Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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「みぽりん、結局無事に帰ってきてたんだね。ひどいよお。」
「ごめんなさい。連絡を取る手段がなくて...。」
「フレデリカさんとマシュンゴさんとわたしで、ヤン提督とみぽりんをかなり探し回ったんだよ。ベイ准将はとぼけてばっかだし、メッサ―スミスさんとかイケメンだったけど私のことつけたしみたいだったし、憂国騎士団とかにおそわれちゃうし、すごくたいへんだったんだから。」
「で、結局沙織は、どうやって身をまもったんだ?」
「うん、ビュコックさんをたよることにしたの。それまでの官舎は、なんか見張られてたり、どこかで話聞かれてそうでこわかったから。」


第95話 華~、「次からは、クリスマスプレゼントを用意しないといけないかな。」ってビュコック提督に言われちゃった。

一方、はるか数千光年離れた帝国軍の元帥府では...

「そういえば、オーベルシュタイン。やつらには、ヤンのように才能のある第14艦隊を率いる小娘がいたんだったな。」

金髪の青年元帥は髪をかきあげて、何やら思い出したようにつぶやく。

「御意。」

「ケンプから送られてきたこの艦隊配置は戦理にかなっている。アムリッツアでもキルヒアイスを妨害したくらいだからな。ケンプとミュラーだけでは重荷だろう。救援を出したいが、だれがよいか。」

オーベルシュタインによって画面に映し出した人物をみて、金髪の若き帝国元帥は、ほくそえんで命じた。

「ふむ。よかろう。出撃を命じよ。」

 

ハイネセンではヤンの査問会が数日おきにだらだらとつづけられた。

ヤンは、いらいらする一方で、帝国の軍事的脅威がある限り自分を無碍にすることは不可能だろう、どう収拾つけるつもりだろうと余裕をもつことさえ可能になっていた。

一方、フレデリカ、沙織、マシュンゴは、ベイにあしらわれたあと、宇宙艦隊司令部をたずねた。司令部の受付士官は、官僚的で、あーいうえば、こーいうといった感じで、規則だの、権限だのいいたてて、なかなかビュコックに合わせてもらえそうもない状態だった。

「そちらは、フレデリカ・グリーンヒル大尉ですか?。」

「あなたは...。」

「わたしは、故グリーンヒル大将、君の父上が、士官学校副総長だったころの生徒で、エドモンド・メッサースミスといいます。今は少佐ですが、どうしたんですか。」

「ヤン提督と西住中将が召還されたんですが、宇宙港で引き離されてしまったものですからビュコック長官にお会いしたいと...。」

「そうですか。長官ならこの上の階にいらっしゃいますよ。そのエスカレーターならちかいです。」

「ありがとうございます。」

「どういたしまして。あいかわらずきれいだね。フレデリカ。そちらのお嬢さんも。」

「え~、わたしはつけたし?」沙織はほおをふくらませる。

「いやいや、ほんとうにかわいいよ。」

メッサースミスは苦笑しながら答える。

フレデリカがエレベーターに乗るとなにやらメッサースミスは、携帯端末で何やら話していた。

(そっちへ行くぞ。)

フレデリカは、エスカレーターに乗り、エレベーターは下へ下がっていった。そこで止まるとドアが開く。上へ行きたいとボタンを押すが上に上がらない。そこへばらばらとプロテクターをかぶった男たちが現れる。

(憂国騎士団!)

マシュンゴが投げとばすが、フレデリカをエレベーターから引きずりだすのに成功する。マシュンゴもエレベーターを降りてフレデリカと沙織から憂国騎士団の男たちを引きはがす。

エレベーターのドアが閉まり真っ暗になる。

暗闇でマシュンゴは、フレデリカと沙織を守るために闘う。

憂国騎士団の男たちは目配せしていっせいにマシュンゴに襲い掛かった。

そのときだった。再びエレベーターのドアが開く。

「お前たち、何をしている!」

それはビュコックとファイフェル少佐ほか数人の士官だった。

憂国騎士団は、ばらばらと逃げ出した。

「長官!」

フレデリカは、喜びのあまり、目から涙がこぼれた。

「大尉?なぜこんなところにいるのかね。それからミス・タケベかな?」

「長官。わたしのことも覚えてくださったのですか?」

沙織の顔があかるくなる。

「ふむ。次からは、クリスマスプレゼントを用意しないといけないかな。」

ビュコックは、ちゃめっけたっぷりな表情でウィンクして、みほから聞いたサンタクロースに似ているというチームあんこうの話題をふってみせた。

「もう~。でもありがとうございます。」

「長官、実は...。」

フレデリカが事情を説明し、沙織が補足する。

ビュコックは、沈黙しながら話を聞いていた。白い眉を上下させ、一瞬怒りの表情をひらめかせたが、あきれたようにため息をつく。

「閣下にこのことをお話すべきかずいぶん迷いました。ヤン提督と西住中将をお救いするのに助力をいただければありがたいのですけれど....。下手をすると軍部と政府との対立を招くかもしれませんし...。」

「ふむ。もっともな心配だが.....。無用な心配でもあるな。」

「え、それってどうしてですか?」

沙織がおもわずたずねてしまう。

「言いにくいことだが軍部がもはや一丸となって政府と対立するなどありえないことなのだよ。」

ビュコックは本来の彼に似ず闊達さに欠ける苦々しい口調である。フレデリカと沙織は問いたださざるを得ない。

「軍内部が二派に分裂しているとおっしゃるのですか。」

今度はフレデリカがたずねる。

「ふむ。二派には違いない。少数派と圧倒的多数派を同列に並べてよいのならな。もろんわしは少数派さ。自慢にもならんことだがね。」

「どうしてそんなことになったのでしょうか。」

老提督は表情を曇らせて答えるのをためらっている様子だった。

沙織は老提督がなぜ戸惑っているかわからなかった。

こういうとき、みぽりんやゆかりんや麻子なら状況を的確に説明してくれるか、ビュコックに的確な質問をするだろう...くやしいとおもいつつもみほの名を出した。

「みぽりんなら長官がなにに困っているかわかるんでしょうか。」

「ふむ。あの娘は賢いからわかるじゃろう。ん。さっきの話だと彼女も捕まっているのじゃったな。」

そしてビュコックはひときわ大きな声で「あ、捕まってるのじゃなくて召還じゃったな。そうだ召還じゃった。」と言い、

「大尉。このことでわかるかもしれないが、この部屋にもおそらく盗聴器が仕掛けられている。どうしてそうなったか説明するなら、言うのも心苦しいが昨年の救国会議のクーデターが原因と言えば原因なのじゃ。やつらの仲間の一部を巧妙にもぐりこませて救国会議のクーデターを起こさせ良識派を一網打尽じゃ。やつらの裏には憂国騎士団やフェザーン、地球教がいて、糸を引いている。それで軍部の信望が失墜し、発言権が低下したのをいいことに、軍の人事をあやつって政治屋どもが自分たちの手下で固めてしまった。クブルスリー本部長もわしも、昨年のクーデターで有効な手が打てなかったから抗議しても冷笑されるだけじゃった。」

「政治屋どもがヤン提督と西住中将を召還した根本の動機は判然とせんが、多少のことをやっても反対するものはおらんし、いたとしても潰せると考えているんじゃろう。」

「なんと申し上げてよいか...そこまでお困りとは存じませんでした。」

老提督は、気にせんでいい、という気持ちを身振りで示してさらに話を続けた。

 




ラインハルトは、みほがいったん召還され、戻ってきたことを知らなかったが、天性の勘でみほの存在をかぎとっていた。

表題変えました。ご容赦ください(4/21,0:55JCT頃)

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