ツバサはよちよちと歩きながら穂乃果に近づくと、手をニュッと差し出した。どうやら握手を求めているらしい。

「今度もお互い、精一杯頑張りましょうね」

「……! はい!」 

 穂乃果は笑顔で握手を返した。

 対戦者同士でありながら芽生える美しい友情。アイドルといえど、スポーツマンシップにのっとるのがスクールアイドルというものだ。

 だが、そんなものどうでも良いと言わんばかりに割りこむ輩もいる。

「フハハハハ!」

 ご存知聖帝サウザーである。

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! フワハハハハ!」

「別に呼んでないけどね」

 呆れながら穂乃果は言う。が、目の前に登場したサウザーの姿に彼女は思わず悲鳴を上げた。

「なななにその恰好!?」

 ハロウィンということで彼もまたコスプレをしていた。

 しかし、何を勘違いしたのか上半身裸にサスペンダー付きの短パンを履いて頭にアメリカンポリスな帽子を戴くという控えめに言って変態としか言いようのない恰好である。サスペンダーで乳首を隠しているあたりが実にいじらしい。

「フフフ……」

 サウザーはニヤリと笑いながらサスペンダーをチラリとずらして見せた。

「なっ! 破廉恥です!」

 思わず海未は両手で目を覆った。

 だが、ハレンチズム全開のサウザーを見てことりがあることに気が付く。

「あれは、ニップレス!」

「えっ!?」

 見ると、サウザーは胸に輝く将星に南斗を示す十字星型のニップレスを貼りつけていた。そのあまりに冒涜的かつ背徳的な姿にμ'sは思わず戦慄する。

 戦慄する一同に満足するとサウザーはサスペンダーをパチンと元の位置に戻した。

「あっ戻した」

「やってくれるにゃ」

「フハハハハ」

 意味深に笑うサウザー。

「……なるほど。サウザーさんはこの混迷する現代社会に大胆さと恥じらいの間を表現しようといているのね」

 ツバサはサウザーの姿に隠された真意を理解することが出来たようで、感心した様子であった。流石はスクールアイドルのトップである。

 本当にサウザーがそこまで考えているかは別にして、ではあるが。

 そんなサウザーの姿を見て、穂乃果は気付いた。

 

 ――あっ、私達このままでいいや。

 

 A-RISEばかりを意識してインパクトを求めてきた穂乃果であったが、サウザーを見て冷静になったのだ。

 A-RISEにはA-RISEの魅力がある。ならば、μ'sにはまた違った魅力がある筈だ。

 それはきっと、今のままの、ありのままの個性的な仲間たちなんだろう。

 断じてニップレスでカバーした乳首にサスペンダーをペチペチしながら大胆さと恥じらいの間を表現するようなことではない。

「……そうだよね」

「む、どうかしましたか?」

「私達、今のままでいいんだよね」

「なんですか突然……と言いたいところですけど、確かにサウザーを見ているとなんだかそんな気がしますね」

 どうやら穂乃果以外のメンバーも同様の結論に至ったようである。

 穂乃果は嬉しそうにサウザーの手を握った。

「ありがとうサウザーちゃん! お蔭で目が覚めたよ」

「フハハ。もっと褒めても良いぞ?」

「たぶん褒めて無いぞ」

 シュウは冷静に言いながらA-RISEとμ'sに礼を言った。

「今回はかたじけない、この男の無理を聴いてくれて」

A-RISE(私達)は構わないわ。そうでしょ、英玲奈、あんじゅ」

「そうだな」

「その通りね。それに、今はこうして競う合う間柄だけど、いつか手を取り合って敵に立ち向かう日が来るから」

「あの、それってどういう意味なんですか?」

 無駄に意味深なセリフを吐いて後々回収できるか甚だ心配な穂乃果はA-RISEに質問した。

 質問に答えてくれたのは英玲奈である。

「修-羅イズについては以前話したな?」

「はい、たわけた名前だなぁってみんなで話してました」

「うむ、その修-羅イズなのだが、メンバーの一人が日本に上陸を果たしたそうだ」

 英玲奈の言葉に一同が騒然となる。特に花陽なぞは目をキラキラ輝かせている始末だ。

「羽田のロビーでUTX(うち)の生徒が見かけたらしくてな」

「飛行機で来たんですか!?」

「意外と近代的な移動手段やね」

 日本にやって来たのは第三の羅将「ハン」。疾風の拳速を持ち、拳筋を見極めたものは未だいないのだと言う。英玲奈が言うには、最近の続くスクールアイドルグループのラブライブ辞退はハンの襲撃を受けての事らしい。

「奴の目的は知れんが、津々浦々のスクールアイドルへカチコミをかけては壊滅させているようだ」

「割と深刻な事態ね……」

 絵里が腕を組んで言う。

「フン、羅将だか裸将だか知らんが、この聖帝の敵ではない」

「はぁ? あなた、第三の羅将一人の力がA-RISE二十組分に匹敵するって話、もう忘れたの?」

「関係ないし。おれはA-RISE一億万組分の力あるし!」

「小学生か!」

「そのハンというのは、どういった人なんですか?」

 ことりが質問する。その質問に今度はあんじゅが答えてくれた。

「とにかく『濃い』の一言ねぇ……」

「こ、濃い?」

「キャラクター、顔立ち、オーラ……一挙手一投足が『濃い』わ」

「濃さならμ'sにも負けないの居るにゃ~。ねー、ニコちゃん」

「当たり前よ! ニコニーの濃厚な可愛さに勝てるわけないじゃない!」

 そう言うといつもの様ににっこにっこに~、と振りつけて見せた。しかし、ツバサ曰く我々の知りうる濃さを超越した濃厚さを持っているらしい。

「そんな人に勝てるの?」

 マキが訊く。

「だからこそ、我々はいずれ手を組むと言うのだ。我々だけでは非力だが、μ's、そして南斗DE5MENが加われば勝機は見える」

「なるほど、毒を以て毒を制すのね」

「引っかかる物言いだな?」

 ユダが抗議するが、事実みたいなものだから仕方ない。

「まぁ、今はひとまずハンの事は置いておきましょう」

 ツバサは腕をひょこひょこさせながら言った。

「明日のイベント、お互いに精一杯頑張りましょうね」

「は、はい!」

 穂乃果は大きな声で返事をした。それにツバサは嬉しそうに笑って見せた。

 

 

 結果だけ言うと、ライブは成功した。

 μ's、A-RISE、そして5MENは見事、最終予選へコマを進めることとなった。

「最終予選は関東A、Bに分けられているの。私達μ'sはA、5MENはBです」

「ちなみにA‐RISEはAです。まぁ、μ'sと5MENがぶつからなかったのは良かったと言えば良かったですね」

 サウザーの居城の広間、μ'sと5MENは例のごとく会議を開いていた。一同を前に花陽と海未が状況を説明していた。

 ラブライブ本選へ出場できるのは各一組ずつ。μ'sはA‐RISEを下さなければならなかった。

「そう言うわけなんで、最終予選で何を歌うか、どう演出するか、活発な議論を期待します」

 穂乃果が締めにそう言うと、真っ先にマキが手を上げた。

「はいマキちゃん」

「冷静に考えて、なんで5MENと共同で会議してるわけ?」

「不満か? 西木野マキよ」

「不満と言うか、理解できないだけよ。最終予選にまでなったんだから、各グループごとに話し合えばいいじゃない」

 マキの言うところはもっともである。5MENもいい加減作詞作曲の技術は(サウザー以外のメンバーは)少し身についている。最終的な調整は武士の情けで手伝ってやるものの、ここまで緊密に会議する必要が見いだせなかったのだ。

 だが、これに希が異を唱える。

「でも、ここまで一緒にやってきたからこそ、最後まで一緒に頑張りたいと思うのが人情やん?」

「順調に勝ち進めば、本選でぶつかることになるけどいいわけ?」

「だからこそやん。ここで会議するのも、これが最後の機会になるかもしれへんやろ?」

「むーん……」

 納得出来るような全然できないような……そんな感じである。

「フフフ……貴様は黙って作詞していればよいのだ。エェ? 西木野マキよ」

「やっぱり手ェ切らない?」

「まぁまぁ」

「で、何歌うわけ?」

 話を戻すようにニコが言った。

 それに答えるように、穂乃果の差し入れのお菓子(本日は豆大福)をモチモチ食べながら絵里が、

「新曲が良いわね」

「ここにきて新曲ですか」

 海未がやや驚きを含めて言う。

「して、新曲のイメージは」

 海未が訊く。これは非常に大事なポイントだ。

 その問いに答えたのは希であった。

「ラブソング、とか?」

「ラブッ!?」

「ソング!?」

 回答に海未とシンはビターン! と床に崩れ落ちた。

「いや、海未ちゃんは予想できたけど何でシンさんまで?」

「報われぬ恋をしているからな、シンは」

 レイのコメントにシンはコクリと頷く。会話としては成り立っているが二人の間には齟齬が存在することを一同は知らない。

「羅武ソング」

「ラブソングだにゃ」

「愛など要らんぞ?」

「いやサウザーちゃんの矜恃なんかどうでも良いし」

 ラブソングといえば歌の王道、往年のアイドルは皆、愛の歌でヒットを飛ばしてきた。

「そう言えば今までラブソングって無かったよね?」

 ことりが思い出したように指摘する。

「メンバーの殆どに恋愛経験が無い以上、ラブソングというのもどうかと思いまして」

「海未ちゃんはあるみたいな口振りやねぇ?」

「なっ!?」

「どぅえぇ!? 海未ちゃんあるの!?」

「海未ちゃん……ホントぉ……?」

 希の言葉に幼馴染二人が反応し、海未に詰め寄った。ことりに至っては何故か涙を目に浮かべている。

「なっ……あ、ありません……」

「……だよねぇ」

「ヨカッタ……」

「なんか怖いですよ……特にことりが」

 一応うら若き乙女であるμ'sの面々は素敵なラブストーリーに心躍らせることはあってもいざ自分たちで考えるとなるとどうしていいのか分からなかった。

 その点で言うならラブソングについて5MENは相当に有利である。何しろ絶賛片思い中が一人、既婚子持ちが一人、事実上恋人持ちが一人。ここに金髪角刈りも加えれば三人に二人は何らかの恋愛経験があるのである。

 だが、問題は残り二人である。

「ラブソング……どんな曲だ、レイよ」

「フッ……愛を知らぬお前には決してわかるまい」

「貴様! その『恋人がいる奴はいない奴より上級な存在』みたいな態度をやめろ! 殺されたいかっ!?」

「それは貴様のやっかみだ、ウダ」

「ユダだ!」

「愛などいらぬぅぅぅぅぅぅ!」

 

 果たして、μ'sと5MENはラブソングを作ることは出来るのか?

 

 


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