サウザー!~School Idol Project~   作:乾操
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第7話 五車星つかの間の勝利宣言! 海渡るムッシュが彼らを襲う!

+前回のラブライブ!+
 ついにはじまったラブライブ予選。
 μ'sは見事予選を勝ち抜き、目標のラブライブ優勝へと一歩近づく。
 しかし、一方で南斗DE5MENは見事予選落ちし、マキちゃんはサウザーによる突撃となりの晩御飯開催の恐怖に慄くこととなってしまった。
 どうなる5MEN、どうなるマキちゃん!



「西木野家でのお泊り大会計画はさて置きだな」
 サウザーの居城にある無駄に広いリビング。5MENメンバーはいつもの様に会議を開催していた。
「今回の戦犯を決めようと思うのだが?」
「待て、サウザーよ」
 勝手にメンバーを弾劾しようとするサウザーにシュウが待ったをかける。
「予選にはチームで参加したのだ。誰か一人を責めると言うのは――」
「シュウ様は死刑。罪状はロン毛なところ」
「聴け!」
 シュウの正論なぞに耳を傾ける聖帝ではない。
 そもそも、サウザーにとって5MENは『サウザーと愉快な仲間たち』な認識であり、そこにμ'sのように仲間たちと夢をかなえよう! という青春的な認識は存在しないのだ。
「そう言うわけだからおれ以外が罪人と言うわけだ」
「いや、しかしだな――」
「レイも死刑! 罪状はロン毛!」
「聴けってば!」
 聴く耳持たないサウザーにメンバーのイライラは募る。
 その後シンとユダに死刑を宣告して(罪状はロン毛)満足したのか、サウザーはひとしきり笑うと「それにしても」と切り出した。
「予選落ちより五車星に後れを取ったことが不満なのだが?」
「まぁ、それは少し同意できるな」
 一同が頷く。
 南斗五車星……海のリハクとかいうとぼけたジジィ率いる集団で、サウザーらと同じくスクールアイドルを名乗り、スクールアイドルの定義を混沌とさせている集団でもある。
 ランキングと共に掲載されていた風のヒューイのドヤ顔はこの世のものとは思えないウザさであった。
「天に輝くのは我が将星で、その他は衛星に過ぎん。そんな衛星の慈母星のさらに衛星の連中が予選突破なぞ……ぬううん」
 サウザーはよほど悔しいと見える。
「やはりお前らがロン毛だから?」
「それは違うだろう」
 と、ここで、五人の中では一番派手な見た目の癖に文字になると一気に存在感を失ってしまうことでお馴染みのユダがここぞとばかりに声を上げた。
「大体、センスの無い貴様(サウザー)がリーダーをやっている時点で敗北していたも同然なのだ」
「む?」
「アイドルグループのリーダーに真に相応しいのはこのユダを除いておるまい。なぜなら」 
 ユダはマントを翻しながら立ち上がり、トレードマークのユダブレスレットを構え、
「誰よりも強く、そして美しいからだ!」
 アイドルと言うよりビジュアル系ロックバンドの方が似合いそうな見た目だが、とにかく一番芸術性が高い(と、本人は思っている)のだから、自分こそがリーダーに相応しいと言いたいようだ。
 だが、シュウにはそんなユダのキモチより気になることがあった。
「そう言えば、ユダがそうやって見せつけてくるブレスレットだが」
 ユダのトレードマークである金のブレスレット。彼の名を示す『UD』の刻印がシャレオツな逸品である。
「これがどうかしたのか」
「いや、対したことではないんだけど……」
 シュウは何とも気まずそうに、まるで気付いてはいけないことに気付いたかのような素振を見せる。
「その『UD』マークなのだが、名前の略なら『UD』じゃなくて『JD』が正しいんじゃないか?」
「えっ?」
 ユダの英語綴りは『Judah』である。間違っても『U』から始まることは無い。
 であるから、略表は『JD』が綴り的に正しくなる。
 『UD』は普通ユダと呼ぶことは無いのだ。
 衝撃の事実が語られると同時、5MENメンバーに衝撃が走った。
「うわ、マジか!?」
「焼き印までしておいて!?」
「いや、ちょ」
 サウザーに至っては窓の外に向かって、
「下郎のみなさーん! コイツヤバいぞーっ!」
「貴様やめろ!」
「あ、そうだ。せっかくだしμ'sにも伝えよう。音ノ木坂に伝令を出せ!」
「貴様ぁ―!」
 美と知略を豪語する男がこのような勘違いをした上に見せびらかしたり焼き印にしてしまっていたという事実に他メンバーは引かざるを得ない。
「そもそも、だれがこれを名前の略だと言った!?」
「じゃあなんだ」
 シンに問われ、すこし悩んだのち、ユダは、
「『美しい(U)だろ(D)』の略だ!」
 この言い訳は少々苦しい。シュウはユダの肩を叩き、憐憫の念を込めた声音で、
「ドツボってやつだ『ウダ』?」
「ユダだ!」
「音ノ木坂に伝令を出せ!」
「やめろサウザー!」
「フハハハハ!」
 すったもんだに興じた彼らは、しばししてユダいじりに飽きたから話を本題に戻すことにした。
「で、今回の戦犯だが」
「本題ってそれなのか」
 レイが呆れたように言う。
「やはりユダであろう。『UD』などと片腹痛いことしてるから予選落ちするのだ」
「なっ……!? それは関係ないだろう!? だいたい話変わってないし!」
「まぁ落ち着けウダよ!」
「ユダだっ!」
「あとやはりロン毛なところだな!」
 サウザーによる戦犯探しとユダいじりは結局夜が更けるまで続いた。

 しかし、5MENが呑気なことをしている間に、ラブライブは新たなる局面を迎えつつあった。





 サウザーらがユダいじりをしていたころ、南斗五車星が一人、雲のジュウザは他の面々が予選突破を祝すのをよそに、ひとり小高い崖の上で空の雲を眺めていた。
 このジュウザ、スクールアイドルなぞには微塵も興味が無い。女は好きだが、その女のファンのために縛られるのは好きじゃないのだ。
 そうであるから、今回のラブライブも彼は参加する気なぞなかった。
 だが、どうでも良い事には知恵が回るリハクの奇策によって、彼はつい予選に参加し、数多の女性ファンを虜にした。
 参加したいなぞ思ってもいなかったのに参加させられてしまう……それは、彼の『自由』のポリシーに反することであった。
 予選突破のを五車星と共に祝わないのはそのためである。一人で昼寝している方が気楽なのだ。
「む?」
 そんな彼の目に、崖の下を歩く数人の人影が飛び込んできた。
 一人の男を数人の女性が取り囲むように歩く集団である。
 ジュウザは女好きである。そして、そうであるが故に、得意気に女を侍らせている男を見ると無性にからかいたくなる。
 彼は跳ねるように置き上がると跳躍し、男の背後に降り立った。
「へぇ、この辺じゃ見ない美人揃いじゃねぇか。おれも仲間に入れてくれよ」
「……ほう、このおれに恐れず近寄るとは余程の愚か者か……」
 男はマントを翻しつつジュウザへ身体を向けた。
「もしくは童貞と言ったところだな?」
(なんだこの男、濃ゆい……!?)
 その男は顔立ちから沸き上がるオーラなどどれを取っても『濃厚』な雰囲気の男だった。胸やけを起こしそうな濃厚具合にジュウザも思わずたじろぐ……否、ただ濃いだけではない。そう目にかかれないレベルの強大な気もある。
「む、我が気を感じ取ったか。となれば貴様、童貞ではないな?」
「童貞とか童貞じゃないとか、良く分からんが貴様は何者だ?」
「この『羅将ハン』の名を知らぬか……ふふ、この国に我が名を轟かす甲斐があるというもので粟立ちが止まらぬわ」
 なんだか良く分からない男だが、とてつもなく強いと言う事は分かる。
 と、その時。
「探したぞジュウザ!」
「ダンスの振りつけの打ち合わせをすると言っていたであろうが!」
 ジュウザと同じく五車星のメンバーである『風のヒューイ』と『炎のシュレン』の二人がバイクに乗ってやって来た。表情から見て、ずいぶん探し回った様子である。
「ほう、この国の童貞はずいぶんカラフルなのだな?」
「何……ってなんだコイツ!?」
「エスプレッソを擬人化したかのような紳士! ジュウザの知り合いか!?」
 ヒューイとシュレンもハンの濃さに戦慄する。
「二人とも引っ込んでな! お前らの敵う相手じゃねぇ」
「なに、敵か!?」
「ジュウザ、貴様打ち合わせはサボる上に我らを軽んじるのか!」
「何とも賑やかな童貞だ。長旅で退屈していたところ実に愉快だ。童貞も山の賑わいとはまさにこのことであるな」
「なんだそのことわざは!」
「ていうかなんださっきから童貞童貞と! ヒューイもおれも童貞ではない!」
「貴様らがどう言おうと知らぬ。童貞か否かはおれが決める!」
 不思議と基準の知りたい話である。とりあえず、ハン基準ではジュウザは童貞ではないがヒューイとシュレンは童貞と言う事だそうだ。
「とにかく、ジュウザよ、あんな奴に構ってないで打ち合わせをするぞ!」
「次のステージでもお前が必要なのだからな!」
 ヒューイとシュレンはジュウザの腕を掴むと無理やり連れて行こうとした。これ以上ハンと関わっていたら濃さで頭がおかしくなると考えたのだ。
「ステージ? 童貞がまるでアイドルか何かのような催しをするのか?」
「ようなもなにも、我らはスクールアイドル、『南斗五車星』だ!」
「関東予選突破を成し遂げた南斗五車星とは我らの事だ!」
「なに?」
 ハンは驚きの表情を見せる。
「この国では童貞がアイドルをやるのか?」
「童貞関係ないだろ!」
「ふふ、童貞でありながらスクールアイドルとは、片腹痛すぎて粟立ちの臨界点を軽く超えそうであるな」
 ハンの嘲笑。
 さすがにここまで言われては、ヒューイもシュレンも黙ってはいられない。
「先ほどから口を開けば童貞と!」
「口を慎め!」
 二人はこの失礼なムッシュに制裁を加えんとそれぞれ風と炎を纏った。
「てめえらやめろ!」
「止めてくれるなジュウザ!」
「童貞認定されたままここを去るわけにはいかぬ!」
 涙に顔を濡らす二人。風と炎の妙技は謎の哀しみも相まっていつも以上に勢いがある。
「ほう、まるでサーカスを見ているようだ。『シルク・童・ソレイユ』とはまさにこのことであるな」
「全然うまくないぞ!」
「我が炎と弟星の風、存分に味わうがいい!」
 ヒューイとシュレンの放った『炎の嵐』が、羅将ハンに襲いかかる。





「あっ」
「かよちんどったの?」
 翌日の放課後、いつもの様に部室のパソコンでラブライブ運営を確認していた花陽はお知らせ欄を見て声を上げた。凛も花陽の肩に顎を乗せてパソコンを覗きこむ。
「どれどれ……『予選通過チームが一組棄権したため、敗者復活戦を開催します』……へぇ~、こんなこともあるんだね」
「棄権したのは……『南斗五車星』……五位通過チームだね。メンバーが負傷したって」
「サウザーたちにもチャンスが巡ってきたってわけね」
 話を聞いていたマキがホッとしたようにため息をつく。これで家に突撃されることはひとまず無くなったわけである。
「ま、ニコたちには関係ないけどね~」
「はぁ!? 5MENがこれで勝てなかったら(うち)にサウザーが来るのよ!? 関係ないわけないでしょバカジャナイノ!?」
「マ、マキちゃん怖いニコ~……」
「どんだけ嫌やねん」
「ところで、その敗者復活戦っていつなの?」
 穂乃果が花陽に訊く。
「えっとね……あ」
「どしたの?」
「私達のライブの日と重なってる」
 花陽の言う『ライブ』というのは、学校の近くで開催されるファッションショーの余興の事である。ラブライブに向けてここでさらに知名度あげておこうということで絵里が引き受けてきたライブだ。
「あ、そうなの。じゃあ見に行けないね。残念」
「ホントに思ってますか?」
「思ってるって」
「でも、今回は全部5MENでやってもらわないとだね」
ことりがマカロンを食べながら言う。
 予選の時、5MENはμ'sの作った曲で参加していた。海未とマキで練習がてらに何曲か未発表曲を製作していたために出来た振る舞いである。しかし、所詮は未発表曲……つまり、二人が相談の上で人前に出すものではないと判断した曲である。
「ことりの言う通りです。予選前は深く考えていませんでしたが、もしかしたらあれが予選敗退の原因かもしれませんし」
「いやぁ、原因はサウザーよどうせ。ことり、マカロン一つ貰っていいかしら?」
「どうぞ。絵里ちゃんはホントサウザーちゃんが嫌いなのね」
「当然よ。海未とマキが作った曲で予選敗退なんて、失礼だわ……それより、私達は今度のファッションショーよ」
 絵里はマカロンを飲みこむと真剣な面持ちで、
「確か、ショーのすぐ前まで二年生は修学旅行だったわよね?」
「沖縄だよー! 楽しみ!」
 穂乃果が待ちきれないといった様子で声を上げる。
「いいなぁ、沖縄。凛も連れてって」
「凛ちゃん来年行けるじゃん」
「かよちんが修学旅行先をコシヒカリ食べたさに北陸にするようロビー活動展開してるって噂が」
「してないよ!」
「で、そのファッションショーが何?」
 収集がつかなくなりそうなのでマキが話を軌道に戻す。
「ええ。その修学旅行前後の期間だけど、二年生はもちろん、私と希も練習に参加できそうにないの」
「にゃにゃ!? なんで?」
「生徒会長が修学旅行に行っちゃうでしょ? 慣例として、前執行部員がその期間仕事をすることになってるの」
 へぇー、と一年生組がやや他人事のように声を上げる。
「で、その期間なんだけど、一年生の誰かにリーダーをやってもらおうと思うの」
「へ?」
「穂乃果と話し合ってね、決めたのよ」
 思いもよらなかったことに、一年生トリオは驚きを隠せない。
 リーダーを、一年生の中で……? 
 現在、μ'sのリーダーは穂乃果である。普段の彼女を見ていればまとめ役なぞ簡単に見えるが、それは彼女のある意味天才的ともいえるリーダーシップがなせる業であり、そうであることを一年生の三人は重々に理解していた。
 と、ここで凛が、
「それならニコちゃんがいいにゃ~」
「どういう意味よ!」
「そのままだよ~」
 なははと笑う凛。どうやら彼女は早々にリーダー候補から自らを外したようだ。リーダーなんてとんでもない。相応しくない。そう思っているのだ。
 だが。
(リーダーは……凛ちゃんがいいかな)
(凛あたりが良いかもしれないわね)
 他の二人は違った。
 

 星空凛の挑戦が、始まろうとしている。



つづく
  
 



矢澤姉貴回書いてたんですけど、あんまりにも突拍子もない話になったのでカットしました。μ'sメンバーによる矢澤家突入はユダいじりの頃に行われていたとします。
設定だけは今後出てくる可能性があるので、活動報告にでも簡単に説明を記すかもしれません。
あと次回以降は凛ちゃん回と見せかけてユダ回です。