Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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アムリッツア途上で、ついに天才操縦手がロフィダ・ガールズ(チームあんこう)に加わる。

※麻子が現れた過程については、第4話、第5話をご参照ください。


第29話 あんこうチーム、宇宙で復活します。

「えっつ。麻子が?」

沙織はおどろく。

「うん。フィッシャー少将の分艦隊所属の戦艦ゼートフェルに突然現れたということなんだ。」

ヤンが話し、ゼートフェル艦長が麻子をスクリーンに出す。

「麻子...。」

「沙織か。」

「冷泉殿。」「麻子さん。」「冷泉さん。」

「秋山さんに隊長に五十鈴さんか...。」

麻子はほほえむ。彼女はあまり感情をあらわさないが、久しぶりに会えた仲間たちだ。うれしくないはずがない。

「彼女は、ゼートフェルを巧みな操艦で守ってくれたということだ。わたしからもお礼をいいたい。ありがとう。」

ヤンが話す。

「うむ。こちらこそ役にたってよかった。」

ゼートフェルのクルーたちは

「そういうことだったのか。よかったな。」

「本当はうちらの船にいてほしいんだけどな。」

「でも、友達と一緒のほうがいいよ。うちらの都合だけじゃな。」

「そうだな。」

「麻子くん。どうするんだ?」

ゼートフェル艦長は麻子に話しかける。

「われわれに遠慮する必要はないぞ。」

「わかった。ありがとう。隊長やみんなのところへいかせてもらう。」

ゼートフェルのクルーたちは少々さびしそうな色を表情にうかべるものの笑顔で命の恩人を彼女の友人たちのところへもどすことにした。それが恩返しでもあるという気持ちだった。

「そうか、さびしいが、それがいいな。」

「そうだな。」

「いままでありがとう。」

ゼートフェルのクルーたちは麻子に握手をして話しかける。

「西住少将、そちらに接舷するからよろしくたのむ。」

スクリーンに映ったゼートフェル艦長が告げる。

「わかりました。沙織さん、エリコさん、誘導お願いします。」

ロフィフォルメの窓からは緑色のゼートフェルの船体がだんだん大きく見えてくる。ゼートフェルからも独得な形状のロフィフォルメがだんだん大きく窓に映る。ゴツンと振動がしたあと接舷シリンダーで二つの船がつながれた。

「麻子!」

「おひさしぶり。沙織。みんなも久しぶりだな。」

麻子はエリコに気づいてあんこうの仲間たちに尋ねる。

「この人は?」

エリコは微笑みながら自己紹介する。

「はじめまして?冷泉麻子さん?」

「そうだが...。」

「わたしはミズキ・エリコ。お待ちしていた?あんこうチームの優秀な操縦手だった話聞いている?」

「ありがとう。お待ちしてたって?」

麻子は沙織のほうを見る。

「冷泉殿は優秀な操縦手でしかも艦隊運動プログラムも習得したって聞いてますので、エリコ殿も待っていたんですよ。」

優花里が代わりに説明する。

「パソコンの操作がうまいだけでは艦隊運動はだめ?センスがいる?」

「わかった。わたしに操艦や艦隊運動をやってほしいってことだな。」

「ありがとう?」

「これで5人そろったね。」

沙織がみほの顔を見る。

「うん!」

一番うれしそうに見えるのはみほだ。こういうときのみほの笑顔は傍の者まで魅きこんでしまう。

「西住殿、最近で一番いい笑顔ですね。」

「そう?」

「そうだよ。みぽりん。」

「わたし、またこの5人で戦えるのがすごくうれしい。それだからかな。」

「隊長。よろしく。」

麻子も笑顔になる。

5人は手を合わせる。決勝戦の始まる前Ⅳ号に手を5人で置いたことを思い出していた。

 

恒星アムリッツアの表面は溶鉱炉のように燃え盛ってうごめき、躍動している。また時折、勢いよく紅炎のアーチを吹きあげては表面に落下し消えていく。赤々と燃え盛るそれは、敗勢にある同盟軍にとって気分の良いものではなかった。

「あんまり好かんな。この星の色もだが、名前も...。」

「アムリッツア、がですか?」

「うむ、アスターテと同じ頭文字がAじゃ。鬼門かのう。」

「なるほど...そうですか...。」

「それにしても総司令部にも困ったものだな。机上で戦争はできんというのに。」

「ビュコック提督もウランフ提督も西住少将もよくご存知かと思いますが、戦史をひもとくとこういう状況というのは何度もあったのです。思い当るだけでも紀元前260年の長平の戦い、西暦1800年代のナポレオンのロシア遠征、それから150年後のヒトラーのソ連遠征、日本軍が大東亜戦争と称した戦いなど、しかも悪いことに敗北したほうは滅亡への道を転げ落ちていくというありがたくないおまけつきで。」

「長平の戦いで敗北した指揮官は、フォークそっくりな若者で、母親から任命しないでくれと君主に申し入れがあったと貴官から聞いたことがあったな。」

「はい。」ヤンはため息をつく。ウランフは苦笑する。

「しかし、そんな当たり前のことを会話して同意しなければならないのがなさけない限りじゃな。せめて戦況を把握するために前線にでてこいと...。」

(そうすれば前線の将兵の苦労が少しは分かるだろう、それも情けない話だが[じゃが]。)

ヤンとビュコックはお互いの気持が顔に書いてあるを見て、ため息をつき、苦笑する。

「どのタイミングで戦いをきりあげ、いかに犠牲を少なくして撤退するかですね。」

みほとウランフがうなずき、

「そうじゃな。」

とビュコックがつぶやく。

「では、みなさんご無事で。」

「貴官もな。」

画面からビュコック、ウランフ、みほが消える。

「お食事をなさってください、閣下。」

振り向くとフレデリカ・グリーンヒル中尉がトレイをかかえて立っている。

「ありがとう。でも食欲がない。それよりもブランデーを...。」

彼の美しい副官はヘイゼルの瞳に拒否の色を浮かべる。

「どうしてだめなんだ。」

「お酒の量がすぎるとユリアンに言われませんでしたか?」

「なんだ。君たちは連帯していたのか。」

「お体を心配しているんです。もう15時間もなにも召し上がっていません。」

その時、ヴィー、ヴィーとけたたましく警報が鳴る。

「敵艦隊接近!」

「中尉、聞いての通りだ。生き残れたら余生は健康に留意することにするよ。」

フレデリカはうなずくとトレイをもって引き下がった。

 




再び帝国軍との戦闘が始まる...

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