ムササビくん成長日記   作:ショウラン

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今回少し長いです。
それと、今回から日記は後に来ます






5. ムササビとアインズとザリュースとその他

絶大なる存在、アインズ・ウール・ゴウンの傘下に入った種族―――蜥蜴人(リザードマン)最強の男、ザリュースは今日も今日とて生け簀作りに余念がない。

一度はアインズ・ウール・ゴウンに仕えるコキュートスという存在に奪われた命だが、死すらも凌駕する圧倒的な力を持ったアインズの手によって蘇ったのだ。

 

腰に携えた蜥蜴人(リザードマン)の元至宝である獲物がカチャカチャと音を鳴らす。一度ナザリックを見た彼にとっては、この剣(フロスト・ペイン)など取るに足らない物なのだと思い知った。それでも付けているのは、この剣だったからこそコキュートスに一撃当てる事が出来た武器だからだ。

 

それに、これを取るために殺した蜥蜴人が報われないじゃないか。そう思った思考を何処かにやりながら餌の分量を計っていると、すぐそばに半円状の闇が現れる。

 

「ご苦労、ザリュース」

 

その闇から顕現せし存在こそ、生死など状態の一環でしか無いと言い張った神。アインズ・ウール・ゴウンだ。

 

ザリュースはその邪悪な姿を垣間見た途端に、全ての物を放り出してその場に跪く。そこには反抗心など微塵もなく、心からの忠誠が溢れている。

 

「これは、アインズ様。ようこそおいでなさいました」

 

「うむ。面を上げよ、今回はお前に話を持ちかけに来たのだよ」

 

そう言うと、アインズは一枚の写真を取り出す。写真というものを初めて見たザリュースは、とても精密な絵画なのだろうと改めて凄さを感じながらそれに写った存在に疑問を浮かべる。

 

「アインズ様?此方は?」

 

「よく聞いてくれたな。これが、私の息子のムササビだ!聞いたか?聞いたよな!ムササビだぞ!」

 

恐る恐る伺うザリュースとは対照的に興奮しながら名前を叫ぶアインズに、既視感を覚えるザリュース。

 

ついぞ彼は思い出さなかったが、ザリュースの嫁のクルシュが第一子を産んだ後は暫くこんな感じだったのだ。武技を教えるハムスケにも散々自慢していた姿は、今子供の事で舞い上がる姿にソックリだと、当の本人が気付いていないのだから、父親というのは総じて親バカである。

 

「ムササビ様ですか!素晴らしいお名前です!」

 

そう叫びながらザリュースは再度写真の姿を思い出す。非常に端正な顔立ちをしながら一部が白骨化した小さな男の子。確かに可愛いが、アインズはそんな事の為にわざわざ会いに来たのだろうか?

 

ザリュースのそんな思考は一瞬で断ち切られる。

 

「だろう。では、ザリュース。私の息子とお前の息子で勝負と行こうじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓の闘技場には、現在白い粉でレーンが引かれていた。

 

それは運動場のトラックと何一つ変わらない物であるが、違うのは観客の盛り上がり様だろうか。

 

各々、『MUSASABI♥LOVE』とか『最強無敵ムササビ様』『必勝』等と書かれた横断幕やら団扇やら、何かと沢山持っていた。

 

「では!これより、第一回赤ちゃんハイハイ選手権を開始します!」

 

闘技場の中央に立つ司会のアウラの声と共に、闘技場のゲートが開く。

 

上手側にはアインズ、アルベド、そして乳児服を着たムササビがアルベドの腕の中で笑っている。

 

対する下手側からはザリュース、クルシュ、その息子のリューシュがクルシュの白い頭の上に居る。

 

そう、これから起こるのはこのトラックの中をハイハイで競い、早くゴールした方が勝ちという至極単純なルールだ。

 

ザリュース達からすれば自らを応援する者がいない完全アウェーだったが、めげることはない。クルシュは少し気圧されているが、ザリュースが尻尾をクルシュの尻尾に巻き付けると、クルシュは照れたように笑う。

 

「皆、静まれ」

 

アインズのその一言で、先程までの黄色い歓声が一瞬で消え去った。

 

「では、これからハイハイ選手権のルールを説明する。アルベド」

 

「はっ。...では、ルールの説明を行います。

制限時間無しでこのトラックを一周して貰い、先にゴールした方の勝利でございます。また、大人が子供の妨害行為を働くことは禁止となります。質問は?」

 

そのアルベドの問いかけに手を挙げたのは、ザリュースとクルシュの共通の悪友―――ゼンベルだ。

 

「聞かせてください。これ、勝利した方はどんなメリットがあるんですか?」

 

普段は横暴なゼンベルの敬語に違和感を覚え吹き出すことを抑えると、ザリュースは耳を傾けた。

褒美はやる、とは聞いたものの何なのか分からないかザリュースからすると、非常に有り難い質問だったのだ。

 

そしてその問いに答えるのは、アインズだ。

 

「お前達が勝てば、お前達の待遇向上、さらにはオムツ一年分だ」

 

「なんと!」

 

剛かな特典にザリュースは目を輝かせ、尻尾を床に叩き付ける。バシン、という音と共にアインズは続けざまに言葉を放つ。

 

 

 

「私が勝った場合の報酬はいらん」

 

「何故?」

 

当たり前だ。それこそ、アインズに何の利点があるのかを理解できずザリュースは喉を鳴らした。

 

そしてアインズは、皮肉げに口調を和らげる。

 

「私だって、出来レースで報酬は求めたりはしないさ。それは、ワガママだからな」

 

「ほう...」

 

あくまで、負ける可能性は一切頭にない。そう言い切るアインズに、ザリュースは久しぶりに戦士の顔で笑う。

 

 

 

ザリュースは、息子の値にキスをすると、スタート地点に四つん這いで待機させる。

 

アルベドも、ムササビのあらゆる所にキスをして、スタート地点に待機させる。

 

それを見たアインズは、何処から出したのか日本の大剣を闘技場の土に差し込み、両手を広げ支配者ポーズを取り、敢えて傲慢に振る舞った。

 

 

 

 

「決死の覚悟でかかってこい!」

 

 

 

 

 




次回に続きます。ちなみに今日はもう出しません。
日記は次回ですかね。

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