Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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さて、時は少し遡ってイゼルローン要塞では...


第84話 キャゼルヌ家で夕食です(前編)

さて、宇宙暦798年(帝国暦489年)1月下旬の遭遇戦が終わり、帝国でガイエスブルグ要塞ワープ作戦がすすめられている一方、警戒は怠っていないもののイゼルローン回廊では平穏な日々が続いていた。ユリアンが、巡航艦一隻、ワルキューレ三機撃墜した功によって軍曹から曹長に昇進することとなり、辞令をうけて数日後、曹長への昇進祝いということでヤン、ユリアン、チームあんこうの面々がキャゼルヌ家に呼ばれた。

「いらっしゃい。ユリアンお兄ちゃま。」

「こんばんわシャルロット。」

「いらっしゃい。沙織お姉ちゃま。」

「シャルちゃん。こんばんわ。」

「ママの手伝いするの?」

「うん。上がるね。」

「沙織、よくきたわ。手伝って。」

「はい。オルタンスさん。」

「今日はね、ヴァテルズィ、要するに魚と野菜のクリームシチュー、チコリのオムレツとそれから...。」

「まかせてください。」

玄関口でシャルロットが来客に応対している。

「いらっしゃい。華お姉ちゃま。」

「あら、シャルロットちゃん。お久しぶりです。」

「いらっしゃい。えっと、オットボール?じゃなくて、グデーリアンのお姉ちゃま。」

「シャルロット・フィリス・キャゼルヌ隊長、秋山優花里であります。」

「ごめんなさい。優花里お姉ちゃま。」

「こんばんわであります。」

「こんばんわ。麻子お姉ちゃま。」

「こんばんわ。」

「?麻子お姉ちゃま?」

「なんだ?シャルロット。」

「今日は眠そうに見えない。」

「ああ、午後から夕方は眠くない。」

「こんばんわ。みほお姉ちゃま。」

「シャルロットちゃん、こんばんわ。」

そして....

「こんばんわ。ヤンおじちゃま。」

「....。こんばんわ。シャルロット。」

「どうしたんだ?」

返事の遅れた黒髪の後輩を見て、五歳になった次女アンリエッタをかかえたキャゼルヌ家の家長は人の悪い笑顔を見せる。

「傷ついているんです。独身の間はお兄いちゃまと呼ばれたい、と思っているんですがね...、」

「とんだ贅沢だ。30過ぎて独身だなんて許しがたい反社会的行為と思わんか?」

続いて独身で社会に貢献した人物を4,5百人挙げられると、ヤンが言うと、家族を持ったうえで社会に貢献した人物をもっと知ってる、とキャゼルヌに言い返される。

沙織はキャゼルヌ家は第二の家のようなもので、いつのまにかキッチンにはいってエプロンを付けオルタンスの手伝いをしている。

「ひとつ真面目な話がしたいんだがな。ヤン。」

いいかげんにうなずきながらその視線は、キャゼルヌ家の姉妹に絵をかいてやっているユリアンに向いている。あんこうの5人もそこに加わっている。

「ヤン、お前さんは組織人としての保身に無関心すぎる。そいつはこの際美点でなく欠点だぞ。」

ヤンは視線を動かし、真剣な面持ちの士官学校の先輩の顔を見る。

「お前さんは荒野の世捨て人じゃない。多くの人間に対し責任を持つ身だ。自分を守るためもう少し気を配ったらどうだ?」

ヤンは士官学校の先輩に対し、そんなことを考えていたら昼寝をする暇もないとか面倒だとか屁理屈をこねた。キャゼルヌはため息をつく。

「おれがこんなことを言うのもな、われらが尊敬する元首...。」

「先輩、歯が浮いてますよ。」

「コホン、この際なんでもいい。あのトリューニヒトのことが気になるからだ。」

みほが耳をそばだてて、ふいとヤンとキャゼルヌを見る。それに気が付いたあんこうのほかの4人も二人の方向へ顔を向ける。

「奴には理想も経綸もないが打算と陰謀は充分にあるだろう。笑ってくれて構わんが、実のところ、俺は少々奴が怖いのだ。」

むろんヤンは笑わない。あんこうの5人の視線も真剣だ。

「詭弁と美辞麗句が売り物の二流の政治屋だと思っていたが、このごろ何か妖怪じみたものを感じる。なんというか何かとんでもないことを平気でやらかしそうな、そう、悪魔と契約を結んだような印象だ。」

そのときみほが、おずおずと口をはさんだ。




投稿するかどうか迷っていたキャゼルヌ家でのエピソード入れることにしました。査問会の伏線ということで...

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