Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
第160話 ウルヴァシー強襲です。
トリューニヒトがかってみほを拉致して弄んだ暗がりの密室である。
立体ホログラムが映し出される。黒いフード付きの聖職者か魔法使いのようなローブをまとっているがトリューニヒトには何となく見覚えがあった。
「君はフォーク君ではないかね。」
「わしは、地球教総大司教。トリューニヒト、お前はこのままだと生意気な金髪の孺子に膝をを屈することになるぞ。」
「....。」
「それがいやなら、わしに従うことだ。まず金髪の孺子を殺す。そして、いまいましいヤン・ウェンリーを殺せば、お前の将来の政敵もいなくなるということだ。これは知っているだろう。」
それは国防委員長室でヤンがアイランズに答えている場面だった。
「まあ、いつでも弱みを握れるようにしていますからな。」
「お前の手の者もこのようにしているがな。」
トリューニヒトが地球教にもぐりこませているスパイがつながれている。
「....。」
全員ではないのを確認したが、表情をさとられないようポーカーフェイスを保つ。そのなかには、ヤンがもぐりこませたバグダッシュの姿もあった。
「その男をひきわたしていただけないかな。」
「ふふ、わかった。好きにするがいい。」
「アイランズ君、耳寄りな話を聞いたのだが...。」
「はい。」
「ラインハルト・フォン・ローエングラム、あの生意気な金髪の坊やを暗殺さえすれば、同盟は救われるとあのヤン・ウェンリーが言っていたそうだが。」
「暗殺とは言っていませんが...戦場で倒せばと...。」
「そんな迂遠なことはしていられない。帝国軍は9万隻はいるのだろう。無理に決まっている。そうか...わかった。」
トリューニヒトはほくそえんだ。
「なにをなさるのですか。」
「まあ、みているがいい。」
トリューニヒトは、極秘の地下牢にいく。気に入らない政治犯を裁判なしでひとしれず処理するための牢獄である。そこには、ひげ面の男がとらえられていた。
「バグダッシュ君。」
「なんでしょうか。」
「君にラインハルト・フォン・ローエングラム、あの生意気な金髪の坊やを斃してほしい。」
「どうやって...。」
「それをやらなければ、君の命はない。君はよくもまあ地球教を嗅ぎまわって、わたしの秘密を握ろうとしたねえ。だからこのように捕まえたというわけさ。計算外だったねえ。」
「わかりました...。まあ、一度が二度になろうと...。」
「まあ、わたしのつてがあるから暗殺は成功するよ。なにしろ地球教の力は帝国軍の奥深くまでおよんでいるからねえ。」
「...。」
「パエッタ君とウランフ君におとりになってもらって、その隙に金髪の坊やを暗殺するのだ。なに、心配することはない。はいってきたまえ。」
「面白い話かい...。」
「お、お前は...。」
「名乗るのが遅れたな。名も無き者、アンノウンだ。帝国語では、ニヒトという。」
「彼が一緒に手伝ってくれるそうだ。地球教の影の部隊もウルヴァシーに潜入させている。」
トリューニヒトは、パエッタを大将に昇進させ、ウルヴァシーを強襲させようとしたがいつまでも準備がすすまないので、ウランフに作戦を練らせて、主将、副将明確にせず出撃を命じた。パエッタには、ウランフに従うよう命じてあるが、成功した場合はパエッタを賞し、失敗した場合は、ウランフに責任を負わせるつもりである。
同盟艦隊二万隻がウルヴァシーに向かってワープした。
そのころ、ウルヴァシーの仮元帥府では、かろうじて残兵をまとめたワーレンが、自分より年下の若き帝国元帥の前に膝を折って敗戦の罪を謝したが、ラインハルトは、
「もう、よい。」と冷たい怒りを込めて言い捨てて立ち去った。
その上空には、球状の鏡面装甲をもつ戦闘衛星が数十個浮かんでいる。
「ウルヴァシーまで45光秒。」
「ウルヴァシーの衛星軌道上に戦闘衛星40基確認。」
「探査衛星で材質を探らせろ。」
数時間ほどで報告がある。
「探査衛星より画像と分析が送られてきました。しかし、探査衛星は破壊されました。鏡面装甲をもつ球形。地上にも光線砲と思われる熱反応多数あり。」
「「アルテミスの首飾り」のような連動する戦闘衛星か...。」
ラインハルトは、ハードウェアにたよらないと主張していたが、フリードリヒ・フォン・クラインゲルト大佐らが大本営の安全のためと主張し、カストロプ家から没収したアルテミスの首飾りの仕様書から同じものをつくって配置したのだった。しかもただまねただけでない。
「同盟軍、45光秒上空に出現、その数二万隻。」
「敵将は、ヤン・ウェンリーではありません。ランテマリオの生き残りの模様。」
「閣下...。」
「全艦出撃だ。同盟軍をこんどこそ血祭りにあげる。それまでの防空はまかせる。くだらないものだが、出撃までの時間を確保するためにも準備したのだろう。」
「御意。」
ウランフとパエッタは、敵戦闘衛星から光の槍が放たれるのを見た。
「当方の巡航艦、10隻撃沈。」
「うかうかしておれんな。ミサイル艦を惑星上空35光秒で全方位に配置。流れ弾になってもいいから敵戦闘衛星の射程外から撃て。」
「了解。」
ミサイル艦の放ったミサイルは分裂して時雨弾になってウルヴァシー上空を襲う。
「アルテミスの首飾り」から光条とミサイルが発射される。
ミサイルが破壊され、光の粉のようなものが乱舞する。
「どうやらうまくいきそうだな。」
ウランフはつぶやく。
「!!」
「当方の戦闘衛星、25基、機能しません。」
それみたことかとラインハルトは思ったが、
ケスラーを尊敬してラインハルト軍に加わったクラインゲルト大佐は、銃の名手で、惑星防衛システムの専門家であり、このノイエ・ハルスケッテの開発者であった。数十カ所に発射に伴う熱や電波、震動波などを発生させ、そのうち一つから光条の槍が宇宙空間に放たれる。その光の槍は戦闘衛星の球体で反射して複数の光条となって同盟艦隊を襲った。
「敵、エネルギー波接近します。」
「発射地点はどこだ?」
「数十か所に熱反応あります。」
「我が艦隊到達まで60秒」
「回避!」
「間に合いません!」
「当方の戦艦5隻、巡航艦7隻、駆逐艦10隻撃沈。」
「発射地点を特定せよ。」
「先ほども数十カ所に発射反応が感知されました。」
「ミサイル艦に、反射反応のデータ送れ。その反応をしている地点にミサイルを撃ち込む。」
「了解。」
「敵艦隊接近。」
「数...2万、3万....5万隻以上...。」
「「た、退却だ。」」
ウランフとパエッタは同じ命令を下していた。