Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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ヤンは幕僚の会議を招集する。


第50話 出撃です。

会議室へ向かう通路でヤンはシェーンコップに出会う。

「閣下。」

「何だい。」

「ミス・ニシズミとミス・グリーンヒルとどちらになさるのですか?」

「いきなり何を言い出すんだ。」

「いや、いろいろとまあ...彼女らは閣下をどう想っているかと考えましてね。いや部下としてですよ。」

「きみはどう思っているんだ?」

「さあてね。わたしにも実はよくわからんのです。あなたは矛盾の塊だから。」

ヤンはいくぶんか不機嫌そうな表情をつくる。シェーンコップは、そんな表情をしている、民主的に物事をすすめたいために部下の無礼さに対しておおらかである上官を愉快そうに見つめてさらに話し続ける。

「まず、戦争を嫌いだという人はいます。しかし、その愚劣さという点であなたほど戦争を嫌っている人は寡聞にして知りません。同時にあなたほど戦争の名人はいない。そうでしょう。」

「ローエングラム侯ラインハルトはどうなんだ。」

「やらせてみたらおもしろいでしょうな。五分と五分の条件でやらせたらたぶんあなたが勝つだろうと私は思ってるんですがね。」

「う~ん、そんな仮定は無意味だな。」

「そんなことはわかっていますよ。」

「では、次の点です。あなたは、現在の自由惑星同盟の権力体制が、道徳的にもその能力においてもどれほどダメなものか骨身しみて知っている。にもかかわらず、全力を挙げてそれを救おうとする。これも大いなる矛盾ですな。」

「わたしはベストよりベターを選びたいんだ。君の言う通り、今の同盟の権力体制が劣悪であることは確かだ。しかし、あの救国会議とやらのスローガンを君も見ただろう。あの連中は前の連中よりもひどいじゃないか。」

「私に言わせればね。救国会議のピエロどもに腐敗した権力者どもを一掃させるんです。完全に徹底的にね。どうせやつらは、ボロを出して事態を収拾できなくなる。そこへあなたが乗り込んでいって、掃除人どもを追い払い、民主主義の回復者として権力を握るんです。これこそがベターですよ。」

二の句が継げず、イゼルローンの若き司令官は。精悍な白兵戦技の猛者でありながら切れ者の部下を見つめた。その部下は続ける。

「どうです。形式などどうでもいい。独裁者として民主政治の実践面を守るというのは。閣下は、歴史がお好きだから、歴史上の人物にも独裁的な実権を握りながらすぐれて民主的な政治を行った人物をいく人かあげられるでしょう。その人物に習ったらいかがですか。」

「う~ん。たとえばペイシストラトスに大ペリクレスかい?柄じゃないな。わたしに彼らのまねができると思うかい?」

「そもそも軍人というのがあなたの柄じゃありませんよ。それでもこの上なくうまくやっているんだ。僭主だろうが独裁者だろうがうまくやれるはずですよ。」

「ところで、シェーンコップ准将。」

「なんです?」

「今の考えを、わたし以外のだれかに話したことがあるか?」

「とんでもない。」

「それならけっこう...。」

ヤンはシェーンコップに背を向けて歩き出す。黒髪の学者風司令官のあとを比類ない白兵戦技の猛者がにやりと笑みをうかべながら五、六歩ほど遅れてついていく。

会議の席上でヤンは伝える。

「全艦隊を高速機動部隊と補給及び火力を機能を中心とした後方支援部隊に分けたいと思う。」

「要塞には、キャゼルヌ少将に司令官臨時代理として残っていただきます。」

「わかった。」

「シェーンコップ准将、君はわたしの幕僚として乗り込んでいただきたい。」

「承知しました。」

「全艦隊に通達。4月20日に出発する。最終目的地はハイネセンだ。それまでの行軍については指示にしたがってほしい。」

 

一方、統合作戦本部の地下会議室に、救国会議の幹部たちが集まっている。

「ルグランジュ提督。」

「貴官には第11艦隊を率いてヤンと戦っていただく。」

「承知しました。しかし、査閲部長のご息女のことは?」

「査閲部長はいま急病で入院しておられる。提督にはただ軍人としての責を全うされたい。」

「はい。では、ヤンを屠るか、降伏させてごらんにいれましょう。」

 

「ふむ。ミス・ニシズミ、どう思う?」

「わたしも、首都星ハイネセンを突く方法は正しいと思います。だけど一つだけ心配なことがあるんです。」

「それは...。」

「シャンプールがハイネセンへ向かう私たちの後方をかく乱して要塞との連絡、補給を絶つことです。」

「やはり、そう思うか、ミス・ニシズミも。」

「はい。ヤン提督もご存知のようにわたしは少数の戦力で戦ってきましたから、わたしが敵だったら、逃げ隠れして、後方をかく乱することを考えます。」

「でも、敵の司令官は、ヤン・ウェンリーやミホ・ニシズミじゃあありませんよ。」

「未来のヤン・ウェンリーやミス・ニシズミがいるかもしれないぞ。」

4月26日になった。

「惑星シャンプールまで、3光秒。」

シャンプールが月くらいの大きさにみえる。

「西住中将、シェーンコップ准将、手筈どおりにおねがいする。」

「「わかりました。」」

「衛星軌道上の監視衛星と戦闘衛星を破壊します。華さん。」

「発射!」

「衛星軌道上の衛星群破壊完了。」

「対空レーダー、対空高射砲、対空ミサイル基地捕捉。」

「発射!」

華が叫ぶとみほの分艦隊から数千、数万のおびただしい光条が地上へ向かって放たれ、爆煙とともにあっというまに対空レーダー基地や対空火器を沈黙させた。

「西住中将。」

「シェーンコップ准将?」

「どなたか戦車隊を指揮してもらいたいが。」

「わたしは、みぽりんの指示通りに通信はできるけど...指揮は...。」

「わたくしも砲撃ならともかく、指揮のことは...。」




そして皆の視線が向いたのは?


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