Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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みほは取材攻勢に遭ったことを友人たちに話す。


第38話 捕虜交換式です。

みほは、あんこうの面々と食事をする。

「みぽりん、そんなことあったの?大丈夫?」

「うん...。」

「たいへんでしたね。でもひどい話ですね。」

「沙織は取材してほしいんじゃないのか。」

「麻子。何言うのよ。わたしだってそんな取材のされ方されるのはいやにきまってるじゃない。」

食堂には例の記者たちがよってきて話しかけられる。

「やあ、きみたち、先日はすまなかったな。」

少しアルコールで顔が赤くなっている。

「お姉ちゃん、これ経費ね。」

士官食堂のレジ員に書類のようなものを渡していた。

「あれって?」

「つけを経費として落としてるんだろ。」

麻子がつまらなそうにぼやくが、少々怒りが混じっているのが感じられる。

「なんて人達なんだろう。」

「あきれた話ですね。」

 

がやがやとまた別の記者の一団がはいってくる。

「いやあ、ヤン提督とぼうやが食事してるとこみかけてさ。」

「で、どうした。」

「塩まかれたよ。ジャーナリズムを何だと思っているんだ。」

「なんで食事まで機密なんだろうな。公開されても困らないだろうに。」

あんこうの面々はあきれて言葉が出ない。

「....。」

「もっともっとあきれた話だな。食事の時ぐらい解放してもらいたいものだが。プライバシーを侵害するのがジャーナリズムなのか?」

麻子がわざと聞こえるような大きな声で話す。

「なんだと小娘!」

「あのう...。」

「なんだ?きれいな娘さんだな。」

「わたしは五十鈴華といいます。わたしは華道やっています。皆さんはジャーナリストですよね。」

「そうだが?」

「最近政府のいいなりの報道が多い気がします。たとえばこの記事とか...。」

華は新聞を見せる。

「情報をもらえないと取材にならないんだ。」

「そうじゃなくて、権力を監視して、権力に言いなりにならずに、ご自分の足でかせいで取材をして、客観的な情報を記事にして、市民に的確な情報を伝えるのがお仕事のはずです。市民が政治について判断するために、足で稼いで皆さんが実際に見たことを客観的に報道することが必要なのではないでしょうか。そのためにジャーナリズムがあるんですよね。」

「あたりまえじゃないか。」

「わたしには、皆さんがそうは見えません。華道では真剣にお花を活けます。すばらしいお花を活けるためにはセンスと努力が必要です。でも皆さんの場合は、ご自分の足で確かめるのではなく、与えられた情報をただ記事にしてるだけです。剣山にただ花をならべても生け花にならないように、与えられた文字を記事にするだけでは何も市民に伝わりません。ジャーナリストは情報の職人のはずです。でも皆さんは、肝心の足で稼ぐ時に限って、ヤン提督やみほさんの生活の邪魔をしています。それは逆なのではないでしょうか?」

「生意気な。勝手にしろ。」

記者たちはすたすたと歩き去ってレジに立つと

「姉ちゃん、これ経費ね~。」

と書類を提出して去っていった。

「ほんとうに塩をまきたくなるであります。」

優花里は怒りを口にした。

2月19日、捕虜交換式の日がやってきた。

「0740、帝国軍の船団を確認。捕虜の輸送艦と思われる艦艇240隻、護衛艦10隻。護衛艦のうち1隻の船体は赤く塗装され、他の艦艇と船種が異なるようです。トゥールハンマーの射程内に進入。」

「あれは...先日の輸送船団を攻撃した艦隊の旗艦です。」

華がつぶやく。

 

午前9時45分、その真紅の旗艦が入港してきた。

10時10分、その旗艦バルバロッサのハッチが開き、帝国軍の代表たちが降りてくる。

先頭で降りてきた士官は、ずば抜けた長身、ルビーを溶かしたようなという言葉が当てはまりそうな癖のある赤毛、感じの良い青い瞳、「ハンサム」という言葉を実体化したような若者である。

そのあとに赤毛の若者ほどではないが、若く見える士官が3人降りてくる。

両軍の軍楽曲が流れ、同盟の黒髪の提督は、帝国の若き赤毛の上級大将を迎えて握手をかわす。

無数のフラッシュがたかれて、撮影が行われる。黒髪の提督と赤毛の若き提督は中央のテーブルに歩み寄った。

捕虜のリストと交換証明書が二通おかれている。

「銀河帝国軍および自由惑星同盟軍は、人道と軍規に基づき、たがいに拘留するところの将兵をそれぞれの故郷に帰還せしめることを定め、名誉をかけてそれを実行するものである。

帝国暦488年2月19日 銀河帝国軍ジークフリード・キルヒアイス上級大将

宇宙暦797年2月19日 自由惑星同盟軍ヤン・ウェンリー大将」

と記されていた。

「銀河帝国軍上級大将ジークフリード・キルヒアイスです。」

「同盟軍大将ヤン・ウェンリーです。遠路お疲れ様です。」

「ヤン閣下にはかねがねお会いしたいと思っていました。」

ヤンは、口元をゆるめて微笑み

「こういう形でもお会いできてよかった。」

「同感です。」

二人はサインをし、公印を押す。そして書類を交換して再びサインをして、公印を押した。

二人は握手を交わす。

「形式というのは必要かもしれませんが、ばかばかしいことでもありますね。ヤン提督。」

キルヒアイスはヤンに若々しくさわやかな微笑を向けて話しかける。

「まったくです。」

ヤンも笑顔で返す。おたがいに好感をもったようだった。二人はしっかり握手をすると、

キルヒアイスの青い瞳は、中将の階級章が肩にみえる栗毛色の少女に目が留まる。

「...あなたとはどこかで戦った気がしますね。どこででしょうか。」

「えっと...補給艦隊を守って戦いました。」

みほは、ほおをかすかに赤らめて答える。

「やはり、そうでしたか。みごとな用兵でした。補給艦を逃がしてしまいました。」

「いえ、閣下の用兵が完璧で、つけ込む隙がありませんでした。」

「いえ、完全に読まれていました。運が良かっただけです。ミス...?」

「西住みほといいます。」

「ミス・ニシズミ、ラインハルト様がほめていました。」

「光栄ですって、お伝えください。」

「わかりました。」

赤毛の若き提督は微笑み、その瞳は、次に亜麻色の髪をもつ少年へ向けられる。

「君はいくつですか?」

「今年15になります。キルヒアイス閣下。」

「そうですか。わたしが幼年学校を卒業して初陣したのは15のときでした。頑張りなさいと言える立場ではありませんが、元気でいてください。」

ユリアンは、敵軍で第二の偉大な提督に話しかけられたことが信じられなかった。

彼は、ほうっと突っ立っていた。

「こら、あんまり感激したからといって、帝国軍に寝返ったりするなよ。」

笑いながらアッテンボローに軽くこつかれユリアンはわれに返る。

 

「沙織どうだ,,,。」

「素敵....。」

沙織は目を輝かせる。

「みぽりん?」

「え、あ、はい。」

「沙織さんの言う通りキルヒアイス提督は素敵な方だと思います。」

華が同意し、

「たしかに素敵な人だ。能力だけでなく人柄の良さがにじみ出てくる。」

麻子も同意する。しかし、麻子の言わない部分を含めてエリコがつぶやく。

「しかし、あの方も軍人?だから作戦になったら容赦ない?」

「そうだね。そういうところはみぽりんに似てるかもね。」

「え...。」

「みぽりんは、クラスのみんなの名前と誕生日覚えてるんだよね。」

「うん。」

「あの人も、それからラインハルトという人もそんな感じがする。あの人はすごく優しそう。だけどエリちゃんの言うように戦いとなったら容赦ない。みぽりんは自覚ない?」

「え...そうなんだ...ごめんなさい。」

「いいのであります。西住殿もキルヒアイス提督も部下に全面的に信頼されているから強いのであります。」

「そういうこと。」

「ラインハルトさんは、なんとなくお姉ちゃんやお母さんに似ている。」

「たしかにそんな感じだね。」

「すごいカリスマ性を感じるであります。」

しばらく間があって沙織が話題を変える。

「ところでさ~。」

しばらくガールズトークが続いていたが、

「もうこんな時間。」

と誰かが言うと睡魔(ヒュプノス)の誘いを感じた、あんこうの面々はそれぞれ自室へもどっていった。




記者クラブ弊害があるなと思います。足で稼がなくなる。都合のいい情報しか流されない。役所や政党、政治家にとっては統一的に情報が流せるので、誰がこんな情報流したんだといわれないで済んだりとか便利ということです。一方で、石綿被害とか公害病とか産廃汚水漏れとか様々な問題は勇気あるジャーナリストによって明かされてきました。本気で良心に基づく取材をしようとしたら、命がけになる場合も多いようで、たしかに給料もらって安全にすごすためにはそうなってしまうのかなと思います。今田中角栄を再評価しようとちょっとしたブームになっていますが、なぜ田中角栄だけがつぶされようとしたか、なぜそれ以外のもっと大きな疑惑にメスがはいらなかったのか...

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