深遠なる迷宮   作:風鈴@夢幻の残響

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Phase70:「蛇竜」

 蛇竜・クルルカントの咆哮が木霊する。

 それを耳にした瞬間、胸の奥──心臓を鷲掴みにされるような感覚に襲われた。

 鼓動が早まり、背中に冷や汗が流れ、息が荒くなる。

 ──恐怖。

 それも、幽霊だとかホラーだとか、精神的に迫ってくるようなものではない、もっと根源的な……生物の本能に働きかけてくるような、恐怖。

 そう、例えるなら、小動物が絶対の捕食者に出遭ってしまったかのような。

 思わず地面に着きそうになる膝を堪え、四肢に力を篭める。

 大丈夫だ。

 そう自分に言い聞かせ、きつく目を閉じ、心を落ち着かせるために、大きく息を吸い、細く長く、息を吐く。

 

「ハヅキ、大丈夫ですか?」

 

 それを幾度か繰り返したところで、優しげな声が耳朶を叩いた。

 掛けられた声に顔を上げると、気遣わしげに俺を見るアルトリアの姿。

 それに「大丈夫、ありがとう」と頷き。もう一度だけ深呼吸をして、改めて周囲を見回す。

 膝を着き、荒い息を吐きながら、冷や汗を流している稲葉さんと玉置。

 完全に腰が抜けたか、地面にへたり込んでしまっている稲葉妹と佐々木少年。

 先ほど助けた二人は……どうやら失神しているようだ。

 逆に何も問題が無さそうなのは、アルトリアは勿論として、瑞希だった。

 

「敵味方お構いなしとは……凄まじい咆哮の能力ですね」

 

 周囲の惨状を見回し、苦々しげに言うアルトリア。彼女の言う通り、クルルカントの咆哮に影響を受けたのは俺達のみならず、この場にひしめいていたオーク達もであり……その殆どが失神するか、蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、俺達へ向かってくるような奴は既に一匹たりともいない状況だった。

 

「それにしても、咆哮一発でこれか……」

「多分、魔力的な何か」

 

 参ったねと、漏らした俺に、瑞希が答える。

 ……なるほど。確かに先に戦ったズィーレビアの鳴き声にも、こちらの動きを鈍らせるような効果があった。ドラゴンであれば、もっと強力な効果を持たせた咆哮があってもおかしくないか。

 そんなことを思った矢先、稲葉さんが少し膝を震わせながらもその場に立ち上がるのが見えた。

 

「……なるほど、ね。確かに竜の咆哮に恐怖(テラー)の効果があるのはお約束、か」

 

 苦笑いを浮かべながらそんなことを言う稲葉さん。

 「大丈夫ですか?」と声を掛ければ、「何とかね」と多少弱々しくも返してくる。

 それならばと、俺は「提案なんだけど」と切り出した。

 ……実際のところ動いてもらわなければ死ぬだけなので、大丈夫じゃなくても提案はするんだけど。

 

「一度森の中に退こう。アルトリアと稲葉さん、瑞希、玉置で、残りの4人を連れて行って」

「ハヅキはどうするのですか?」

「俺は、あっちを」

 

 アルトリアの問いに、未だクルルカントのすぐ近くの空中で、恐らく恐怖によってだろう、固まる3人へ視線を向けて答えると、アルトリアの表情が曇る。

 危険だと言いたいのだろう……それは解っている。けど、空中っていうことを考えると、俺が一番適任……っていうか、現状じゃ俺しか選択肢が無いのだ。

 

「無理はしないし、駄目だと判断したら……冷たいようだけど、すぐに逃げるよ」

 

 そう言った俺に対して、アルトリアは黙考した後、仕方ないと言うように小さくため息を吐き「解りました」と頷いて。

 

「ただし……本当に無理はしないように」

 

 腰に手を当て、言い含めるように念を押してきた彼女へ「了解」と同意を返し──稲葉さん達の返事を聞いてなかったと思って視線を巡らすと、目が合った瑞希が「こっちは任せて」とコクリと頷いた。

 あの咆哮を受けた後も冷静っぽいし、こちらはアルトリアと瑞希が居れば大丈夫だろう。

 「よろしく」と返してから空中へ浮かび上がり──そのタイミングで、クルルカントがグレイ達へ向けて、ゆらりとその身をくゆらせたのが見えた。

 

 

◇◆◇

 

 

 それは、信じられない光景だった。

 ──首を跳ね飛ばした敵が、復活する。

 

 それは、信じたくない光景だった。

 ──掛け替えの無い仲間が、刺し貫かれる。

 

 これまで順調に歩を進めてきたグレイ達にとって、正に悪夢としか言いようの無い光景を突きつけられた直後、ソレ(・・)は彼等の前に現れた。

 爆裂したように弾けた地面。

 吹き飛ばされ、空中に放り出された彼等のうち、唯一空を飛ぶ能力をもつ陽菜(ハルナ)が咄嗟にその能力を展開し、自身の直ぐ傍にいた(ケイ)を抱き留めてから首にしがみ付かせ、次いで伸ばされたグレイの右手を両手でキャッチする。

 結果として、陽菜と彼女にしがみ付く恵、そして陽菜にぶら下がるような形で掴まるグレイという状態になった3人の眼前に、現れたソレ。

 とぐろを巻く、蛇のような長大な体躯。身体の中ほどに生える、蝙蝠のような翼。蛇に蜥蜴を混ぜたような顔。

 ソレはゆらりと体を伸ばし──天に向かって強く吼えた。

 

「──ルルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 極至近距離においてそれを聞いた瞬間、彼等の心を『恐怖』が覆う。

 歯の根は合わず、身体は震える。

 余りに強いその感情に、彼等は動くことすら適わなかった。……否、動こう、逃げようと言う思いすら浮かばなかった。

 蛇に睨まれた蛙とは、正にこのことであろうか。

 陽菜が無意識ながらも浮遊を続けていなければ、大地に墜落して受身も取れず、大怪我を負っていたであろうと思うほどに、まるで石になったかのように、その場に固まるグレイ達。

 だが、その硬直は、それを齎した存在によって破られる。

 彼等の眼前に君臨する大蛇は、ぬるりとその身体をくねらせて、ゆらりと彼等に向かい、宙を泳ぎ出した。

 大蛇はバサリと一度大きく翼をはためかせ──恐怖に呑まれていた本能が、警告を発した、その瞬間、大蛇の身体が一気に加速した。

 

「よ、避けろお!!」

「きゃああ!!」

「……あっ!!」

 

 迫り来る脅威。心を支配する恐怖。襲い来る死のプレッシャーに、グレイが思わず声を荒げ、陽菜が悲鳴を上げつつも回避行動を取り、その拍子に──陽菜にしがみ付いていた恵の手が離れてしまう。

 落ちていく恵。だが、大蛇の突進を回避するのに精一杯であった陽菜に、それを何とかする余裕は無かった。

 身の軽い恵なら大丈夫だと、そう信じた直後──陽菜の直ぐ下を大蛇の身体が轟風を上げて通り過ぎる。

 ぐんっと、それに煽られるように軽くなった身体は、弾かれたように上昇し──

 

「グ、グレイさん、大丈夫で……す……え?」

 

 グレイの様子を気遣って下を見た陽菜の視界に移るのは、先ほど吹き飛んだ遺跡の瓦礫が点在する、地面。

 そして、自分の両手が握り締める、裾から金色の粒子が立ち上る、右手のガントレットだけ(・・)

 

「なん……どう、して? …………ぁ」

 

 確かにグレイは、自分が掴まえていたはずだった。

 ぶら下げるように(・・・・・・・・)

 猛烈な勢いで、自分の直ぐ下(・・・・・・)を大蛇が通り過ぎて。

 あの時、不意に軽くなった身体。

 まるで、重石がなくなったように。

 自分の手の中に残された、金の粒子(・・・・)が立ち上る、ガントレット。

 ──事態を呑み込めていなかった頭が、原因と結果を整理する。

 このガントレットは、グレイのもので。

 この粒子は──グレイ、自身で。

 

「い、いやああああああ!!!」

 

 咄嗟に──思わず振り払ったガントレットが宙を舞い、金の粒子を撒き散らしながら、地面に落ちて、乾いた音を立てた。

 

「ぁ……ぅぁ……朱莉さん……グレイ、さん……」

 

 呆然と、続けて失った仲間の名が、口から漏れて──信じられなかった。

 二人の顔が、頭に浮かんで──信じたくなかった。

 それでも、世界は非情に、過酷な現実を突きつける。

 ゆらりと──次こそはお前だと言うように空を泳ぎ、陽菜に向かってくる大蛇。

 その大きく開けた口の端から、今の今まで誰か(・・)が存在していたかのように、金の粒子の残滓が零れて、流れる。

 その光景を──自らに迫る顎を呆然と見やる陽菜の心が、絶望にも似た諦観の想いに塗り潰されようとして──その視界の端に、自らに向かってくる、別の存在が映った。

 その時、大蛇の即頭部に何か(・・)が当たり、小さな爆発を起こした。

 それによって、僅かに遅くなる大蛇の速度。

 そのことに陽菜の意識が取られた、次の瞬間。ドンッと彼女の身体に何かがぶつかり、次いで視界が猛烈な勢いで後ろに流れだす。

 

「……え……え?」

 

 半ば呆然としていた意識が急速に覚醒し──考えるまでも無いことだった。ここに来た者たちの中で、自分以外に空を飛べるのは、一人しか居ないのだから。

 

「な、長月……さん?」

 

 そして陽菜は、自分の命が葉月によって救われたことを理解した。

 

 

◇◆◇

 

 

 空中に留まるグレイたちに、クルルカントが迫るのを見た瞬間飛翔したのだけれど、ケイは地面に堕ちて──どうやら何とか受身を取ったようで、命に別状は無いようだった──、グレイはクルルカントに喰われてしまった。

 アカリの姿はそもそも無く、ハルナは無事のようだけど、ショックで呆然としているようで──せめて彼女だけはと速度を上げるも、再度クルルカントが突進しようとしているのが見え、タイミング的にはギリギリな感じで。

 咄嗟にフォトンランサーをぶち当てて動きを僅かに鈍らせて、何とかクルルカントよりも先にハルナのところへたどり着く。

 流石に跳ね飛ばすわけにも行かないので、加減が難しかったけれど、正面からぶつかるようにハルナを抱えて再加速し、クルルカントから逃げ出して。

 そこでハルナが我に返ったようで、弱々しくも声を掛けられた。

 けれど俺も余裕がある訳でもなし。「もうちょっとだけ頑張ってくれ!」と声を張り上げ、コクコクとハルナが頷くのを横目に見つつ加速する。

 この広場はそこまで広大なものではなかったために俺達とその後ろを追ってくるクルルカントは、直ぐに広場の端──森との境の上空へ到達する。

 位置的には、アルトリア達が向かった方とは逆方向。ここまで引き付ければ、稲葉さん達も逃げ込めるだろう。

 俺は上体を起こすと共に魔力による保護を緩めると、強まる空気抵抗を利用して一気に減速。次いで後方上へと再加速すると、そのまま反対側の広場の端へと向かう。

 急制動に「キャアッ!」と耳元でハルナの悲鳴が聞こえるも、とりあえず我慢してもらい──俺達の直ぐ下をクルルカントの巨体が通り過ぎる。

 

「え、あ、な、何?」

「空気抵抗でブレーキ掛けて、振り切ろうとしただけ!」

 

 急な動きに困惑するハルナに意図を説明しつつ、ちらりと後ろの様子を伺えば、空中で身体をくねらせて方向転換し、再びこちらを追ってくるクルルカントの姿。

 多少距離は稼げたけれど、やっぱり振り切るのは無理……いや、距離を稼げただけよしとすべきか。

 そのまま高度を落として地面に近づき──

 

「ルルルルアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 ちょこまかと逃げる俺達に苛立ったような、クルルカントの咆哮が鳴り響く。

 その瞬間、思わずビクリと身体が震え、心臓が早鐘を打ち、魔法の制御に集中できずにグラリと姿勢が崩れ──「ひっ」と小さな、詰まるような悲鳴とともに、ハルナがぎゅっとしがみ付いてきた。

 ……しっかりしろ。今俺が抱えているのは自分一人の命じゃないんだ……!

 心を叱咤し、体勢を整える。

 バランスを持ち直しながら、地面スレスレと言って良い程の位置を飛翔する。

 ……居た!

 恐らく今の咆哮で脚が竦んだのだろう、地面にへたり込んだケイの姿。

 

「掴まれえええ!!!」

 

 ハルナを左腕で支えつつ、右腕を広げて、大きく叫ぶと、声が届いてくれたのだろう、顔を上げたケイが驚いたように、それでも必死に、交差する瞬間、腕の中に飛び込んでくる。

 一気に遅くなる速度。

 流石に、大人二人は、きついっ!

 

「う、後ろ! 来てる!」

 

 ケイの声に振り返る余裕もなく、それでも必死に飛ぶと、見えてくる森との境と、その少し前に立つ──

 

(ハヅキ、ここは私が)

(ごめん、頼む! すぐ戻るから──!)

「ここから先へは、往けると思うなっ!」

 

 すれ違い様に交わした念話。

 その直後、背後から聞こえてきたのは、アルトリアの裂帛の気合と、今日だけでも幾度も聞いた『風王鉄槌(ストライク・エア)』の炸裂音。

 そして俺達は森へと辿り着き──慌てて減速しつつも、転がるように森の中へと逃げ込んだ。

 そのまま倒れそうになる身体を叱咤しつつ、荒い呼吸を落ち着かせながら、ハルナとケイを促してもう少し森の奥へ向かうと、そこには疲労困憊の様子で地面に座り込んだ、稲葉さん達の姿があった。

 彼等の中で瑞希が一番元気そうなところから鑑みるに、稲葉さんたちの状態の原因は、やはりあのクルルカントの咆哮のようで。

 俺はハルナとケイを彼等に任せようと思い、「二人を頼むよ」と瑞希に声を掛けた。

 

「ん……葉月は、どうするの?」

「アルトリアのところに行く」

 

 瑞希の問いに答えた瞬間、周囲の雰囲気が重くなる。

 

「そ、そんな、危ないですよ!?」

「そうよ、だって──」

 

 先ほどまで、間近でクルルカントの脅威に晒されていたからだろう、ハルナに続きケイが俺を止めようとした、その時だった。

 

「──ァァァアアアア!!」

 

 クルルカントの高く長い声が響き渡り、その直後広場の方に、いつの間に出ていたのだろうか、上空に黒く厚く立ち込めた雲から幾筋もの雷が降り注ぎ、爆音が轟いた。

 

(アルトリア、大丈夫か!?)

(……はい、何とか)

 

 慌てて念話で問いかけ、返ってきた答えに少し安堵する。

 答える余裕があったらと前置きしつつ、何があったのか訊いてみると、どうやらクルルカントが雷雲から広範囲に落雷を撒き散らしたらしい。

 

「む、無理ですよ、もう……だって、朱莉さんもグレイさんも、あんな……あんなことになっちゃって……!」

「そうよ……あんな化け物に勝てるわけないじゃない……!」

 

 ……気持ちは解らなくはない。けど、それでも。諦めるわけには行かないだろう。

 この階層をクリアするためにはアイツを倒さなければいけないのならば、やるしかないんだから。

 それに、何となくだけど、クルルカントはここで倒してしまわなければ、大変なことになるような気がする。

 ハルナとケイにそう言っても、二人は首を振って否定する。

 ……仲間の死。そして自分達も間近に感じたソレに、完全に萎縮してしまっているようだ。

 念のためにアルトリアに、一度ここまで退いてこられないかと訊いてみるが、返ってきたのは「申し訳ありません。恐らく後ろを見せれば、捌ききれなくなります」との答え。

 そうなれば、やはり俺は彼女のところに行かなくちゃいけない。

 だから、それでも俺は行くと告げて足を踏み出せば──

 

「どうして、アレと……あんなのと戦えるの?」

「……大切な仲間が……アルトリアが、俺達のために戦ってくれてる。理由なんてそれで充分だよ」

 

 ……そうだ。こうして口に出してしまえば、何も恐れるものなどないのだと思えてくる。

 だって俺には、頼りになる仲間が居るのだから。俺は一人じゃないんだから。いや──

 

「だからって……たった二人で何が出来るっていうのよ!」

 

 ケイの言葉を聴いた瞬間、頭の……否、魂の奥深くで、何か(・・)がガチリと填まった気がした。

 そして気がつけば──

 

「二人じゃない」

 

 そう、口に出していた。

 困惑する彼女達を一瞥し、俺は、魂の奥から感じるままに、魔力を練り上げ、ソレを口にする──!

 

「──『二重召喚(デュアル・サモン):フェイト・テスタロッサ』!!」

 

 集った魔力は形を成し、伸ばした右手の先で、球状魔法陣を結実する──!

 いつもよりも、濃く、強く輝くそれは、ガシャンとガラスが割れるように砕け散り──それと共に、俺の目の前に現れる、よく見知った少女。

 風が吹き、黒いワンピースがふわりと揺れた。

 

「え……え? 葉月? どうして?」

 

 困惑した声を上げるフェイトに、説明する時間がなくて悪いと思いつつ、左手を差し出す。

 

「ごめん、後で説明するから、手を」

「あ、うん。解ったよ」

 

 戸惑いながらも差し出した手を握ってきたフェイトに「ありがとう」と礼を言って、右手を前に伸ばし、意識を自分の内側へ向ける。

 と、次の行動を起こすには魔力(ちから)が足りないことが感じられた。

 今の状態でそれを行うには、莫大な魔力が必要であることも。

 ──けど、大丈夫。俺にはそのための力が既にあるのだから。

 意識を右手へ。

 そして(めいれい)を口にする──!

 

「……令呪よ──その内に宿す力を解放しろ!」

 

 その瞬間、パキィンッ! と澄んだ音が脳裏に響き、右手の甲に刻まれた聖痕の一画が消失し──己の内に、莫大な魔力が生まれる。

 その流れをコントロールし、力の一角へ──

 

「『連鎖召喚(チェイン):高町なのは』!!」

 

 令呪の莫大な魔力に後押しされ、行使された力は形を成し、俺の前に再度球状魔法陣が生成される。

 そして現れる、もう一人の少女──

 

「……ぇ?」

 

 多分これから着替えようとしていたのだろう、パーカーの裾に手を掛けて、胸元までたくし上げた形で固まるなのは。

 中の肌着も捲れ上がり、お腹が見えていて──ちょっと気まずい。

 

「にゃあ!」

「ご、ごめんなさい」

「うう……って、葉月さん?」

 

 顔を赤くして、慌てて服を下ろすなのはに謝り、やはり喚ばれないはずの日に召喚されたことに対して困惑するなのはと、同じくフェイトへ向き直る。

 

「ごめん、二人とも。力を貸してほしい」

 

 そう言って、二人を連れて森の端……広場との境へ。

 そこから見える光景は──天空より雷撃を呼び、幾度となく降らせながら、自らも攻撃を仕掛ける蛇竜と──幾たびの落雷が原因だろう、いたる所で火の手が上がる広場の中、それを躱し、避けながらも、隙を見つけては剣を振るう、白き騎士姫の姿。

 

「あれは……?」

「彼女が『アルトリア』だよ。そしてあの敵は、蛇竜・クルルカント。……アイツを倒すのに、協力してほしい」

 

 そう頼んでから、ここに至るまでの経緯をざっと説明すると、二人は互いに顔を見合わせて、一度大きく頷いて──

 

「勿論だよ」

「うん、任せて!」

 

 力強い肯定の返事と共に、二人の身体が魔力の光につつまれて、一瞬の後に、その身はバリアジャケットへ。

 二人の手の中には、バルディッシュとレイジングハート。

 フェイトが俺を見て「いつでも行けるよ」と言ったところで、

 

「──ルゥアアアアアアァァァ!!!」

 

 響き渡るは、幾度耳にしただろう、クルルカントの咆哮。

 けれど──先ほどまでは確かに、多少なりとも俺の心に“恐怖”を落としていたそれを聞いても、何も感じることはなくて。

 我ながら、頼れる相手が傍に居てくれるだけで、こうも簡単に乗り越えられるあたり現金だなと苦笑が浮かぶ。

 けど……それでもいいかな。

 

「じゃあ、行って来ます」

 

 軽く後ろを振り返り、二転三転する事態に戸惑う稲葉さん達に声を掛け──俺は……俺達は、戦場の空へと舞い上がった。

 

 

 

※※新たな【称号】を獲得しました!※※

 

『繋ぐもの』:一定範囲内に“繋がり”を持つ者が存在する場合、能力値にボーナス。──それは、決して切れぬ鋼の絆。

 

 

 

※※【ユニークスキル】がレベルアップしました!※※

 

『キャラクター召喚・Lv3』(長月葉月)

 :術者の知る創作物のキャラクターを召喚することができる。連続召喚時間は最大3時間。送還後、召喚していた時間と同時間のスキル使用不能時間(ディレイ)が発生する。

  派生スキルの効果を除き、1日に於いて召喚できるのは1キャラクターのみである。

  派生スキルの効果を除き、連日で同じキャラクターを召喚することはできない。1日の基準は午前0時であり、それを基準にしてスキル使用不能時間もリセットされる。

  召喚可能キャラクター

  『フェイト・テスタロッサ』

  『アルトリア』

  『十六夜咲夜』

  派生スキル

  『連鎖召喚(チェイン・サモン)』:残召喚時間を半分にし、召喚中のキャラクターに関係する人物を追加召喚する。連鎖召喚中の時間に応じて加算されるスキル使用不能時間は2倍になる。前提スキル『キャラクター召喚・Lv2』『召喚師の極意・Lv2』。

   【召喚可能キャラクター】

     フェイト・テスタロッサ:『高町なのは』

     アルトリア:召喚不能

     十六夜咲夜:

   ・該当する特定異世界との接続が拒絶されました。『アルトリア』の状態により、『アルトリア』の連鎖召喚が無効化されます。

   ・『アルトリア』の連鎖召喚無効化に伴い、『アルトリア』のスキル使用不能時間に減少補正が掛かります。

 

  『二重召喚(デュアル・サモン)』:残召喚時間を半分にし、現在召喚中のキャラクターの他に、召喚可能キャラクターの内から一人を召喚することができる。二重召喚中の時間に応じて加算されるスキル使用不能時間は2倍になる。

  二重召喚において召喚したキャラクターに係る連鎖召喚は、召喚時間半減等、使用に対する条件が存在しない代わりに、莫大な魔力を必要とする。前提スキル『キャラクター召喚・Lv3』『召喚師の極意・Lv3』

 

 

 

※※新たな【ユニークスキル】を獲得しました!※※

 

『絆を結ぶ程度の能力』

 :unknown

 

 

 

※※【スキル】情報が更新されました!※※

 

『召喚師の極意・Lv3』:パッシブ。特定条件を満たす事により、最大召喚時間が延長され、スキル使用不能時間(ディレイ)が減少する。被召喚者に能力補正+。

   ──深き心、強き想い、そして固き絆は世界をも超える力となる。それはやがて、願いを叶える光とならん──。

  【延長時間】フェイト・テスタロッサ:3時間05分

        アルトリア:1時間00分

  【減少時間】フェイト・テスタロッサ:1時間30分

        アルトリア:1時間00分


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