Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
宇宙暦797年2月14日、この日、30万人を超す捕虜の一団がイゼルローンに到着した。
しかし、そこに同盟政府の委員たちがいた。その連中ときたら、自分たちの割り当ての宿舎がよくない、士官食堂の食事がまずい、兵士が敬礼しない、果ては、みほや華が直接応対しても、ヤン提督がなぜ迎えに来ないのか、と勝手なことばかり言っていた。
「あの人たち、なんなんですかね。」
優花里があきれてぼやきが口をついてしまう。
「勝手な話だな。」麻子の言葉には少しいらだちがある。
「わたしに色目使ってました。」華がぼやく。
「西住殿は、こんな小さい女の子が中将なのか、なんて言われてましたね。」
「沙織、行かなくてよかったな。いろんな意味で。」
「どうしてよ?麻子?」
「おっさんたちに色目使われても困るし、小娘ってばかにされてもいやだろう。」
沙織がどう反応していいか困った顔になる。
「えへへ...。」
みほが苦笑する。
しかし問題はそれだけではなかった。
「なんだ?これは?」
「ああ、委員さんたちの土産さ。」
万年筆、靴下、タオル、時計...そこには委員個人や政治団体の名前が記されている。
「あの連中、自分たちの経費で買ってきたのかな。」
「おそらく国防委員会の経費だろうな。」
「個人名や団体名を記入するのは背任行為だぞ。」
ヤンは素知らぬ顔をして委員たちのために「歓迎」パーティを開いた。
委員たちは、言いたい放題のいやみを提督や幕僚に言ったり、華は来ないのかと尋ねたりしたらしい。
「何なのよ~!あの人たちは!」
「沙織、みんなお前と同じ気持ちだから落ち着け。」
麻子がなだめる。
パーティが終わった直後の二時ごろ、アッテンボローは、憤然として会場から出ると部下を呼び集めて
「これを帝国軍の捕虜に配ってやれ。俺が責任取るから。」
と指示し、帝国軍の捕虜の代表を呼んで
「これは同盟政府から皆さん方へ、友愛のしるしとして差し上げるものです。安物で申し訳ないが受け取っていただきたい。」
部下たちも委員たちの素行にあきれていたので、喜んで帝国軍の捕虜に配った。
その二時間後大騒ぎになったが、アッテンボローは、
「あんたたちは、捕虜を迎えるという公務のために来たんだよな。公務を利用して個人の選挙運動をやるのは、同盟公選法第4条の違反だぞ。ここは軍用施設だから、司法警察権はMPにある。なんならあんたらの主張をMPに聞いてもらおうか?」
委員たちは歯ぎしりして、だまりこんだ。
ヤンはアッテンボローが後日圧力を受けることがないよう捕虜の代表を呼び、事情を話し、
「申し訳ないが、そういうわけで感謝状を書いてもらえたらうれしいのだが。」
「民主主義と言ってもいいことばかりじゃないんですね。」
「お恥ずかしい限りで...。」
「帝国もご存知のように貴族どもがふんぞり返っていて困ったもんなんですけど。同盟さんもいろいろ事情があるんですねえ。わかりました。書きましょう。」
帝国軍の捕虜の代表は微笑んで、感謝状を各委員あてに書いてくれたため、落着した。
2月16日。捕虜交換式が近づいているために入港する船が多い。一隻につき5000人から1万人の捕虜がいる。
キャゼルヌはつぶやく。
「捕虜だけならいいんだが、くっついてくる汚物どもがなあ。」
「ほんと。ほんと。すっごく迷惑。」沙織も同意する。
「汚物」には二種類あって、一つは選挙運動をするために「お進物」をもってくる「国防族」の政治屋と交換式を取材するための御用ジャーナリストたちである。
イゼルローンにはヤンのほかにもうひとり名将がいる。しかもかわいらしい女の子だから写真を放映するだけで絵になる。
こんなことがあった。自称ジャーナリストたちが、みほが食事しているのをみつけて取材しようとする。
「西住中将...ですか?」
「はい...。」
パシャパシャ、フラッシュをたいいて写真をとる。
「あの...すみません...いま食事しているので...。」
それでも遠慮しない。完全に民主主義をはき違えている。
(落ち着いて、食事もできない;;)
みほはばっと立ち上がって逃げ出した。
「待ってください~西住中将。」
「はうっ。」
運悪く彼女は転んでしまう。白いプリーツスカートがめくれてボコ柄のかわいらしいパンティが...
みほはあわてて正座して股間を隠した。
立ち上がろうもんならパンティを撮られてしまう恐れがあったので正座したために動けなくなったみほは撮られ放題。
そこへ優花里がやってくる。
「何しているでありますか。」
「何をしているって取材に決まっているだろう。」
「それはおかしいであります。大の男が女の子を取り囲んで撮影しまくるなんておかしいであります。」
「軍の機密を侵しているわけじゃない。何をしようと自由だろう。それとも軍は何でもかんでも秘密にするというのか?情報公開の原則にもとるだろう。」
「あ、あの、女の子をおいかけて、西住殿のパ、パンティを撮ろうとするなんて。それは情報公開の範囲外であります。」
「と、とんでもない、誤解だ。われわれはただ...。」
そこへ記者の腕をつかんだ男がいた。
「お前さん方、民主主義の社会でジャーナリストの果たす役割は、権力を監視するものだと聞いているが、いつから女の子を追いかけまわすのが仕事になったんだ?」
そこへ立っていたのはシェーンコップだった。
「わ、わかりました。すみません。」
「い、いこう。」
記者たちは歩き去っていった。
「こまったものだな。」
「そうですね。西住殿?」
「あ、ありがとう。」
みほはほおをかすかに赤らめて立ち上がった。
翌17日、シェーンコップのドアポストにはチョコが入っていて、かわいらしいボコの絵のある一筆箋が添えられていた。
「シェーンコップ准将
先日はありがとうございました。三日遅れですけど、これはほんの気持ちです。
みほより。」
と書いてあった。
「連隊長。これは貴重なチョコですね。」
ヒューと口笛を吹いてブルームハルトとリンツが話しかける。
「ああ。この送り主は普段はかよわい女の子だが、艦隊指揮をさせたらヤン提督とともに帝国軍の猛者どもをおそれさせる指揮官だとはだれもおもわないだろうな。」
「そうですな。連隊長の最近の最大の戦果でしょう。うらやましい。」
「ブルームハルト、俺は白兵戦は教えられる。だがな、そっちのほうは理屈じゃない。場数をふまないとな。今回はただの偶然だが。」
シェーンコップはあごをなでた。
みぽりん、2回目のチョコ配布でした。