Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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今回の黒十字槍騎兵のキャラ設定については、俊泊様からのご提案をもとに作成しました。ありがとうございました。


第150話 黒十字槍騎兵の突撃です。

さて、時系列は、数年前に起こった異変にさかのぼる。

 

大洗女子学園は、全国高校生戦車道大会で優勝していた。しかしその後、大洗女子の廃校をゴリ押ししようとする文科省学園艦局長辻廉太と、それに難色を示す日本戦車道連盟の妥協案として他校からの短期転校を受け売れた大洗女子連合として大学選抜との試合を行っていた。

 

大洗女子連合は、30両の自軍を三中隊に分け、大学選抜と戦おうとしていた。地形を利用してすこしでも有利な戦いをしたいところだった。

「ひまわり中隊、高地に到達した。」

「みぽりん。」

「やりましたね。これで流れを変えられます。」

みほは嬉しそうに

「大隊指揮車からひまわりへ。二手に分かれて上からあさがおとたんぽぽの援護をお願いします。」

『了解した。』

みほは姉の冷静な声を聴いて、はりつめていたほおの筋肉をゆるめた。しかしそれも長く続かなかった。

『左翼敵集団、あさがお中隊を突破してわれわれの後方へ侵攻中。』

「あさがおを援護するわよ。けり落としてやる。」

カチューシャが叫ぶ。

『射点につきました。』

『準備完了です。』

赤星小梅と直下から報告がはいる。

『中隊長いいわね。』

カチューシャの声。そしてまほの冷静な声。

『攻撃を許可する。』

『撃て!』

というやいなやカチューシャの右側から猛烈な爆風がふきあれる。

ドガアアアアアアアアアアン...

地響きを伴う激烈な爆発音と震動。

次の瞬間、パンター二両がひっくり返っていた。

 

帝国暦487年某月某日、小梅と直下が気がついたときには、銀色の無機質な壁の見慣れない場所にいた。

「こ。ここは...。」

「あなたたち.....]

そこには、エリカとやや赤みかかった精悍な雰囲気もある大人の雰囲気の美女がいる。

「!!副隊長!」

「そう...あなたたちもとばされたのね...。」

「それって...どういう...。」

「全国高校戦車道大会で、大洗のⅣ号を撃とうとした瞬間にとばされたのよ。この1600年後の未来に。」

「わたしたちは、大学選抜との試合中に、上から巨大な爆弾のようなもので吹き飛ばされて...気が付いたらここに...。」

「ダイガクセンバツ??」

三人は、事情を詳しく話しあっているうちに、自分たちが少なくとも異なった世界か異なった時系列からはるか未来のこの世界にとばされているらしいとの結論に達した。

「子どものころ、テレビや本でパラレルワールドという世界があるってきいたわ。あなたたちは、大洗女子が優勝した世界からとばされてきたのかもね。」

「信じられないことですが、そうなのかもしれません。」

「この世界からもとの世界にもどるためには、戦わなければならない。わたしたちは、銀河帝国軍のローエングラム伯のもとで戦っているの。ああ、紹介するわ。わたしの旗艦ケーニヒスティーガー艦長のマヌエラ・フォン・キアよ。」

「よろしく。閣下のお知り合いの方で?」

「ああ、もといた世界で戦車道をやっていた同僚よ。」

「普通は、軍隊に女性はいないのだけれど、ローエングラム伯は、男女わけ隔てない方でね。女性でも優秀な者はとりたててもらえる。私と彼女は、士官学校の特別コースで仕官することができた。あなたがたも速習コースで仕官してもらうわ。」

そうして1年後の帝国暦488年春、リップシュタット戦役時には、オーディン上空から「賊軍」討伐に向かうエリカの旗艦ケーニヒスティーガーの艦上に仕官した二人の姿があった。

 

 

さて、時はもどって宇宙暦799年/帝国暦490年2月、ランテマリオ星域である。

帝国軍総司令官ラインハルト・フォン・ローエングラム公は、通信士官を通して命じる。

「黒十字槍騎兵に連絡。卿らの出番だ。槍先に敵の総司令官の軍用ベレーをかかげてわたしのところへもってこいと。」

 

エリカと、赤みがかった髪に精悍さえかんじられるケーニヒスティーガー艦長マヌエラ・フォン・キアは、うなづきあい、エリカは、獰猛な笑みをうかべる。おとなしい性格の小梅は、やや表情におびえがまじった感じで無言である。彼女はビッテンフェルトの副参謀長オイゲン大佐のように胃袋を酷使されそうな予感を禁じえなかった。

「突撃!」

通信士官に、みほの泣き顔の画像をおおっぴらに同盟軍に送り付ける。

「撃て!」

エリカが高く腕を振り上げて降ろすと、黒十字槍騎兵の艦艇は光の矢を一斉に放つ。

「閣下、黒十字槍騎兵がうごきだしました。」

 

その報告を受け、「疾風ウォルフ」と称される青年仕官ウォルフガング・ミッターマイヤーは、おさまりの悪いはちみつ色の髪を勢いよくかきあげる。

「最終局面が近いというわけか。しかし....。」

「どうなさいましたか。」

「一番うまい歌手は最後にでてくると言わんばかりだな。栗色の髪の小娘の泣き顔を敵に送り付けているようだが....。」

「我が艦隊はどうしますか。」

「是非もないだろう。全面攻勢に移る。獲物の一番うまい肉をあの銀髪の娘に独占させる必要はないからな。」

「小官もそう考えます。」

 

「恒星風の方向が変わりつつあります。」

同盟、帝国量艦隊のオペレーターが伝える。

黒十字槍騎兵の進行方向には、恒星風の影響と惑星の引力などによってエネルギーの「大河」ができていた。

 

「全艦、あのエネルギー気流を突破する。」

「了解」

黒十字槍騎兵は、激しく流れるエネルギー気流にのりいれた。

黒十字槍騎兵の艦列は乱され、下流の方向、すなわち9時方向に流されていく。

総参謀長チュン・ウー・チェンは全艦隊に命じる。

「計算しろ。やつらの進撃速度とエネルギー気流の速度をだ。奴らは流されている。計算すればこちらへ渡ってくる宙点が割り出せるはずだ。」

「出ました。座標を全艦隊に送ります。」

11時20分、黒十字槍騎兵がわたり始めたその宙点に向かい、同盟軍の砲列が火を噴き、光の槍の豪雨が黒十字槍騎兵に襲いかかる。

「ヤークト・アハト撃沈」

「ザイドリッツ・ツヴァイ撃沈」

「ヴェストファーレン撃沈」

「メクレンブルグ通信途絶」

「ヤークト・ドライ大破」

「ケーニヒ・ゼクス撃沈」

「パンター・ツヴェルフ撃沈」

戦艦、巡航艦、駆逐艦が中央からへし折られ、引き裂かれて四散する。

しかし、黒十字槍騎兵は、無抵抗の非暴力主義者であるわけもなく、一斉に光条の槍を浴びせる。

今度は同盟軍の通信回路を悲鳴のような被害報告が埋め尽くす。

「シェンノン(神農)撃沈」

「ユクノーム、撃沈」

「タラスカ通信途絶」

「レイテ撃沈」

「タイコンデロガ大破」

「ステニス撃沈」

「戦艦ペルーン撃沈、ボロディン提督戦死のもよう。」

「シャンジ(蒼頡)大破」

「ブッシュ撃沈」

「被害甚大。来援を請う、至急、来援を請う。」

「戦線維持不可能。退却許可を。」

光条の槍と磁力砲から撃ちだされる超硬鋼弾が同盟軍の艦艇を貫き、艦内には、熱と放射線の嵐が乗員たちを艦外に放り出す。放り出されなかった者は、身体が引きちぎられたり、高熱で死亡したり、内臓がはみ出し、血反吐をはきながら死んでいく。とっておきの予備兵力をもってとどめを刺されたかっこうとなり、艦列は乱れ、草を刈るように撃沈されていく。

老提督は、一方的に爆発、飛散していく僚艦の姿をみつめながら

「一将功成らずして万骨は枯るか...やはり、カイザーには届かずか...。」

と独語した。実際には、ラインハルトはまだ皇帝には即位していない。しかし、ビュコックは、フェザーンでの出来事を聞いており、戦闘をまじえて、彼こそまさしく皇帝にふさわしい英雄、王者であることを痛感していた。むしろはればれとした気持だった。

「すこし、時間をもらう。」

副官のスール少佐にいいのこし、何かいいかけた副官をしり目に、私室へ向かおうとした。




マヌエラ・フォン・キアは、デレマスの木場真奈美のイメージです。

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