Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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「あの状態では放置しておけんな。」

「仕方がない、もとにもどすか。」

「しかし、あの船(※大洗から出航した船)は本当に爆破してしまったぞ。」

「お二方、困っていらっしゃるようですね...。」

青みがかった黒髪の美女が笑みを浮かべて二人を見つめている。
いつからそこにいたのだろうか...美女は清楚な容貌に似合わなそうな大鎌をかついでいたがなぜか奇妙に調和している。

「おま、あなたは...。」

「戻すべき場所にもどしてさしあげましょうか。」
「...。」

男たちは、目の前の大鎌をかついだ美女の提案に従わざるを得なかった。


第77話 お母様、帰りました。

9月9日、ガイエスブルグ要塞は、ラインハルト軍の手中に落ち、勝利の式典が行われようとしていた。

ざわめきが生じ、特殊ガラスのケースに収められたブラウンシュバイク公の遺体が運びこまれてきた。アンスバッハが棺につきそっていた。ブラウンシュバイク公の腹心と呼ばれた男は、広間の入り口で、無表情に、若き覇者、彼らからすれば忌むべき金髪の孺子に一礼すると、ゆっくりと歩き始めた。静かだが低い冷笑が参列者の間から漏れる。

ラインハルトの前に出ると、アンスバッハは、恭しげに一礼し、棺のガラスのふたをひらくや、主君の遺体の軍服からすばやくハンドキャノンを取り出し、

「ローエングラム侯、わが主君の讐、お命頂戴する。」

ハンドキャノンが咆哮するが、ラインハルトの左から二メートル離れた壁が崩れ落ちた。アンスバッハに躍りかかったのは、赤毛の俊敏な若者であった。ハンドキャノンが

床に落ちて、ガシャリと武骨な音を立てる。

アンスバッハは、手の甲を赤毛の若者の胸に押し付け、指輪が光ると若者の身体を貫いて、その背から光条が生えた。赤毛の若者は激痛を覚えたが暗殺者を抑え込もうとするのをやめなかった。再び指輪が不吉に輝いて、光線を吐き出し、今度は若者の首筋を貫いた。

「きゃああああああ。」

銀髪の小柄な少女は、激しい怒りと悲しみのこもった悲鳴を上げ暗殺者をプラスターで数度貫いた。

「ぐつ...。」

その狙いは正確であったが、撃っている本人は半狂乱である。彼女にはいつもの冷静な名将の姿はなく、半狂乱に泣きじゃくる少女でしかなかった。

「フロイライン!フロイライン!」

ルッツとワーレンが暴れる愛里寿を抑える。

提督たちが少女の悲鳴を合図に暗殺者に襲いかかる。

アンスバッハは、キルヒアイスの身体と自分の身体から噴き出した血の沼に引きはがされた。

「ブラウンシュバイク公、お許しください。この無能者は、誓約を果たせませんでした。金髪の孺子が地獄に落ちるにはあと幾年かかかりそうです。」

「この痴れ者が。」

「力不足ながら私がお供いたします。」

アンスバッハは、奥歯に仕込んだ毒のカプセルをかみ砕いた。アンスバッハの両眼が焦点を失ったように大きく開き、白目をむき出しにした。

金髪の不敵な若き覇者は、無二の親友を失って抜け殻のようになった少年になってい

た。

ルッツとワーレンが冷静になった時、誰かがいないことに気が付いたが、誰がいないのか二人には思い出せなかった。

 

宇宙暦793年、帝国暦484年1月、同盟領を進んでいたへルクスマイヤー伯爵家の宇宙船は突如爆煙に包まれ、乗っていた青年軍人ベンドリング少佐と10代の金髪の少女マルガレーテ・フォン・へルクスマイヤーの姿が消えてから一秒たたない間に現れた。

マルガレーテは、ぼろぼろになったクマのぬいぐるみをひろいあげた。

 

一方、銀髪の少女は、島田家の自分のベッドの中で目覚めた。

「夢...か....。」

少女はつぶやき、自分が大学選抜のパンツァージャケットを着たまま寝ていたことに驚き、小さな血痕を数か所見出して理由もわからず深い悲しみに襲われた。少女は、自分が寝ていた場所から一番近い位置にあったボコのぬいぐるみを抱きしめた。しかし、その深い悲しみはじわじわと急速に薄れていった。

 

「フロイライン、同盟首都へワープしますか。」

「うむ。ワープするのじゃ。」

金髪の幼き令嬢が指示すると令嬢の友たる少壮の少佐がコンソールを操作し、ヘルクスハイマー家の船はその空間から消えた。

 




愛里寿とマルガレーテに起こった出来事は下記のようにワンセットになっています。

宇宙暦793年、帝国暦484年1月、同盟領を進んでいたへルクスマイヤー伯爵家の宇宙船内の爆発(44話)→ベンドリング少佐、マルガレーテ・フォン・へルクスマイヤー、行方不明に(44話)
大洗学園艦からの帰途の船内でおこった爆発(44話、72話前書き)、船が完全破壊(77話前書き)→愛里寿、へルクスマイヤー伯爵家の宇宙船内へ(44話)

宇宙暦793年、帝国暦484年1月、同盟領を進んでいたへルクスマイヤー伯爵家の宇宙船内の爆発から一秒たたない間(77話)→ベンドリング少佐、マルガレーテ・フォン・へルクスマイヤー、船内へ戻る(77話)※爆発事故でぬいぐるみは痛んだ状態でそのまま残される(歴史が復元されている)。
帝国暦488年9月,ガイエスブルグ要塞内キルヒアイス殺害時(77話)→愛里寿、地球上の島田家の自分の寝室(77話)※ゼフィーリアによる。

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