Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第7陣を突破したとき、みほはしばらくスクリーンをにらんでいたが、ふとなにかを思ったのか艦橋にいるメンバー、チームメイトに話しかける。
「あの…みんなどう思う?」
「なにか、トランプがシャッフルされて前のカードが後ろへくるみたいな感じだな…。」
麻子がつぶやく。
「麻子…。」沙織が麻子を見てから自分の考えを話す。
「みぽりん、なんか玉ねぎの皮を何回も剥いているような変な感じだよ。」
みほは軽くうなずく。
「西住殿」
「優花里さん?」
「ローエングラム公は、ほかの提督たちがもどってくるまでに時間稼ぎをするつもりだと考えれば…。」
「わたしもそう思います。」
華が同意する。
「なにか、確かめる手段あるかな。」
「WPSの衛星に暗黒物質を吹き付けて亜空間潜航できるようにつくってみた?アクティヴレーダーを発して相手を見つけてもすぐに隠れられるから大丈夫?」
「5分後にフレアと恒星風が起こるはずです。そのときに妨害電波が切れる一瞬を狙いましょう。」優花里が言う。
衛星に妨害電波の情報を読み込ませ、それが切れた瞬間にアクティヴレーダーを照射して、亜空間に逃げ込めるように設定する。
「トポ(スペイン語でモグラ)射出。」
英語やドイツ語だと前者は同盟公用語、後者は帝国公用語に近い。また動物名は暗号に使われることが多いため、暗号が解読された結果、ラテン語学名では直ちに照合されてしまう。そのため、スペイン語やオランダ語などのスペルを多少変えてなんなのか判別できなくするというわけである。
一方、ヤンは、フレデリカとその部下、メルカッツはシュナイダーとその部下にラインハルトの戦術をそれぞれ分析させていた。そして二人ともにたような結論にいたりつつあった。
「恒星風きます。」
「妨害電波消失」
「分析結果でます。画像解析。」
「こ、これは...。」
チームあんこうは顔を見合わせた。スクリーンには無数の光点が25本の棒状に集まっている様子が映し出されていた。

「敵のものと思われるアクティブレーダー照射を確認。」
「どこだ。」
「2時の方向、11時の方向、9時の方向から照射点。」
「亜空間からの攻撃かもしれん。推定地点に亜空間SUM発射。」
「御意。」
「敵の反応なし。」
「爆発予定時刻まで、5,4,3,2,1...」
「着弾の反応なし。SUMのみ爆発の模様。」
「敵はどこにいるのか...。」
謎のアクティヴレーダーが照射されたことはラインハルトの本営にも伝えられる。
亜空間SUMを発射したが、敵の着弾反応はないという。
「もしかしたら読まれたかもしれんな。」
ラインハルトの心に疑惑と不安のしみがじわじわと広がっていった。


第172話 同盟軍攻勢です。

ラインハルトは25段に及ぶ横列陣を用意していた。ヤンがこの横列陣を突破するごとに突破された横列陣の艦艇が、背後に回って新たな横列陣の一部になり、突破しても突破しても永久機関めいた防御陣に直面するというわけである。4月29日までは、この戦法は完全に機能していた。

 

「恒星表面でフレア発生!!恒星風が発生します。本艦隊到達まで10分!磁気嵐、放射線が来ます。電波障害が発生確率99%」

「これまでの観測結果からはこの時間に発生する確率は、25%ほどであったはずだが...。」

「この恒星系に到達してから10日間程度の観測結果では正確にはとらえきれません。」

「仕方ない。待機だ。もしかしたら敵は、そろそろこの防御陣の正体に気付くはずだ。ヤンほどの男が見破れないはずがない。この恒星風がやんだら小惑星帯をさぐれ。」

「御意。」

恒星風がやみ、帝国軍は、偵察衛星とワルキューレで小惑星帯を探らせようとする。

 

「敵艦隊確認できま...発見!小惑星帯に3000隻がひそんでいます。」

 

そのときオペレーターが別の報告をする。

「80万キロの位置に敵艦隊発見。小惑星帯の中に推定15,000隻以上、わが軍の正面を避け左翼方向に移動中。」

ラインハルトは形の良い眉をひそめ、その蒼氷色の瞳には不安の影がよぎる。

(ヤンがいたずらに兵力分散をするとはおもえぬ。しかも12,000隻はどこへいったのだ?)

参謀長オーベルシュタインも多少迷いを感じつつも発言する。

「故意に見せつけるようなうごきからすると囮のように見えますが、半数以上と考えると主力部隊と思われます。いずれにせよこちらが兵力を分散するのは愚策というものです。」

「うむ...。」

「ご決断を、閣下。」

「全軍を左翼方向に振り向けよ。囮とみせかけて実兵力を動かすのが敵の作戦と思われる。敵の半数を一挙に叩くのだ。」

ラインハルトはこのとき万全の自信を欠いていた。ラインハルトは攻撃に傾くタイプの指揮官であり、当初の完璧な防御策を変更すべきではないという想いがありつつも、これまでの消極策に対して、忸怩たる想いを抱き続けていた。また、他の諸提督の力を借りずにヤンを倒したいという想い、ヤンの策を見破ったという想いがあった。さらにラインハルトは先手を取ることに慣れており、やはり性格的に先手を取られ続けることにることに性格的に耐えられず積極策に転じることになったのである。

 

「敵艦隊に接近。撃て!」

「!!...こ、これは....。」

「隕石と小惑星、敵戦闘衛星です。敵艦隊は、3000隻程度!」

「はかられたか...。」

戦闘衛星は、縦横無尽に動き回り、ミサイルと光線砲を放つ。3000隻の同盟軍も砲撃を行う。帝国軍はすくなからず混乱した。

 

「恒星表面にフレア発生!」

「電波障害発生!」

「ふたたび恒星風きます。到着まであと3分。」

 

「いまだ、全艦隊最大戦速!」

アッテンボロー率いる同盟軍主力は、小惑星帯から現れる。実は、あらかじめ金属反応を探られる距離になる前に、3000隻のみわざと察知されるようにし、残りは、艦艇のレーダー反射パターンを隕石や小惑星にして、実際にも隕石を付着させて帝国軍のレーダーをだましたのだ。それが恒星風に乗ってミッターマイヤーを上回る速度で帝国軍の後背からラインハルトの本営目指して突進する。

 

「敵艦隊6時の方向から13,000隻接近」

「200宇宙ノット!至近です。」

ラインハルトの率いる全艦隊の乗員に対し、ヤン・ウェンリーが仕掛けた心理的な衝撃が襲う。帝国軍将兵たちの背中に冷たくも激しい電流がはしった。

囮部隊と戦闘していたのは、トゥルナイゼン、ブラウヒッチ、アルトリンゲン、カルナップ、グリューネマンの分艦隊であるが、ラインハルト艦隊の主力であった。

「直営部隊が危険だ。引き返せ。」

「反転180度!」

「8時の方向、4時の方向から小惑星、隕石各30基ほど接近してきます。」

出力半分のバサードラムジェットのついた小惑星、隕石がさながら大昔の戦象の群れのように慣性をつけて怒涛のごとく帝国軍の艦列に殴り込んでくる。

「回避だ~~~~~。」

「間に合いません。」

今度は爆発光、爆煙、衝撃波という物理的衝撃が帝国軍に走る。

帝国軍は今度こそ大混乱に陥った。

隕石と小惑星の爆発で数千隻が失われ、さらにバランスを失った艦艇がぶつかって火球に変わり、漆黒なはずの宇宙を昼間のように照らす。

 

「敵艦隊の右舷まで2光秒!」

「撃て!」

「敵艦隊の艦列、左方向へ崩れます。」

「たわいもない。」

「よし、このまま中央突破だ!」

そう思った瞬間だった。

 

アッテンボローとみほのくちもとがかすかにゆがむ。

「!!」

「こ、これは....」

トゥルナイゼン、ブラウヒッチ、アルトリンゲン、カルナップ、グリューネマンは蒼くなった。

自分たちの周囲が光点に囲まれている。どうやら20,000隻を超える艦艇に囲まれているようだ。まさかという想いはあるが味方とは思えなかった。

「拡大せよ!」

そこには緑色のいまいましい敵艦隊の艦首が無数の砲門を向けている姿が映し出される。そのなかには、平たいアンコウ型の艦艇もみられる。

 

「ほ、包囲されています。後方からは、さきほどの囮艦隊と戦闘衛星!」

「はかられた!敵艦隊の右側面と考えていたのは、敵の凹形陣のへこんだ部分だったのだ。」

 

次の瞬間、無数の光の槍が帝国軍を四方八方から串刺しにする。

無数の光の剣が艦艇を切り刻んでいった。




本文ややみじかめです。

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