Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第173話 ミュラー艦隊来援です。

帝国軍は苦悶にのたうち回る。真っ二つに引き裂かれる艦艇...僚艦の爆発に巻き込まれる艦艇...爆発光と爆発煙をあげて次々に火球に変わり、金属片をまき散らした。乗員は気化する者、叫び声をあげる者、身体を引き裂かれる者...

「アルトリンゲン分艦隊、壊滅しつつあり。」

「ブラウヒッチ分艦隊、戦線崩壊の模様。」

ラインハルトの白く端正な顔に自嘲の陰りがひろがっていく。

総旗艦ブリュンヒルトの周囲にもじわじわと僚艦の爆発光が増加していく。

ラインハルトはペンダントを握りしめた。自嘲でゆがんだくちびるを引き締め、今度は奥歯をかみしめる。

(キルヒアイス...俺はこれまで勝ち続けてきた。しかしここまできて敗れるのか...。)

どこでまちがったのか...敵をなめていたということか...

ラインハルトはヤン・ウェンリーと西住みほに締めあげられていた。

 

「閣下、ここにいては危険です。すでにシャトルの準備が整っております。どうか脱出のご決断を...。」

高級副官アルトゥール・フォン・シュトライトの声がラインハルトを現実に引きもどす。

「ですぎたまねをするな。わたしは、必要のないときに逃亡する法を誰からも学ばなかった。卑怯者が最後の勝者となった例があるか?」

「恐れながら申し上げます。ここで戦場を脱出なさってもなんら恥ずべきことはありません。諸提督の艦隊を糾合なさり、改めて復讐戦をいどめばよろしいではありませんか。」

しかし、金髪の青年は、わからずやの少年のようにかたくなになっていた。キルヒアイスがいたらそれこそ、シュトライトと同じことを語ったに違いないし、先日エミールに

おっしゃった言葉をお忘れになったのですかといさめたに違いない。しかし、勝ちすぎて敗北に慣れていない青年の口からは意地っ張りのような言葉がついて出る。

「ここで、ヤン・ウェンリーに倒されるとしたらわたしはその程度の男だ。わたしに敗死した連中が天上や地獄で嘲笑することだろう。卿らはわたしを笑い者にしたいのか。」

「だからこそです。閣下、大事なお命を粗末になさおますな。あなたのお命はあなただけのものではありません。どうか再起を期して脱出なさいますよう。」

そのときブリュンヒルトの周囲で旗艦を護衛していた三隻が次々と火球に変わり、爆発光と爆煙を噴き上げた。そのうち一隻は動力部に直撃をくらったようでまぶしいばかりの光を放って飛散する。もう一隻はへし折れるようにして爆発した。宇宙空間で音はないが衝撃波がブリュンヒルトを激しく揺さぶる。

 

そのときだった。同盟軍の砲火が一瞬弱まった。

同盟軍の艦列に数万の光の槍が突き刺さって爆発光と爆煙がきらめき、噴きあがる。

オペレーターが歓喜の絶叫をあげる。

「ミュラー艦隊です。ミュラー艦隊の来援です。助かった...。」

最後の一言は帝国軍将兵の一致した本音だった。

 

ミュラー艦隊が予定より早く来援できたのは、リューカス星域の物流基地の攻略が大きな被害を出しつつも早く終わらせることができたためだった。

 

数日前、リューカス星域へ向かうミュラー艦隊を亜空間から通常空間に出てきた潜望鏡が見つめていた。

「敵艦隊を確認。2日後にそちらへ到着する模様。」

「了解。」

「そちらのコクラン所長はどうするつもりなのだ?」

「物資はほぼ民需用で、武装もないので降伏する方針と思われます。」

「なるほど...。わかった。ただ帝国軍にいい思いばかりはさせられないな。これから指示することを聞いて動いてくれ、何か聞かれたらわたしからの命令だと伝えてくれ。わたしのほうが階級は上だから所長も聞かざるを得ないだろう。もしそれでも聞いてくれないとしたら....。」

「わかりました。」

 

2日後、リューカス星域の物流基地のレーダーはミュラー艦隊を確認していた。

「敵艦隊発見。距離150光秒。」

「所長、いまバーミリオンではヤン・ウェンリー提督が戦っています。まだ同盟には、望みがあるのです。」

「ここにあるのは同盟軍にとって貴重な物資です。放射能汚染させて使えなくしてしまいましょう。」

「いや、わたしは引き渡そうと思う。ここにあるのは、民需用に使用可能な物資のみであり、抵抗したとしても数時間で全滅するのは目に見えている。また、体制が変わっても民間人の生活に支障をきたすわけにはいかない。」

リューカス星域の物流基地では、激論がかわされる。

「武装がないなら液体水素を爆発させてやりましょう。」

コクランが首を縦に振らないのをみてとった抗戦派の将兵たちは、目配せして基地を制圧し、コクランは捕えられた。

 

「同盟軍がやってきます。物資を引き渡すそうです。」

「うむ。ただし、慎重に取り扱うように。」

「御意。」

ミュラー艦隊に引き渡されるべく物資のコンテナを引き連れた十数隻が向かってくる。するといきなりコンテナから輝いて飛散し、ミュラー艦隊の艦艇を巻き込んで誘爆を繰り返す。

「ど、どうした。何が起こった?」

「コンテナが爆発しました。液体水素を爆発させた模様。」

「くっ。図られたか!」

抗戦派の半数は、コンテナとともに殉死した。

爆発で混乱するミュラー艦隊を亜空間からの魚雷が襲う。

「あ、亜空間からの攻撃です。」

「亜空間ソナーを作動。亜空間ソノブイを投下。亜空間SUM発射。」

「敵はもうすでにいません。亜空間にかき乱されたワープトレースを15確認。」

同盟軍の物資は半数が失われ、攻撃がやんだのを確認してミュラーが上陸すると、将兵たちがあっさり手を挙げて降伏した。所長が捕えられているという話を聞き、ミュラーはコクランを引見する。当初ミュラーは利敵行為としてコクランを忌んだが降伏派の部下たちからその心情を聞き、彼を部下に迎えようとするがそれは別の話となる。

 

こうしてミュラー艦隊は、液体水素の爆発で被害を出し、バーミリオンに到着したのは、5月2日で、6,000隻となっていた。


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