Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
ムナイドラ星域、帝国軍第4陣のシュタインメッツ艦隊である。
「!!」
いきなり爆発音が艦艇内部に響き、1500隻の僚艦が、爆発四散するのをみることになる。
「爆発の起こった周辺をさぐらせろ。」
「はっ。」
船外活動で爆発の起こった周辺をさぐった兵士から
「われわれの艦艇とはことなった金属片を発見しました。」
「いわゆる暗黒物質を塗りたくって、レーダーに反応しないようにしていたようです。」
「!!」
「機雷がひとりでに動き出しました。」
「魚雷出現、2時の方向、9時の方向、11時の方向、7時の方向、至近です!」
機雷の当たった船は次々に爆発四散し、魚雷の当たった船も同様だった。
シュタインメッツ艦隊の乗員は、悲鳴のように、僚艦の名称とともに撃沈、通信途絶の通信を聞くことになる。そうしてさらに900隻を失った。
亜空間ソナーと亜空間ソノブイで、ビューフォートが亜空間に埋めた亜空間キャニスターの存在をつきとめ、破壊することに成功したものの、損害は4000隻を超えていた。
バレッタ-メッシナ星域のワーレン艦隊である。
「敵は、暗黒物質を塗った機雷を設置し、亜空間からと思われる魚雷を発射している。
亜空間ソナーと亜空間ソノブイで備えるのだ。それから船外活動で機雷がないか探れ。」
突然爆発が起こり、ワーレン旗艦サラマンドルが衝撃波でゆれる。
「チューリンゲン・アインス撃沈!!」
「ヘルゴグラント・アハトドラィ撃沈!」
「アルベルト・ツバイフィア大破!」
「ボーゼン・ノイン撃沈!」
「デア・クローゼ・ドライアイン通信途絶!」
「何事だ。」
「機雷です。機雷がひとりでに...。」
「!!」
「今度は何だ?」
「なにか光っています。」
「天底方向と天頂方向から魚雷多数。」
「迎撃と同時に弾道を確認しろ。」
「システムがかたまってしまって迎撃できません。」
「システムがなにものかにのっとられたもようです。」
サラマンドルに通信士官から悲鳴のような内容が伝えられる。
ある艦では、システムに異常がないのに何も撃てなくなっていた。
「システム、正常に稼働。マルウェアは確認できません。」
「なぜ撃てないんだ?」
「射撃管制システムが沈黙、作動しません。」
「射撃管制システムに異常がないか調べろ。」
「....!!。」
「どうした?」
「機関が鉄腐食バクテリアに食われています。」
機雷の爆発でばらまかれた光るものは、傷ついた艦艇にもぐりこんでいた。被害を受けた帝国軍各艦は、沈黙してしまった。
「魚雷出現!至近です!」
システムを乗っ取られた艦隊では、解除しようとするとランタイムパスワードが再発行され無限ループでなかなかエリコのしかけたマルウェアを削除できない。
そうこうしているうちに機雷と魚雷が次々におそいかかり艦艇を火球に変えていく。
「魚雷の出現宙点を割り出せ。」
「はっ。」
「アクティヴ・ソナーを照射しろ。」
「敵の位置特定。固定砲台状...いえこれはキャニスター弾発射装置と思われます。10ヶ所確認。あと移動する物体、全長150mほど。亜空間潜航艇と思われます。!!」
「発見されたな。魚雷を発射しつつワープ!」
ビューフォートの次元潜航艦隊15隻は、魚雷を発射するやいなやワープした。
「どうした?」
「また魚雷です。」
「SUM及び亜空間爆雷発射!」
「SUM及び亜空間爆雷発射!」
亜空間からの魚雷が破壊され、四散し、煙を吹きあげ火球となっていく。
「亜空間にワープトレース15確認。」
「方向は?」
「かき乱されてわかりません。」
ワーレン艦隊の損害は4000隻弱に達していた。
「元帥閣下から通信です。」
「読め。」
「全軍、ポレヴィト星域に集結せよ。敵の兵器は排除した。自由惑星同盟を名乗る叛徒ども、門閥貴族の共犯者に掣肘を加える作戦を定めた。繰り返す。全軍ポレヴィト星域に集結せよ。」
帝国軍は1万9千隻を失ったが、ラインハルト率いる精鋭軍だからこそ、あれほどの奇襲、ビューフォートのゲリラ戦に耐えたともいえた。貴族連合軍なら1か月ももたず総崩れだったであろう。
1月30日に、帝国軍は、黒十字槍騎兵とファーレンハイト艦隊がポレヴィト星域に到達し、戦闘用艦艇93,700隻、補給、病院船3万5千隻が集結した。
「ポレヴィト星域からランテマリオ星域までは有人惑星が存在しません。民間人に累を及ぼさぬためにも、同盟軍としてはこの宙域を決戦場に選ぶほかないでしょう。小官は確信をもってそう予想いたします。」
ミッターマイヤーが報告する。金髪の若き元帥が流麗なまでの所作で立ち上がり
「卿のみるところは、正しいと私も思う。同盟軍は、人心の不安を抑えるためにも近日中に攻勢をかけてくるであろう。わが軍は、彼らのあいさつに対し、相応の礼をもって報いることとしよう。双頭の蛇の陣形をもって。」
ラインハルトがそう宣告し、興奮のざわめきが提督たちの間を熱い風となって流れる。
双頭の蛇は、片方の頭が襲われればもう片方の頭が敵を攻撃、胴体部を敵が狙えば、双方の頭が敵を攻撃する陣形である。ただし、大軍の運用によって威力を発揮する陣形であるが各個撃破の危険性があるので、三重の通信防御システムとそれが突破されたときのために短距離ワープが可能な連絡用シャトルを1000隻用意した。
「第一陣の片方の頭は私が指揮する。」
提督たちは、ラインハルトの声に自らの聴覚を疑い、顔を見合わせ、
「ご自身で指揮なさるとおっしゃいますか?」
「危険です。同盟の戦力は衰微したりとはいえ、それだけに窮鼠と化し、兵力が少ないゆえに指揮官を狙ってくる可能性があります。閣下にはどうか後方でわれらの戦いを督戦していただきたいと存じます。」
「この陣形には後方というものはないのだ。ミュラー提督。あるのは二つ目の頭だ。」
ミュラーが沈黙すると、若き独裁者は、手くしで豪奢な黄金色の髪をすいて、はちみつ色の髪を持つ精悍ではつらつとした若き提督のほうをむき、
「ミッターマイヤー、卿は胴体部の指揮をとれ。おそらく同盟は、この陣形で、双頭部分の移動時間のタイムラグを見込んでわが軍を分断して各個撃破を図るために、胴体部を狙ってこよう。卿が事実上の先陣となるのは自明のことだ。」
「ですが...。」
「ミッターマイヤー、わたしは勝つためにここに来たのだ。そして勝つためには戦わねばならぬし、戦うからには安全な場所にいる気はない。」
ほかの提督たちの配置も即決し、
「1時間の休憩ののち出撃する。各自準備をととのえよ。解散!」
金髪の若き元帥はそう言い残して、踵をかえす。提督たちは、その後姿に敬礼を送った。
(やはり、あの方はまず戦士なのだ...)
ミッターマイヤーをはじめとする帝国軍の諸提督たちはあらためて実感したのだった。