Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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「うううん...。ここはどこ。」
「気が付いたか。」
なにかこぎれいな建物の中であるのはたしかだった。ロビーのようにも見えるがだれもいない。
みほのそばにいる精悍な感じのイケメンと言ってもいい男のほかは。

「あなたは...」
「俺はエリオットという。お前は士官学校へ行くんだろう。その援助をするように言われている。」
「はい...。」
みほは同盟軍士官学校の入試を受けさせられることになる。



第17話 わたくし、同盟軍士官学校を受験いたします。

華は、エブリープラザを写した写真のトラックにハポネプラムのナンバーとトラックの窓に小さく張り付けられたPKCのステッカーを見つけた。

「この車のナンバーから相手がわからないでしょうか。」

反戦市民連合のメンバーにたずねた。

「お嬢さん、交通情報省交通運輸局テルヌーゼン支局へいけば申請書を提出すれば教えてくれる。だけどな、正攻法でソーンダイク暗殺事件と言ったら断られるぞ。」

「ありがとうございます。」

華は、テルヌーゼン支局の窓口に問い合わせる。

「あの~この車のナンバーの持ち主を調べたいのですが...。」

「そこの自販機で、登録事項等証明書交付申請書を買ってください。」

華は、申請理由に「違法駐車のため」と記入する。

印鑑を押して身分証明書を提示する。

持ち主には、「地球教ハポネプラム教会」と書かれ、ソーンダイク候補暗殺事件の起こった11月22日には、「ジョンソン・ガーネット」に所有者が変わっていた。

{この人はたしか殺されて海に浮かんでいたという人??)

華はきなくさいものを感じた。

地図でハポネプラム教会の位置を確かめて行ってみる。

一か所目は普通の会堂施設だった。

「すみません。」

Earth is Mather,Earth is in my handと書かれたタスキをつけている男性や女性たちがいたので声をかける。

「はい?。」

「この車の持ち主は?」

彼らの顔色がかすかに変わる。

「知りませんね。」

そっけなく答える。

「ありがとうございました。」

華は会釈をする。

「どういたしまして。」

彼らの態度にはどことなく冷静さを装うように感じられた。

華は、タクシーを拾い、もう一か所の「テルヌーゼン教会」へ向かう。

そこにはまぎれもなく窓におおきくPKCとステッカーが貼ってあった。

華がそこへ降りるとバラバラとプロテクターをつけた男たちが華をとりかこむ。

「!!」

そこへ白と薄緑色のドレスをまとった沙織そっくりの少女があらわれ、錫杖をふるって憂国騎士団の連中をいっぺんにのしてしまった。

「沙織...さん?」

「わたしは、魔法使いソフィー。ポリーシャ王国の王女。」

「お前は...。どっちの味方だ!」

赤マントと顔を西洋風の兜で覆った男「ワルフ仮面」があらわれ、憂国騎士団は抗議する。

「こっちも商売なんでね。いい絵が撮れた。」

「ソーンダイク候補暗殺事件、そしてこの少女を襲ったり、以前お前たちのところにいた少女を道端に捨てた件。ばらされたくなかったら黙っているんだな。」

「ふん。ライズリベルタ、トドスヨウムもおびえて報道しない。リストレエコノスとコンプラレールは「公平な報道」をするからもちろん報道しない。どこが報道するというのかwww?」

「週刊誌のデレチャプリマさ。」

デレチャプリマは右派系週刊誌なのにときどきトリューニヒト派のスキャンダルを記事にすることがあった。

「拝金主義者め。」

「何とでも言え。まあ、この件は国防次官閣下も承知済みだ。」

兜の男は憂国騎士団連中にむかってそういった。そして、華へ向き直り、

「喜べ。旧友だかクラスメートだかしれんがもうすぐ会えるぞ。」

「わたくしはまいりません。」

「そうか。勝手にしろ。」

兜の男と薄緑色のドレスをまとった沙織そっくりの少女は去ろうとする。

「待ってください。沙織さんを返してください。」

「沙織だと。知らんな。ここにいるのは魔法使いソフィーだ。それよりもあいつらといっしょに国防次官のところへいくか?連れて行ってもらえる保障はないがな?それとも俺がつれていく場所に一緒に行くか?こっちのほうがはるかに安全だが。」

華は力持ちであったが、さすがに何人もの憂国騎士団員を相手にできなかった。

「わかり…ました。まいります。」

「そぉーだ。素直に聞けばいい。」

「まて、逃がさんぞ」

兜の男はにやりとほほえむと爆発音と爆煙がひろがって、華と兜の男は消えた。

「ぬぬ、どこだ。」

爆煙が消えていくが、そこにはだれもいなかった。

 

そして華がつれていかれたのは、ビジネスホテルのようなこぎれいな部屋だった。カーテンを開けるとなぜか鉄格子がある。

「ここで何日か暮らした後、テルヌーゼンの同盟軍士官学校を受験してもらう。そこで、お前の友人たちに会える。」

「!!」

「何科を受ける?たしか戦車道で砲手をしていたんだろう?」

「砲術科にいたします。」

そして、華は、同盟軍士官学校を受験し、同時に受検した沙織たちと同じ不思議な体験をしたあと、見事合格した。そして、授業で出会う面々をみて改めて驚くことになる。




兜をかぶった男と精悍かつイケメンとも言える男が暗がりで話している。
「ソーンダイク事務所にいた女はどうしてる?」
「ああ。例の場所に閉じ込めてある。同盟軍士官学校を受験させる。」
「ソフィーだけ連れていくぞ。デレチャプリマに情報流したし、あそこ(ハポネプラム)はもう使えないからな。」
「ふん。宇宙大将軍というわけかw?」
「宇宙違いだw。それにあれは、想定もしてただろうが、いきあたりばったりの部分もあったろう。要するにソーンダイク事務所の連中だけでなくヤン・ウェンリーもかぎまわっているから証拠を隠滅しておかないと足が出るからそれを防ぎたいというわけさ。」
「なんでも利用するんだなw。」
「露骨に過ぎるな。想定される事態にあらゆる布石を打っただけのことだ。今回は幸いにも総大司教とわれわれとトリューニヒト派の利害の一致したわけだがな。」
「しかし、あのルパートという若造、どうもつけあがってるな。」
「ああ、そっちもタイミングをみはからったほうがよさそうだな。」
「とりま、宇宙大将軍してくるわ。」
「ただの少女誘拐犯だなw。好みだからって手を出すなよ。大切な「商品」なんだからな。」
「言ってろw」
精悍な男は「ソフィー」を宇宙船に乗せてひそかに飛び立った。
数日後に、デレチャプリマに、ソーンダイク候補暗殺事件の際に使われた車と高級士官の住宅街に盗聴器をしかけたのがハポネプラムの憂国騎士団が暴走した結果だという記事が掲載された(4/5,1:45加筆)。
(※第15話あとがきに続く)。

※宇宙大将軍;中国南北朝時代に東魏から南朝の梁に亡命した武将候景が、東魏と梁の和睦が成ると引き渡されるのを恐れて反乱を起こし、梁の武帝を幽閉し、その死後実権を握った際に名乗った称号のひとつ。この場合の「宇宙」は「天下」とか「世界」といった意味に近いが、兜の男「ワルフ仮面」は精悍な男「エリオット」が実際に宇宙に飛び立つことに掛けて皮肉った。



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