Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第71話 ヴェスターラントの攻防戦...(その1)。

補給船団はキルヒアイス艦隊に降伏。補給船団のコンラート・リンザー大尉は片腕をうしない、旧主に見切りをつけ、役に立てるとキルヒアイスに告げる。モーゼル子爵家のコンラートもそれに従う。リッテンハイム侯が逃げ込んだガルミッシュ要塞も平民の叛乱によって自爆し、降伏。貴族連合軍は副盟主と全兵力の1/3を喪った。

 

帝国暦488年(宇宙暦797年)8月...

貴族連合軍連戦連敗の報は詳細に伝えられなかったものの、帝国領の民衆たちは時代の変化を肌で感じ取り始めていた。ブランシュバイク公領のヴェスターラントで貴族連合の戦費のために重税を課して取り立てを強化すると、

ヴェスターラントの都市のひとつボズナニで抗議行動が起こった。

「おれたちは不当な租税や貢納ははらわないぞ!」

「私戦のために税をとりためるな!」

「シャイド男爵!民衆が暴動を起こしています。」

「なんだと!ブラウンシュバイク家の権威をなんと心得るのか!卑しい者どもが。射殺せよ。」

「はつ。」

シャイド男爵は銃撃で民衆の抗議運動を抑えようとしたが、そのやり方が民衆たちの怒りを招き、つかまって殺されてしまった。

そのことを知ったブラウンシュバイク公は激怒し、

「卑しい者どもめ。わが甥を殺しおって。ヴェスターラントに熱核攻撃を行う。卑しい者どもを駆除するのだ。」

尊大なブラウンシュバイク公には、人権感覚はかけらもない。ただ自分の特権意識で、自領の惑星は自由にできると考えていた。アンスバッハは、

「閣下お怒りはごもっともながら、熱核攻撃は、かって人類が絶滅に瀕した13日戦争以来のタブーのはず。ましてヴェスターラントは閣下のご領地です。全住民を殺すというのはあまりにご無体。首謀者だけを処刑すればよろしいのでは。」と反対した。

「黙れ!ヴェスターラントはわしの領地だ。よってわしには、あの惑星を自由する権限があるのだ。」

ブラウンシュバイク公は、アンスバッハを牢に入れようとしたが、ゼフォーリアがとりなしてとりやめにした。

一方、熱核攻撃を行うための艦隊がヴェスターラントに派遣された。

 

その情報は、キルヒアイスがあちこちに放っている工作員の一人からもたらされた。キルヒアイスは、まさしく名将であったから彼自身の価値観である人道性や正義にかないさえすれば、勝つためにある意味どんなことでもやったのである。戦争において情報は死命を決する、そしてこれはまさに戦争だから、である。

「ブラウンシュバイク公がヴェスターラントに熱核攻撃を狙っているそうです。」

愛里寿はキルヒアイスを見た。赤毛の若き名将は彼らしくもなく迷っているようだった。愛里寿はキルヒアイスとウマが合った。キルヒアイスは、愛里寿にラインハルトを思わせる天才性とあやうさがあるのを見抜いて、彼女を支えたいと感じ、愛里寿は、とてつもなく有能でありながら、肥溜めのなかにさえ美点を見出し、ラインハルトの思考回路をそのまま受け入れたように、愛里寿自身をそのまま受け入れるキルヒアイスを好ましく思い尊敬してきた。それはあたかもマルガレーテが愛里寿に生まれ変わったかのようだった。

銀髪の小柄で比類なく聡明な少女は赤毛の若くこれまた比類なく有能な青年提督の悩みを正確に見破って確認するかのようにたずねる。

「迷っている?」

「はい。フロイライン。ラインハルト様なら見捨てはしないとは思いますが..。」

「いま、ラインハルト閣下にはオーベルシュタイン大佐がいる。この人はかなりくせもの。一筋縄ではいかない。」

「フロイライン?」

【推奨BGM:好敵手です】

「私が行く。何か起こってからでは遅い。わたしが勝手に艦隊を動かした。キルヒアイス閣下は何も知らない。これでいい。」

「わかりました。念のためです。」

キルヒアイスはたしかに嫌な予感がしていた。杞憂におわればいいと思っていたので愛里寿の別行動を許した。まさかとは思うがラインハルトがヴェスターラントの熱核攻撃を見逃して政治宣伝に使うのでは..,オーベルシュタインなら進言しかねない。しかもオーベルシュタインは、事実上の黙認をさせるために正確な攻撃時間をラインハルトに知らせず、既成事実化させるかもしれない。

(それではラインハルト様の心が傷ついてしまう。しかし、自分が動くわけにはいかない。範をたれるべき上の者が自ら軍令違反を犯すことになる。)

愛里寿は、部下のだれかが勝手に動いてほしいと望んでいる、そして、その部下をかばうためにキルヒアイス自身が監督不行き届きでの処罰を甘んじて受けることを望んでいるのを見抜いた。愛里寿はそれを察して艦隊の独自行動をすることにしたのだった。

「ヴェスターラントへ向けてワープする。ワープ準備。」

「はつ。」

「5,4,3,2,1,ワープ。」

愛里寿の艦隊はワープした。

 

ブラウンシュバイク公の爆撃艦隊はヴェスターラントまで2光秒の位置まで迫っていた。

「ワープアウト完了。」

「ヴェスターラント上空2光秒」

「第一弾、発射します。」

「発射!」

ヴェスターラントの地上にきのこ雲が立ち上る。

「着弾を確認。」

「第二弾用意。」

「艦長!」

「何だ?」

【推奨BGM:無双です】

「3時の方向に空間歪曲場多数確認!」

「ワープアウト反応、数...7000!」

「なんだと!」

「て、敵です!」

 

「ワープアウト完了。」

「機関異常なし。」

「前方12時の方向にブラウンシュバイク公の艦隊を確認。数150。」

「距離600万キロ」

「主砲発射!」

愛里寿の艦隊からの光条が横殴りにブランシュバイク艦隊を襲って血祭りにあげた。

「うぎゃああああ...。」

ブラウンシュバイク艦隊の各艦は悲鳴にあふれる。

次の瞬間には気化するもの、宇宙空間に投げ出される者、そして残骸の金属片が宇宙空間に漂うこととなった。

「隊長、一発目には間に合わなかったですね。」

「うん。だけど二発目は撃たせなかった。」

オーベルシュタインは一発目の画像を高速偵察艦で撮影していた。

(ふむ。二発目以降でもっと悲惨な絵が撮れそうだったが、ひとまずはこれでよい。)




愛里寿を隊長と呼んだのは誰か?次話で明かされる...

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