サウザー!~School Idol Project~   作:乾操
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忙しいのとユダのキャラクターが書くの難しすぎて遅れました。


第9話 リーダーに推す者よ! 凛の熱き心の叫びを聞け!!

+前回のラブライブ!+
 予選で早くも敗退した南斗DE5MEN。しかし、五位通過の南斗五車星のメンバーが素性不明のムッシュによって倒されたことにより棄権、敗者復活戦が開催されることとなった。
 一方予選四位通過のμ'sは地区本選を目指す傍らファッションショーの余興を務めることになった。
 そして両チームのリーダーは修学旅行で沖縄へ赴いていた。
 ユダと凛を臨時リーダーに据えた両チーム。果たして、どうなってしまうのか?



 翌日の放課後。
 いつもの屋上で花陽、マキ、ニコの三人は臨時リーダー凛の指示を待っていた。
「え~と、そ、それでは、練習を始めたいと思いまーす……?」
「おぉー」
 照れながら挨拶する凛に花陽がパチパチ拍手を送る。
 いつも練習時は元気すぎるくらいな凛だが、今回ばかりはそうはいかないらしく、もじもじとしている。
「どうしたのよ、いつも通りでいいのよ」
 ニコはそう言うが、今の凛にとっては難しい注文である。
「い、いつも通り?」
「そう、いつも通り」
「いつも通り……いつも通りでー……」
 ニコに言われて凛は一つ深呼吸をする。そして、
「この星空凛、μ'sのリーダーとして天に覇を唱えてくれるわ!」
「ニコの話聞いてた?」
「準備体操! 1・2・ジョイヤァー!」
「これどうすんのよ」
 マキが呆れながら髪の毛をくるくるする。花陽も凛の想像以上の迷走ぶりには開いた口が塞がらないといった様子であった。
「ジョイヤー!」
 
 どうしようもないから一同はユダの居城へ向かうことにした。
 いつも5MENはサウザーの居城か聖帝校で練習をしているのだが、今はユダがリーダーなため彼の城で練習するらしい。
「連絡しなくて大丈夫かな?」
「別に構わないでしょ。だいたい、世紀末に電話なんてないわよ」
 花陽の疑問を一蹴するマキ。
 四人は他愛もない談笑を続けながらユダの城への道を歩いていた。そんな道中で、ニコが「あっ」と声を上げる。
「どうかしたにゃ?」
「レイさんとシンさんじゃない? あれ」
 指す方を見やると、なるほど、レイとシンが歩いている。中々珍しい組み合わせである。凛が「おーい」と声を掛けると二人もこちらに気付いて、レイが、
「おお、どうした?」
「気分転換にユダ城で練習もいいとかなと思って」
「酔狂なものだな」
 シンが鼻を鳴らして笑う。
 冷静に考えてみれば酔狂もいいところである。
「そういう二人は何をしてるんですか?」
 酔狂ついでに花陽が尋ねる。基本的に絡みの無い珍しい組み合わせであるから興味も沸くのだ。
「いや、なんてことは無い。これからユダの城に向かうところだ」
「予定より早いのだが、まぁ自分の城にいてもバーチャルボーイくらいしかやることないしな」
「バー……なに?」
「もう少し私たちの世代に即した話ししなさい」
 ニコがため息を吐いた。
 


 ユダの城は音ノ木坂から車で30分ほどにある朽ち果てた都市の中に聳える大きなビルヂングである。美しさに絶大な執着を見せる彼の城であるから、内装は他の六聖拳と比べても絢爛なものである。
 そんなユダの城最大の名物と言えば各地からさらってきた美女軍団、通称『ユダガールズ』である。
「おれはこの世で誰よりも強く、そして美しい……!」
 ユダはユダガールズを玉座のあるテラスに集め、城下に広がる街を見ながら言った。そして、くるりと踵を返し、ユダガールズに向き直って、
「もう一度言う! おれはこの世で誰よりも強く……せーの」
「そして、美しい!」
 ユダガールズはお辞儀をしながらユダの言った通り繰り返す。
 彼は毎日こんなことを繰り返しているのだ。
「OKもう一度! ……おれはこの世で誰よりも強く?」
「そして、美しい!」
「おいユダ」
「OKOK! 次はジェーン、クラリス、シェリーの三人だ。おれはこの世で――」
「ユダ!」
「なんだ今忙しい……!?」
 日課を邪魔する何者かがいるから声のする方を見てみると、そこには見知った、かつ最悪の顔ぶれが並んでいた。
「シン!? レイ!?」
「ウダさん……」
「μ'sの奴らも! あとおれはユダだ!」
 招かれざる来訪者は揃って気まずい表情をしている。
「おい貴様ら、約束の時間はまだだろう!?」
「いや、どうせ暇だったから……?」
「その……なんかすまん」
 レイもシンもユダと目を合わさないように謝罪する。
「ユダさん、こんなの毎日やってるんですか……?」
 花陽が露骨に引きながら訊く。凛も、
「趣味悪いにゃー」
「う、うるさい! というか、星空凛貴様は何をしている!」
「ムービー撮ってる」
 彼女はスマホのカメラをユダに向けていた。
「撮影した映像はどうするつもりだ」
「穂乃果ちゃんのRhinに送信するにゃ」
「やめろ!」
 凛の撮影したユダの痛々しい姿は無慈悲な勢いで穂乃果へ送信された。しばらくして、返信が送られてくる。
「奴め、何と言っている!?」
「えっとね」

穂乃果『ことりちゃんと海未ちゃん爆笑! サウザーちゃんとシュウ様にも見せるね^^』

「ぬううう!?」
「穂乃果容赦ないわね」
「悪意無さげなのが余計に恐ろしいわ」  
 マキとニコが返信を見ながら慄く。

 しばしわちゃわちゃした後、ひとまず一同はお茶を飲んで一休みすることにした。
「で、シンとレイは分かるとしてμ'sが何の用だ?」
「うん、実は……」
 四人はユダにここへ来た経緯を説明した。同じく臨時リーダーとなっているユダなら凛の良いアドバイザーになると思ったのだ。
「ふん、下らん」
 凛の状況を聴いたユダはそう鼻で笑う。
「この乱世に何を遠慮する。むしろ下克上の好機ではないか?」
「う、うん?」
「そもそも相談する相手間違えたわね」
 ニコがマキに耳打ちする。ユダには聞こえなかったようであるが。
 分かり切ったことであるが、別に凛は穂乃果に下克上しようなどとは思ってないし、しろと言われても願い下げである。
「それなのにリーダーなんて……凛には向いてないよ」
「安心しろ。ユダより向いてる」
「レイっ! 貴様っ!」
「何の慰めにもならないにゃ……」
「ぬぐぅう!」
 これも分かり切ったことであるが、ユダは非常にプライドが高い。周りの人間に軽んじられることを嫌う。そうであるから、ここまで年下たちに軽んじられては我慢できない。
「おのれらー!」
「落ち着くニコ、ウダ!」
「ユダだ!」
「ユダ様ー!」
 収拾がつかなくなりそうになった時、息を切らせたダカールが広間へと駆けこんできた。
「なんだ! 今忙しい……」
「大変でございます!」
 ユダの言葉を遮るようにダカールは懐から紙を取り出す。
「何だそれは」
「電報でございます」
 ユダはダカールから電報をひったくると目を通し始めた。
「電報ってなんだにゃ?」
「最近めっきり使わなくなったものだよ」
「まだ使えるのね」
「まぁユダ城電話無いみたいだし」
 ユダは電報を幾度となく読み返す。そして、気持ちの悪い笑い声を上げ始めると、喜びに打ち震えながら諸手を上げた。
「フワハハハ! ついにこのユダに天が微笑んだわ!」
 そう叫ぶや彼は一同に電報を突きだした。

『タイフウキタル ヒコウキケッコウ ヨセンカエレヌ』

「どういう意味にゃ?」
「飛行機が台風で飛べないんだって。大変だねぇ」
 花陽が憐れむ様に頷く。対して
「サウザーが帰れぬとなれば、このユダ様がリーダーとして再選を戦うしかあるまい!」
「まぁ……そうだな」
「……うん……」
 レイとシンもしぶしぶといった様子で頷いた。ユダがリーダーなのも微妙な心境だが、自分がやらされるよりはましだと思ったのである。
「……え、待って」
 凛が何かに気付いて声を上げる。
「かよちん、飛行機止まってんだよね?」
「そうだね」
「サウザーちゃん達帰ってこれないんだよね?」
「そうだね。大変だねぇ?」
「いや『大変だねぇ?』じゃなくて? ……これってあれじゃん、穂乃果ちゃんたちも帰ってこれないじゃん」
「……あっ!」





「うん、そういうことなんだ」
 ユダの城で凛が驚愕の真実に辿りついている頃、穂乃果はホテルのラウンジで荒天の外を眺めながら絵里と通話していた。
『大変ね……まぁ、予想はしてたから、安心して』
「流石絵里ちゃん!」
『台風シーズンだしね。海未とことりは元気?』
「うん?」
 言われて穂乃果は後ろを振り向いた。そこでは、ババ抜きに興ずることり、海未、シュウ、サウザーの姿があった。ことりとレイは早々に抜けて、海未とサウザーの一騎打ちである。
「サウザー……いきますよ」
「フフフ……こい、下郎!」
 ここまで海未とサウザーはそれぞれ5回最下位になっている。そして、ババ抜きはここまで10回行われた。つまりそういうことである。
「……終わらないパーティーしてる」
『……? まあいいわ。ところで、センターなんだけど』
 センター……今度のファッションショーでのステージでの話である。今回も従来通りとりあえず穂乃果を真ん中に立てておく予定であった。だが、飛行機の都合で帰ることが出来なくなった以上、代わってセンターを務めるメンバーを選出する必要がある。
『私は凛が良いと思うの』
「こっちもそう思ってた。ていうか、私のセンター率高いけど別に私じゃなくていいよね? 最近思ったけど」
『まぁとりあえずリーダーだから? 深く考えて無かったわ。慣例になってて』
「絵里ちゃんそういうとこ雑だよねぇ。それはさておき、凛ちゃんどうかな、引き受けてくれるかな?」
 穂乃果は出発前、凛に「帰って来るまでよろしくね!」と声を掛けていた。その時の凛の反応は微妙で、しきりに、
「なんとか……えぇ……?」
などと言っていた。
『どうかしらね……でも、みんな凛が相応しいって考えているのは事実だわ』
「うん。だから――」

「ぬぅぅぅぅうん!? おのれ園田海未!」
「ふふふ、この園田海未、サウザーごときに後れは取りません。これで六勝です!」
「ワンモア―! ワンモアバトル―!」

「ちょっと静かにして!? 今絵里ちゃんと大事な話してるから!」
 穂乃果が注意すると海未とサウザーは声を潜め、シュウとことりを無理やり引き入れて再びババ抜きを始めた。
『どうかしたの?』
「いや別に。それで、凛ちゃんの事なんだけど」
『大丈夫、あの子も分かってくれるわよ。エリーチカに任せなさい』
「うーん……まぁ、希ちゃんもいるし大丈夫か」
『何気にひどくない?』
「まぁまぁ……あっ、そうだ」
 穂乃果は大事なことを思い出して声を上げる。
「衣装なんだけど、凛ちゃんのサイズに調整しなきゃ。ことりちゃんいないけど出来そう?」
『ああ、それなら大丈夫。それくらいなら私とニコで――』

「ああああ! サウザーあなた私の手札覗きましたね!?」
「覗いてません~! 貴様の勘違いだ!」
「いいえ覗きました今チラッと見ました! 下劣です卑劣です破廉恥ですぅー!」
「覗いてません~! 貴様の勘違いですぅ~! この聖帝サウザー、覗きなぞしなくとも下郎に負けません~」
「ぬぐぐおのれサウザー!」

「うるさいって言ってるでしょバカチンが!」
『ほ、穂乃果? 大丈夫?』
 怒鳴る穂乃果に驚いたのか電話の向こうの声はやや震えていた。気を取り直して穂乃果は「なんでもないよ!」と声を掛けた。
「で、絵里ちゃんとニコちゃんがなんだって?」
『えっ? あ、ああ……衣装の手直しは私とニコで出来るって話よ』
「ああそういう話ね。了解了解」
 絵里は設定上キルトやアクセサリー製作が趣味だから手先は器用である。ニコも裁縫は得意でことりの手伝いを度々している。心配はいらないだろう。
 となれば、やはり問題は凛本人である。
「絵里ちゃんほんと頼むよ?」
『大丈夫って言ってるでしょ? ……ちょ希、やめてよそういうのマジで』
 そう言って絵里は電話を切った。
 ……本当に大丈夫だろうか?
 とは言え、自分なら絵里以上に凛を説得できるとも思えないから、ひとまず信じることにした。 
 らしくなく心配してもしょうがない。せっかく修学旅行が延長になったのだから、その分楽しまないと。
 そう思うことにした穂乃果はさっそくトランプに混ぜてもらおうと振り向いた。
「さーて、私もトランプ混ぜ――」
 だが、そこにあった光景は賑やかにトランプに興じる面々の姿ではなくサウザーに無想転生を繰り出す海未の台風張りに荒れ狂った姿であった。
「サウザァー!」
「ぬぅぅぅし! ぬぅぅぅし!」
「えぇ……?」





 所戻って再びユダ城。
 ユダからの励ましなのか何なのか分からない言葉攻めに辟易していた凛の元に少なくとも今の彼女にとってはお世辞にも朗報とは言えない情報が舞い込んだ。
「あ、絵里ちゃんからメッセージ来てる」
 花陽はスマホをぽちぽち操作してメッセージの内容を確認した。じっくり読んでいることからそこそこの量の文章だと解る。
「……かよちん、絵里ちゃん何だって?」
「えっとね、簡潔に言うとね」
「うん」
「穂乃果ちゃんの代わりにセンターがんばれって」
「は?」
「これ、衣装」
「はぁ!?」
 花陽は絵里からのメッセージと共に凛の着ることとなった衣装の画像を見せた。
 その衣装は花嫁衣裳を彷彿とさせる可愛らしいドレスで、画像を見せる花嫁の顔はこれを着た凛を妄想しているのか、かつてないレベルでニヤついていた。
「凛ちゃん、きっと、否、間違いなく似合うよ!」
「まって! かよちん待って!」
 ぐいぐい迫る花陽に慄きながら凛は拒否する。
「凛にそういうのは似合わないって! ほ、ほら! ユダさんは!? ユダさんに着せなよ!」
「何故そこで俺が出るのだ?」
 しかし、ここは当世最高の美を自称するユダ、満更でもなさげだ。100%女物のドレスだって着こなして見せると言う気概が感じられる。
 だが。
「は!? なんでこんなに素敵な衣装をアレに着せなくちゃいけないの!? 凛ちゃんにこそ似合うよ!」
 花陽が全面否定した。
「ぬっくっ……!?」
「だ、だめかにゃ~?」
「駄目!」
「……じ、じゃあレイさんにあげれば良いにゃ! ほら、アイリさんのウエディングケープ、たしか今返り血で真っ赤でしょ!? マミヤさんへのプレゼンとにもピッタリにゃ!」
「いや、それなら間に合っている、心配するな。そもそもサイズ合わんし」
「くっ……! じ、じゃじゃじゃぁ、シンさん! シンさんの好きな人へプレゼントに! どうぞ!」
(ケンシロウへドレスをプレゼントだと……!?)
 シンの脳裏に華やかな純白のドレスに身を包んだケンシロウの姿が思い浮かぶ!
 ――シン、ご飯にするか? 風呂にするか? それとも、ア・タ・タ?
「……悪いが、奴にドレスは似合わん……」
「そんにゃ」
「凛、恥ずかしいのは分かるけど、そこまで嫌がること?」
 ニコが問いかける。
 これまでの拒絶ぶりも相当であったがドレスやセンターに関する拒絶の仕方がそれに勝る勢いである。今まで普通に衣装を着て唄っていたにも関わらず、何故今更拒絶するのだろうか?
「花陽の言う通り、凛に似合うわよそのドレス」
 マキも微笑みながらフォローする。
 事実、そのドレスは凛に抜群に似合うものであった。ひとたび身に纏えば、誰にも恥じることのない天使がそこに誕生することであろう。
 だから一同は凛に着るよう薦める。
 だが、しかし。
「――もー! 凛には似合わないったら似合わないの! それくらいわかるでしょ!?」
「凛ちゃん、でも……」
「でもじゃないっ! かよちんの……違うえーと……ニコちゃんのバカ!」
「いや何で私がディスられてんの?」
「うにゃああああああああ!」
 凛はニコの疑問に答えることなく席から跳ねるように立ち上がると雄たけびを上げながら部屋の外へ逃げていった。
「あ、凛ちゃん!」
「足速っ! もう外にいるし!」
 快足を誇る凛の突然の逃亡には一同為す術なく、叫びながら遠く去りゆく凛の背中を見送ることしかできなかった。
「な、なんなのだ一体……」
「訳が分からん」
 レイとシンも困惑の声を上げる。
「……凛ちゃんがあんなに嫌がるのには理由があるんです」
 凛に困惑する一同に、冷静になった花陽が口を開いた。
「理由……?」
「はい……」
 凛が可愛い服を拒絶する理由……それは、彼女がまだ小学生だったころにまで遡る……。

つづく 
 



電報届くの速すぎとか突っ込んではいけない。死ぬぞ。