Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

16 / 181
暗い部屋でなにやら男たちが話し込んでいる。
一人は20代のやせぎすでインテリ風の長髪の男、もう一人は若い端正な顔だちだが、精悍さと粗暴さの雰囲気をまとっている若い男、もう一人は、中世ヨーロッパの兜のようなものをかぶっている。
「この部屋は防音仕様で盗聴器も仕掛けられないようにしてある。事前に発見できないことも確認している。それにしてもおまえたちの時間遡行の技術はたいしたものだな。」
「まあ、時空震を自由自在に作れ、爆発などの空間の異常を利用できるからな。総大司教も知らない。せっかく開発した技術だ。ゆずりわたすものか。われわれは内部の手口を熟知しているから隠しおおせた。われわれこそがあの老人やそのとりまきを倒し、新しい総大司教になる。」
「自治領主も地球教におまえたちのような技術をもった者たちがいることは知らない。だから総大司教からお前たちをかくまってきた。近い将来、わたしは、ルビンスキーにとって代わる。お互いに利害が一致するというわけだ。トリューニヒト政権だけでなくありうべきヤン政権のためにもある程度の先行投資が必要というわけだ。」
「そこであの小娘たちに目をつけたと…。」
「そういうことだ。」
「シトレの警戒は厳しかったが、われらの仲間は帝国にも同盟の統合作戦本部にもいるからな。情報は隠し通せないさ。あの戦車好きの娘がハポネプラムに来たのはついていた。」
「そうだな。」
男たちは薄ら笑いを浮かべた。
「では、さっそくはじめてもらおうか。」
精悍な男と兜をかぶった男はうなずいて消えた。




第15話 なぜか男性アイドルにされたであります。&やだーあたしさらわれてたってこと?

「あ~、あそこに人が倒れています~。」

元気のいいショートボブの少女が車窓から目ざとく見つけて叫ぶ。

その少女ともう一人の大人しめの少女を乗せた車が、優花里のそばで停まる。

「だいじょうぶ、ですか?」

それは、ムナハプロダクションの車だった。

優花里に声をかけたのは、大人しめの少女はネットアイドル、リケジョアイドルとしても知られるエリコ・ミズキだった。

エリコが、宇宙飛行士になり女性科学者として初めて火星に降り立つというドラマのロケのために砂漠地帯を通りかかったのだった。

「はい。大丈夫であります。」

「それだけ元気なら大丈夫なようね。どうもいくあてがなさそうだから拾ってあげるわ。」

ムナハプロダクションの社長ミドリ・カワニシは、優花里をひろっていく。

「わたしたちの会社はここよ。芸能プロダクションなの。あなたはしばらく事務所の上の部屋をつかってくれていいわ。電話番とか事務員とかアルバイトをしてもらうから。」

「はい。たすかりましたであります。ありがとうございます。」

「あなた、おもしろいわね、なんか、軍人さんみたいな話し方するのね。」

「はい。わたしはずっと戦車が友達だったのであります。戦車道の試合中にこの世界に来てしまってチームメイトとばらばらになってしまったみたいなので探したいのであります。」

「へええ。そうなの。」

「そういえばここは芸能事務所なんですよね。テレビに出る可能性もある...。」

「ええそうよ。あなたは何が得意?」

「歌は得意ですあります。特に軍歌がすきであります。ゆき~の進軍、氷を踏んで...。」

優花里は、歌い終わって

「この歌なんですけど~、最後の部分はもともと「どうせ生かして還さぬつもり。」だったみたいであります。」

「ずいぶんくわしいのね。ところで...」

「はい?」

「なぜ、あなたはあんなところにいたの?」

「実は、わたしは高校戦車道の決勝戦で自分が乗っていた戦車が攻撃されたのであります。気が付いたらいつのまにかハポネプラムの憂国騎士団さんの事務所前にいたのであります。」

「それで、その事務所に入っていき、戦車道の話をすると一見温かく迎えられたのであります。しかし、愛国心を強調し、帝国を倒せと主張するのはいいんですけど、亡命者は出て行けとか、平和主義者や講和論者はでていけだのさかんに主張するのには違和感を感じたのであります。

亡命する人は、理由はいろいろあっても亡命を決心するするほど困ったから亡命したのであります。戦争で家族を喪ったりしている人たちはほかの人に同じ悲しい想いをしてほしくないから反対しているのであります。そういう人たちがなぜ貶められなければならないのかわたしには理解できなかったであります。それから、教皇のような白い冠をかぶって美化された地球教の総大司教が描かれ賛美しているポスターがなぜか貼ってあったのであります。

ですので、インターネットで調べたらフェザーンの資金源で活動している団体だということがわかってまともではない団体だと感じるようになってきたのであります。さらに、エクセルプランティードさんという評論家さんがわたしを痴漢したことにするためにわざわざハポネプラム駅につれていったり、どうやらテルヌーゼンのソーンダイク候補を殺害するために活動しているような節があって...。」

「ちょっとこれを見てくれる?」

カワニシ社長は、録画したテレビ番組を見せる。

「『盗撮されたようですが、どうしますか。』

『….。』

『突き出しますか。』

『はい…。』」

「これは.....。」

「どうしたの。」

「ひ、ひどいであります。」

「やはり本人だったのね。」

そこまで話すとカワニシ社長は、何を思ったか

「エリちゃんちょっと来て。」と絵里子を呼ぶ。

エリコになにやら耳うちをして、エリコが優花里の身体をあちこちまさぐった。

「!!ひゃあああ、エリコ殿、なにをするでありますか。」

小形盗聴器がいくつも見つかる。

「それから下剤飲んで。」

きゅるるるる....

優花里のおなかが鳴り出す。

「トイレでいいからそれに座って。」

どこからかおまるをもちだす。

優花里はがまんできなくてまたがった。

「わたし、洗います?。」

エリコは笑顔で汚物を洗おうとする。

「エリコ殿。エリコ殿にそんなことさせられません。」

「社長」

エリコは穏かだが確信に満ちた声でカワニシ社長を呼ぶ。

「どうしたの?エリちゃん?」

「これ、やっぱり?」

エリコは小さな装置をカワニシ社長にみせる。

「もしやとはおもったけど、あきれたわね。」

「また、ですか?」

「そういうこと。完全に話が聞かれてるわ。」

「ホナミ。」

「はい社長。」

奥から丸眼鏡をかけた女性が現れる。

カワニシ社長は、彼女に耳うちして

ホナミと呼ばれた女性は、「はい。」と返事をして事務所を出ていく。

カワニシ社長はため息をつく。

「幸いにもフルネームは話していないから少しは時間かかるでしょうけど...

とりま、あなたに歌の素質があることはわかったわ。ミリタリー好きのアイドルとして売り出す。あなたは友達をさがせるでしょうし、こちらは右傾化の風潮に乘って異色アイドルとして売り出せる。しかし、話を聞かれているからあまり長くここにはいられないかもね.。」

カワニシ社長は少し考え

「う~ん、思い切ってパンチパーマにして、男性アイドルとして売り出しましょうか?そのほうが連中にも気が付かれず長続きするかもね。」

優花里には、小学校時代の悪夢がよみがえった。

「い、いやであります。小学生時代に父親そっくりのパンチパーマで...戦車道のチームメイトにしか見られていないのに...」

「そう、ちょうどいいじゃない。チームメイトに探してほしいんでしょう。盗聴機は処分したし。」

優花里は、失言に気付く。

「わたしは...。」

「僕」

「僕?」

「今日からあなたは男の子として生きるの。だけどチームメイトたちは気付いてくれるわ。早く会いたいんでしょう。」

カワニシ社長は、事務所付の理容室へ優花里を連れていく。

「この子、こんな感じにして。」

優花里は、小学生時代のように短めのパンチパーマにされる。

「え、いやであります。いやであります。」

「そんなこと言わない。」

「暴れるとけがをしますから...。」

理容師は思い余って優花里をシートにしばりつける。

十分ほどであろうか。

「どうですか?鏡をご覧ください。」

鏡を見た。

もののみごとに父親そっくりの短いパンチパーマで姿の元気な男の子にしか見えない。

優花里は、小学生時代の淋しさを思い出し、最初で最後になる「ぎゃおおおおおん。」という叫び声をあげざるを得なかった。

「芸名は、秋月優。本名に似てるし、それから友達であれば声とかあなたの趣味とかで気が付くんじゃないかしら。安心しなさい。男が女になるのなら女子トイレにはいったら変態呼ばわりされるけど、女が男子トイレにはいってもそういうことはないから。」

「そういう問題じゃないであります::」

「あなたの身が危険なこともあるから、あきらめて、男の子として活動しなさい。」

こうして優花里は、秋月優という名のミリオタ好青年アイドルとしてデビューすることになった。優花里はすっかり人気者になり、いつしか自分の境遇に満足するようになり、そんなこんなで1年が過ぎた。

ある日夜道を「自宅」である事務所の二階へ戻ろうとしたときだった。

なにやらだれかつけてくる気配がある。

「だれでありますか?」

優花里は振り向く。

「そうか、気付いたか。」

兜をかぶった男は

「お前を元に戻してやる。それから友人たちにもあわせてやるぞ。」

そういわれたとたん、優花里は、気が遠くなり眠りに落ちた。

 

どのくらい時間がたったであろうか。優花里が目を開く。

「気がついたか。」

(あれ?髪の毛が...)

気が付くと両手は縛られ、なぜか髪はもとのように伸びている。

「わたしはどうしたのでありますか?」

「とにかくついてくるがいい。」

そびえたつビルの中に入り、エレベーターをのぼって、ある一室の前に連れてこられる。

「国防委員会次官室」と表示されていた。

そして、自動ドアが開き、優花里はそこにいる面々をみて驚いた。




沙織の意識が戻ると宇宙船の中の狭く暗い一室にいた。ふだん独房として使われる船室だ。
若い端正な顔だが、精悍さと粗暴さの雰囲気をまとった男がいた。
「俺はエリオットという。お前は沙織というそうだな。」
「わたしをどうするつもり!」
「別に何もしないさ。たいせつな取引き材料だからな。」
沙織はせまい宇宙船の一室で鎖につながれていた。
エリオットは、一日に一度沙織をとじこめた部屋を訪れる。
「沙織、俺がなんで毎日この部屋を訪れるかわかるか。」
「そんなのしらない。早くこの鎖はずしてよ。」
「そういうわけにはいかない。取引材料だと言っているだろう。
お前はかわいいから、襲ってしまわないか自分をためしているのさ。
うれしいんじゃないのか。たくさんの男たちがお前を見ているんだぞ。
お前はそれを望んでいたんだろ。モテモテでよかったじゃないか。」
「わたし、うれしくない。イケメンなだけじゃなくてやさしくエスコートしてくれる男子がいいの。」
沙織は一瞬ぽわんとするが、表情を引き締めて問う。
「ところでゆかりんはどこなの。」
「さあな。俺は知らん。」
「ずるい。だましたってこと?。」
「お前がのこのこついてくるからいけないんだ。」
「だしてよ。ここからだしてよ。」
「暴れても無駄だ。ここから出ても宇宙空間で即死だぞ。」
沙織の目には涙がにじむ。
(ゆかりん、みぽりん、麻子、華みんなはどこ?)
宇宙船ワープし、後に判明したが、時間遡行も同時に行って、惑星ハイネセンに近づき、宇宙港へ降下していく。
(えっ。私は今までどこにいたの??)
沙織には、ビッグサイトに行ってからの記憶が途切れている。
「乗れ。」
「いや。」
プロテクターを付けた屈強な男たちが沙織を押さえつけてランドカーに乗せる。
その男たちに沙織は見覚えがあった。
「あなたたちは、ユー?ユーコクキシダン??」
「ほほう。お嬢さんは我々のことをよくご存じのようだな。」
「ゆかりんを返してよ。」
「ふふん。そんな娘は知らんな。」
ランドカーは統合作戦本部ビル前で停まる。
「はなしてよ。」
沙織は憂国騎士団に抵抗するが屈強な男たち数人の力に勝てるわけもない。
ひときわそびえたつビルの前に連れてこられる。
エレベーターをのぼって、ある一室の前に連れてこられる。
「国防委員会次官室」と表示されていた。
そして、自動ドアが開き、沙織はそこにいる面々をみて驚いた。

エリコ・ミズキ=水谷絵理(CV:花澤香菜)
ミドリ・カワニシ=石川実(CV:早水リサ)
元気のいいショートボブの少女=日高愛(CV:戸松遥)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。