Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
ミリオタの方々からすれば突っ込みどころ満載かも(汗)。
【推奨BGM:好敵手です】
「あれをどう思う?」
愛里寿は、三副官たちに尋ねる。
「30mごとに並んでいます。」
「パーシングは、90mmあるから特殊な榴弾を降らせて、大混乱に陥れて、まわりから撃ちこめばやっつけられる。でも死者が大勢出るから、ちょっと複雑だけど島田流ぽくやる。それでも敵の死者を減らして勝てる。いい?」
愛里寿はほほえむ。
「「「はい。」」」
副官たちは明るく返事をする。
「敵は30mごとに並んでいる。おそらく横の砲撃があるのは外側だけ。内部の横方向は同士討ちを避けるため機関銃しか撃てないからこの隙間は弱点。しかし、散発的に攻撃した場合、脚は遅いけど、徐々に隙間をうめてくる可能性がある。逃げられなくなるからおとりで攻撃する。まずは、前方の本隊は砲弾を打ち上げて中央や後方の敵に被害を与えて、中央部の隙間を集中攻撃する。メグミ中隊とルミ中隊は横に隠れて敵を攻撃、アズミ中隊は、最前列が後方へまわろうとする地点に伏せて敵の斜め後方から攻撃。宇宙で戦う時代に地上で射程のある兵器はあまり必要ないこと、しかもあれだけ規模が大きいと小回りが利かないし、砲塔も並んでいるから自由に回転しない。最後尾は対戦車地雷を埋めること。これは戦車道じゃないから可能。また、横と後方は、煙幕と戦車の駆動音の音源発生装置を置いておとりにする。それから発砲したら移動して反撃を避けること。」
「了解。」
「敵までの距離、2200m。」
「距離1900で、メグミ中隊は10時の方向へ進撃、距離1800を維持。相手からみて3時の方向に配置。合図があるまで待機。」
「了解。」
「ルミ中隊は、2時の方向へ進撃、同じく距離1800を維持。相手から見て9時の方向に配置。合図があるまで待機。」
「了解。」
愛里寿は、テルシオ部隊の前報距離1900で、部隊を二手に分ける。
「敵までの距離1800m。」
「敵までの距離1600m。」
「敵の距離1600mです。」
「よし砲撃開始。」
「煙幕開始。」
「敵が煙幕を張ってきました。」
「何する気だ。」
「て、敵の攻撃、9時方向と3時方向。ただし、散発的。煙幕で見えません。」
煙幕の中を横の砲門で撃つ。
戦車の音が前方からも横からも聞こえる。
(敵はもしかして500両くらいいるのか?ばかな!そうであってもこのテルシオの敵ではない。なにしろ四方八方に攻撃できるのだから。)
「敵の弾道を計算し、反撃せよ。」
(煙幕があろうと弾道計算できるのだ。)
ティリーは、煙幕で見えないのを砲弾の弾道から発射点を分析させ、攻撃させる。
ドドーンン、ドドーンン、ドドーンン...
テルシオの横方向の四連装の砲門が火を噴く。
しかし、愛里寿にはおり込み済みだった。発砲地点から移動して敵の砲撃を避けるよう指示してある。戦車の音はおとりの戦車音にまぎれて区別できない。忍者戦術の真骨頂だった。
最前列のテルシオが最後列へ着こうと回転した時だった。
いっせいに煙幕に隠れたパーシングの砲撃がテルシオ隊の斜め後方に集中した。
ドーン、ドーン、ドーン...
轟音が響き、装甲を撃ち抜かれたテルシオは次々に炎上する。
最後列につこうとするテルシオの隊列は乱れる。
「敵の発射点を計算し、集中攻撃せよ。」
「発射点でました。」
「砲撃開始!」
ドドーンン、ドドーンン、ドドーンン...
テルシオの砲門が斜め後方からのパーシングの砲撃発射点に集中する。
さすがに逃げ切れずパーシング数両が炎上した。
「ええい、すすめ、すすめ、かまうな。」
ティリーは叫びテルシオ隊は前進する。小回りが利かないのでそのまま前進する。
煙幕の中から、パーシングが上に打ち上げた砲弾が雨あられとテルシオにおそいかかる。
隊列を乱さないで進むしかないため、移動位置の計算はそれほど困難ではない。
歩兵戦では無敵で対戦車砲をもった住民軍をよせつけなかったテルシオ隊だが、つくづく対戦車戦には向いてないようだった。煙幕から至近距離で現れたパーシングは、テルシオとテルシオの30mごとの隙間に侵入し、砲塔を斜め横へ向けて砲撃していく。
「同士討ちになる...。」
テルシオも反撃するが、敵はさっさと通り過ぎてしまう。同士討ちで撃たれるテルシオも散見される。
ティリーは命じる。
「挟み撃ちにせよ。」
隙間がうまるがその代り中央部の隙間が開いていく。
おとりのパーシングに命中弾があがって炎上するものもある。
ティリーはほくそえむが、実は愛里寿も微笑んでいた。
「突撃。」と命じ、ひらいた中央部にパーシング数十両が殺到する。
「し、しまった...。」
「敵に中央を突破されます。」
「4時方向に敵、8時方向にも敵です。」
「ええい、砲撃しつつ前方へすすめ。」
前方へ進むと、なにやら爆発して炎上するテルシオ。
「し、将軍!?」
「今度は、何だ。」
「対戦車地雷です。」
「何だと。」
前へ進んだテルシオは対戦車地雷で炎上する。
「しかたない。2時と10時の方向へすすめ。」
気が付いたときにはテイリーのテルシオ隊は7割近い損害を出していた。
対する愛里寿は、10両にもみたない損害だった。
上空ではワルキューレによる空中戦で戦車には近づけさせない。
「全車12時の方向へ撤退。」
「将軍。それではプザンの包囲が手薄になってしまいます。」
「このままだと全滅だ。敵の戦車がそんなに強いとは思わなかった。報告するのだ。」
「これが敵の戦車か...。」
「それより性能がいいのは...。」
ゼフィーリアは。10式戦車の図を見せる。
「これをわが軍の工廠で生産できるか?」
「無理です。まともな工廠は金髪の孺子の軍に抑えられています。」
「閣下、地上戦に持ち込まないように艦隊戦で勝負すべきでしょう。相手をガイエスハーケンの射程内に誘い込むしかありません。プザンの包囲網は、スリム=トロラックの丘陵地帯に囲まれていて天然の要害になっています。敵が優れた戦車を持ち込んでいてもそこさえ落とせば孤立させられます。」
アンスバッハが進言する。
「ヴェスターラントをあきらめろというのか。」
「敵は制空権を完全に確保できず、地上戦でティリーには勝ったものの局地的な勝利にすぎません。プザンを落とせれば我々の勝利です。」
「うぐ...。」
ブラウンシュバイク公はうなったがいい考えも浮かばなかったので黙認することにした。