Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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優花里と沙織が出会って驚いたのは...



第16話 わ、わたし、士官学校いきます。

トゥルルルル…

「ヤン中将、お電話です。」

「ありがとう。ユリアン。」

ヴィジホンの画面に映ったキャゼルヌが口を開く。

「ヤン、国防委員会次官がお呼びだ。」

「キャゼルヌ先輩!なぜ?」

「それがな、お前さんのところでアルバイトしている娘をつれてこいと言うんだ。」

「ミス・ニシズミを?。」

「そうらしい。しかも俺に言うんだ。沙織を返すから連れて来いと。」

「なんですって?」

「家内が言っていたんだ。警察の対応が変だったって。これで謎が解けたな。」

「まさか…本部長以外に、ミス・ニシズミのことは話していないはずですが。」

「彼女は軍関係の施設に出入りしていただろう。お前さんの権限で。」

「そう…ですね。」

(わたしの部屋にも盗聴器か…。)

「ミス・ニシズミ。」

ヤンはみほのほうに向きなおる。

「はい?」

「どうやら君の友人に会わせてもらえるらしいが、おそらく条件をつけてくるんだろうな。」

「わたし、行きます。」

「そうだな…。くやしいが仕方あるまい…。」

 

国防次官室へいくと、そこには驚くべき人物がいた。

「西住殿!」

「優花里さん!、沙織さん!」「みぽりん!、ゆかりん!」

沙織と優花里は後ろで手錠をかけられ、正座させられている。

「ほほう。君たちは知り合いかね。」

国防次官ネグロポンティはとぼけたような口調で話す。

「ヤン中将。」

「何でしょうか。」

「君のところに出入りしている少女の評判を聞いてねぇ。」

「どういう手段でそれを知ったのですか。」

「そんなことはど~うでもいいことだ。」

「どうでもよくはありません。」

「ほほう。すると君は国家にとって有為な人材を生かすことを妨げる、ということになるが…。」

「彼女は将来について希望があります。幼稚園の先生になりたいという希望があるんです。」

「国家があってこそ国民があるのだ。どちらが優先されるか自明の理だと思うが。」

「私は、そうは思いません。国家というものは、国民一人一人があつまって形成されるものです。国民の自由と権利を保障するために自由惑星同盟では同盟憲章をさだめ、税金を公平かつ適切に分配するために、国民の代表として政治家が選ばれているにすぎません。」

 

「ふん。君は極端な無政府主義者らしいな。まあ、そんなことはいい。」

ネグロポンティはみほに向き直り、

「ミス・ニシズミといったかな。君はさっそく同盟軍士官学校にはいりたまえ。最も優秀な学生のはいる戦略研究科にはいってもらおう。」

 

「西住殿、わたしは反対です。西住殿を戦争に行かせるわけにはまいりません。西住殿の才能は戦車道でこそ生かせるものであります。士官学校へいって軍人以外になったら学費は全部返還だし、士官になったら戦争へ行かなければなりません。わたしは、友達に人殺しなんてさせたくないであります。」

ネグロポンティは

「だまれ、時空犯罪者が!!」

と叫び、役人に目くばせする。

すると役人が壁の配電盤のボタンを押す。

手錠に電流が走る。

ビリビリビリ...手錠は拷問用の電子錠でもあったのだ。

「う、ああっ。」

優花里がうめく。

ヤンは抗議した。

「まってください。禁時法は、歴史改変になるから過去の事物の持ち込みは禁止されていますが、彼女たちのようにただ時空に迷い込んだ者は処罰の対象にならないはずです。それに二人とも過去から迷い込まされたむしろ被害者のほうではないですか。」

「犯罪かそうでないかは国家が決める。」

「どうだ...ミス・ニシズミ。士官学校にいくのであれば、この二人は無罪放免で解放してやるが?。」

「みぽりん、わたしたちのことは気にしないで。幼稚園の先生になりたいんでしょう。」

ふたたび、ネグロポンティが役人のほうへ向いて、あごをやや突き出す。

ビリビリビリ...

「きゃああ。」

沙織がうめく。

「どうする?ミス・ニシズミ。君がうんといえばすぐにでもこの二人を解放してやるが...。」

「みぽりん、だめ。こんなやつに負けないんだから。」

「西住殿!従う必要はありません。」

ネグロポンティは役人に目くばせする

(この娘がうなずくまで、二人をしめあげろ。)とその目は語っていた。

ビリビリビリ...ビリビリビリ...「ああう。」「ああっ。」

ビリビリビリ...ビリビリビリ...「ああう。」「ああっ。」

「わ、わたし...。」

「士官学校へ行きます。」

「みぽりん!」「西住殿!」

「二人ともありがとう。こんなことまでされているのにわたしのために...

うれしかった。ごめんね。」

「そうか、そうか、わかった。二人を解放してやる。」

ドッガーン...

そのとき次官室は爆発した。しかし、いっさい備品等は壊れておらずみほ、優花里、沙織が消えていた。

「一歩遅れたか...。」

ネグロポンティは薄笑いを浮かべている。

そこには薔薇と五稜星の肩章をつけた精悍な男たちが悔しそうな表情で立っていた。

「ヤン中将。残念でした。いま一歩のところで...。」

「いや。いい。貴官たちは急な要請にもかかわらず十分迅速にかけつけてくれた。」

「次官閣下。これで目撃者はヤン中将だけでなくなりましたぞ。」

シェーンコップが不敵な笑みを浮かべてネグロポンティをにらみつける。

「ふん。だとしてもどこのマスコミもとりあげてはくれまい。」

ひとこと言ってネグロポンティはしまったという表情をうかべた。

シェーンコップはあごをなでて

「そうでしょうなあ。」

と低い声でつぶやく。

シェーンコップは、ヤン、キャゼルヌ家に取り付けられていた盗聴器を手の中で上下に弾くようにもてあそんでいる。ブルームハルトがにやけながら、さるぐつわをかませて、後ろで手を縛った諜報員を、つきとばしてネグロポンティにこれ見よがしにみせる。

「盗聴の現行犯ですよ。インターネット上にこれを流しましょうか。」

「うぐぐ...。」

「しかし、もうミス・ニシズミはこの世界のどこにもおらん。大切な人材だから無事ではあるがな。」

近い将来、ヤンは重要な会議でみほと再会することになるがこのときは思いもよらなかった。

 

 




何やら暗がりで数人の男たちが密談している。
「この娘のひきずっている時空のゆがみが大きかったから容易に過去へもっていけたな。」
「そうだな。」
「この娘たちはヤン中将やその仲間たちに好意をもっている。トリューニヒト派につくならベストだが、ヤンについても機会を与えてやれば自分をまもるために政権を奪取せざるをえなくして、そのときにそれができるだけの力を与えておけばなにかと便利ということだ。」
「帝国と同盟を共倒れさせる。そのときに実権を握るのはあの老人ではなく、このわれわれさ。」



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