Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
プザンを囲んではルラウ山脈が連なっていた。低い部分が回廊状になっている。
その前には湿地が広がっている。
戦車一両しか通れないような地形。プザンに至る橋はすべて壊され、テルシオをつくったティリーは戦車砲塔を改造してセンサー付きで自動発砲する簡易トーチカとして隘路のわきの植物や木の茂みに潜ませていた。
プザンの手前にカンバルという町があった。そこから南方2キロの峠まで進撃した。
さらに対戦車砲が撃たれ、ベアー少尉のチャーフィーが炎上した。
敵が峠の上り詰めた地点で陣取り、切通しになった左右の高台にもいてチャーフィーを狙ったのだ。
「ルミ中隊は右、アズミ中隊は左、わたしは中央の敵を攻撃する。」
「了解。」
敵が静かになったと思ったら狙撃兵がいる。
「隊長、あぶないので戦車にはいってください。」
「ルミも気を付けて。」
ルミはほほえんだ。
激しく砲撃を行い、敵は姿を消したようだったが、プザンの周囲を取り囲むスリム=トロラックの隘路にひっこんだだけだった。貴族連合のプザン包囲部隊は、背後から攻撃される場合をそなえて、隘路に戦車をひそませて、その前には川、鉄条網、対戦車の障害物、上り坂になってカーブしているという状態であった。天然の馬出、虎口のようになっていて、正面から攻撃しようとしたらこちらがやられてしまう。また、空からのワルキューレの攻撃に備え高度2万を誇る地対空誘導ミサイルシステムを設置し、隙が無いように見えた。さすがは陸戦の猛者ティリーがゼフィーリアと協力してつくった堅牢な陣地だった。
一方、愛里寿は、麾下の艦隊に気象衛星を上げさせて観測させ続けていた。
そして絶好の攻撃可能日をみつける。
【推奨BGM:無双です】
愛里寿は、メグミ、ルミ、アズミに
「あさっての晩は雨が降る。音が隠せる。絶好のチャンス。」
愛里寿は、地図を指さして
「明後日日0030時に、工兵をつかって、障害物を退かし、敵トロラック陣地を攻撃する。」
「そのため2230時に戦車はエンジン音を響かせないよう低速で移動。工兵隊も目標位置まで移動。」
「隊長、工兵は、大丈夫なのでしょうか。」
「戦車の火力支援がある。パーシングとわたしのセンチュリオン。充分。」
「ルミ中隊は、第一回廊を攻撃。」
「了解。」
「アズミ中隊、第二回廊を攻撃。」
「了解。」
「メグミ中隊、第三回廊を攻撃。」
「了解。」
「わたしが本隊を率いて第四回廊を攻撃する。」
「了解。」
工兵は敵陣近くの鉄条網を切断し、障害物を爆破する。また、各回廊の崖上から手榴弾が回廊内に投げ込まれる。手榴弾の投げ込みに対しては対ワルキューレ用の高度2万まで達する地対空誘導ミサイルシステムも全く役に立たない。
「なんだ、なんだ、なにごとだ。」
寝耳に水の夜襲に貴族連合軍はうろたえる。そうこうしているうちに信号弾があがる。
敵は撃ってくるが動揺しているため全く当たらない。
パーシングとセンチュリオンは動けずにいるT34/85を次々に撃破した。
戦車から煙が立ち上る。
「隊長!回廊内の敵戦車全滅です。」
愛里寿は頷いた。
プザンの住民たちには信号弾を3回あげたら反撃と伝えてある。
「信号弾あげる。三回。」
「はい。信号弾あげます。」
信号弾が上がり、プザンの戦車部隊の隊長主将ヤン・ジュシュカが叫ぶ
「撃てば当たる。貴族どもを成敗し、積年の恨みを晴らすのだ。」
ブザンのヴェスターラント住民軍の戦車隊はときの声を上げて、先ほどまで優勢に包囲網を築いていた貴族連合軍に襲いかかった。
貴族連合軍は、地形上の要害とワルキューレ用の地対空誘導ミサイルシステムに守られた背後のトロラックの陣地が破られるとは夢にも思わなかったが、実際には回廊内の戦車が全滅し、ブザン包囲網の自軍の戦車が挟撃されて次々に火を噴いて炎上しているのを目のあたりにして、みるみる戦意を喪失していった。
貴族連合軍は挟撃され、四部五裂となり、バラバラと逃げる者が続出した。逃げ遅れた者たちの指揮官は降伏した。
「ヴェスターラントが落ちた?」
大貴族は狼狽をかくせずに部下を見る。
「はい。」
それから一見清楚だが妖艶な笑みを浮かべている美女を軽くにらむ。
「ゼフィーリア殿。」
「あら、残念なことでした。わたしは、絶対うまくいくとは申し上げていません。」
美女はこともなげに答えた。大貴族の顔は憤怒の表情に変わり、叫んだ。
「敵を熱核兵器で血祭りにあげる。」
「閣下、これをご覧ください。」
アンスバッハが主君に告げて、マスコミ報道を見せる。
たった一発だったが熱核攻撃の様子が帝国じゅうに放映されていた。きのこ雲と住民の悲惨な姿。そしてラインハルトの姿。ブラウンシュバイク艦隊を撃沈した愛里寿の艦隊の姿が映し出されていた。
「うぐぐ。これでは帝国の正統なる藩屏のはずの帝国貴族が非道な野蛮人扱いではないか。」
「そのように放映されています。金髪の孺子は英雄扱いです。」
ブラウンシュバイク公は二度と熱核兵器を落とせなくなった。
すみません。簡単に流させていただきました。