Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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あんこうの天才的な操縦手が「転移」した場所は....


第4話 おばぁ、ごめん。泳いで帰れる距離じゃない。

「う、ううん...。」

黒いストレートの長髪で白いカチューシャをつけた少女は、眠そうにめをこすって上体を起こして起き上がろうとする。

彼女のパンツァージャケットと白いプリーツスカートはすすで汚れていた。

(ここはどこだ??学校じゃないみたいだが...)

いましがたまで手にもっていた戦車のレバーの感覚、足のペダルやクラッチの感覚がない。

窓から星が見える。SF映画でみた宇宙船の中のように思われた。

深緑色の軍服にアイボリースラックス、五稜星のついたベレーを被った男たちが周囲をいそがしく歩き回っている。戦闘中のようで、窓と思われる部分には敵弾が横殴りの雨のように光って飛んできている。少女は操縦の様子をしばらく眺めていた。

ようやく男たちのうち一人が少女を見つけた。彼はとまどいながらも少女に話しかける。

「きみは、誰だ?どこから来た?」

東洋人の少女で、来ているものから考えても帝国軍や帝国の関係者には思えないし、スパイがそんな服装をしているようにも思えないから、とまどいながらも少女に話しかけたというところだった。

英語だ。黒髪の少女も英語で答える。

「わたしは日本人で冷泉麻子という。戦車道の試合中だったが、記憶がとんでいつのまにかここにいた。」

「日本人?戦車道?なんだそりゃ」

「なんか古そうな話だな。ヤン提督なら知っているかな。」

「いまは戦闘中だぞ。無駄話はつつしめ。どうやらその少女はあやしいところはないようだから客室へいってもらえ。」

「はい。副長。」

そのときだった。オペレーターが悲鳴のように報告した。

「ち、直撃、きます。」

「取り舵10°!」

「間に合いません。」

「ちょっとかしてくれ。」

麻子はコンソールに向かうとたくみに戦艦を操縦した。直撃弾はななめ上をすり抜けていく。艦橋に驚きの電流がはしる。

「君はいつのまに...。」

乗員たちは驚きの表情で麻子を見つめる。

「戦車の操縦とは違うけどみんなが操縦しているのをみてだいたいわかった。」

眠そうな声で麻子は答える。

「とにかく助かった。ありがとう。」

「というかここはどこなんだ。宇宙船の中のように思えるが。戦争しているのか。」

「この船は、同盟軍第13艦隊フィッシャー分艦隊戦艦ゼートフェル。この場所は帝国領内のドウェルグ星域だ。われわれは戦争をしている。」

「帝国というのが敵なのか。」

「そうだ。」

麻子は少し考えた。宇宙戦艦で戦闘するならはるか未来に違いなかった。

「わたしはかなり未来へ来てしまったらしい。いまは何世紀なんだ?」

「何世紀と言われても...宇宙歴796年だが....。」

麻子は息をのんだ。自分ははるか未来のSFの世界のまさにそのただなかにいることを改めて自覚せざるを得なかった。

(宇宙暦ということは、なにかがきっかけで暦が変わったのだ。宇宙で人類が暮らせるようになったということは、かなり技術がすすんだということだろう。宇宙歴の紀元はわからないが、21世紀から少なくとも100年くらいはたっているだろう。そこから約800年...そうなると地球からかなり離れている可能性がある...)

「!!わたしは、1000年近い過去から...タイムスリップしたらしい...。ここは銀河系の中なのか?どこなんだ?地球は??」

乗員たちは麻子の発言におどろく。

スクリーンに銀河系の星図を映し出す。

「ここがイゼルローン回廊。ドウェルグ星域はここだ。これが帝国首都オーディン。

帝国領はオリオン腕で地球はここにある。」

(おばぁを一人にしてしまった。どうすればいいんだろう...ここは地球上ですらない。宇宙服をきて宇宙遊泳して届く距離じゃない。)

「あの...ワープってできないのか?」

「できるが...。」

「地球まで行けないか。」

「いや無理だ。この船のワープの限界は、1000光年だ。ワープアウトした空間で帝国軍の索敵網にひっかかたら一貫の終わりだ。」

麻子はすべてを悟る。

(しかたがない。サンダースの試合のあとのような地球上じゃないのだ。あとの手がかりは「あんこう」の仲間たちがどこにいるかだ。)

「わたしと同じ格好をした女の子たちをみかけなかったか。」

乗員たちは首を横に振る、

「そうか...。」

麻子はため息をついた。




とんでもない事態が麻子をかえって冷静にさせた。

ニコ動の某動画や南雲さんの逸話を思い出す方がいらっしゃるかも^^;

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