Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第63回全国高校戦車道大会決勝戦では、たびたび異変と歴史修復が起こっていたが、またもや、超重戦車マウスの下に38tヘッツアー仕様をもぐらせるという前代未聞の奇策によるヘッツアー車内でも起こった。
マウスの車長は、自車の上に乗った89式を振り落とそうと砲塔を動かそうとするが、完全に「ブロック」されていていかんともしがたい状況だった。
メキメキ、ビキビキ音がして、ヘッツアーはマウスの下に潜り込もうとする。
メキメキ、ビキビキ金属が割れるような音と激しい震動がヘッツアー車内を襲う。車内の謎カーボンの粉末が割れ目から落ちてくる。
「落盤する~もうおしまいだ~;;」
眼鏡をかけた少女、河嶋桃は泣き顔でわめいている。
「車内って、コーティングで守られているんじゃ...。」
「マウスは重たいからね。何しろ188tあるから例外なのかもね~。」
Ⅳ号が斜面をかけあがってマウスのエンジンスリットを狙っているとき、ヘッツアー内の震動は激しさを極めていた。
「もうダメーだ~柚子ちゃん、何もかも終わりだ~。」
いつもは冷静な小山柚子も
「もう、持ちこたえられない!」
と悲鳴のように叫んでしまう。
そのときヘッツアーの車内が一瞬激しく寄れたと思うと
三人は見慣れない場所にいた。
「え...。」
「ここは...どこだ?」
「こんにちは。」
「西住ちゃん?」
「はい。わたしもこの世界に飛ばされてきたんです。特殊部隊として海賊討伐をやっています。こちらは上官のクブルスリー中将です。」
「こんにちは。君たちは西住中尉と同じ世界からやってきたのかね。」
「はい。実は、西住さん、わたしたち、決勝戦で黒森峰との試合中に自分たちの戦車がつぶされそうになって...。」
「!!」
「それってどういうことですか?」
聞くとみほの作戦でマウスという戦車の下に潜り込んでそうなったというのだった。
そばで聞いていたエリコが
「もしかしてパラレルワールド?」
「それって何ですか?ミズキ殿?」
「平行世界で、同じように試合が行われていて、それぞれ別の時間に転移がおこってここに飛ばされている?。」
「そういえばエリオットというイケメンの人とワルフ仮面という西洋風の兜をかぶった人が何かそんなようなこと言ってた。わたし聞いても難しくてなんのことかさっぱりわからなかったけど。わたしはアニメ声優もやらされてたみたい。」
「わたしは、アイドルをやらされました。しかも男性です。」
「そうか...複雑な事情があるようだな。よろしい、わたしのところで身柄はあずかろう。同盟首都になんか行ったら大騒ぎになる。シトレから聞いて、西住中尉たちのことも機密にしているからな。」
みほたちが、帝国領侵攻に伴って召還されたとき、杏たちは士官学校を卒業し、海賊討伐で功績を着々と上げていた。
宇宙歴798年4月のある日
「クブルスリー本部長ですか?」
「おお西住中将じゃないか。首都に召還され行方不明と聞いていたが、無事だったのか。」
「はい。実は...。」
「なるほど、青みがかった黒髪の女か。こちらの情報部とヤン提督のバグダッシュに調査させているが地球教の有力な女性主教以外にはなかなかしっぽをつかませない女だよ。まあ、それはともなく助かってよかった。で、何かね。」
みほから一部始終話を聞いたクブルスリーは、
「なるほど。わかった。手配させよう。イゼルローンを落とさせるわけにはいかないからな。」
「ありがとうございます。」
「ビュコック長官には連絡が取れたのか?」
「実は、ヤン提督も召還されて査問会にかけられているようで、監視が厳しく連絡が取れないんです。」
「そうか。わたしから伝えておこう。」




第102話 要塞対要塞です(その3)。

「空戦隊を発進させろ。」

「ウイスキー、ウオッカ、ラム、アップルジャック、シェリー、コニャック各中隊そろってるな?」

「国を守ろうなって柄にもないことを考えるな、片思いのきれいなあの娘のことだけを考えろ。生きてあの娘の笑顔を見たいと考えろ。そうすれば妬み深い神様に嫌われても、気のいい悪魔が守ってくれる。わかったか!」

「ラジャー」

「よおし、おれに続けえ!」

スパルタニアンが飛び立った。ワルキューレや強襲揚陸艦と戦闘状態になる。

宇宙空間のあちらこちらに爆発光や爆煙が斑点のように現れては消える。

シェーンコップはスパルタニアンの攻撃を逃れて要塞に上陸した装甲擲弾兵を迎え撃たせている。トマホークの打ち合いで、帝国、同盟の装甲兵たちが倒れるが、戦況は膠着状態となりシェーンコップにも余裕が出てきた。

シェーンコップは手招きで招いた当番兵に

「コーヒーを一杯、砂糖をスプーン半分、ミルクはいらない。少し薄めでいい。」

と伝える。キャゼルヌが皮肉をつぶやく。

「コーヒーの味に注文を付けれるうちは、まだ大丈夫だな。」

「まあね。女とコーヒーについては死んでも妥協したくないのでね。」

シェーンコップが答え、ふたりはにやりと笑いあった。

「司令官代理!」

キャゼルヌがそのだみ声に振りむくと、初老の亡命の客将が静かな決意の色をうかべていた。

「わたしに艦隊の指揮権を一時お貸し願いたい。もう少し状況を楽にできると思うのですが...。」

キャゼルヌは即答できなかったが、来るべき時が来たことを悟った。

「....ぜひ、お任せします。やっていただきましょう。」

 

メルカッツ提督とシュナイダー大尉は要塞駐留艦隊旗艦ヒューベリオンに乗り込んだ。浅黒い肌を持ち、中背ながらたくましい身体つきの精悍な軍艦乗りの印象をもつ艦長アサドーラ・シャルチアン中佐は、二人を迎えると非礼ではないが遠慮のない口調で言い放った。

「この艦にヤン提督以外の方をお迎えするとは思ってもみませんでしたが、自分の職責は心得ております。ご命令をどうぞ。」

メルカッツは静かに頷いた。艦橋の会議室のテーブルには、フィッシャー、アッテンボロー、グエン・バン・ヒューがいた。

「司令官代理のキャゼルヌ少将の基本方針は、ご存じのように守勢によってヤン提督の帰還を待つことにある。むやみな攻勢をかけた場合、敵に隙をみせることとなることを考えると、この方針は正しいと考えている。この方針にのっとって、これを戦術レベルで有効に実施していくのがわたしの役割となる。さしあたって、要塞への上陸を企図する帝国軍を排除しなければならない。諸将のご協力をあおぎたい。」

「わたしは、メルカッツ提督を支持します。」

「わたしは、ヤン提督を支持するものです。したがってヤン提督の支持するメルカッツ提督を支持し、その指揮下にはいるものです。」

「支持せざるを得ないだろう。」

3人ともヤンからメルカッツの名将ぶりを聞かされ、しかもメルカッツ自身は意識していなかったが、その出しゃばらない腰の低い態度は好感をもって迎えられたのである。

「では、作戦を説明する...。」

 

帝国軍のワルキューレ部隊は戦況をやや優勢に進めてはいたものの、その実態は、膠着状態に近いものだった。今のところ強襲揚陸艦は次々に撃破され、上陸したわずかな部隊もローゼンリッターの白兵戦部隊に防がれている。ワルキューレ部隊自身もポプランが叩き込んだ、一機がおとりとなってあとの二機が後背からワルキューレに襲いかかるという三機一体の戦法で確実にワルキューレを屠っていったのだが、いかんせん量的には帝国軍が優勢であり飽和攻撃で、上陸可能であろうとエリカは見ていた。

エリカからその報告を受けたとき、ケンプは

「この回廊はやがて名を変えることになるだろう。ガイエスブルグ回廊、もしくは、ケンプ・ミュラー・イツミ回廊となるかな。」

ミュラーは微妙な角度でまゆを動かす。エリカは、無言だった。二人の知るケンプは、こんな大言壮語を軽々しく口にする男ではなかった。分別をわきまえた花崗岩の風格にふさわしい尊敬に値する武人という印象を二人は感じていたのに、ガイエスブルグの司令室にいる男は、体格こそ威風堂々と立派なものの、どことなく浮ついた自制心にとぼしい人物に映っていた。

「以外に手間取ってるわね。」

エリカはつぶやく。

「はい。」

部下の返事を聞きながらエリカは考える。

(この手を使ったらイゼルローンの港湾施設は長期の修理が必要になる。しかし、今のこの状態が続いたら犠牲もばかにできなくなる...。背に腹は代えられない...。)

「無人の駆逐艦を用意して。6隻でいいわ。」

「はい。」

「駆逐艦を自動操縦にし、こちらからコントロールして、イゼルローンのメインポートを封鎖する。いそいで。」

「はっ。」

 

「流体金属が厚くない部分にトゥールハンマーを移動する。西住中将、射程内にある艦艇を退避させてくれ。」

「はい。」

同盟軍の艦列は、トゥールハンマーの射線を巧みに避ける。

 

「トゥールハンマー発射されます。」

「密集しているとやられるわ。艦隊を散開させて。トゥールハンマーの射線の死角に再集結!」

「はっ。」

「よし、とつにゅ...??」

 

「同盟軍の艦艇がメインポートを出港しました!」

「なんですって!」

今度はエリカが地団駄を踏んで、くちびるをかむ番だった。

「くっ...。」

 

「敵艦隊、高速で転針します。」

イゼルローンの駐留艦隊は、エリカの攻撃を避けるように艦列をまとめて針路を変える。

(なにを考えているのかしら。)

「敵艦隊の行動曲線を計算して。」

「はっ。」

オペレーターがコンソールを操作して結果が画面上に表示される。

「出ました。」

エリカはほくそえむ。

「わかったわ。敵艦隊の前面を抑える。B1回路を開いて。」

「了解。」

(先頭集団からたたきのめしてやる。)

「敵艦隊発見。」

「う...。」

エリカは、砲撃を命じようとしたとき、眼下のイゼルローンの流体金属層表面におびただしい数の浮遊砲台を認めて蒼白になった。

「こ、後退。」とエリカが命じたときには時すでに遅く、イゼルローンの浮遊砲台からおびただしい数千もの光条が帝国軍艦隊へ向かって放たれた。そしてエリカの前面に展開する駐留艦隊からも、おびただしい光条が帝国軍へ向かって放たれる。

帝国軍の艦艇は十字砲火に貫かれて煙と爆発光を放って次々に火球に変わっていく。

その様子はガイエスブルグからも見える。

「あの娘...役にたたないな。」

ケンプがぼそりとつぶやく。

しかし、ミュラーはみほにくぎ付けで動けない。ガイエスブルグは「生徒会」チームに攻撃されてうごけない。

 

そのときだった。

「エリカ、大丈夫か。」

エリカの旗艦のスクリーンに映し出された人物が最初に語ったのは、そのひとことだった。

 




感想欄でご質問があり、かなり前の記述ですので、違和感や疑問があったかと思います。力量不足すみませんでした。

>「そういえばエリオットというイケメンの人とワルフ仮面という西洋風の兜をかぶった人が何かそんなようなこと言ってた。わたし聞いても難しくてなんのことかさっぱりわからなかったけど。わたしはアニメ声優もやらされてたみたい。」

これは、さおりんの中の人(かやのん)が『魔弾の王と戦姫』に登場する戦姫の一人ソフィーア・オベルタスと同じであるため、銀英伝世界の『魔弾の王と戦姫』もどきのアニメ『魔法使いソフィー』の主人公ソフィーの声優として地球教徒であるエリオットとワルフ仮面に催眠させられてこき使われるという話(第3話、第13話、第14話)のことを指しています。またこの話は第44話にちらっとでてきます。ほかにもあるのかもしれませんが書いていくうちに忘れましたw。

>「わたしは、アイドルをやらされました。しかも男性です。」

秋山殿が、アイドルマスターDSに登場する秋月涼に似ているため、第15話で秋月涼に似た「秋月優という名のミリオタ好青年アイドル」として活動するという外の人ネタです。

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