十六夜が学校ぐらしを始めるようです!   作:鬼城

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特に言うことはありません!

それではどうぞ!


九話 悪夢のように Ⅳ

屋上の扉前ーー。

そこには、やはりゾンビ五体程度に襲われている三人がいた。悠里はゾンビに襲われている慈を助けようとしている由紀をなんとか止めようと手を引っ張っている。

 

「はなしてっ!めぐねぇを…」

 

「由紀ちゃん!めぐねぇはもう…速く屋上に…!」

 

「いやだ!なんで…なんでっ…そんなこと言うの!?」

 

必死に手を伸ばす由紀。その姿を見て慈は笑っていた。ありがとう、心配してくれて…と、いうような気持ちなのかもしれない。そして、ゾンビはめぐねぇの首筋へ牙を向ける。丁度その時、十六夜達は屋上の扉のほうへ来る。

 

「慈!!」

 

「………十六夜く…ん?…ごめんな…さい…。生き…て。」

 

十六夜の声に反応し慈は涙を流す。ごめんなさいとーー謝りながら…。その間にもゾンビは慈の首筋へと迫る。そしてーー。

 

「やらせるかっ!」

 

グチュッーー。

嫌な音がした。

それは、ゾンビが慈の首筋を噛んだことへの音ではなくそれを庇って手を出した十六夜の腕をゾンビが噛んだことによる音だった。それを見て叫んだのは由紀。

 

「いやーーーーー!いっちゃんが…死んじゃうよっーー。どうして?もう、嫌だ!なんで…みんないなくなっちゃうの?置いてかないで…」

 

そこまで言うと由紀は力尽きたように倒れた。

 

「…おまえら、速く…屋上に行け!扉を閉めろ、此処はなんとかしてやるから、はやく!」

 

「い…十六夜。」

 

「胡桃…後は任せた。」

 

コクリと胡桃は頷き、慈を連れて屋上へと向かう。悠里も由紀を抱えたまま屋上の扉を開けた。それを見届けたあと十六夜はゾンビを見る。

 

「本気で相手をしてやる。来いよ木偶が!」

 

『ウアァア』

 

十六夜の言葉に答えるようにゾンビは雄叫びのようなものをあげて、十六夜の方へ向かった。

 

 

おなかすいたおなかすいたおなかすいたおなかすいたおなかすいた。そんな欲が感情を覆う。抗えないなにかーー。そしてーー、声が頭に響く。

 

声ーー。

それは、言葉ではない。全ての情報が流れてくるような感じーー。ゾンビ達に似た声。実際、ゾンビによるものなのかもしれない。

 

「俺も、奴らの仲間入りか。」

 

そう、そういうことなのだ。彼らは繋がっている。だからこそ今、十六夜はその繋がりを感じている。腕を噛まれたことによってーー。

 

廊下に座り込んでいる十六夜の周りにはゾンビが無惨な姿で倒れている。頭が全て潰れており、腕も変な方向へ曲がっている。それが五体。

 

あの後、十六夜は本気でゾンビと戦った。その結果がコレだ。本気で戦うにしても学校を壊さないようにという縛りがあるのでそれはそれは十六夜にとって大変だっただろう。殴りーー殴り、殴りまくりそれの繰り返し。それでも彼らは死なない。それならばと、十六夜が出した答えが頭を潰す。たった、それだけのこと。そして、全てを倒すのにかかった時間は30分。

 

「かっこわりぃ。」

 

そう、呟く十六夜。その十六夜の目にあるものが止まった。青色のカードーーギフトカード。それを見て十六夜は笑った。そうか、これがあったとーー。

そして、ギフトカードに手をかざす。出てきたのは瓶だった。透明の青色をしたひし形の瓶。ギフトネームは、癒しの純水(ヒーリングオブピュアウォーター)、あるギフトゲームの時、貰った景品であり、癒しの中で最高の治癒力を誇るギフトである。

 

「ギフトネーム、癒しの純水。」

 

十六夜が口にするとその瓶から出てきたのは水色のワンピースをきた小さな特異性物ーーいわゆる、精霊。その精霊は十六夜の腕の方へ飛んでいきクルクルと回る。その光景を静かに見守る十六夜。

 

「…キャッ!」

 

精霊が笑う。

刹那ーー

十六夜の患部を純水が包んだ。どんなものでも清める水ーー純水。その水は十六夜に入った不純物を取り出しているかのように濁った色へ変化していく。そして、だんだん噛まれたことによる外傷までもが治癒され治った。さすがにコレには十六夜も驚く。同時に納得。

 

「へぇ〜、白夜叉が言ってたのはこういうことか…。でも、一回しか使えないしな、まったくもって残念だ。」

 

さっきまで、いた精霊は消えたようだ。今はその姿さえ見つけられない。

 

「さてと、それじゃあ行きますか。」

 

そして、十六夜は立ち上がり屋上の扉を開く。雨はもう止んでいるらしく空には虹がかかっているのが見える。そして、次に目に入ったのはいつも以上に笑っている由紀の姿。そして、由紀を見ながら戸惑う三人の姿だった。

 

「どうし…」

 

どうした?と聞こうとした十六夜は言葉を止める。そう、十六夜もある違和感に気付いたのだ。由紀がこんな状況で笑っているという事実による違和感。

 

「あっ、いっちゃんだ!見学どうだった?」

 

由紀は十六夜に気付くと走り寄り笑顔で聞く。流石にコレには十六夜も顔を引きつる。とそこにようやく三人も十六夜の方へ歩み寄る。

 

「い…十六夜、なんで…。怪我は?」

「その話はあとだ。胡桃、これはなんだ?」

 

その十六夜の問いに胡桃は分からないと首を振る。そして、慈も悠里も分からないらしい胡桃と同様に首を振った。

 

「…みんなしてどうしたの?」

 

当の由紀は話が分からないのかーー否、分かっていないのであろう。首を捻っている。そんな姿をみて十六夜は深呼吸をし由紀に訊ねた。

 

「由紀、今日は何をしていた?」

 

「えっとー、今日はね〜いつもと同じように授業を受けてたよ!」

 

授業ーー。確かに、由紀は授業といった。つまり、由紀の中では日常が続いていることになる。何故、そうなったのか?答えは簡単だ。精神がこの状況に耐えられなくなったということだろう。だから、精神を保つためにも彼女は辛いことを忘れた。

 

「由紀、もう一つ質問だ。お前にはゾンビの記憶があるか?」

 

「ゾンビ?どうしたの?いっちゃん。怖い夢でも見たの?」

 

その言葉は四人を完璧に凍らせた。

 




次回からやっとみーくん編に突入できます!

それでは次回もよろしくお願いします!

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