Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第10章 査問会です。
第88話 ハイネセンからの召還命令です。


宇宙歴798年2月14日

シェイクリとヒューズが廊下で話している。

「まあ、戦闘がないのは退屈だな。」

「物騒な物言いだが言えてるな。」

「アムリッツアのケンプ艦隊の攻撃はすさまじかったみたいだからな。ワルキューレのパイロット出身なだけあって、空戦隊がかなりやられたらしい。死んだやつらには悪いが。俺ら第14艦隊所属にしてもらってよかったな。」

「あの攻撃の仕方すさまじかったようだからな。記録映像見たけどあれじゃいくつ命があっても足りないぜ。」

「さて、どうする。ポプランの奴は、愛を説いて回るのにいそがしいんだとさ。」

「コーネフは、自室でひとりクロスワード楽しんでるしな。」

「撃墜数で賭けないなら、久しぶりにラウンジで優雅に賭けポーカーいくか。」

「いいな。」

「で何を賭けるんだ。」

「そうだな。俺が勝ったら、シェイクリ、また娘のおもりをしてもらうぞ。」

「しょうがないな。」

「で、お前は何を賭けるんだ?」

「あれ?こんばんわ。シェイクリさん、ヒューズさん。」

ポーカーを始めた二人に声をかけたのは、オレンジ色のゆるやかなウェーブかかった髪の少女だった。

「おお、沙織か。」

「よし、決めた。ヒューズ。お前のおごりで飲み放題にしようとおもったがやめた。沙織と結婚するからお前仲人になれ。」

「え...。」

「前からいいと思ってたんだ。沙織。」

シェイクリがちゃめっけたっぷりに笑みをうかべて沙織をみる。

「ええっ...。」

沙織が驚いたように両手のひらでほおをつつむしぐさをする。

「ほら、沙織が困ってるじゃないか。シェイクリ。」

「わかった。シェイクリさん、ちょっと待ってて、今日が何の日か知ってる?」

「なんだっけ。」

「もお~~。これの日!」

沙織はチョコレートを取り出して見せる。

「そうか...バレンタインデーか...。」

「これ、あげる。」

「ありがとう。沙織。」

「....。どうしたんだ?」

「シェイクリさんはすぐにはさそわないんだ。」

「...?」

「ポプランさんには何十回も誘われてるから、なんか誘われなれてて...。」

「あ~すまない。沙織。」

「あ、あやまらなくてもいいよー。結婚はすぐには無理だけど...デートなら。」

沙織はうっすらと顔をあからめる。

「え、やだー わたしったら。」

「おお、よかったな。シェイクリ。」

しかし、その後二人は会うことがかなわなくなるとは思いもよらなかった。

 

さて、3月9日、イゼルローン要塞に超光速通信によって一通の命令書のデータが届いた。国防委員長からのハイネセンへの召還命令であり、ヤンは、それを印刷した。

「西住中将を呼んでくれ。」

「閣下...。」

へイゼルの瞳で心配そうに彼を見つめる副官に、黒髪の学者風司令官は笑顔をつくってみせる。

「呼び出しを受けたよ。ハイネセンへ出頭しろとさ。」

「何事でしょうか?」

「査問会にでるように、だと。どうもわたしも最近記憶力が衰えたせいか思い当たらないのだが、これがどういうしろものかわかるかい?大尉。」

美しい副官は、形のいい眉をわずかにひそめて答えた。

「軍法会議ならともなく、査問会などというものは、同盟憲章。同盟軍基本法、施行令、そのほかの同盟軍の法規にも規定がありません。」

「超法規的存在ってやつかな。」

「つまり恣意的なもので、法的根拠をもたないってことですわ。」

「とはいっても国防委員長の出頭命令自体は立派に法的根拠をもつからな。虚栄と背徳の都へおもむかざるをえないらしいよ。」

「あの、西住中将に引継ぎをなさるんですか。」

「いや、これを見てくれ。」

フレデリカは眉だけでなく、冷静さを装いつつも顔の皮膚の下に怒りがじわりとひろがっていくことを自覚せざるをえなかった。

(ここの守りをどうしようというの??)

 

「西住殿。」

「ヤン提督から呼ばれたの。」

「みぽりん、いい知らせ?」

「じゃないからごめんなさいって。」

みほは微笑みながらヤンの執務室へ行く。

「西住中将、これを見てくれ。」

「召還命令...査問会...。あの...これって...?」

艦隊指揮のことしかわからないみほにとって降ってわいたような話だ。

「大尉、説明してもらえないか。」

フレデリカはみほにヤンに話したことを説明した。

みほにしてはめずらしくサンダース戦の通信傍受機、帝国領侵攻前のフォークによるシュミレーション対戦への申し入れ以来見せたことのない怒りの表情を一瞬だけみせた。

それから不安な表情になり

「あの...わたしまで呼び戻して、ここの守りはどうなるんでしょうか?」

「さあね。」

ヤンはあきれ顔で両腕を曲げて両手のひらを外へ向けてみせる。

みほはもどってきてあんこうの皆に知らせる。あんこうの4人は気持ちの上で大反対なのは一致していた。

「西住殿、行くべきではありません。西住殿まで行ってしまったらここの守りはどうなるんですか。」

「みぽりん、わたしにだってわかるよ。司令官が留守の時守るのがみぽりんの役割でしょ。それなのにみぽりんまで呼び出すなんておかしいよ。」

「ここの指揮はどうするんだろうな。いままでの政治屋たちのやり方から考えて自分たちの一方的な都合しか考えてないんだろうな。帝国軍が攻めてきたらどう責任取るつもりなんだろう。戦車道で負けたから恥ずかしいって話ですまないと思うけどな。」

「みほさん、わたくしも行くべきではないと思いますし、行ってほしくありません。でも行くことによってはっきりすることがある気がします。沙織さん、サンダース戦の時覚えていますか。」

「追いかけられた時に華が『一発でいいはずです。』って言ったとき?」

「はい。いまはあのときと同じ気がします。あのとき追いかけてくるサンダースの戦車は見えていました。いま帝国軍は見えませんが、この機会をなんらかの形で知るかもしれません。でも...」

「華さん、あのときの稜線射撃のようなチャンスがあると...。」

「はい。わたくしにはそんな気がします。わたくしたちは、サンダース戦とあの苦しいプラウダ戦を戦ってきました。今はたいへん危険だと思います。ですけれど危険な場所にこそ美しく咲く花があるはずです。」

「そういえば国防委員長の命令だっけ...本当は断れないんだよね。」

「うん...。」

「西住殿、わたしがついていきます。」

「秋山さんはやめたほうがいい。」

「なんでですか?」

「隊長を助けようとして、潜入してつかまったらただですまない。ここは沙織が行ったほうがいいと思う。」

「そうですね。通信手ですし、なんらかの外部へ通信やみほさんとの連絡が必要な場面は多くなるような気がします。」

「わかった。わたしが行く。」

沙織は微笑んで元気よく答えた。


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