サウザー!~School Idol Project~   作:乾操

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第12話 μ'sをおおうマンネリの星! 迷走の果てに時代は動く!!

+前回のラブライブ!+

 サウザーとシュウ様に加え助っ人に来るはずだった黄金の角刈りまで不在という中で行われた敗者復活戦。

 臨時リーダーであるユダの下で見事勝利、5MENは無事次へと駒を進めた。

 しかし、このことは喜ばしいと同時にユダの増長とサウザーの権力低下を招きかねない事態でもあった。

 ユダの専横を阻止するべく、サウザーは会議を招集した!

 

 

「フフフ……下郎の諸君、今回は南斗DE5MEN総会にご参列頂きどうもありがとうございます」

 サウザー城のいつもの部屋。そこに5MENメンバーに加え多くのゲストが参列していた。

「もーサウザーちゃん、私達だって暇じゃないんだからさ、しょうもない話なら帰るからね!」

 穂乃果は機嫌が悪かった。何しろダイエットで海未から厳格なカロリー制限を言い渡されているのだ。しかも、それが自業自得であるという事実が余計に彼女を不機嫌にさせている。

「急くな高坂! バカみたいだぞ? ……フフフ。いや? バカだから急くのだな高坂?」

「開幕早々なんなのさ!?」

「落ち着きなさい穂乃果、いつものことでしょ?」

 ぷんすこ怒る穂乃果を押さえるのは絵里である。μ'sメンバーからは彼女たちの他に花陽も招集されている。学年ごとに一人ずつ、という塩梅だ。

「さて、今回の議題だが、5MENの更なる人気獲得のためにはどうすればいいかという話だ」

 敗者復活戦により蘇った南斗DE5MEN。しかし、地区本選でまた負けてしまっては意味がない。これからを見据えて新しい要素を練らなければならない。

「フッ、分かり切ったことだ」

 サウザーの出した議題に最初に反応したのはユダである。

「このユダを新リーダーにするのが良いに決まっている。何しろ実績があるからな」

「実績……? あぁ、あの『Z』とかいう下郎に勝ったという話か。ユダらしくナンセンスだな?」

「ふん、何とでも言うがよい」

 サウザーの皮肉もどこ吹く風、ユダは自信満々であった。当然である。例え『Z』がとるに足らない相手だとしても、ユダ率いる5MENが勝利したのは事実であり、サウザーが敗軍の将である事実は変わらないのだ。

「これからは妖星が輝く時代だ……それに、このおれがリーダーに相応しいという証拠は他にもあるぞ?」

「なに?」

 ユダの言葉にサウザーだけでなく他の面々も反応する。

「感想欄を見てみろ。このユダの活躍を讃え、更なる望む読者の声があふれておるわ!」

「なんだと!?」

 

 

ユダ様LOVE ID:UKpP4ICU  2016年10月27日(木) 22:34

ユダ様の活躍がもっと見たいです!

はっきり言ってユダ様こそがリーダーに相応しいと思います。

サウザーと違ってユダ様はとても美しく、頭もあります。

是非、主人公をユダ様にしてください!

 

ユダ様最高 ID:UKpP4ICU  2016年10月27日(木) 22:35

ユダ様の活躍に感動して涙が止まりませんでした。

友達もみんなユダ様が主役がいいと言っています。

サウザーなんか除けてユダ様が主役のストーリーにしてください!

 

ユダ様神 ID:UKpP4ICU  2016年10月27日(木) 22:35

ユダ様がなんかよかったです。

今後もなんかユダ様が良いと思います。

 

 

 

「どうだサウザー。反論の余地はあるまい?」

「ぬうぐぐ……」

 さすがにここまで見せつけられてはサウザーも黙るしかない。彼は悔し気に歯ぎしりして口から血を流した。

「ユダが新リーダーなのもどうかと思うが……」

「ここまで支持されているのなら仕方あるまい」

「レイっ! シュウ様ぁぁ~!」

 サウザーは納得いかない。

「おれは聖帝! このような戯言、力でねじ伏せてくれる!」

「フーハハハ! しかしだサウザー。貴様がいくら力を行使したところで、人気が出ない限り5MENの本選落ちは変わらんぞ?」

「すっふ……!」

 ユダの残酷な言葉にサウザーは思わず吐血する。

 サウザーにとって誰かの……よりによって同じ六聖拳の下につくのは前例がないレベルで屈辱的なことである。ユダの専横を阻止するべく開催した会議でまさか逆に追い詰められるとは不覚の極みであった。

 虫の息のサウザーを見下しご満悦のユダ。彼はμ's代表の三人へ身体を向ける。

「どうだ! スクールアイドルで最も強く美しいのはこのユダをおいて他にいないのだ」

「う、うん……」

 自信満々のユダであったが、μ'sらの反応は薄い。当然と言えば当然ではあるが……他にも理由があった。

「あ、あの」

「どうした小泉」

「いや、その感想なんだけど……」

 花陽はなんとも申し訳なさそうにユダを見やると、並ぶ感想の一角を指さした。

「名前の後の英数字の並びなんだけど、たぶんID的なものだよね? これが全部同じなんだけど……」

「それは……どういう意味だ?」

 シュウが問いかける。

「えっと、これが一緒ってことは、たぶんこの感想書いたの全部同じ人だと思うのだけど……」

「なに!?」

 花陽の言葉を聞いた瞬間、虫の息だったサウザーは復活、ユダを嘲笑うかのように高笑いを始めた。

「フハハハハ! 滑稽だなユダ! 貴様を讃えるのは一人きりだそうだぞ? ええ?」

「う、うるさい! どちらにせよ、このおれに熱狂的なファンがいると言う事実は覆らん。残念だったなサウザー!」

 事実を突き付けられてもユダは挫けない。一人でいくつもの感想を書いてくれるファンなぞサウザーにはいないから、その点でまだ優位にいるのだ。

 だが、花陽はまだ何かあるらしく「あの」と再び手を挙げる。

「今度は何だ!?」

「いや、これは完全に私の想像なんだけどね……?」

 もじもじしながら花陽は続ける。

「この感想、もしかして全部ユダさんの自演だったりして、なんて……いや、想像だけどね?」

「!?」

 それは、あまりにも衝撃的で、かつあまりにも『ありそうな』話であった。

「うわっ、まじか!?」

「ま、まて! 貴様ら、何を根拠に!?」

「毎日女たちに自分の賛辞を言わせていればそうも思われるだろ!」

 シンが言う。日頃の行いからすれば十分に想像できる話だ。

「ユダ、さすがにそれはアレだぞ、趣味悪いぞ」

「黙れサウザー! 大体、証拠はあるのか証拠は!?」

「な、無いです……だから想像だって」

「想像で変なこと言うな失礼なっ! ……おい絢瀬絵里、貴様何してる」

 ユダの目に慄く花陽の隣でポチポチスマホを操作する絵里の姿が目に入った。ユダの直感が碌でもないことをしていると告げる。

「ん? いや、嘘かホントか確かめようと思って、シェリーさんにRhineしてる」

「なっ……!?」

 シェリーとはユダガールズの一員で、黒いボブカットの女性である。

「絵里ちゃんいつの間に連絡先交換したの?」

「穂乃果が修学旅行行ってるときにちょっとね」

「ちょ……きさまっ!」

 ユダが制止しようとするが、もう遅い。

 

 

 エリーチカ『最近ユダさん称賛の感想とか書いた?』

 シェリ子 『書いた書いた。命令されて自演した』

 シェリ子 『マジうける』

 

 

「ぬっぐ……シェリィィィィィィ!」

「うわぁ……」

「呟きの方にも書かれてるみたいよコレ」

「ど、どういうことだ!?」

 絵里は言われてユダにスマホの画面を見せた。

 

 シェリ子@吉祥寺住みたい

 『ユダ様の命令でユダ様を褒めちぎる感想書かされなう(笑) #イタイ上司』

 

「シェリィィィィィィッ!」

「全世界に発信されちゃったのォ!?」

「めっちゃリツイートされてるし」

「やはり、所詮は将星に群がる衛星の一つ……リーダーの器ではないということだな?」

 形勢逆転である。知略を自負する妖星は自らの策に溺れて自滅した。

 ユダの自爆劇はさておき、本題の本選である。

 本選はいわゆる都道府県大会のようなものであり、上位三組が次のステップへ進むことが出来る。形式は予選同様ネット投票で、披露する舞台は自由だ。

「μ'sはどこでやるんだ? よかったら参考にしたいのだが」

 シュウが穂乃果に質問する。

「実は秋葉原のハロウィンイベントにA-RISEと一緒に招待されてて、そこでやろうかなって」

「A-RISEも同様だそうです!」

 そう言う花陽はとてもうれしそうであった。もう一度A-RISEの生ステージを近くで見られるとなってたまらないらしい。

「ほう……ハロウィーンか……」

 サウザーはそれを聞いてニヤリと笑う。

「……あなた、今から無理やりイベントに割りこもうなんて言うんじゃないでしょうね?」

「何を言う絢瀬絵里。その通りに決まっているだろうが!」

「馬鹿じゃないの? 出来るわけないでしょ」

 絵里はそうバッサリ切り捨てる。

 だが、ご存知の通りサウザーにそのような常識は一切合切通用しない。

「やってみなければ分からんであろう? 何事も本気で挑めば何だって叶えられると思いますけど?」

「サウザーちゃん良い事言うね」

「やろうとしてることは迷惑行為だけどね」

「善は急げだ! リゾ! ハロウィンイベントの運営に使者を出せ!」

「は!」

 A-RISE、μ's、5MEN……この三チームが同自場所で同じ日にライブをするとなると、これはまるで予選と同じ展開である。

「何か手を打たないと、以前の二の舞になるのではないか?」

 レイが指摘する。それにシンが、

「何かって、具体的な案があるのか?」

「いや……無いが、こう、インパクトのある事をした方が良いのではないか?」

 レイの言はμ'sにも言えることであった。

 確実に実力を伸ばしているとはいえ、未だA-RISEに知名度、人気で劣るのは事実である。前回こそどうにか追いすがることが出来たが、今回も予選同様の感覚で行けば間違いなく敗退するだろう。

(インパクトか……)

 穂乃果は腕を組んでうーんと考え込んだ。

 

 

 翌日、部室で穂乃果は一同に5MEN会議での事を話した。

「インパクト、ですか?」

「そう! 今のμ'sにはインパクトが無い!」

「5MENがインパクトの塊なだけじゃないの?」

 マキが指摘する。確かに、5MENと並べばμ'sは圧倒的にインパクトが足りないと言えるだろう。もっとも、そこについてはA-RISEも同様であろうが……。

「穂乃果ちゃんが言いたいのは、『目新しさ』みたいなのかな?」

「そう! ことりちゃんそう!」

 穂乃果は聞いたことがあった。

 A-RISEは常に進化し、前進し続けることをモットーにしているらしい。つまり、彼女たちの強みとは毎回『今までとは違う自分たち』を演出出来ることであるのだ。

「確かに、μ'sの安定感とか安心感って、言い換えれば『マンネリ』よね」

 ニコがうんうんと頷く。

 μ'sがA-RISEに追いつくには、このマンネリを打開しなくてはならない。

「そう言っても、どういう風に打開するん?」

「そうですね……」

 海未が熟考する。そして、一つの提案を閃いた。

「キャラを変えてみる、とかですかね?」

 

 

 とりあえず言いだしっぺの海未とリーダーの穂乃果、併せてこちりのキャラを変えてみることにした。

 二人はことりに隣の部屋へ連れられて行き、しばしの問答の後再び部室へ戻って来た。

「ごきげんよう、高坂穂乃果です」

「あ、なんか賢いっぽい」

 キャラチェンジした穂乃果はいつもの能天気感を拭い去りなんか賢い雰囲気を纏っていた。

「はい、私、少しバカっぽいみたいなので、逆に賢い感じになりました。はい、勉強とか超好きです」

「既にその発言がバカっぽいわね」

「マキちゃん? 何か言いましたか?」

「別に。……ところで」

 マキは穂乃果よりもその隣に立つ海未の方が気になっていた。

 穂乃果がキャラチェンジで賢く、お淑やかになった。では、元来が賢くお淑やかな海未はどうなったのか……。

「えっと、海未は……」

「はい! 園田海未だよーん!」

「あっ……うん」

 海未はバカっぽいキャラになっていた。

「ちくびーム!」

「いいですね海未ちゃん、あなた、今地球上でも類を見ないレベルでバカみたいですね」

「あびゃびゃびゃびゃー」

「見るに耐えないにゃー……」

 密かに尊敬する先輩のあんまりな惨状に凛は思わず涙ぐむ。

「穴があったら入りたいヴェエエエエエイ」

「一応理性はあるのね。で、ことりは……」

 海未が(一応)正気なことを確認したニコは次にさらにその隣に立つことりに視線を映した。

 ことりは海未が醜態をさらすのを腕を組んでじっと見ているだけである。

「ことりちゃんはとっても優しいので、逆にしてみました」

「この南ことり、この世紀末を力と恐怖で支配してくれよう!」

 力こそ正義とでも言いたげなキャラである。

 それにしても、キャラを変えてみたは良いものの、酷いものである。

「どうですか? インパクト、感じますか?」

「我は鳥王! チュンヤァー!」 

「コマネチ! コマネチ!」

 穂乃果はまだしも、残り二人が酷い。

「これ駄目じゃないかな……?」

「あら、奇遇ね花陽? 私もそう思っていたところよ」

「たぶんみんな同じ感想やと思うのやけど」

 

 

 キャラチェンジ作戦は失敗であった。

 恥ずかしさのあまり逃亡を図った海未を久々の南小鳥嘆願波で大人しくさせ、会議は続行である。

「どうしたものかなぁ」

 穂乃果はうんうん悩む。

 すると、今度は絵里が提案した。

「内面よりもわかりやすく外を変えてみるのがいいと思うのだけど」

「衣装でも変えるん?」

「そう。今までにない、アイドルという壁を壊すような、そんな感じの」 

 そう言うと彼女はパチンと指を鳴らした。

 

つづく


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