Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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わたくし、五十鈴華と申します。
いま大変なことになっています。
お花でどうやって表したらいいのでしょうか?想像もつきません。
それからあの方がスクリーンに映し出されました。
フレデリカさんのお父様であるグリーンヒル大将閣下です。


第63話 本当にあのお方なのでしょうか?

フェザーン商人たちはは同盟のマスコミに資金を流しはじめた。

まず口火を切ったのは週刊誌デレチャプリマだった。

「皇帝プログレスリー・ライトバンクの正体-アムリッツア最大の戦犯-」

と題して、ライトバンクがフォークであること、アムリッツアの最大の戦犯であること、バグダッシュの言ったことは本当であることを報道したのだった。

「陛下、このような記事が....。」

「わかった。」

皇帝プログレスリーは、なにやら鳴らして陰からプロテクターを頭に付けた黒い兵装の男が現れる。

「陛下、いかようで?」

「この雑誌社を襲撃しろ。見せしめにするのだ。」

男は、多少逡巡したものの

「わかりました。」

と答えて出ていった。

しかし、その雑誌社の周囲にも自分たちと同じ連中がまもっているのに気が付く。

「どうしたことだ。お前たちは?」

「お前こそ、皇帝を名乗る偽物になぜつくのだ。アムリッツアで同盟を崩壊させた戦犯で帝国に作戦を漏らした売国奴だぞ。」

「そんなことはない。トリューニヒトこそフェザーンの守銭奴に国を売った売国奴じゃないか。」

憂国騎士団同志がそれぞれの主張を繰り返し、お互いを説得させようとするが、そこへ黒いフードをつけた司教が現れる。

「おお、猊下、いかがなされました?」

「なんのさわぎかとかけつけてみたらこういうことか。あのバグダッシュとやらのいうとおりだ。いまは一致の時。われわれがあらそうことは異教徒どもを喜ばせるだけだ。わかったな。」

「ははつ。」

憂国騎士団がデレチャプリマを攻撃しないことが報告された。

救国会議軍も雑誌社を直接攻撃するのをためらうようなので、私服の公安警察が使われた。公安警察がデレチャプリマの社屋にのりこんだとき、当該記事を報道した編集部はもぬけのからだった。他の社員は知らぬ存ぜぬで、うそをついているとは思えず、勇ましく抗議をした社員をつかまえて引き返さざるを得なかった。

捕まえた社員を薄暗い部屋に連れ込んで拷問したものの、何も知らない様子だったので、金を受け取って黙らせることに同意すれば解放したが、断固として抗議を続ける者は睡眠薬をのませて「処分」した。

その間にもテレビ報道がなされた。意外にも次の中継は保守系のコンプラレール系列のテレビ局によるものだった。「シロン、アルーシャで反政府デモ」と題して、反帝政派によるものという比較的冷静、むしろライトバンクよりの報道であったが、「ライトバンク=フォークは即刻退位せよ」「偽皇帝やめろ!」「帝国の手先出ていけ!」などのプラカードが映された。

続いて翌日には、ライズリベルタ、トドスヨウムの紙面に、「皇帝プログレスリーのアムリッツア戦犯説立証の文書発見される。」が一面であらわされ、「帝国元帥ローエングラム侯による作戦指示書発見」「バグダッシュ大佐の証言裏づけ」、社説には「プログレスリーはただちに皇帝を退位し、同盟憲章による共和制を復活させよう」とのせられた。そしてこれが連日報道され、コンプラレールやリストレエコノスさえ似たような報道を繰り返した。

憲兵隊と機動隊が差し向けられ、ライズリベルタ、トドスヨウムの両社の社屋は華々しく攻撃されている様子が、放映された。今度は救国会議軍の半数も加わった。その周囲には、売国マスゴミをたたきつぶせ、左巻きをしめあげろと市民団体が快哉を叫んだり、絶叫したりしていた。

 

一方で救国会議軍の足並みがそろわないのを露呈させることになった。なぜフォークのために戦わなければならないのか、政治腐敗を糺すためにたちあがったはずだ、といった良識派が無言の抗議の意味で加わらなかったのである。

 

ライズリベルタ、トドスヨウム社の攻撃に加わったのはリベラル派憎しという極右思想をもつ士官や兵士の多い部隊だった。救国会議軍のなかでそういった部隊に属する良識派は無言で辞職願を出し、退役者が続出した。そしてなぜか彼らをすすんで雇う会社が現れる。その会社での雑談でますます反政府、反救国会議の意識がじりじりとひろがっていった。

 

翌日全放送局で「カッシナ、スヴァログ星系、エル・ファシルで大規模デモ」が報道される。

カッシナは、シトレ元帥の故郷でもあり、おなじみの「フォーク=偽皇帝退位せよ。」「民主制回復」「立憲主義を守れ!」といったプラカードのほかに「シトレを議長に」というプラカードも見られた。スヴァログ星域は巡視艦隊がいちはやくヤンに組すると宣言した星系である。また、エル・ファシルはヤンがエル・ファシルの奇跡と称される300万人の民間人救出を行ったこともあり、帝国への危機感とあいまって星全体がヤン・シンパのようなものだった。

その翌日、シャンプールでの大規模な反政府デモが報道された。

皇帝プログレスリーはハイネセン周辺惑星の放送局には都合の悪い報道をさせないよう、圧力をかけて、自分たちのシンパの記者たちでかためたが、電波ジャックをされてハイネセンを含む惑星系にも報道された。

皇帝プログレスリーは激怒し、どこがのっとられたのか血眼でさがさせたがわからなかった。

「陛下、どうしますか。」

「ふん、奥の手がある。」

皇帝プログレスリーはこの場に及んでも平然としていた。

(あのときヒステリーになったぼくとはちがう。ぼくはずっとせいちょうしたのだ。なにしろしそんのこうていなのだから。)

 

翌日ハイネセン中央放送局では、

英国風の紳士の顔が大きく映し出された。

「!!」

フレデリカをはじめヤン艦隊のクルー、みほたちもおもわず目を見張った。

「査閲部長より、同盟の市民諸君、兵士諸君及びヤン・ウェンリーに告ぐ」と題する放送が全同盟へ向けて行われたのだった。

「同盟の市民諸君、兵士諸君、わたしは、査閲部長ドワイト・グリーンヒルである。憶測が流れているようだが私は無事だ。ヤン・ウェンリーよ。君は、私の娘を手にかけて、その事実を隠すために帝国からの亡命者である暴徒を手なづけておどし、君の副官にして隠ぺいしようとしてきた。わたしは、君がかって研究したブルース・アッシュビーのような優秀な将帥であり、そのような事実があっても娘に対し責任をとってくれるだろうと考えわたしは耐えた。しかし、そのわたしの忍耐を、君は裏切り、ほかの女性に手を出した。そして正義のために立ち上がった政府、そして神聖にして不可侵である正統なる皇帝プログレスリー・ライトバンク陛下に対し、君は、イゼルローン軍を私物化し、正当なる政府及び皇帝に対し、不法な兵を起こしている。このような君の暴挙はわたしの予想すら超えていた。そんなことが許されるのだろうか。ゆるされるはずはない。フレデリカよ、そんな男のもとを一刻も早く去りなさい。これまでの反政府よりの報道はフェザーンの守銭奴どもの工作であることが、こうしてわたしが姿を現したことによって証明された。兵士諸君、市民諸君。前政権がなにをやってきたか思い起こしてほしい。彼らは政治や軍を私物化して私腹を肥やし、挙句の果てにアムリッツアの敗戦を招いたのだ。ヤンよ、君は私が単なる合成画像であろうなどと反論する気だろうがそうではない。何か質問してみるがいい。」

「ではグリーンヒル大将。あなたは、フォークの悪行を知っておられたはずです。なぜ民主主義の本義にもとるこのような軍事革命に加担なされたのですか。」

画面上のグリーンヒルは答えた。




果たして、画面上のグリーンヒル大将はどう答えるのか?

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