Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
沙織は同盟軍士官学校の試験問題がすらすら解けるのにおどろく。
それは、別の部屋で受験しているみほ、華、優花里も同じことを感じていた。
沙織は、エリオットには通信科志望とだけ伝えた。アマチュア無線二級で麻子まで呼んで一夜漬けしたのがうそみたいだった。
(ふん。この時代の睡眠学習機は優れているからな。試験科目の予想問題集と回答をそのままプリンティングしたというわけだ。さっさと合格、卒業してもらわないといけないからな。)
このようにして「あんこう」の面々はらくらく士官学校に入学した。
優花里は「あんこう」チーム以外にも知っている顔に出会うことになる。
士官学校に入学して数日後、戦略論概説の授業だった。
あんこうチームの面々は、見覚えのある顔がちらほらいることに気付く。別々の科でも共通の授業があるために出会うことができたのだった。
「み、みぽりん?」
「沙織さん?」
「え、ほんとにみぽりん?」
「うん。」
「みほさん、沙織さん。」
「え?華?」
「そうです。」
「西住殿、武部殿、五十鈴殿。」
くせっ毛の少女が敬礼してくる。
「え~ゆかりんじゃない。」
「優花里さん。」
「麻子だけいなんだね。」
「秋山さん?」
「え?あなたはエリコ殿。」
「はい、わたしは技術科のエリコ・ミズキ?」
「知り合いなの?」
沙織が優花里に尋ねる。
「ええ、実は...。」
優花里は、憂国騎士団に砂漠に捨てられ、ムナハプロの車に助けられたこと、そのとき知りあったこと、パンチパーマでアイドルデビューしたことなどを話す。
「ゆかりん、ほんとにひどい目にあったんだね。ユーコクキシダンって許せない。国を憂うなんて言ってただのひとりよがりじゃない。」
「でもわたしたちは身寄りも、生活する手段もないから士官学校に通うしかありません。」
「そうだね。」
「でもエリコ殿はアイドルを続けられたのでは?」
エリコはほほえんで答える。
「わたしは、ムナハプロが秋山さんをかくまったことがばれた?そして、技術者としての能力が認められた?」
「そうなのでありますか?ごめんなさい。」
「気にすることはない?面白そうだから行くことにした?」
皆は少々驚いてエリコをみる。
「はじめまして、わたし武部沙織。エリちゃん、よろしくね。」
「はい?武部さん?よろしくお願いいます?」
沙織が自己紹介したのに続いて、華とみほもエリコに自己紹介した。
半年後の戦術シュミレーションの授業のことである。みほは、学年首席のアンドリュー・フォークと対戦することになった。みほは戦車道の車長であることもあって戦史と戦略論について優秀な成績であったが、ほかは平均的な成績である。一方、フォークは首席であるため、艦艇数は3割多めに設定されている。まともにやったら勝ち目はない。
「わたしは、戦略研究科1組、アンドリュー・フォーク。よろしくお願いします。」
「わたしは、戦略研究科2組、西住みほです。よろしくお願いします。」
(ふん。2組のドジっ娘か。とるに足らないな。)
半年もたつとみほの評判は士官学校でも知れ渡っていた。曰く、地味かわいいがドジっ娘。落としたものをさがそうとして、机の上のものをバラバラ落す。カバンからものが落ちても気が付かない。食堂ではしゃいで、お盆をおとしそうになる、など。
「みぽりん、がんばれえ。」
「西住殿、健闘を祈ります。」
「うん。」
みほは笑顔で答える。だれもがフォークが勝つだろうと考えていた。
シュミレーションがはじまった。
(一気にかたづけてやる。)
フォークはほくそえみ、一気に距離をつめてみほの艦隊を斉射する。
みほは、巧みかつ整然とした後退でフォークの鋭峰を避けた。
「!!」
(もくもく作戦です!)
みほは、ゼッフル粒子とフェライト粒子の「煙幕」を発生させ、発火させる。
(消えた?)
フェライト粒子が電波を吸収し、ゼッフル粒子の発火による煙幕が視界をくもらせ、爆発による空間のみだれがみほの艦隊の位置を把握させない。
ようやく「煙幕」が晴れて、フォークの視界にみほの艦隊が映ったときは、射程距離からはるかに離れている。
「距離300光秒。」
(おのれ、あんなところに。)
フォークはいきりたっておいかける。みほは、小惑星帯に逃げ込む。
「よし、完全に包囲した。西住さん、逃げられませんよ。」
「旗艦の前の艦艇に集中砲火!」
「リョウカイ。」
(その手を食うか。)
「両翼を広げて再び包囲。」
しかし、みほはここで別動隊をつかう。
「何?」
フォークの艦隊は一瞬混乱し、包囲網はやすやすと突破された。
「....。」(くそ。)
しかし、戦いは、全般的にフォークが火力にものを言わせ優勢に戦いを進めているように見える。みほは逃げまわっているだけのようにみえた。フォークの陣形には一見スキがないようにみえた。しかし、みほは、フォークが攻勢の限界点に達するのをじっと待ち構えていたのだ。
みほは、フォークの補給線が伸びきっているのを看破した。
「コンピューター、このとおり敵の補給線を絶ってください。」
「リョウカイ。」
予備兵力で、「敵」の補給艦隊を急襲する。
「!!」
フォークの「食糧」「弾薬」は尽きつつあった。フォークは、さすがにまずいことに気が付く。
(いちかばちかだ。両翼を広げて包囲し、決着をつけてやる。)
フォークは、みほを包囲しようとする。みほは一点集中砲火をフォークにあびせた。
(なんだと?この女何を考えている?)
「包囲だ。包囲するんだ。」
「ソウサフノウ。」
ようやくのことで、いくぶんか艦艇を動かすものの、結果的にフォークの艦隊は引き裂かれていくことになった。
みほの艦隊は背面展開をおこなおうと隊列を整えていく。
「はい、ここで時間切れだ。」
教官が宣言する。
(た、たすかった。)
フォークは辛くも自分が勝ったと思った。
「みぽりん?」
沙織をはじめ「あんこう」の面々の顔がくもる。
皆フォークにいい印象をもっていなかったからだ。
しかし、その教官の判定は意外なものだった。
「西住みほ君の勝利。」
「そんなばかな。彼女は逃げまわっていただけです。しかも自分の艦隊のほうが数が多いではないですか。」
「フォーク君。君は相手を追いかけることに夢中になって補給を怠った。古来より補給を怠って勝った軍隊はない。しかも彼女に中央突破背面展開を許している。それまでに補給がもどることはない。勝敗は自ずから明らかだ。」
教官のひとことで、フォークは歯噛みするしかなかった。
(そうか。一斉に斉射するのではなく、敵にさきまわりして隊列を中央突破しようとしたところを、高度な柔軟性をもって臨機応変に対処して、敵を挟み撃ちにすればよかったのだ。)
フォークはこのときのくやしさをこのように考え、それを心のうちに持ち続けることになる。
結局、みほは、戦史と戦略論については優秀だが、あとの科目は、ヤンよりましなくらいの平均点で卒業する。ただし、戦術シュミレーションは全勝であった。
そして、あんこうチーム自身が同盟軍にとって機密のような存在であるため、表にはだされず、すべて隠された。卒業後、あんこうの面々とエリコは、辺境の海賊討伐の任務に就かされることになる。
フォークの粘着質でわがままな性格を考え、加筆修正(4/13,7:23)
みほの「煙幕」についての記述を銀英伝の設定に近づけて具体化し、フォークは、慇懃無礼なので、一定量のセリフを心の声に変更する加筆修正(4/13,23:12)