Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
第145話 秘策さく裂です。
フェザーン占領の3~4ヶ月ほど前、ユリアンによってもたらされた親書に添付されていた作戦案をスタンドアローンのパソコンにコピーして、老提督と若い副官が画面に表示されたヤン、みほ、エリコ、メルカッツが練ったその力作を眺めている
「廃コロニーを利用して、巨大な浮遊砲台にする…片っ端からいらなくなくなった魚雷、機雷をあつめてフェザーン回廊出口の基地に作業させるというわけか...。」
「たしかに合理的です。いくら造船所をフル稼働したところで、4ヶ月ですと、どうにか1000隻間に合うかどうかですから、帝国軍との戦力差はたいして埋まりません。」
「知ってるかね、少佐。フェザーン回廊近くの廃コロニーは、コルネリアス1世時代に帝国軍が首都に迫ろうとしたときに避難民用に作ったものだそうだ。太陽光で半永久的に作動し、すべての光学兵器を反射する鏡面装甲、そして、なんていったかな、磁力線で接近するミサイルを分解してしまう...。」
「マグネトロン・ウェーブ照射装置ですね。継ぎ目のない実弾などは普通作りませんから...。」
「そうじゃ。それを効率よく低コストで戦闘衛星として惑星を守る防衛システムとしたのがアルテミスの首飾りというわけじゃ。まあ、それはさておき8割がた廃物利用...それなのに絶大な効果があるというわけか...うむ...この方法で行くしかないな。ファイフェル少佐、早速手配してくれ。」
「わかりました。」
さて帝国艦隊が、フェザーン回廊出口から2800光年のポレヴィト星域に差し掛かった時だった。
「4時の方向から高エネルギー反応。まっすぐこちらに向かってきます。」
「ああ、8時の方向からもです。」
「すごいスピードです。高エネルギー到達まであと1分」
「展開しろ!」
「間に合いません。」
帝国軍バイエルライン艦隊は、一挙に4千隻を失った。
「なんだと?弾道を探らせろ。」
「はい。こ、これは...。」
「ポレヴィトの太陽から70光秒の位置に、円筒形の巨大物体、長さ20km、直径8km、同様の物体が、反対方向にもう一基。」
「ただちに破壊しろ、ん、まて?ミッターマイヤー閣下に伝えろ。」
「バイエルライン、よく伝えてくれた。破壊する前に調査しろ。くれぐれも慎重に。どんな罠があるかわからん。」
ミッターマイヤー艦隊から調査艇が発進される。
「せ、接近できません。」
「なに?マグネトロン・ウェーブが発生して、調査艇が...。」
「しかたない。まて...。」
「閣下?」
「あの廃コロニーの表面にはもしかして鏡面装甲が貼っていないか調査しろ。そうだな...」
ミッターマイヤーは技術士官を呼ぶ。
「鏡面装甲かどうか探る装置はないか?」
「この装置からのレーザー光線と電波の反射率でわかります。」
「さっそくやってもらおう。」
「レーザー光と電波反射率確認。」
「どうだ?」
「鏡面装甲です。恐ろしい。もし艦砲を斉射をしたらすべて跳ね返され我が艦隊への被害は計り知れません。」
「マグネトロン・ウェーブでミサイルも命中する前に爆発...。」
「しかもポレヴィトの太陽のエネルギーで半永久的に動くというわけか...。」
「閣下!」
「何だ?」
「10時の方向から高エネルギー反応です。」
「弾道を確認して散開しろ。それからどうせ位置が知られている、全天アクティブレーダーを照射しろ。敵が廃コロニーを作動させるための司令衛星があるのかもしれん。」
「了解。アクティヴレーダー照射。」
「!!」
「小規模爆発光、数か所に確認。」
「高エネルギーが直撃。500隻が撃沈されました。」
「ここは危険だと思われます。別の航路で..。」
「わかった。ここは後方の艦隊に通らないように報せろ。ただしわれわれは前進する。」
「なんだと?廃コロニーをそっくりつかって、高エネルギー砲にしているだと?」
20世紀末から21世紀初頭の日本人にわかりやすくいうなら某ガンダムに出てきたソーラレイによく似た兵器であることがスクリーンに示される。
「はい。ミッターマイヤー閣下からの報告です。別の航路を使ったほうがよいかと。合流宙点の座標指示もあります。」
「ポレヴィト星域から1光年。X5Y7Z9の宙点です。」
「わかった。」
数か月前....
「ミズキ中佐。」
「帝国軍が、ポレヴィト星域の罠に気が付いて別の航路をとる?この場合に、こことこことここの三か所が考えられる?」
「機雷の敷設ですか。」
エリコはうなずく。
「この機雷ならレーダーには反射しないから位置がわからない?ただおそらく帝国軍は名将ぞろいだから被害は出すけど気がつくかも?だからさらに罠をはっておく?」
「なるほど...
エリコは再び無表情にうなづいた。
ミュラー艦隊は、ポレヴィト星域を避ける旨、後方のラインハルトに伝える。
「閣下。この星図にはない宙域を通ろうと考えます。しかし罠があるかもしれません。3時間ほどの距離をおいたほうがよろしいかと存じます。」
「わかった。何しろフェザーン侵攻を予想して航路局の星図を消したほどの手練れだ。卿も用心してくれ。」
「はっ。」
シュパーラ星系JL77基地から1光年の位置である。
「!!」
爆発音が響き、ミュラー艦隊は駆逐艦を数十隻いっきに喪った。
「どうした?」
「機雷です。」
「周囲に敵影は?」
「ありません。」
「念のため、調査艇を発進させろ。船外活動も行って周囲の空間を確認しろ。」
「了解。」
「うわああ。」
船外活動をしていた兵士が機雷にふれて死亡する。
後ろからついてきた兵士が機雷の残骸を拾う。
「こ、これは...」
「暗黒物質が塗られています。どうりでレーダーに反応しないわけだ...。」
「ぎ、魚雷、第二波接近中!」
「弾道は?」
「わかりません。」
ミュラー艦隊はさらに500隻を失った、
「提督?」
ミュラーは一瞬苦虫を噛んだ表情になるが、すぐに冷静な表情になる。
「ここは危険だということが分かった。ポレヴィト星域へ向かう。」
「なぜ?危険ではないのですか?」
「ここの罠の仕組みはわからないが、ポレヴィト星域の罠が判明しているからだ。あの廃コロニーの性能や射程距離をミッターマイヤー提督が明らかにしてくれた。その射程外であれば安全だ。」
「なるほど。」
「ここの罠の正体がわからないの残念だが、時間をかければかけるほど敵を有利にする。そうだな。せめて意表返しに例の機雷を指向性ゼッフル粒子で焼き払え。焼き払ったのに反応して例の魚雷が発射される可能性があるから、こちらがワープした後に放出する遅延信管をつかえ。」
「了解。」
「後方の元帥閣下に伝えろ、この宙域はわながあるので危険である、ポレヴィト星域外縁の航路を使うと。」
「了解。」
ミュラー艦隊は、遅延信管で自動で指向性ゼッフル粒子を放出する装置をのこして全艦ワープして消えた。
指向性ゼッフル粒子が放出され、機雷が焼き払われる。すると通常空間にいきなり魚雷が出現し、指向性ゼッフル粒子放射装置を破壊した。
機雷には、パッシヴレーダーがついていた。また亜空間に通常空間の様子をつたえる機雷も散布されていた。