Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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「直撃来ます!」
戦艦パトロクロスのオペレーターが叫ぶ。
グオオオオオオーーーン…
轟音が響き、船体がゆれる。
金属片やガラス片がとびちり、火災は起こっているものの、エネルギー中和磁場と敵の攻撃がまだ遠距離のおかげで被害は致命的にならずにすんだようだった。
青みがかった髪のそばかすのある細面の士官がたちあがると、司令官のパエッタ中将がたおれている。
士官は、
「司令官が大怪我をされた。軍医はいるか?」
軍医と看護士官が呼ばれた。
「かなりのけがですが、今なら手当てすればたすかります。」
「わかった。よろしくたのむ。」
「士官で無事なものは…。」
状況を把握しているオペレーターが答える。
「分艦隊旗艦は、すでに2隻が撃沈され、唯一ヒューベリオンのヤン少将だけが無事なようです。」
「アッテンボロー中佐、どうやら君と親しいヤン少将が生き残った士官で最高位なようだ。伝えてくれ。指揮権を引き継ぎ、君の用兵家としての手腕をみせて…ぐっ…。」
「司令官!」
パエッタは、口から血を吐き出す。軍医と看護士官は自らを落ち着かせようとしつつも蒼白な面持ちで
「運びます。」
といってパエッタが寝かされた担架をあわただしく運んでいった。

「ということですよ。ヤン先輩。信頼されてますね。」
ヤンは、スクリーンに映し出された青みがかった髪のそばかすのある細面の後輩からパエッタの指示を聞かされていた。
「さあね。まあやることをやるだけだ。」
ヤンは通信機を自らとった。同盟全艦隊の画面に彼の顔から肩までが映し出される。
「分艦隊司令官のヤン・ウェンリーだ。司令官閣下が負傷され、指揮権をひきつぐことになった。皆心配するな。私の命令に従えば助かる。なあに、確かに今われわれは劣勢だが要は最後の瞬間に勝っていればいいのだ。まあ、生還したい者は落ち着いて私の指示に従ってくれ。」

ヤンは一旦通信機を保留にする。

「やれやれ、私も存外、偉そうなことを言っているな」

苦笑しながら独語した。ヤンは再び通信機に向かう。

「新たな指示を伝えるまで、各艦は当面の敵を撃破することに専念してくれ。以上だ」

 そのころ数十光秒離れた純白の旗艦の艦橋で、ラインハルトは、ヤンの通信を聞いていた。金髪の青年指揮官は、口元をゆるめてかすかな笑みをうかべる。

「やはり出てきたか。負けはしない、自分の指示に従えば必ず助かるか……」

「面白い。この期に及んでこの劣勢をどう挽回するつもりだ。」

 彼の副官である赤毛の青年には、親友でもある上官の蒼氷色の瞳に愉快気な色がうかんでいるのを見逃さなかった。
(ラインハルト様らしい。)と何の気はなしに愉快な気分になる。
彼自身も好敵手が何を仕掛けてくるかといつのまにか期待している自分に気づき心のなかで苦笑する。そのとき彼の親友でもある上官はなにか決心したように、彼に向かって「キルヒアイス!」と呼びかけたその声が耳に入ってきた..(※第1話本文中に続く)。



第2話 すごく未来へ来たようです。

「ううん...」

「ここは...どこ?」

パンツァージャケットと白いプリーツスカートは、水責めで濡れたり乾いたりで、ふやけて、しわだらけになっていた。しかもエルラッハ艦隊が撃沈されたため、汚れ、火薬臭、破れは、エルラッハの旗艦にいたときよりもはるかにひどくなっており、ぼろぼろになっている。

顔も腕もよごれていた。みほは、悲しくて目に涙をうかべていた。

(みんなは、どこにいるんだろう?ここはいったいどこ??)

きょろきょろと栗毛色の少女はあたりを見回す。

どうやらさきほどとは異なる何か金属製の部屋にいるような感じだ。

そこへおさまりの悪い黒髪の青年があらわれる。20代後半か30代くらいと思われた。

「Who are you?Where do you come?」

話しているのはどうやら英語のようだ。

「わたし?アメリカに来たの?」

「ここはアメリカですか?」

と尋ねる。青年は不思議そうな顔をして

「America?Is it Unaited States of Amnerica?」

と問いかえす。

「Yes.Mr?」

「My name is Yan Wenri.Wait a moment,please」

ヤンはみほが話しているのがどうやら日本語らしいことを察し、

「フレデリカ、自動翻訳機をもってきてくれ。」と話した。

「はい。」

フレデリカはこたえてヤンのところへ翻訳機をもってきた。

ボタンのような超小型であって服につけてもほとんど違和感がない。

「アメリカという国は18世紀に独立し、20世紀に繁栄したけど、21世紀にじょじょに衰退し、22世紀には滅んだんだよ。」

みほはそれを聞いて驚く。

「では、いまは何世紀なんですか?」

「えっとアルデバラン星系第2惑星テオリアで銀河連邦の設立が宣言されたのが西暦2801年。それから800年近くたっている。」

西暦3600年ちかいということだ。

「??じゃあここは私の生きていた21世紀から1500年近く未来ってことですか。」

「そうなるね。」

「あの...それでここはどこなんですか?」

「君が21世紀からタイムスリップしたとすると、」

ヤンは、銀河系の図を映し出して見せる。

「ここは、君のいた地球だ。」

地球を普段はつかわない指揮棒で指し示す。

「ここは、銀河系内中心方向へ1万光年離れたサジタリウス腕とオリオン碗を結ぶイゼルローン回廊付近のアスターテ星域のなかの宇宙空間ということになる。」

画面上のオリオン碗とサジタリウス碗、そしてそれを結ぶイゼルローン回廊を指揮棒でなぞってみせた。

「では、私ははるか未来の宇宙船の中ってことですか?」

「そうなるね。」

「あ、あの...お風呂は?」

「そうだな。美人が台無しだ。フレデリカ、彼女を浴室に案内してやってくれ。」

「はい。」

「着替えを用意しておきますね。ほかに必要なものが有ったら言ってください。」

「はい。」

みほは、ひさびさに浴室のなかにはいった。

ほっとすると同時にさびしさがこみ上げる。

(みんなはどうしているんだろう。)

自分たちⅣ号が撃破された以上、大洗女子は敗北だ。ただみんながどこにいるのかそれだけが気になった。この不思議な現象で自分は生きている。みんなもどこかで生きている可能性が高い。願わくは同じ世界に生きているようにと願うだけだった。




エルラッハの旗艦ハイデンハイムが沈められたのになぜか同盟分艦隊の旗艦の内部に倒れていたところを助けられたみほ。ほかのあんこうのメンバーは果たして...

感想のご指摘を生かし、一部加筆修正(12/26,20:04)

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