ムササビくん成長日記   作:ショウラン

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続けて書きました。一話辺り二十分くらいで作ってます。


2.シャルティアとムササビ

ムササビが泣けばナザリックがひっくり返る。

 

 

『ムササビ成長日記』

 

二日目だ。昨日は大変だった。泣いたときは死ぬかと思った。あんなにも精神が沈静化されたのは生まれて初めてだろう。あのパンドラでさえ素で慌てたのだから、仕方あるまい。

 

二日目の今日は、シャルティアが我が子を抱きに来た。アルベドが早速二人目を作ろうと張り切っていたタイミングであった為、少し喧嘩にはなっていたが、気にする程の事では無かった。

 

我が子は非常に優秀だ。トイレはしないし、何故か既に首も据わっている。もしかしたら今週中には魔法も使えるのではないか。そんな気がしてくる。

 

そんな我が子の成長に希望を持って、今日はここまでとしておこう。

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 

 

「《転移門(ゲート)》」

 

転移が阻害されるナザリック地下大墳墓内で転移魔法を使い暗闇の部屋に現れたのは、ナザリックの第一から第三階層守護者のシャルティア・ブラッドフォールンだ。

 

(何故だかアルベドに、アホが感染る(うつる)から会うな、と言われたでありんすが...独り占めしたいだけでありんすね?そうはさせないでありんす。妾も第二妃としてそろそろ子を孕む準備をする必要がありんす。

アルベド?先にいい思いをしたのでありんすから、ご容赦おくんなまし?)

 

そう思いながらシャルティアは種族的に闇夜の暗さを無いものとして過ごすことが出来るため、真っ暗の部屋を進む。

 

ここにムササビを寝かせてあるのは階層守護者だけが知っている。今日はシャルティアの当番なのだが、アルベドが来る前に《転移門(ゲート)》を使い会いに来たという訳だ。

 

どうせアルベドが居たら抱っこもさせてくれないだろう。そう感じるシャルティアは、悲しみと怒りで顔を少し歪ませた。

 

しかし、ゆりかごを見た瞬間、そんな思いは消え去り即座にそこまで早歩きで向かった。

 

ゆりかごの中には、顔の半分ほど骨の顔が剥き出しの非常に可愛らしい子供だ。産まれたばかりの人間の子は猿のようだ、と言う者も多いがムササビは違う。顔にしわなどなく、小さな女の子がお人形さんとして遊ぶ赤ちゃんのような不自然な美貌を持っていた。

 

そんなムササビに、シャルティアは目を爛々と輝かせる。

 

「よちよち!シャルティアおねぇちゃんでちゅよぉ!.....か、可愛いでありんすぅ」

 

ゆりかごの中で笑顔を向けたムササビに心を射たれたシャルティアは、その顔を撫でてすこしの変顔を見せる。そして、その余りの可愛さに身悶えするのだ。

 

こんな可愛い子が存在するなんて、ナザリックはやはり凄い。

 

とてつもなくお気楽な感想がシャルティアを埋め尽くした時、シャルティアの脳天に衝撃がはし走る。

 

痛みのあまり振り替えると、そこにはとても満面の笑みで―――しかし顔に青筋を浮かべた―――アルベドがそこに立っていたのだ。

 

「な・に・を・し・て・い・る・の・か・し・ら・?」

 

ニコニコと笑顔は崩さないまま、怒気を纏った声で威圧をかけるアルベドに、シャルティアは思わず一歩下がってしまう。

 

(これが子供を守る母親の"凄み"でありんすか!)

 

シャルティアは感心しつつも恐怖しながら少しだけアルベドから距離を取った。

 

「あ、アルベドがダメって言うから少し見に来ただけじゃない」

 

「なに?見るだけなら言ってくれれば構わないわよ」

 

「え、えー...」

 

何その超理不尽、とは口に出さずシャルティアは肩を落とす。勿論、物理的にではない。

 

アホが移るから近付くのはダメだが、遠目で見るのは良い、というよくわからない思考にシャルティアは困惑するも逸かは自分がその番になる、と言い聞かせてその場を引こうとする。

 

そんなシャルティアを見かねたアルベドが、少し照れ臭そうにムササビを抱き抱えた。

 

「...先にやっちゃったから、そのお詫びよ。今回だけ抱かせてあげるわ」

 

「ほ、ほんと!?や、やった!」

 

シャルティアは思わぬサプライズに小さなガッツポーズを取った。アルベドが「何かしたら殺すわ」と言っているのも聞こえないようで、その小さな体を抱く。

 

シャルティアの小さな腕の中にすら埋まる小さな体は、その存在を鼓舞するかのように腕を振り、シャルティアの頬をぺちぺちと叩いた。

 

「ム、ムササビさまぁ...!」

 

ムササビのアプローチ(?)に興奮したシャルティアはその叩かれた頬をムササビの骨の方の頬に擦り合わせる。

 

ムササビは少し嫌そうにするものの、きゃいきゃいと笑って見せた。既に空気を読む力が彼に備わっているかは、その時はだれにも分からなかった。

 

それからアルベドから子育てのなんたるかを教えて貰いながら、逸かムササビと共に手を繋いで散歩をする時分の姿を想像しながら、シャルティアは静かに下着を濡らしていった。

 

 

 

 

 

この後の悶着は、また別の話。




ムササビを抱くシャルティアはお姉ちゃんっぽいですよね。

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