Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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そして白昼堂々事件が起こった...。


第9話 この街で花を咲かせます。

キャロラインたちから5mほど通りの南にいた高校生のアレクセイ・ロウィも同じ男をみていた。

12時25分。

キャロラインたちが食事を終えて戻ってくると、ビブリオストック社ビル一階の玄関に挙動不審な男をみかける。これがジョン・ハーベイ・ブースだった。

ビブリオストック社二階にいたハインリヒ・ジョニーは、いきなり電灯が消えて驚く。

「停電か?」

電話会社にといあわせようとする。

ツーツーという音がするだけだった。自分の携帯端末も同じだ。

無線装置もためしたが使えなくなっていた。

12時半。

ソーンダイク候補を乗せた選挙カーはビブリオストック社を赤いレンガのビルをすぎてゆるい下り坂を下りはじめる。すると、銃声が響いた。

後ろのビブリオストック社ビルの六階と、前の草むら、公園の柵、いずれも通りの下り坂からは死角になる。エドワード・ハフマンは、柵の向こう側からソーンダイクを撃っているとおもわれる男がいるのを貌はわからないもののみかける。

 

ジェームズ・テイトは、恋人、事実上の婚約者に会うためにエブリー・プラザに来ていた。キャロラインたちがランチに使ったカフェで会おうと約束していたのだ。

群衆がつめかけていたために、車をとめて、鉄道の陸橋の支柱脇で待ち合わせることにした。

ソーンダイクの選挙カーが現れると銃声がする。

銃弾が何発かソーンダイク候補、それも頭部や胸部に命中し、ソーンダイク夫人は

「あなた、あなたぁ」

と絶叫する。

テイトも群衆もライフルが発砲されていることを悟ってとっさに身をかがめる。

「いってえ...何だ??」

テイトは頬に何かが刺さったような痛みを感じて、頬をてでさすった。

べっとりと液体のようなものが手についた感覚がしたので、思わず手のひらをみつめてしまう。

「!!」

(血だ...どうして?)

(流れ弾?)

そばの支柱に弾丸があたって、一部なくなっているのに気付く。

どうやら支柱の破片が飛び散って頬にあたったようだ。恋人に電話する。

「もしもし、事件に巻き込まれて、けがをした。これから警察と病院へ行かないと...ごめん。」

「なんか騒がしいわね。」

「撃たれた人がいるみたいなんだ。こっちはおおさわぎだ。危険だからここへ来ないほうがいいと思う、自分も目撃したし、流れ弾が近くに当たって飛び散った破片でけがをした。」

「そうなの。残念ね。」

「ほんとにごめん。自分も残念だ。」

さて、鉄道員のバウワー・ヤングも銃声がしたときに草むらから銃によるものと思われる煙が昇ってくるのを見た。

デニー・ワーズは、群衆のなかに黒いレインコートを着た男を見た。ソーンダイクが撃たれた瞬間に傘を開いて高く上げていた。しかし撃たれた直後に傘をたたんでステッキのように持ち替えた。

刑事は部下たちに命じた。

「草むらと柵の向こう側をさがせ。」

警察官たちはエブリー・プラザの草むらと柵の向こう側をさがすが、もうそのときにはだれもいなかった。証拠を残さず不審な男たちはすでに立ち去っていた。

そして背後のビブリオストック社ビルが捜査されはじめた。

「緊急ニュースです。ジェームス・ソーンダイク代議員候補者が頭部を狙撃され重体のようです。」

ソーンダイクの事務所では悲鳴が上がる。

「明日投票日じゃないか。」

「候補者が死亡した場合、三日前なら代わりの候補者を立てることができる。しかし、前日では...。」

皆が暗い顔になる。しかし、ジェシカが皆を励ます。

「まだ亡くなったわけじゃないわ。」

しかし、30分後に病院にかけつけた運動員の一人が

「ソーンダイク候補はなくなられました。頭を撃たれ即死に近い状態だったそうです。」

と仲間たちに伝え、みな悔しそうに叫び声をあげ、机をたたいた。

「対立候補の国民平和会議のレイモンド・トリアチ候補の声明です。」

「ソーンダイク候補は、口先で平和をとなえても結局無力であることを証明したことになるが、しかし、一方で言論を暴力で押さえることはこの自由の国にふさわしくない行為であるのは論を待たない。わたしは、この行為に対し、抗議を表明するものである。犯人の一刻も早い検挙に積極的に協力するものである。」

「いい気なもんだな。」

「やつは笑いが止まらないだろう。」

 

防音処理がほどこされた狭い部屋で数人の男がなにやら密談している。

「犯人のめぼしはついているだろう。」

「はい。例のジョン・ハーベイ・ブースですね。」

「しかしやつは内情を知っている。下手に口を開いたら...。」

「消しましょう。もう手筈はついています。」

1時間後。ニュースが流れる。

「犯人は、ジョン・ハーベイ・ブース。ビブリオストック社の六階からソーンダイク候補を狙撃した模様です。凶器のライフルと、薬莢がみっつ発見されました。」

華がいう。

「この人は犯人じゃありません。」

「じゃあだれなんだ。例のにおいなのか。」

「はい。もっと詳しく調べるべきです。」

「でももうソーンダイク候補は戻ってこないんだぞ。」

翌日、レイモンド・トリアチの無投票当選が決定したとの二ユースが流れることになる。

トリアチの選挙事務所では支持者が万歳三唱していたがテレビにはさすがに放映されなかった。

かわりに、

「当選を素直に喜べない暴力行為に強く抗議する。わたしの当選はけがされた。」

と表明する怒りに震えてみせるトリアチの顔が放映される。しかし、見る人が見ればときおり口もとにかすかな「ゆるみ」が数回にわたりあらわれるのを隠しきれていない。実際、華やソーンダイク事務所の運動員たちはその微妙な「ゆるみ」を見逃さなかった。

ジョン・ハーベイ・ブースは、ビブリオストック社の裏口から自分のアパートへタクシーをひろって帰ろうとした。しかし、アパートの前にいたのは、テルヌーゼン市警巡査のティルピッツだった。

「....。」

ティルピッツは下卑た笑みを浮かべて

「ブース、ソーンダイク候補暗殺犯として逮捕する。」

「話が違う。アリバイがあるから安心しろと...。」

「ふん。そんなことが通用するとでも思っているのか。」

「これでも、そういい続けるか?」

ブースは、銃をティルピッツに向けた。

すると銃声が響いた。ブースは必死に避けようとして、撃った銃弾のうち数発がティルピッツに当たった。ティルピッツは間もなく死亡した。ブースは、ティルピッツ殺害とソーンダイク候補暗殺の疑惑でテルヌーゼン市警に拘束され、12時間以上にわたる尋問を受けることになった。自分がソーンダイク候補暗殺の犯人ではないと主張しつづけたが、聞き入れられず、地下駐車場から刑務所へ移送されようとしたときだった。

ぎょろりとした目の男が笑みをうかべてブースをみた。

バーン、バーン

銃声がひびき、ブースは倒れた。

男はつかまり、ションソン・ガーネットであることがわかった。

ジョンソン・ガーネットは、

「あわれな、ソーンダイク夫人の敵を討ったのだ。」

と繰り返すだけだったが、マフィアの部下という前歴を知っている者は疑惑の目を向けていた。ガーネットは、ブース殺害とソーンダイク殺害事件について取り調べを受けた際、

「当日は、新聞記者のデニー・ワーズにブエノアイレ・ホテルで会っている。聞いてみればよい。」と証言した。

デニー・ワーズとホテルの従業員たちが呼び出され、

「ガーネットは確かにいましたが…20分か25分ほど姿が見当たらない時間帯がありました。ソーンダイク候補が殺されたと知らせてくる人がいて、ガーネットもそのとき帰ってきました。暗殺事件のことを聞いて驚いた顔をしましたが、なにか興奮しているようでした。」

と証言した。その後、ジョンソン・ガーネットも一週間しないうちに拘禁された場所から姿を消して行方不明になった。

一カ月後。とある漁船

「なんか、におうな。」

「あ、あれは...なんだ?」

その物体は、すっかり膨らんで死臭を放ちながら浮かんでいた。

「人の死体のようだが...このにおいなんとかならないか?」

「海上保安庁に連絡しよう。」

身元を確認したところ、ジョンソン・ガーネットであることが判明した...。




「お嬢さん、今までお疲れさま。あまり大きな額じゃないが...。」
そういって渡された額は15万デイナールだった。
貧乏事務所では破格の金額であることを華は悟る。
「ありがとうございます。」
笑顔で礼を言う。
「そうだ、うちのビルの一室を貸すから華道教室をひらかないか。評判がいいから続けてくれ。」
「ありがとうございます。この街で花を咲かせて見せます。」
運動員たちは、うんうんと好意的な笑みをうかべつつうなづく。
「わたくし...。」
「ん?」
「あの事件納得いきません。調べていきたいと思います。」
「お嬢さん、それはやめたほうがいい。命にかかわるかもしれん。」
「皆さんはそれでいいんですか?」
「いいわけじゃないが...。」
「わたくし、なんとかしたいんです。」
「そうか。ありがとう。みんな悔しいと思っているんだ。お嬢さんがそういう気持ちでいてくれてうれしいよ。そうだな、いっしょに事件を解明して敵を討とう。」
華は、ソーンダイク事務所の運動員たちと固く握手をした。そしてあるビルの一角を借りて華道教授を開業した。そしてこの事件を調べ始め、ハポネプラムナンバーの車があることに気づきそれを探すことにした。

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