「はぁ...どうしたものか」
アインズは、一人大きな机に顔を伏せながら呟く。後ろにいるアルベドに惨めな姿は見せられないと粋がっていたアインズだが、息子が出来てからというものの醜態を曝し続けたアインズは、そういう態度を取るのが若干疎かになっていた。
アルベドは、悩ましげに呟く愛する旦那の気持ちに寄り添うように、優しく訪ねる。
「どうかなさいましたか?アインズ様」
「アルベド...。そういえば...アルベドは私と結婚しただろう?なのだから『アルベド・ウール・ゴウン』になるのか?この場合何処が苗字なのだろうか?」
アインズは、質問しようとした事とはまた違った質問を口に出す。
外国的には『アインズ(ファーストネーム)ウール(ミドルネーム)ゴウン(ファミリーネーム)』だろう。だから実際、『アインズ・ウール・ゴウン』と名乗ったときは大抵の人が「ゴウン殿」「ゴウン様」「ゴウン氏」と呼んでいる。
しかし、スーパージャパニーズ思考のアインズからすれば『アインズ(呼びやすい)・ウール(変てこりん)・ゴウン(短くない?)』くらいにしか分けられない。つまりは、外国風に言うならばアルベドは『アルベド・ゴウン』もしくは間にミドルネームを混ぜるのだろうが、そもそもミドルネームって何だよ、というような返答しか出来ないアインズは結論を出すことが出来なかった。
「私は、アルベドのままで構いませんよ。タブラ・スマラグディナ様が与えてくださったこの名前には、苗字が存在しませんですし。アインズ様も、かつてはモモンガ様でいらしたではありませんか」
結論を出せないアインズに助け船を出すようにアルベドは話す。その笑顔は慈母のようだ。
アインズはかつての自分の名を思い出す。
折角異世界に転移したというのに、転移直後に改名した為、異世界でもその名を知る者はおらず、そしてナザリックでもその名を使う者は、アインズ・ウール・ゴウンに改名したことを知らない者のみだ。
ナザリックには存外、名前が短い者も多い。
例えばコキュートス。例えばデミウルゴス。例えば恐怖公。そして、アルベド。
苗字は?と言われても答える術を持たざる彼らに、元は苗字もないアインズが与えるのも、よく分からないものだ。
ならば気にしなくていい。そう思いアインズは朗らかに笑った。
「そうか。お前がそう言うならば構わない。
で、だ。アルベドよ。本題はそこではないのだ」
一度笑ったアインズは、先程から呻いている案件についてアルベドに相談するために真面目な声音に戻した。
「この私の身で解決するのであれば何でも致します。どうぞ申し付けくださいませ」
同じく至極真面目な声を出すアルベド。
アインズは数秒思考し、どの言葉が最も最適かを考える。その考えを説明する言葉は多数ある。だが、何が一番アルベドの心に衝撃を与えるか。
そして最も良いであろう言葉を出す。
「ムササビに同級生が少なすぎるんだが」
「あっ」
『ムササビ成長日記』
今日で19日が経過したが、今になって気付いてしまったのだ。子供にとって大切である同級生の友達候補がリューシュ君くらいしかいないのは非常に不味い。ペロロンチーノさんがナザリック学園を設立しようとしたのは、実は子供にとっては良い事だったのではないか?
私が青春という存在を大人になってから知った身だ。我が子には、どうか若いうちに青春を味会わせてあげてやりたい。どうするか。
アルベドから「エルダーリッチ」の案が出たが、今度試してみよう。幼稚園服をエルダーリッチに着させて幼稚園を建ててやるか。フールーダに...いやダメだな。司書長に任せるとしよう。
ペロロンチーノさん。ナザリック学園、なんとしても設立しますからね。
この雑さ。
ランキング入りが嬉しくて読み返したら誤字がヤバかったので後で直します。