Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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皆の視線の向いた先にいたのは...


第51話 ひさしぶりの戦車で、ひゃっほう、最高だぜい、であります。

自然と優花里に視線が行く。

「わかりました。秋山優花里、戦車隊の隊長をつとめさせていただきます。」

「じゃあ。わたしも行こう。戦車の操縦は車長の気心が知れたほうがいいからな。」

「ありがとうございます。冷泉殿。」

優花里は敬礼する。

「優花里さん、麻子さん、よろしくおねがいします。」

みほは頭をさげる。

「西住殿、気になさらないでください。」

「隊長、いってくる。大丈夫だ。敵の弾は戦車にあてさせない。」

「よろしくたのむ。」

シェーンコップは優花里と麻子の肩をたたいた。

麻子はシェーンコップに対してうなずき、優花里は、

「はい。准将。」と返事をした。

「隊長、行ってくる。」

麻子がふりむきざまに、みほに対して指をたててみせる。

優花里と麻子はシェーンコップに続いて陸戦隊シャトルに乗り込む。

「陸戦隊シャトル降下用意。」

護衛艦と大気内戦闘艇が陸戦隊シャトルを守りながら降下していく。低空になってくると対戦車砲や戦闘機などの地上からの攻撃がはじまるが、護衛艦と大気内戦闘艇の攻撃で次々に撃墜、破壊されていく。

部下「シャトル、護衛艦降下成功。装甲車及び戦車射出します。」

シェーンコップ(※以下「シ」と略す。)

「なんとかシャンプールに上陸できたな。状況は?」

部下「救国会議側の爆撃がありまして多数の死傷者が出てる模様。」

部下「敵は要所で土嚢を積み、陣地を構築しています。」

シ「空襲の被害は?」

部下「低高度からの爆撃で500名ほどの死傷者がでています。とくにシャンプール・シャングリラ・ホテル前は深刻で、買い物客が列をなしていたため、被害甚大です。」

シ「民間人に被害が及ばないように戦わなければならないな。」

部下「それでは奴らが塹壕を設け、土嚢を積んだ陣地にわざわざ攻撃するということですか?」

シ「迂回できないなら、正面攻撃するしかない。最大限出血を強いるつもりなのだろう。」

部下「幸い上空は、西住中将の艦隊と航空隊が支援してくれます。また第二宇宙港を奪えばさらにこちらに有利になります。」

部下「しかし、第二宇宙港に通じる道は厳重な警戒がされて装甲車が列を連ねています。」

 

みほ「制空権を取らないと、被害がますます大きくなります。空戦隊発進してください。」

「了解。空戦隊発進しま~~~す。」

隊長であるボブヘアの少女が大声で叫んだ。

「この声は??アイちゃん?」

「はい。エリコさん、優花里さん。」

エリコはおどろいた。優花里が見てもおどろいたに違いないが、彼女は戦車隊を指揮するため降下しているので気が付いていない。

それは、ムナハプロにいたアイ・ヒカワだった。彼女も優花里がまきこまれた憂国騎士団ハポネプラム支部の事件があった際に、結局ムナハプロがつぶされたためにやめざるをえなくなり、食べていくために軍隊に入り、優花里やエリコがいるという第14艦隊への任官を希望していれられたのだった。

彼女は第14艦隊の航空隊のエースのひとりだったが、そのほかにも上級者がいるようだった。ローゼンリッターや優花里にとってはうれしいかぎりだった。

 

それはさておき、シャンプールの地上ではわずかに残った救国会議の爆撃隊がイゼルローン陸戦隊の上空を襲おうとする。

ウウウーーーーーンンン

サイレンが鳴る。

「空襲警報発~令、空襲警報発~令」

 

「空襲が始まったな。」

「あわてなくてもいい。第14艦隊の艦載機隊がまもってくれる。」

アイ、ニシザワ、イワキのエースたちは、敵に狙われても後ろへ回り込む神技「左ひねりこみ」や巧みに射線を外すスライド飛行を活用してあれよあれよという間に敵機を撃墜していく。

「太陽を使った目くらましか。」

「無駄だな。」

一機、また一機と炎と煙をひきずるように噴き出して救国会議の爆撃機が地上へ向かって落ちていく。

 

部下「空襲は防げたようですな。」

シ「すぐに、第二波、第三波がくる。なんとかして宇宙港を奪うんだ。」

シェーンコップは部下たちを叱咤した。

 

シャンプール救国会議司令部のマロン大佐に戦況が伝えられる。

「なに、航空隊が敗北?」

「はい...。」

「お前の連れてきた亡命者のパイロットたちは、イゼルローン軍にやられたようだな。」

帝国からの亡命者パイロットたちはそれなりに優秀だったし、降伏したら引き渡されると脅されて必死に戦い、シャンプールの「太陽」をつかって目くらましまで試みたものの、ことごとく撃墜されたのだった。帝国の亡命者を名乗る男たちの長が答える。

「面目ないが奴らは強かったということだ。」

「資金が足りないからって、何でもありだな…。首都の奴らは本気でクーデターを成功させるつもりなのだろうか….。まあいい、お前は同じことを繰り返さないよう活をいれてこい。」

マロン大佐は亡命者の代表に対してつぶやく。

「いいだろう。」

シェーンコップたちの前には、そびえたつ断崖と鉄条網が幾重にも連なり、その上にトーチカが見える。見えない部分に塹壕、地下陣地、地雷、砲兵陣地があるのだろう。

シ「やっかいだな。しかし、制空権はこっちにある。地図はどうだ?」

部下「敵の陣地は海岸沿いに大きく分けて三段あります。それがそれぞれ三重の断崖と鉄条網、多数のトーチカが設けられています。空戦隊が撮影したものを地図として図化したものです。」

シ「さすがに、これは空戦隊の援護とトーチカを破壊しないといいようにやられるな。トマホークが届かない範囲から攻撃されたらさすがにひとたまりもない。」

部下「しかし敵にも弱点があります。大量輸送が可能な鉄道が一ヶ所しかありません。しかも経済発展優先に建設されたものなので防御が弱い。これをたたけば敵の補給、通信、移動のための手段は致命傷を受けます。」

補給、通信、移動手段の鉄道がひとつしかない。経済発展を考えて敷かれたものなのでもろい。

「みぽりん。敵トーチカの位置が全部わかったよ。」

「敵陣第一段目の後方第2陣と第3陣のトーチカを艦砲射撃でつぶします。それから敵陣二段目のトーチカを攻撃。第一段目第1陣は秋山さんの戦車隊にまかせます。」

みほの艦隊から艦砲射撃が上空から行われる。

地上におりた優花里はおどろく。

「うわあああ。シュトルムティーガーの競演であります。」

最大射程5.6km強の38cm臼砲をそなえた自走砲がならんでいた。上空からの偵察から、トーチカが少なくとも15cmカノン砲の攻撃に耐えられる仕様であることが分かっていた。

味方に死者を出したくないみほがヤンやシェーンコップに進言して確保させたのだ。

「感動している場合じゃないぞ。」

麻子がくぎをさす。

「でも冷泉殿、自動照準、自動装填であります。」

「トーチカの数がはんぱじゃない。」

「それから優花里さん、そっちにいたんですね。」

「え?アイちゃん、おひさしぶりであります。」

「おひさしぶりでありますって、向こうにも戦車がいるよ。こういうの。」

戦車の画像がいくつか送られてくる。塹壕が防御ラインの堅固さに自信があるのだろう。Ⅱ号やⅢ号程度を改造した戦車ばかりだった。しかし、かってのイタリア製やアメリカ製と思われる車両はない。砲が換装されていても車体は全てドイツ製のものだけだった。




シャンプールでの戦いがはじまる。

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