Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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このことを知った時無性に腹が立ったの。
どうして武器を持ってない人や女性に対して軍隊が偉そうに暴力をふるうの?
それをあまりやると目立つからって、こっそり殺しちゃうなんてなんかまちがってるよ。みぽりん、ヤン提督なんとかならないの?

沙織さん....

うん、ミス・タケベの言う通りだ。彼らは間違っている。民主主義国家の軍隊が存在する意義は単純だ。つまるところ市民の生活や生命を守ることに帰結するからだ。


第59話 ハイネセンスタジアムの悲劇です(後編)

「次の男。」

大佐はやせた中年の男にたずねる。

「貴様も同じことを主張するか?うん?」

こめかみにブラスターをつきつける。銃床に血がついている。

やせぎすの男は額とほおに冷たい汗の粒をにじませ、哀願した。

「許してくれ。わたしには妻子がいるんだ。殺さないでくれ。」

クリスチアン大佐は高笑いしてブラスターを振りかざし、男の顔面をなぐりつけた。上唇が裂け、折れた前歯と血が飛び散る。悲鳴をあげて倒れようとする男の襟元をつかんで、さらに殴りつけた。クリスチアン大佐は高笑いしてブラスターを振りかざし、男の顔面をなぐりつけた。上唇が裂け、折れた前歯と血が飛び散る。悲鳴をあげて倒れようとする男の襟元をつかんで、さらに殴りつけた。

鈍い音がして鼻の骨が折れた。男も手錠をかけられた。

「死ぬ覚悟もないくせにでかい口をたたきやがって。さあ、言え。平和は軍事力によってのみもたらされる。武器なき平和などあり得ない、とな。言ってみろ。言え。言ったら許してやらんこともないぞ。どうだ。」

「おやめなさい!」

青年の頭をささえていたジェシカが、青年を静かに横たえると、立ち上がって大佐をにらむ。

「死ぬ覚悟があればどんな愚かなこと、どんなひどいことをやってもいいというの?」

「愚かだと?」大佐はせせら笑う。

「甘っちょろい空疎な平和論と同盟の社会の正常化に立ち上がったわれわれのどちらに正義があるか自明だが。力なき正義は無効なのだよ。」

「暴力によって自らの正義を他人に強制する種類の人間がいるわ。大は500年前に銀河帝国の始祖となったルドルフ・フォン・ゴールデンバウム、小は大佐あなたに至るまで。あなたはルドルフの不肖の弟子よ。それを自覚なさい。そしている資格のない場所から出ておいき!」

大佐はせせら笑いをしたかとおもうとおもいきりブラスターでジェシカを殴ると、

「つれていけ。」

と兵士に命じ、手錠をかける。

「はなして。はなしてよ。」

「俺は、この兵士たちにお前を強姦しろということもできるんだ。覚えておくんだな。」

「さて、次!」

そして何人か逮捕していくうちに

「やめろ!やめろ!出ていけ!やめろ!やめろ!出ていけ!」

というコールが響いていく。

大佐に耳うちする者がいてクリスチアン大佐は、ほくそえみながらでていった。

このとき集会にあつまったのは20万人だったが、コンプラレールとリストレエコノスは3万人と報道した。トドスヨウムとライズリベルタは10万人を超えたと推察されると人数をぼやかしたにもかかわらず、抗議のメールやFax、電話が鳴り響いたため、3万人は超えたと思われると訂正の報道をした。後に電話は半分がプリペイド式、メールはその7割がオープンプロキシや全くのあかの他人のアドレスを使用していたことが判明した。

集会参加者はすべて写真をとられた。そして尾行された。

尾行に気が付いた者は、人目のつかないところまで追いつめられてつかまって、殴られた後青酸カリを飲まされ死体は目のつかないところに運ばれていった。住民票をはじめ公的機関が保管しているデータはハッキングで抹消され、銀行口座は預金封鎖され、一週間後には預金ごと消えていた。

また数日後、参加者の自宅にプロテクターを付けた人物が現れる。うむもいわせす数人がかりでバンに乗せられ殺される。また殺し合いを見て楽しむ施設に連れていかれ、薬を打たれてナイフで切りあいをさせ、死ぬまで殺し合いをさせた。蜂牢に何十人も閉じ込めて殺した。もちろんやはり住民票をはじめとするデータと銀行口座は抹消された。数日後には海に遺体がうかんでいる者もいたが顔が分からないようつぶされていた。

また体格が良かったり兵士として使えそうと判断された人物は転向して兵士になるようすすめられた。就職先はどこも勤められないぞとの脅し付きで。それに応じなかった場合は前述のような方法で殺された。それらはすべて目撃されないよう慎重におこなわれた。

プリンケプスの支持率は、マスコミによって常に35~55%の間の範囲で発表された。なんのことはない、無党派層と、「国民平和会議」支持者による党内支持率を足して二で割った数字をメディアに報道させたのだった。それはプリンケプスが支持されているという宣伝、野党や無党派への脅しと牽制、「国民平和会議」支持層に於けるプリンケプスの支持率を把握するためのものであった。そのため、時々20%代とか10%代という発表する夕刊紙、雑誌などのメディアはつぶされるか、救国会議の都合のよいニュースのみを報道する御用機関にさせられていった。

いくつかの自治体で正直に住民票が抹消されたと正直に表明すると何をしているのかといっせいにマスコミに叩かれた。また息子や娘の、一方では家族が行方不明で、住民票や各種公的機関のデータが削除されている人々に対しては大人しくしていれば何もしないが、政府に原因があると告発しようものなら家族がされたように抹殺、抹消された。そのため、家族を殺されても恨みを呑んだまま、だれもが口をつぐんだ。

また反政府活動、反政府思想を持つ者に対し密告を奨励したが、密告者も見張られた。密告者が良心の痛みを覚えて後悔して行動を起こそうものなら、同じように殺され、抹消されるぞと脅した。

またテレビには能面のような美女がいれかわりたちかわりプリンケプスを賛美する様子が毎日一日中放送されていた。その真ん中には満足そうな笑顔のプリンケプス、すなわち「フォーク」最高執政官が片手を前方斜め上に挙げていた。

ハイネセンは、500年前から450年前の弛緩していない銀河帝国の独裁体制やはるか1650年前に地球上に存在した独裁国家のようになっていた。

 


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