永久なるかな ─Towa Naru Kana─   作:風鈴@夢幻の残響

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19.決着、グルン・ドレアス。

 鉾を退けた俺達は、再開した索敵と救助の最中、クロムウェイ達と合流する。

 彼らもまたグルン・ドレアスに入ってから、索敵と非戦闘員の救助を行っていたらしく、そのお陰で、俺達が戦った鉾が最後の鉾であったことが判った。

 そのため、クロムウェイと別れ急ぎミゥ達と合流し、俺達は王城へと向かっていた。

 その道すがら、ミゥ達へ先程あった事を説明すると、

 

「……祐さん、二人を助けていただいて、ありがとうございました。……けど、その為に永遠神剣と契約することになってしまったんですよね。……その、ごめんなさい」

 

 心底済まなさそうに言うミゥに「いや」とかぶりを振って返す。

 

「俺もいい加減、もっとしっかりと戦える“力”が欲しかったからな。それにどうやらこいつには目をつけられていたようだし、遅かれ早かれ契約するはめになってたと思うし。なにより……俺も鉾の接近に気づかなかったからな。……『観望』が力を貸してくれなかったらと思うと、ぞっとするよ」

 

 だから気にする必要は無い。そう言うと、ミゥはもう一度「ありがとうございます」と言って頭を下げる。

 

「でも……これで私たちが祐さんを守らなくても、大丈夫になっちゃいましたね」

 

 そんな折、俺の右側を飛んでいたポゥが、少し寂しそうに言ってきた……いやいやいや、俺としてはまだまだ頼りにしてるんだが。

 その事を伝えると、戸惑った雰囲気できょとんとするポゥ。

 

「いや、ほら、まだこの“力”にも慣れないしさ。……それに、慣れたとしても、俺としては今一番安心して背中を任せられるのって、ポゥ達なんだよ。

 確かに、こと戦闘能力で言えば、神剣を直接扱える斑鳩達のほうが上だろうけど……この旅が始まってから俺が一番長く一緒に戦ったのって、ナナシとレーメを除けば皆なんだよ。……だから、これからも頼りにしてる」

 

 俺がそう言うと、一泊置いて「はいっ!」と言う元気の良い返事が返ってきた。うむ。

 その後、ミゥとルゥ、ゼゥ、ワゥにも「これからもよろしく」と声を掛けると、それぞれに「仕方ないなぁ」と言うような雰囲気を出しながらも、快く頷いてくれた。

 

「ああ、そうだ。ナナシ、レーメ」

「はい」

「うん?」

「さっき実際に神剣を使ってみて思ったんだが……形状変化を駆使して戦おうとしたら、慣れるまでそれに手一杯になりそうなんだよ。だから当分、アーツに関しては二人に完全に任せる」

 

 俺が契約した『観望』は群体で構成されるナノマシン型神剣……と言うだけあって、その姿を俺の思った通りに自在に変えることが出来る。先程の戦いであれば、最初は盾、次に剣、最後に槍、と言った具合だ。

 最も、形成した形を保つには必ず俺と接触していないといけないらしく、俺の手から離れた場合は、霧散する様に元の粒子状の形に戻るようで。つまりは飛び道具としては使えないって事だな。

 それでこの形状変化。唐突に武器の間合いを変える、などで相手を翻弄できるのはいいんだが、それを上手く行う為には、俺自身が様々な武器に精通していなければ宝の持ち腐れになってしまうわけで。

 ようするに、今現在の俺の実力では、戦闘中にアーツにまで思考を割く余裕が無い、って事だ。

 形状変化させずに、形を固定して使えばいいじゃん、なんて言われそうだが……折角の変幻自在。使わないのは勿体無いじゃないか。

 まぁ、アーツの方は俺だけではなく、ナナシとレーメの二人も扱えるのだし、それならいっその事全面的に任せてしまおう、と言う事である。

 

「……そう言うことでしたら」

「うむ。心得た」

 

 俺の考えを説明し了解を得た所で、今この場で話すべき事は全て終えた。後は走る事に専念だ。

 ……急ごう。今も尚、戦いは続いているのだから。

 

 

……

………

 

 

 城へ向けてひた走る俺達の前に城門が見えた。

 見上げるばかりに大きなソレは、本来であれば固く閉ざされ、不審者の侵入を拒むであろう。だが、今は大きく開け放たれ、その口を開けている。周囲に敵の姿は無い。それを確認した俺達はそのまま、駆け抜ける様に城内へと突入した。

 今だ勝ち鬨が上がらないと言う事は、城内の掃討、もしくはダラバとの戦闘が長引いていると言う事。

 前者ならまだいい。後者であった場合、考えられるのは、原作通りのダラバとカティマの一騎打ちだ。俺としては一騎打ちなんてしないで、全員で袋叩きにしてやっていて欲しいところなんだが。

 

「……『観望』、神剣の気配が集まっている所へ誘導してくれ」

<承知した>

 

 脳裏に『観望』の声が響く。

 その導きに従って進むうちに、“それ”は聴こえてきた。

 

「ちっ……!」

「剣戟……ですね」

「ああ」

 

 ナナシの言葉に頷いて返す。そう、聴こえてきたのは剣戟の音。それも乱戦ではなく、明らかに一対一と思われる響き。それは間違いなく、カティマとダラバの一騎打ちの音だろう。

 やがて、その音の発生源である部屋──謁見の間へと辿り着き、突入した俺達の前に広がっていたのは、予想通り、剣を打ち合わせるカティマとダラバ、そしてその二人を固唾を呑んで見守る皆だった。

 歩を緩め、歩いて皆の下へと近づく。

 

「あ、先輩」

 

 と、俺に気付いた永峰が声を上げ、こちらに駆け寄ってくる。それと同時に、一瞬、皆の視線がこちらへ向いた。

 俺はそれに片手を上げて返すと、永峰と合流しつつ、とりあえず斑鳩の所へ向かう。

 

「えっと、その、お疲れ様です」

「ありがとう。街の方はもう大丈夫だ」

「そうですか、よかった……」

 

 やはり気になっていたんだろう、俺の言葉にほっとした様子を見せる永峰。

 そんな彼女に苦笑が漏れ、軽く肩をぽんと叩いてから斑鳩の元へ。

 

「……ところで斑鳩。俺はカティマが無茶しないようにフォローしてくれって言ったんだが……なんで一騎打ちなんぞしてやがる」

「……私が、この分枝世界の未来は、この世界の者が決めるべきって言ったのよ」

 

 俺の問いに答えたのはタリアだった。

 斑鳩もばつの悪そうな顔をしつつも頷いて同意する。

 それに対し、思わず「……はぁ」っとでかいため息が漏れた。

 

「……斑鳩。その二人と合流してから、考えが『旅団』寄りになってるんじゃないのか?」

 

 そんな俺の言葉に訝しげな顔をする斑鳩とタリア、そしてソルラスカ。恐らくは、俺が『旅団』の名を出したことにも引っ掛かってるんだろうが、それは今はいい。

 世刻と永峰は、俺達の様子とカティマの様子を、交互に不安げに見守っている。

 

「解らないか? ……これで万が一にでもカティマが負けたらどうする? 総大将のクロムウェイが居るとは言え、戴くべき旗頭の居なくなったこの軍は瓦解するぞ。そしてダラバが、そんな自分に対して反乱を起こした連中を許すと思うか? 俺は思わんね。下手すりゃ一族郎党皆殺しさ。おまけにいえばプロテクトを一筋縄で解除するとも思えんしな。そうなれば俺達がこの世界を出ることも難しい。……更に言えば、そうなったら学園の皆にだって今以上に危険が及ぶ可能性が高い」

 

 そこまで一気に言ったとき、斑鳩や世刻達のはっとする顔が見えたが、そのまま言葉を続ける。まあ実際には、カティマを討てば満足して、プロテクトを解いてさっさと俺達を追い出すかもしれんけど。

 

「それにだ。言わせて貰うが、俺達含め……物部学園の皆はもう“この戦争”に、首どころか頭までどっぷり関わってるんだよ。言うなれば“この戦争”は、この世界の者達の戦争ってだけじゃない。あの時、カティマを手助けすると皆が決意したあの瞬間から、“俺達の戦争”なんだ。……それを、『この世界の未来はこの世界の者が決める』?……それこそふざけるな、だ!」

 

 思わず激昂しそうになった気持ちを、一度深呼吸して落ち着かせる。

 感情のままに行動しても意味は無い。

 

「……カティマは『アイギア軍』の総大将だ。指導者だ。象徴だ。旗頭だ。……そんな人物は、本来おいそれと一騎打ちなんぞするべきじゃ無いんだよ。神剣使いである以上、前線に出て戦わざるを得なかったのは事実だし、それを否定するつもりもない。けど、こんな無茶はしちゃ駄目じゃないか? ……第一、今こうしている間にも、外じゃ兵士達が命を散らしているんだ。それを忘れるな」

 

 だからこそ、俺は以前アズラサーセでカティマの後を追い、圧倒的不利な戦いに加勢した。一人で無茶するカティマを、少しでも助けるために。生き残らせるために、だ。あの時だって本当なら……アズラサーセがアズライールと同じ結果になる恐れが無いのであれば、カティマを無理やりにでも止めたかったぐらいなんだ。

 そう言い切ると、俺の言った事に色々思うことがあるのだろう。皆は一様に押し黙ってしまった。部屋の中には、カティマとダラバの奏でる剣戟の音がただ響く。

 

「はぁ……まぁ、今言ったのは飽くまで俺の一意見で、ただの素人考えかもしれないけどな。……でも、一理はあるだろ。俺ももっとちゃんとカティマと話しておくべきだったよ。……何にせよ、ここまで来たらもうカティマを信じて待つしかないさ」

 

 そして俺は口を噤む。そう、あとはカティマが勝つのを信じるしかないのだ。

 

(……ああ、そうだ。『観望』、聴こえるか?)

<……聴こえている>

(この部屋に、俺達とダラバ以外の神剣使いが潜んでいるはずだ。……気付かれない様に『視て』おいてくれ)

<……エヴォリア、と言ったか。……承知した>

 

 そんな『観望』の答えに一瞬驚くが、そう言えば、こいつ俺の記憶視てたなとすぐに思い当る。

 

(……ナナシ、レーメ、聴こえていたか?……っていうか、そう言えば『観望』の声って二人にも聴こえてるのか?)

(はい。どうやら我々がこうして行っている、複数間の念話と同じものの様ですので)

(うむ。恐らくは『観望』が吾等にも聴こえる様にしているのだろう。……ユウの記憶を視たのであれば、吾等の関係も理解しているだろうからな)

(そっか。……じゃあ、いつでも動ける準備をしといてくれ)

(イエス、マスター)

(心得た)

 

 『観望』、そしてナナシとレーメとの念話を終え、カティマとダラバが演じる剣舞へと眼を向けた。

 激しさを増すそれは、クライマックスが近い事を物語っていた。

 そして一際激しい攻防の後、カティマが弾き飛ばされ、壁に激突する。

 

「カティマ! くそっ!」

「待てよ。カティマのやつ、まだやる気だぜ?」

 

 その様子に世刻が駆け出そうとした所で、ソルラスカに止められていた。

 その言葉どおり、見ればカティマは剣を支えに立ち上がり、ダラバに向かって構えている。

 

<……『渡りし者』よ>

 

 そんな折、不意に『観望』の声が聴こえた。

 カティマの方も気になるが、『観望』の方へと集中する事にする。

 

(……そういえば、その『渡りし者』ってのは何なんだ?お前の次に夢で逢った娘も言ってたけど)

<……汝の事、であることは理解していよう?>

(そりゃな。何度も呼ばれてるし)

<……ならばそれでよい。それよりも……だ。見つけたぞ>

 

 気にするなってことか。……まあいいや。

 観望の言葉にどこだ? と返すと、『観望』は俺の意識にある一つの柱を浮かび上がらせた。

 

<……あの柱の陰に居る。……油断せぬようにな>

 

 その言葉に俺は内心で頷いて返すと、カティマ達へと意識を戻した。

 『心神』を携えたカティマが、ダラバへ向けて疾走する。

 長い剣舞を演じていた事を微塵も感じさせないその強い踏み込みは、迎撃せんとするダラバの行動を上回り、その懐に猛烈な勢いで飛び込んでいった。

 交錯する二人の影。その瞬間──カティマの剣がダラバの身体を刺し貫いていていた。

 

「ふ……ふふふ……やはり……定められた運命からは逃れられなかったか」

 

 ゴフリ、とその口から血を吐き、その身を剣に貫かれながら、ダラバは笑う。悔しそうに、虚しそうに。

 

「私の苦しみはここで終わるが……私が背負った苦しみは、貴殿に受け継がれる。これから先……永遠に、自らの血に宿った呪いに……苦しめられるがいい……さらば、だ……」

 

 ダラバが発したその呪詛にもにた言葉は、しんと静まり返った謁見の間に響き渡った。

 そしてダラバは、自らの手で『心神』を引き抜くと、その場に静かに崩れ落ちる。

 

「みんな、油断するのは早いわ。神剣はまだ消えていない。息がある証拠よ」

 

 ダラバの言葉に何か感じるものがあったのだろう、放心するカティマに皆が駆け寄る中、タリアの声が響いた。確かに未だ、ダラバの神剣たる『夜燭』はその手に握られたままだ。

 それは偏に僅かにでも息が有るということ。それが例え虫の息だとしても。

 そして俺は知っている。その状態が都合がいいと考えている存在が居るということを。

 

「おい、ちゃんとダラバに止めをさしておいた方がいいんじゃないか? 無えとは思うけどよ、油断して不意を撃たれたら堪ったもんじゃないしな」

 

 ソルラスカがそうカティマに促した時だった。

 

「そうはいかないわ。その体は今から私が使うんだから」

 

 聞き慣れない声が謁見の間に響く。

 次いで突如俺達の前に現れたのは、アラビアの踊り子のような、異国風の衣服を纏った少女。

 

「……っ! ダラバの部下か!?」

「まだ敵が残ってたの?」

「……そいつはこの世界の人間じゃねぇ。……エヴォリア、捜してたぜぇ……!」

 

 驚愕の声を上げる世刻と永峰に対し、ソルラスカが否定し、武器を構え、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「旅団がこの世界に干渉してくるとはね。お陰で予定が狂っちゃったわ」

「ダラバに鉾を提供していたのはテメエだな? 光をもたらす者はこの世界も滅ぼそうってのか!?」

「そうよ。そしてその計画はまだ進行中」

 

 そう言いながら、倒れたダラバに近づいていくエヴォリア。

 彼女の実力も、その目的も解らない皆は、警戒するばかりでエヴォリアの動きを止めることが出来ないで居る。

 だが次の瞬間、エヴォリアは瞬時にその場を飛び退り、距離を開けた。……彼女とダラバの間を、猛烈な勢いで雷が駆け抜けたからだ。

 確かめるまでも無い。先ほどいつでも動けるように、と頼んでおいたレーメの放った『プラズマウェイブ』のアーツだ。

 細かい指示を出さずとも適宜判断してくれる。本当に出来た相棒たちだよ。

 その間に俺は駆け出し、皆の前に躍り出てエヴォリアと対峙する。

 

「青道君!?」

 

 斑鳩が驚愕の声を上げた。無理も無いわな。鉾じゃない、本当の意味での『神剣使い』の前に飛び出したのだから。

 そして案の定、突如自分に向かってきた俺に対し、恐らく今邪魔をしたのも俺だと気付いたのだろう、エヴォリアがその手を向ける。

 

「ちっ!邪魔よ!」

 

 彼女が見につけている腕輪──永遠神剣『雷火』──が光を発し、俺に向かってその力を振るおうとしたところで──

 

「『ファイアボルト』!!」

「……くっ!」

 

 その力は、彼女に向かって飛来する複数の火球──ナナシの放った『ファイアボルト改』のアーツを撃ち落す為に振るわれた。

 その隙に、俺は『観望』を杖の形にして手の内に現す。

 

「……なっ!」

「この気配……永遠神剣!?」

 

 後ろで皆の驚く気配がする。……ちょっと気分が良いな、なんて思いつつ、とりあえず今は無視。どうせ後で説明する事になるだろうし。

 俺は『観望』をエヴォリアへ向け、『力有る言葉』を紡ぎ出す!

 

「イン・フェル レイ・ウィル インフィニティ……『氷結 武装解除(フリーゲランス・エクサルマティオー)』!!」

 

 ……今まで魔法発動体の代わりとしていたオーブメントではなく、『観望』を杖として使用したのは、永遠神剣自体が『マナ存在』であるために、魔法発動体となるのではないか? と思ったからだ。

 ……って言うか、それを言ったら、こいつを受け入れた時点で俺自身もマナ存在となってるはずだから、いざとなればこの身一つでも使えるのかもしれないが。

 ……とりあえず、俺のその考えは当たっていたらしい。エヴォリアへ向かって氷の嵐が吹きすさび──カラン、と乾いた音を立て、『雷火』がエヴォリアの後ろへ飛んで落ちる音がした。

 『氷結 武装解除』の魔法は、相手の装備を凍らせ砕く魔法だ。とは言え流石に永遠神剣は砕けなかったらしい。うん。永遠神剣は、な。

 

「…………………………え?」

 

 それは誰の声だったのだろうか。俺の放った魔法が効力を現し、痛いほどの沈黙が落ちた謁見の間によく響いた。

 その後に続いたのは──

 

「……き……きゃああああああ!!」

 

 意外にも可愛らしい、エヴォリアの悲鳴だった。

 後ろで「望ちゃん! 見るなー!!」とか「ソル! あんたもよ!!」とか「今はそんな場合じゃないでしょーー!!」とか聞こえるがそれも今は無視。

 俺は咄嗟にへたり込んで身体を隠した“全裸の”エヴォリアを見据える。それはもうじっくりと。眼福である。

 いや実際、ここで敵から眼を離すなんてのは只の自殺行為な訳で。……ってわけで、しっかりとその動きを見張らせてもらいます。

 それにしても、この程度の事なら冷静に対処してくるかとも思ったが……まあ、余りにも予想外な事態に混乱してるんだろう。マナで服を再構成すればいいのに、裸のままエヴォリアは若干涙目になりながら、上目遣いで俺を睨んでいる。いやホント、何度も言うようだが眼福である。

 

「…………お前、名は何と言う!?」

「青道 祐」

「……青道 祐……覚えてなさい! 次会った時は必ず殺してやるから!!」

 

 エヴォリアはそういい捨て、『雷火』をその手に呼び戻して、空間に溶ける様に消えて行った。

 …………ふっ。その格好のその表情でそんな事言っても、怖くも何とも無いんだぜ。

 

「……祐、お前、なんっつーかえげつねぇな」

 

 若干引き気味にそういってくるソルラスカに「失礼な」と返し、やれやれと溜め息を吐いたところで──

 

「…………………………マスター…………」

「………………………………………………」

「………………祐……まったく、きみと言うやつは……」

 

 ──若干……いやかなりナナシとレーメとクリストの皆の視線も痛かったりするけど……うん、仕方ないんだよ。俺にはこの方法しか思いつかなかったんだから。うん。

 

「……ゴホンッ……それはともかく、カティマ」

「えっ……あ、は、はい!」

「……ダラバに止めを。まだ外では戦いが続いてるんだ。さっさと戦争を終わらせるぞ」

 

 その言葉で現状を思い出したのだろう、カティマが頷き、ダラバへと近づく。

 正直何とも形容しがたい空気が漂ってたりするんだけど……俺のせいか。

 

「…………ダラバ将軍……さらばっ!」

 

 …………こうして、ダラバはマナの光と消え、城下に歓声は轟き、俺達の『剣の世界』における戦いは幕を閉じた。


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