ムササビくん成長日記   作:ショウラン

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今回の話を書くに当たって9巻を読み直したんですけど、自分の中ではジルクニフって宮野守ボイスなんですよね。でもパンドラズ・アクターで使われてるし。とかとか思ってました。

―追記―
ムササビくんを書きたい。






10.アインズの招待状②

「ぐぇっ...うぇぅ...ももんしゃまぁ~!」

 

「...はぁ。なぁイビルアイよぉ...確かに漆黒の英雄が魔導国に捕らえられて悲しいのは分かるけどよぉ...そろそろ酒止めねぇか?」

 

「う、うるしゃいわ!ぐすっ...私はだいたい酔わないんりゃよぉ~!」

 

「何お前場に酔ってんの...?おいラキュース!おめぇも手伝ってくれよ!」

 

「魔導王...私も何か...邪眼姫ラキュースのような...」

 

「ガガーラン。ラキュースは独り言が止まらないから、話しかけても無意味」

 

「それより、私たち三人で今回の被害とアインズ・ウール・ゴウンの対策、それに蘇生からのリハビリやら装備の新調...。山積みの案件を片付ける方が良い」

 

「っはぁ...蒼の薔薇のリーダーと蒼の薔薇最強がこの調子で大丈夫なのかねぇ...」

 

 

 

リ・エスティーゼ王国のとある貴族の領地。その中に最近出来た酒屋『ルベンゼ』。

 

落ち着いたシックな雰囲気の木造店舗の中にあるカウンター席で、騒いでいる女達の姿があった。

 

彼女達こそ、リ・エスティーゼ王国アダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』。

 

なんでも酒が無限に出てくる飲み放題の店だとかで巷では密かな人気を集めていた店だ。更に言えばそこそこお手頃な価格で飲めることでも評判となった。

 

普段は、先日の戦争から帰ってきた兵士がヤケ飲みをして愚痴を溢す酒場となっていたが、本日に限っては蒼の薔薇が貸し切った。

 

その原因は、魔導王アインズ・ウール・ゴウンにより捕らえられた漆黒の英雄『モモン』の喪失によって涙に明け暮れたイビルアイである。

 

最初は怒りのあまり、元エ・ランテルに出向こうとしたイビルアイだったが、他のメンバーに止められてからと言うもの、暫く部屋に籠って赤子のように泣き続けていた。

 

彼女は実のところ吸血鬼(ヴァンパイア)なので、精神は沈静化されているのだが、今は沈静化されないギリギリのラインの悲しみが延々と続いている。

 

その状況を芳しく思わなかったガガーランが、最近『黄金のラナー』と内政で大忙しだったラキュースも連れて、この飲み放題の酒場を貸し切りにしたのだ。

 

この店の店主は、2mにも及ぶ巨体と目に出来た深い切り傷の持ち主だったが、投げ出した金貨50枚を見て『畏まりました』と少し籠った声で応答していた。

 

何故だか店の壁には巨大な魚の剥製が置いてあり、蜥蜴のマークがサインとして描かれていた。

 

そんな店を貸し切った蒼の薔薇は、どんどん出てくる微妙だが癖になる酒を煽りながら会議をしていた。

 

普段はクールさを表に出すイビルアイもラキュースも、今晩ばかりは大騒ぎだ。店主の大男は少し暖かい目でティアとティナを見つめていたが、気付かれる事は無かったらしい。

 

「ががーりゃん!ももんしゃまが居なくなった事よりそんなことが大事にゃのかぁ~!?」

 

「お前呂律回ってねぇぞ!ちょっ、あんまくっ付くな!俺はそういう趣味はねぇんだよ!」

 

「この光景、どう見てもガガーランが変質者」

 

「同意」

 

「んだっとごるぁ!?」

 

わーわーぎゃーぎゃーと、話題を戻そうとしてもすぐにこれである為、会議は一向に進まない。

 

「ふふははは!!唸れ!暗黒剣!」

「ラキュース。それ、ただのスプーン」

「ラキュースはスプーン使いなの?」

「うにゃぁー!ががーりゃん覚悟!」

「意味わかんねぇよ!」

 

ラキュースにも酔いが回ってきたのか、先程までの独り言とは打って変わって騒ぎ遊んでいる。これで場の空気は騒然OF騒然だ。

 

このどうしようもない空気を変えられる者はいない。

 

といってもこの中には、だが。

 

 

 

「すまねぇ。空いてる...事はねぇかな?」

 

「悪いな。今は貸し切りだぜ」

 

店の扉を開けた無精面の男に返された大男からの返事に、客の男は肩を落とした。

 

彼はブレイン・アングラウス。かのガゼフ・スノロノーフと拮抗した力を持つとされる、英雄の領域に片足突っ込んだシリーズの人だ。何処かの化け物の世界では『噛ませ犬』等と呼ばれるレベルの強さである。

 

そんな彼を見た蒼の薔薇の面々は、(あぁ、そう言えばこんな奴前にも見たな)等と下らない発想に行き着く。

 

帰ってくれるなら有り難い。と思っていると、ブレインはドアの向こうに声を掛けた。

 

「クライム君!ここは今日は貸し切りのようだ!別のところへ行こう!」

 

その言葉に、蒼の薔薇のメンバーは耳を傾けた。

 

クライム。リ・エスティーゼ王国第三王女であるラナーの専属騎士。強さは然程であるがその熱意と忠誠心は王国でも郡を抜いて強い。

 

蒼の薔薇は考える。絶好の中和剤が来た、と。

 

「店主!彼らも入れてやれ!顔見知りだ!」

 

ガガーランが蒼の薔薇を代表にして声を上げる。その声に気付いたのか、クライムはひょっこりと顔を出して除き込んだ。

 

「蒼の薔薇の皆さん!ありがとうございます!」

 

「固っ苦しいのはナシだぜ童貞!」

 

暫くツッコミにばかり回っていられなかったガガーランは、ここぞとばかりに持ちネタを突っ込む。

 

「クライム君はてっきりあのお姫様とヤってんのかと思ったよ。悪いな、聞いちまって」

 

「ブ、ブレインさんまで!酷くないですか!」

 

最近仲の良さが増したブレインからの言葉に、つい声を大きく上げてしまったクライムは、慌てて口を抑える。

 

「きにしゅんなよクリャイム!それより私の酒のめや!」

 

そんなクライムを見かねたイビルアイが、飲みかけのグラスを片手で挙げながらクライムに大声を出す。

 

クライムは、あはは...と苦笑するばかりだ。表情こそ変わっていないが、若干の諦めを感じる息遣いである。

 

「おいおい、蒼の薔薇っつーのは子供に酒飲ませんのか?」

 

ブレインがそう言うと、クライムは思わずジト目になってしまう。自分でも気付かない程冷たい声が口から出た。

 

「ブレインさんが言えた事じゃないでしょうに...」

 

クライムは、それだけ言うと以前の事を思い出す。潰れるまで飲まされて、危うく貴族達に見つかって大事になるところだった。

 

そんな事を知らずに憤怒の声を上げたのは、突っ伏して唸っているイビルアイではなく頬を紅く染めるラキュースだ。

 

「誰が子供ですって!私は暗黒邪眼漆黒聖悪姫ラキュースよ!私のこのボディを見ても子供だとか言うわけ!」

 

ラキュースは、装備を数パーツ外して大胆にも谷間を大きく晒してみる。が、全く反応のない男衆にラキュースは負けた気がしたのか机を殴り付けた。

 

「ラキュースの事ではないと思う。たぶんイビルアイ」

 

ティナがフォローを入れると、イビルアイはきょとんとした顔でティナを見る。無自覚なんだな、と呆れているのも束の間。ブレインから爆弾が投下された。

 

「いやいや、お前も子供だろ?な、クライム君」

 

「ど、どうですかね...」

 

「むっ!」

「聞き捨てならない」

 

突然の同意を求められたクライムが目を剃らす視線の先では、可愛らしく頬を膨らますティアとティナの姿があった。

 

「まぁよ!いいから座れ!な!」

 

そしてガガーランに勧められた席に二人が付き、宴は始まりの鐘を鳴らした。

 

 

 

 

 

二時間後、でろんでろんに酔った面々の下に一つの闇が生まれた。

 

「んにゅ...?ついに私の闇のパワーが...?」

 

ラキュースは場違いな感想を漏らす。

その闇の正体は、もう分かっただろうか。

 

「こんばんは。ニンゲン達よ」

 

ご明察だ。アインズ・ウール・ゴウンである。

彼はモモンと同じ声であるので、今は口唇蟲を付けている。声はとある男の声を使用している。

 

突然の魔導王の登場に、その場にいた全員の酔いが一気に冷めた。勿論、店主はその限りではない。

 

各々自慢の武器を掴み臨戦態勢に入る。

 

「まぁ待て。...はぁ、面倒な連中だ。お前達に招待状を持ってきただけだ。黄金のラナーとやらにも後で渡しに行く。必ずその招待状通りに来い」

 

「待て!ラナー様に何を!」

 

クライムの叫びは、優しい骨の手で遮られる。

 

「...何もしないさ。君には少し転がっていて貰おう。〈麻痺(パラライズ)〉」

 

それだけ言いクライムを倒したアインズ・ウール・ゴウンは再び一瞬にしてその場から消えると、招待状を手首をスナップさせ手裏剣のように投げ渡す。

 

「では。来なければ王国が滅びると思え」

 

それだけ告げたアインズは再び一瞬にして闇に消えていった。

 

余りの突然の出来事に彼らはただ呆然としていた。

 

彼らは知らない。

 

 

 

店主が内心冷や汗ダラダラだったことを。

(ア、アインズ様こ、こえぇーーっ!!)

 

 

 

 

 

 




店主誰でしょうクイズです。いったい何ベルなんだ。

かなりのキャラ崩壊...ギャグが書きたかったのよ!
次回、みんな大好き古田さんに乞うご期待!

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