サウザー!~School Idol Project~   作:乾操

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今回は短め。
あと、一部同様、本作はいわゆる原作沿いで進行いたします。


第2話 聖帝 屋根より来る!

+前回のラブライブ!+

 第二回ラブライブの開催が決定されたことにより、世のスクールアイドルたちは「もう一度ラブライブ!」を合言葉に再び天を目指して活動を始め、聖帝サウザーも慈母星を除く南斗六聖拳を招集し世紀末清純派アイドルユニット『南斗DE5MEN』を結成、スクールアイドル戦国時代へ名乗りを上げた。

 あとどうでも良い話だが、天帝を頂く『帝都』と呼ばれる軍事勢力が急激に力を増大させ、当代最大と謳われる巨大軍閥である拳王軍に迫るほどまでになっていた。

 世界は、戦乱の時を迎えようとしていた。

 

 

 第二回ラブライブ開催決定!

 このニュースはμ'sを大いに沸かせた。

 まさかこんなに早く開催されるなんて、前大会の無念を晴らしてやろうじゃないのと内心息巻いた。

 しかし、一同の中で一番その思いが強いと思われた穂乃果が言った一言はメンバーを驚愕させた。

「いいんじゃない? 出なくて」

 あまりにもあっけらかんとした調子で言うものだから、反応に困った。

「……え? なんて?」

「だから、出なくていいんじゃない? ラブライブ」

 

 

「ラブライブか、ふふ、面白い」

 同じころ、そんな穂乃果とは対象にサウザーは5MENのメンバーに自らの居城でそう告げていた。

「スクールアイドル界に覇を唱えるにはもってこいの祭典だ」

「なんだ? まさか参加するのか?」

 シンが問いかける。サウザーの答えは「無論」であった。

「スクールアイドルとして名乗りを上げたからには出ないわけにはいくまい?」

「むぅ、しかし、今は帝都とかいう勢力の拡大で南斗聖拳も戦乱を迎えつつある」

「アイドル活動よりすべきことがあるのではないか?」

 シュウとレイの言う通りであった。

 現在、帝都は拳王軍をも凌駕せんと力を増しつつある。その争いに南斗の勢力が巻き込まれるのは必至だ。そのような状況で、呑気に歌い踊りをしていてよいものだろうか?

「フフ、二人はアイドルを馬鹿にしているようだが?」

「いや、別に馬鹿にしているのではない。ただ、やるべき事の順序があるであろう」

 レイは実際アイドルを馬鹿にしてはいない。アイリからスクールアイドルについて教えられているからなおさらだ。むしろ、アイドルの大変さを知っているからこその発言でもある。

「南斗六星の使命を忘れるべきではない」

「ラブライブ優勝以外に何があるというのだ?」

「さっそく忘れているじゃないか!」

 南斗六聖拳の目的は南斗聖拳各流派の伝承、守護である。帝都の元斗皇拳は南斗、北斗を滅殺しようとしているらしい。戦いとなれば、六聖拳がその最前線に立つこととなる。

 しかし、ユダとシンはシュウとレイに反論する。

「フン、そのようなもの、我が紅鶴拳にかかれば敵ではない」

「それ以前に、こうやって5MENとでしか集まれない現状、議論しても無駄ではないか?」

 ユダの言はさておき、シンの意見はかなり痛いところであった。

 現状、この五名は『南斗DE5MEN』とでしか集まることは無く、それ以外はレイはフラフラしていてシュウに至っては反聖帝レジスタンスの頭目である。帝都の脅威の前に団結しようといってみてもイマイチ説得力に欠けるのだ。

「そういう事だから、ラブライブ出場するしかないのだシュウ様?」

「ぬう、まったく納得できないが反論もできん」

「だいいち、別にラブライブ出場を目指しているのは我々5MENだけではない。ブル!」

「はっ」

 サウザーに言われてブルが一同の前に運んできたのは一台のノートパソコンであった。画面にはラブライブのサイトが映っていて、様々なスクールアイドルが紹介されていた。

「見ろ。『南斗五車星』、『Z(ジード)』、『見上げてGOLAN』等など……世紀末に覇を唱えんとする者どもが、スクールアイドルとして名乗りを上げておるわ!」

「なんか色々突っ込みたいのだが……」

「言うだけ無駄だぞレイよ。それにしても、スクールアイドルがこれほどまでとは思わなかった」

「フハハハハ。時代に乗れぬとは哀しいことだなシュウ様」

 サウザーは勝利を確信したように高笑う。だが、シンがページを送りながら何かに気付いた。

「おいサウザー、ラブライブ出場規定だが」

「む? 安心しろ。聖帝校は学校法人として登録済みだ」

「そうではない! これを見ろ!」

 シンが示す場所を全員で覗きこむ。

 そこにはラブライブ出場に関する諸規定が記載されており、前大会の反省を踏まえたものも多くあった。

 その中に、気になるものが一つ。

 

 

・ラブライブ予選および本選において唱歌する曲は既存の物ではなく、オリジナルの物に限る

 

『曲は既存の物ではなく、オリジナルの物に限る』

 

『オリジナルの物に限る』

 

 

「なに!?」

 サウザーは思わずオデコのほくろから血を噴きだした。

「ぬっく……! オリジナル楽曲だと……!?」

「なんだ、作っていなかったのか?」

 盲点であった。μ's´時代、彼は作詞作曲の現場に立ち会うことは無く(強いて言えばメイド喫茶で萌え萌えキュンしたくらい)、『活動するには歌が必要で歌は曲と歌詞から成り立つ』という根本を見落としていたのだ。

「ぬぅぅ……おいユダ! 作詞とか作曲とかできるのではないのか?」

「なっ、できるはずなかろう!?」

「なんだ貴様、如何にもビジュアル系な見た目の癖に役に立たないな!」

「なんだと!?」

 ガタッと立ち上がるユダだが、サウザーは気にすることなく続けた。

「貴様ら持ってないのか? 『キャラソン』とやらを」

「持ってないな。それに、仮に持っていたとしても使えないだろう。別に俺達が作るわけではないのだから」

 レイが答える。その答えに対しサウザーはつまらなそうに、

「なんだ貴様ら存外に使えんな。ロン毛の癖にクリエイト(りょく)の無い者どもめ」

「ロン毛関係ないだろう」

 シンは指摘するが、サウザーはすでに別の思考に移っていた。

 サウザー率いる聖帝軍を初め、ユダ軍、KING軍、レジスタンスすべてに作曲家の類はいない。ならば、どうするか……。

 熟考の末、サウザーは一つ名案を思い浮かべた。

 

 

 一方、μ'sの方はなんやかんやで穂乃果の説得に成功し、ラブライブ出場することとなった。

 雨降り注ぐ神田明神の境内。μ'sメンバーは境内の門の下で雨宿りをしていた。

「いいんですか? こんなに割愛して」

「いいんだよ。詳しい事情はDVD買うか録画したの見直そう」

 面白いし、たぶん買って損はないです。

 そんなことより、ラブライブ出場である。諸事情で消極的になっていた穂乃果も、胸の底から沸き上がるやる気を押さえることは出来なかった。

「やろう! ラブライブ、出よう!」

「その意気よ穂乃果!」

 一番出たがっていたニコが嬉しそうに言う。

「よーし!」

 すると、穂乃果は何を思ったのか、雨の中へ飛びだした。そして、大声で、

「雨、止めーッ!」

 それは、あまりにもバカバカしい奇行であった。

 しかし、天はまるで彼女の声に答えるように雨を止ませ、雨雲を晴らし、煌めく太陽を出現させた!

「穂乃果ちゃんすごい……!」

「穂乃果、ラブライブに出て何を目指すのですか?」

 海未は問うた。雨を止ませるほどのやる気。それは、単に『みんなで思い出を作ろう』に留まらぬことを感じ取ったのだ。

 彼女の問いに答えるよう、穂乃果はブアッと右腕を振り上げ、真上を指さした。

「天……!」

「優勝ですか!?」

「大きく出たにゃ!」

 騒めく一同。しかし穂乃果は大まじめだ。

「人間その気になれば何だってできる! だから掴もう、スクールアイドルの天を!」

 理屈抜きの有無を言わせぬ説得力。それにμ'sは圧倒された。そして、同時に一同の心に前回以上に『優勝』のに文字が深く刻み込まれた。

 そうだ、やってやろう! 優勝してやろう! できたらいいなとかじゃ無くて、してやろう! 

 そうなれば、俄然やる気が出てくるのが若者である。

「よーし、いくぞー!」

「おー!」

 穂乃果の掛け声に、メンバーは大きな声で答えた。

 と、その時。

「フハハハハ!」

 聞き覚えのある笑い声がどこからともなく響いてきた。

「む!?」

「このバリトンなギャラクシーヴォイスは……!」  

 辺りを見回す。すると、希が「あっ!」と声を上げながら神社の社の屋根を指さした。

 人差し指の先、そこにいたのは、タンクトップ姿の偉丈夫五人! そして、その中心に構える男は、見まごうはずもない、かつてのμ's´のリーダーにして将星を司りし南斗の拳士!

「サウザーちゃん!」

「フハハハハ! お久しぶりです、サウザーです!」

 屋根の上で全力でダブルピースを決める姿には時間の流れは微塵も感じられない。言っても一カ月程度しか経っていないが。 

「高坂穂乃果よ、貴様らμ'sもラブライブに覇を唱えんとしているらしいな?」

「うん」

「フハハ。面白い。トァッ!」

 サウザーは掛け声と共に屋根から跳び上がると穂乃果たちの前に降り立った。他のメンバーもそれに続く。

「我ら『南斗DE5MEN』もラブライブ出場を目指している」

 フハハハハ、と彼は笑う。

 南斗DE5MEN。雑誌で見ただけであったが、実際に対面すると強そうである。ラブライブにはあまり関係ない要素だが。

「貴様らμ'sを我が5MENの配下に加えてやらんこともないぞ?」

「いや、別にいいよ」

「フフフ……遠慮するな」

 いきなりやってきて早々に配下になれとはずいぶんな挨拶である。しかし、μ'sの頭脳担当を自負するKKEこと絵里はそんな彼が何か(碌でもないことを)言わんとしていると察した。

「うだうだと賢くないわよ。用件は何?」

「フハハハハ」

「サウザーがこんな調子なので私が説明しよう」

 そう言って前に出てきたのはシュウであった。

 用件はこうだ。

 ラブライブの規定として、歌う曲は全てオリジナルでないといけない、というものがある。しかし、当然のことながら結成から日が浅い5MENにオリジナル楽曲なぞある筈も無く、また、作る技術も無い。

 そこでサウザーはかつて自身がリーダーを務めていたグループ……現μ'sのメンバーに作詞、作曲をやってもらおうと考えた。

「えっとサウザーちゃん」

 シュウから話を聞かされて、穂乃果はサウザーに言う。

「μ'sもラブライブの優勝を目指すって知ってるよね?」

「当然であろうが。さっき聞いたからな?」

「うん、じゃぁサウザーちゃんたちの目標は?」

「ラブライブ優勝!」

「うんうん。目標は同じ優勝。てことは?」

「同じ目標を持つ者同士手を組むべき?」

「バカなのかな?」

 しかし、サウザーは本気の様子だ。

「そういうことだから、ここは一つ同盟を組もうではないか」

「ど、同盟?」

「それが対戦相手でも時に手を貸すというのがスクールアイドルのあるべき姿であろう?」

 互いに競い合い、助け合う。それこそが、スクールアイドルの強敵(とも)としてのあり方だ。だから、規定にもグループ間での連帯は禁止されていない。サウザーはそう言うのだ。

 なんか美談っぽく聞こえる。穂乃果の心も思わず動く。だが、後方から、

「冷静になってください!」

「どう考えてもスポーツマンシップ的にはならないわ!」

「ダマサレナイデ!」

などと穂乃果を説得する声が投げかけられる。

 だが、穂乃果の心はもう決まっていた。

「……じゃぁ、一時的だけど、連合成立ってことで」

「フハハハハ!」

「!?」

 リーダーの決断にメンバーは驚愕の声を上げる。

「穂乃果、アンタ馬鹿じゃないの!?」

 ニコが悲鳴を上げた。だが、やはり穂乃果は平気な風で、

「うん、なんか、サウザーちゃんの言ってることももっともだし?」

「穂乃果ァー!」

「いやいや待って!」

 ニコに切り刻まれそうになりながら穂乃果は慌てて説明する。

「確かに優勝はしたいし、するつもりで頑張る所存だし、その辺は別に5MENに遠慮するつもりはないよ!? でも……でも、やっぱり、せっかくまた目指すなら、前回みたいに、賑やかに目指したいから……」

 前大会は残念な結果に終わったが、何だかんだ言って賑やかで楽しかった。そして、また目指すなら、もっと賑やかな方が良い。優勝だけを見るのは、あまりにも寂しい。

「穂乃果……」

「だから、今回は、サウザーちゃんたちも一緒に、ね?」

「フフフ……」

「……まぁ、穂乃果の言うことにも一理あるわね」

「ちょっと強引じゃないかにゃー?」

「いいんじゃないかな?穂乃果ちゃんらしいし」

 ニコに続いて、凛と花陽も賛成する。他の面々も、次々賛成してくれた。

「エリチ、いいの?」

「いいも何もリーダーの決定だから仕方ないわね」

 サウザーが嫌いだという絵里も諦めたように苦笑する。

「よーし! それじゃあ改めて、がんばるぞー!」

 穂乃果の掛け声に、一同先ほどに増して大きな声で「おー!」と声を上げる。

 かくして、μ's5MEN連合が成立したのであった。

 

 

 

 

 

「それにしても、あのサウザーとまともにやり合えるとは」

 シュウが感心したように言う。レイも、

「うむ、末恐ろしい女子高生だ」 

 改めてスクールアイドルの色んな意味での過酷さに思いを馳せる二人であった。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

   

 

 




次回から帝都編

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