Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
「いたのか。」
「はい。」
「ルパートにも俺にもつかないと...。」
青みがかった黒髪の美女は含み笑いをし、大鎌をルビンスキーののどもとに突きつける。
ルビンスキーは不敵な笑みを浮かべて一歩下がると、大鎌がはねのけられ黒いフードをかぶった者が三体現れる。
「わかったか。ゼフィーリア殿。」
ルビンスキーは薄ら笑いを続けている。
「先代総大司教の親衛隊エリニュースですか。」
ゼフィーリアも平然とつぶやく。
「身に覚えがあるだろう。」
「いい度胸でいらっしゃいますね。まあ、今のところあなたは生かしておいてあげます。」
エリニュースに加えて、ばらばらと現れた地球教徒とルビンスキーの手の者が黒髪の美女に襲いかかるが、美女は、含み笑いをして大鎌を薙ぎ払って消えた。死体が残った。
「残念だったな。かたづけて、十分に弔ってやれ。」
ルビンスキーは、陰の部下たちや先代総大司教の最後を知り美女への恨みのあまり自分についた地球教徒の生き残りに命じて死体を片付けさせた。
西洋風の兜をかぶった男「ワルフ仮面」を精悍で端正な顔立ちの男が出迎える。
「「王子」か。」
「ああ、あの女、総大司教を殺したようだな。」
「すこしちがうな。入れ替えたのさ。」
「われわれのことがばれそうだったからねえ。手を貸したのさ。」
「しかし油断ならんぞ。」
「いや、こちらにも奥の手があるしね。」
「!!」
「この者たちは...。」
黒いフードをかぶった女と思われる者たちが3人あらわれる。
「エリニュースと呼んでいる。」
「なるほどな。ルビンスキーと組んだというわけか。」
「そういうわけではないさ。あのお坊ちゃんが禿親父を倒すことができた場合に乗り換える布石も打ってある。」
「まあいい、今日は、同盟の新しいカモがネギしょってくることになっている。」
「ふん。またトリューニヒトの腰巾着か。」
「まあ、そう嫌ったものではないさ。おいしい話だからな。」
「しかし、好きになれんな。」
「お互い様だ。まあ行ってくるわ。楽しみに待ってろ。」
自由惑星同盟では、第8次イゼルローン回廊攻防戦の論功行賞人事が行われ、イゼルローン要塞およびその駐留艦隊の将官には勲章が、佐官以下は、一階級の昇進が命じられた。
また、同盟政府では人事異動が行われ、国防委員長は、ネグロポンティが、国営水素エネルギー公社の総裁に左遷され、ウォルター・アイランズが新任の国防委員長になった。
同盟の新国防委員長アイランズは前任者のネグロポンティの潔い出処進退をほめたたえ、前任者の政策を引き継いでいくことを表明した。
しかし、最初にやった「仕事」は、軍事物資の輸入に伴うリベートの談合だった。
「ワルフ仮面」はアイランズと会う会議室のまえで兜を脱いだ。
アイランズと「ワルフ仮面」は、さっそく談合の割り当てについて話し合っている。
「ほう、では今回の入札は、レクトセオンのシェア35%、テキステロンの取り分が25%ということでよろしいですな。」
「そういうことです。ピエドラフェール系のボールデイングやグラスマン・ザスカーにも配慮しなければなりませんからな。」
「指名登録を何社かのトンネル会社にさせて公正に見せるとは相変わらず手の込んだことで...まあ貴国のシステムではそうするしかありませんからな。」
「それはご理解いただきたい。もろフェザーン企業に流れていることがばれたらたいへんなことになりますからな。さて、それはともかく、アーリマン書記官。おかげさまで国防委員長になれました。ありがとうございます。」
「いやいや将来あるアイランズ閣下にはお安いご用ですよ。あんな銀の食器程度で済めばね。こちらとしても、前任者には、時空転移技術の件で脅されていたからねえ。おかげで稀代の小娘、もとい名将を手に入れられたのだから感謝してほしいぐらいなのですがね...」
「あなたの議長へのリークがなければわたしは委員長になれませんでしたから。馬鹿正直に生きていたら損するばかりだと。」
「アイランズ委員長も複雑な方ですな。」
「どういう意味で...。」
「前任者の意図が、軍人の専横を抑えるためだと本気で信じているのでしょう。」
「そのとおりです。いま、イゼルローンには、ヤン・ウェンリーをはじめ、その部下に帝国からの亡命者メルカッツとミホ・ニシズミがいる。三人の軍事的才能は恐るべきものです。軍閥化のおそれもあるのでその力をなるべき抑制しないと文民統制が保たれない。」
「たしかに正論ですな。」
アーリマンは同意してみせた。