サウザー!~School Idol Project~   作:乾操
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下郎の皆さんお久しぶり。
熱中症には気を付けて。
1話のケンシロウみたくならないようにね。


第3話 天帝怒る!ファルコ、アイドルを 地上より根絶やしにせよ!!

+世紀末スクフェス伝説+
 世界が核の炎に包まれた後、スクフェスは暴力が支配する世界となっていた。
 しかし、そのような中でも暴力で全てを解決しようとしない健気な人間もあった。
「これはラブカストーンの種もみじゃ」
 そう語るミスミ氏の手には小さな袋があった。
「これを畑に植えれば、来年も、そのまた来年もラブカストーンが実る」
「ラブカストーンを巡って争うこともない」
「今日よりも明日なんじゃ」
 ミスミ氏は笑顔を見せる。
 だが、そんな彼に、ラブカストーンを狙うスペードの影が迫る……。





 μ'sと南斗DE5MENの衝撃的な連合から二日、サウザーの居城にはμ'sと5MENのメンバーが集まっていた。
「合宿に行こうではないか合宿に」
 そんな会議の場でサウザーはこう提案した。
「なるほど、サウザーにしては名案ね」
 絵里が賛同する。というのも、彼女自身合宿の必要性を感じていたのだ。マキ、海未、ことりの三人がスランプに陥ったのである。
「スランプの解消には環境を変えることが一番よ」
「ていうか単にお泊りしたかっただけとちゃうの」
「それもあるわね」 
「しかし、ふむ、合宿か」
 サウザーの提案にこれといって反対意見も無いシュウであったが、現実的な問題とおうものがあった。
「14人での合宿となればそれなりの施設が必要ではないか?」
「その辺はマキちゃん、どうにかならない?」
 穂乃果がマキに窺う。こういう局面においてお金持ちの子供は非常に便利に扱われるのが古き時代からの習わしなのだ。しかし、いくらお金持ちでも限度というものはある。
「流石に14人は厳しいわよ。まして内5人は大柄な男の人だし」
「というより女子高生9人と成人男性5人の合宿ってどうなんだ?」
 レイがこれまた現実的な指摘をするが、一同にスルーされた。触れてはならないことというのはいつの時代も存在するものなのだ。
 様々な問題が噴出したものの、サウザーはどこ吹く風である。どうやら、プランは彼の中で決まっているらしい。
「ところで、最近『帝都』とかいう勢力がブイブイ言わせているらしいではないか」
「ああ、なんか拳王軍と揉めてるらしいわね」
「ニコちゃん詳しいね?」
「穂乃果、アンタそんなじゃ世紀末の荒野で生き残っていけないわよどうするの」
「どうするの言われましても」
「その帝都なのだが、どうやら『天帝』とか名乗る不届き者が支配しているらしい」
 元斗皇拳が守護せし天帝の座する都、『帝都』……非世紀末民である穂乃果たちにとって帝都とは東京を指す言葉であるが、世紀末の民にとっては意味が大いに異なる。
「天に輝く天帝はこのおれの将星を持って他にないわけだ」
「この流れ、サウザーまた碌でもないこと考えてますね?」
「碌でもないこと……? フハハ。至上の名案の間違いであるわ」
 サウザーはそう言うと諸手を広げて高らかに言った。
「帝都襲撃合宿しませんかっていう誘い!」
「よしみんな帰るぞ!」
「サウザーちゃんに付き合ってたら命いくつあっても足りないよ!」
 一同は一斉に席を立って部屋を後にしようとした。だがサウザーは一同の前を高笑いと共に反復横飛びをしながらがっつり塞ぐ。
「フハハハハ!」
「まずい帰す気が無いらしいぞ!」
「フフフ……まぁ待て。まず話を聞いてみてはどうだ? ブル!」
 サウザーはブルを呼んで帝都についての説明をさせた。
 曰く、『帝都』は無辜の民をさらって強制労働させているとか、実は天帝は幽閉されていて総督が権力をほしいままにしているとか、元斗皇拳の拳士たちは天帝を人質に取られているから総督に逆らえないでいるとか……様々な噂があるらしい。
「正義面のシュウ様とかレイとか、くすぐられないか正義感とやらが?」
「むぅ」
「小泉お前もどうだ? 南斗六聖拳と元斗皇拳の対戦が拝めるぞ?」
「あぁ~、そっかぁ~」
「かよちんを引き込まないの!」
「でも、悪い話ではないわね」
 サウザーの提案に最初に賛同の意を見せたのはなんと絵里であった。まさかの人物に一同驚きの声を上げる。
「絵里、気は確かですか!?」
「まぁ聞きなさい。知っての通り、今回のラブライブ大会は予選式になって前大会より優勝への門戸が広がったわ。でも、私達の地区にはあのA‐RISEがいる」
 A‐RISE……現状ランキング一位のスクールアイドルアイドルである。
 今回の大会ではランキングの順位は選考に影響しないとされる。つまり、パフォーマンスの出来次第では下剋上が可能なのだ。だが、しかし。
「パフォーマンスを評価するのは他ならぬお客さん。やはり、ランキング上位のグループの方が名が知れてるし、評も入りやすいわ」
「まぁ、そればかりは仕方ないわね」
 ニコが絵里に同意する。格段に勝負しやすくなったとはいえ、そういったものはどうしても発生するのだ。
「だから、合宿も兼ねた帝都進撃ライブを行うことで、予選前に知名度をさらに上げておくのも悪くないと思うの」
 スランプ解消のための合宿にもなるし、μ's及び5MENの知名度向上にもつながる上、帝都の圧政に苦しむ人々を解放することもできる。絵里曰く、帝都進撃ライブには一石三鳥以上の効果が望めるらしい。
 この絵里の賢いんだか賢くないんだか分からない意見に揺れ動くμ's。南斗六聖拳に先んじて帝都進攻を可決しそうな勢いだ。
「μ'sの面々は帝都行きに賛成のようだがロン毛男子の皆様は? まさか女子供だけに行かせる気ではあるまい?」
 こう言われてはシュウやレイは帝都行きに賛同せざるを得ない。
 だが、六聖拳の悪党の内二人……ユダとシンは未だ反対の様子であった。
「ふん。得体の知れぬ相手に突撃を仕掛けるのは愚の極みだ」
「第一、おれは貴様らが死のうが別にどうということは無いのだ」
「そう言うがな……おい、ユダよ」
 ユダが身構える。こういう意味あり気に声を掛けてくる時は要注意なのだ。
「とある村の長老が南斗の拳士を彫っていたのだがな」
 究極版にして11巻のワンシーンである。
「その時、ユダの彫像だけ作りかけだったのだが……それを完成する前に破壊した奴、どうやら元斗の拳士らしいぞ?」
「帝都はやはり潰さねばならん!」
 不人気コンプレックスに火をつけられたユダは勇ましく立ち上がった。天帝の血で化粧がしたい!
 シンも何だかんだ誰とは言わないが思い人を引き合いに出されて帝都進撃ライブに賛同せざるを得なくなった。 
 かくして、μ's&5MENによる帝都進撃合宿兼ライブの敢行が決定された。





 荒野に聳える眩い建造物。
 『中央帝都』は天帝軍の本拠地であり、天帝の権威を世に知らしめるがごとき威容を誇っている。
 だが、その実態は天帝の威を借る総督ジャコウが作らせた城であり、まばゆいばかりの光は天帝のためではなく闇を恐れるジャコウの為だけに放たれている。
「ソリア将軍、偵察部隊の報告によると、中央帝都に至る郡都が信じられない速さで陥落しつつあるとのことです!」
 帝都の将軍である『紫光のソリア』は配下の兵からもたらされた報告に驚かされた。
「拳王軍の攻撃か?」
「いえ、詳しくは目下調査中であります!」
「そうか。こうなれば、おれも出陣する!」
 ソリアはそう言うとマントを羽織って部下に出陣の準備を始めるように言った。
 中央帝都に進撃してくる輩が何者かは知れぬが、天帝には向かうものには死あるのみである。例え、それが真の天帝の意でなくとも……。
 彼は側近の部下と共にとある部屋へ向かった。
 とある部屋……それは、中央帝都の電気を賄う発電施設である。 
 この発電施設では連れ去られてきた数多の奴隷たちが死ぬまで天帝のため……天帝の威を借る総督ジャコウのため、発電機を回し続けている。
 ジャコウがごとき俗物の専横を許したばかりに、このような事態を招いてしまった自らの不甲斐なさがもどかしかった。
「ファルコ将軍とショウキ将軍にも報告しておけ」
「は!」
 部下にそう命じると、ソリアは壁際に立って我が物顔で奴隷たちに鞭打つジャコウの部下たちを忌々し気に見つめた。
 そんな時である。
 カモ カテ ペテ― 
「む?」
 発電機の回る音に混じって何やら音楽らしきものが聞こえてきた。
 デンゴゴ デンゴゴ デデデデ― 
 デンゴゴ デンゴゴ デデデデ― 
「なんだこの音楽は」
「は……自分にはさっぱり」
 チャ チャ チャ 
 チャ チャ チャ 
「というより近づいてきているような」
 次の瞬間である。
 丁度ソリアの立っていた背後の壁が突如として崩壊し、無駄に豪奢なバイクが壁を破りながら発電施設へ侵入してきた。
「ぬふっ!」
 あまりにもの不意打ちであったためソリアは崩れた壁に押しつぶされた。
「フハハハハ!」
 そのバイクに据えられた玉座に座るのは聖帝サウザーその人である。玉座の周りには5MENのメンバーがそれぞれ適当に腰かけていて、後続のバギーにはμ'sのメンバーが乗車していた。
「うわ、ひどい」
「ちゅん!? ホントに奴隷労働させてる」
「これは許されませんねぇ」
 発電所内で行われていた所業に穂乃果やことり、海未といったμ'sメンバーは眉をひそめた。
「フハハハハ! 引き裂いた闇が吠えて帝都も震えておるわ」
「ぬぅ、貴様は南斗の……!」
 瓦礫を押しのけて立ち上がったソリア。しかし、ちょうどそこをレイとシュウによって拘束されてしまった。
「元斗皇拳恐れるに足らず!」
「なんだと~!?」
「貴様らここが天帝のおわす中央帝都と知っての狼藉かぁ~!?」
 奴隷たちを鞭打っていた兵士たちがぞろぞろと武器を携えて集まってきた。その矛先はソリアを(半分事故のようなものではあるが)倒した5MENではなく、ごく普通の女子高生であるμ'sのほうへ向けられているようだ。
「女のガキどもの分際でぇ~」
「すごいやられ役っぽいセリフだにゃー」
「この有象無象の雑魚から溢れ出る小物感、たまりません!」
「言わせておけばぁ―!」
 女子高生にここまで言われて怒らない者は無いだろう。兵士たちは一斉にμ'sに襲いかかった。
 だが、彼女たちは高校生は高校生でもスクールアイドルなのである。有象無象の雑魚にやられることは無いのだ。
「女相手に男多勢とかイミワカンナイ!」
「ウチの可愛い後輩に手ェ出してんじゃないわよ!」
 案の定というか、マキとニコによって返り討ちとなった。
「μ'sには北斗神拳の使い手までいたのか」
 その様を見てレイが驚く。レイの言葉に違和感を覚えた海未は、
「北斗神拳の使い手までって、ニコの事はご存知だったのですか?」
「ああ、矢澤家は南斗水鳥拳において代々素晴らしい拳士を輩出している名家なのだ」
「なんですかその驚きの設定は!?」
「うむ、というかニコとは何度か会ってるからな」
 そうこうしている内に、兵士たちは突如襲撃してきたわけわかんない連中がただ物ではないことをようやく悟り、
「じ、ジャコウ総督に報告しなくては!」
と逃げるように去っていった。発電機を回されたいた奴隷たちは口々にあなた方は救世主だと礼を述べている。
「フフ、帝都進撃ライブはひとまず大成功というわけだ」
「進撃というかもう奇襲だねこれ」
 穂乃果がしみじみと言う。言ってから、
「それにしても、お腹空いたね」
「もう時間もお昼だもんね」
「どうでしょう、ひとまず外に出てお昼にしませんか?」 


「襲撃を受けただとぉ!?」
 所変わって、玉座の間。ここでは総督のジャコウが配下の兵から中央帝都が襲撃を受けたという報告を受けていた。発電設備が襲われて照明が点いていない今、ジャコウは懐中電灯のあかりにすがるような姿勢を取っていた。
「一体何者だ! その不届き者は!?」
「は! どうやら、南斗六聖拳と、スクールアイドルのμ'sが襲撃犯の模様です!」
「スクール……スクールアイドル!? 何故!?」
「さ、さぁ……」
「ぬぅぅ……と、とにかく、スクールアイドルでも何でも構わぬ! ファルコを呼べ!」
 金色のファルコ……天帝軍の若き猛将軍であり、元斗皇拳伝承者の拳士である。天帝へ絶対の忠誠を誓い、それ故に、ジャコウの専横に逆らえないでいる人物でもある。
「金色のファルコ、お呼びにより参上しました……」
「ファルコ! 今すぐ出陣して、中央帝都を襲撃せし南斗とスクールアイドルを滅殺するのだ!」
「……スクールアイドル?」
「そうだ! これは天帝の勅命なるぞ! 天帝に背きし者共は尽く滅ぼすのだ!」
 ジャコウの命令は天帝の命令。
 ともなれば、ファルコに逆らうという選択は無い。
「行けい、ファルコ!」
「……は……」
 ファルコは踵を返し、出口へ向かって歩いていく。
「光を! もっと光を~!」
 ジャコウは懐中電灯を振り回しながら高々に叫んだ。



 μ'sと5MENはその頃中央帝都の外れでランチタイムであった。
「おにぎりですよ~! 具は、左からおかかに昆布、梅干しです! 絵里ちゃん用に海苔無しもあるよ」
「こっちはニコ特製のラブにこ弁当にこ☆」
 花陽が拵えてきた山のようなおにぎりに、ニコの作ってきた卵焼きなどのおかず。どれも美味しそうであった。
「ラーメンもいいけど、凛はかよちんのおにぎりも大好きだよ」
「カレーが食べたいぞ」
「カレーは夜ごはん!」
 食べ盛りの高校生九人に大男五人ともなれば食べる量は多くなるものだ。そして、大量に作った物というのは不思議と美味しくなるものだ。
「む、この卵焼きは美味いな」
「あれ、シンさんもお料理するにこ?」
「むっ!? まぁ……少しだが……」
 シンの脳裏に甘くて少し苦い青春時代がフラッシュバックする。朝早くからお弁当をあの人のためにこさえたのに、素直に渡せなかったほろ苦いあの思い出……。
 …………ケン…………!
「えっ、なんで急に泣くの……?」
「くぅ、それにしてもこのおれの彫像を破壊したとか言う輩には会えなかったのが残念だ」
「まぁそう言うなユダよ。TVアニメ版ではあのソリアという者が壊したらしいから、それで十分であろう?」
「ええいやめろレイ、リボルテックが4種ある貴様に慰められると殺意が沸く!」
「まぁまぁユダさん。私たちだってリボルテック化されてないし?」
「ぬぅっ、高坂穂乃果、貴様らはfigma化されているではないか! くそっ、おれもねんどろいど化したい!」
 5MENだけでなく、μ'sをも含めて立体化に恵まれないユダ魂の慟哭である。 
 そんな和気あいあいとした昼食会場であったが、その最中、絵里が遠方より迫る人影の存在に気付いた。
「誰か来るわね」
「む?」
 ガチャリ、ガチャリと変わった足音を立てながら、その人影は大柄な男性で、みるみるこちらに近づいてきた。状況からして、少なくともピクニックの仲間に入れてほしい人でないことだけは確かだ。
「ほう、ご飯時に来るとは無粋な下郎もいたものだな?」
 おかかおむすびをモグモグしながらサウザーはスクと立ち上がった。
「貴様たちのリーダーは誰だ」
 男はそう問いかける。
「世紀末清純派アイドル『南斗DE5MEN』のリーダー、ということならこのおれ、聖帝サウザーだが?」
「はい! μ'sのリーダーやらせてもらってる高坂穂乃果ですっ!」
「そうか……」
 二人は元気よく名乗り出た。
 すると、男は両腕を掲げ、なんと黄金に光輝かせた。
「南斗DE5MENのサウザー、μ'sの高坂穂乃果。天帝の命により滅殺する!」

つづく