俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

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いつもより短い……すみません。
原作がもう終わってしまう。何だかんだで10年以上連載してたんですね。


第67話

 いやぁ……良い経験をしたもんだ。

 あの後、顔を真っ赤に染めた奈々の顔を見ることができたってのは眼福でしかなかった。そりゃあ、あんなに可愛い女の子の恥じらっている顔を見れたのだからご飯が3杯いけるってもんだ。

 運良く、他の誰にもあの状態を見られなくて良かった。

 体を抱き寄せ合う男女二人と見れば、すぐに変な噂が広がる事間違いなし。高校生になれば、それなりに体が成熟してるからね……そりゃあもう、男子に関してはエロい話で盛り上がっているのを良く目にする。

 そして経験談だが、高校生だった時に良く猥談をして盛り上がっていたと同級生の女性が語っていたが……今となっては懐かしい話だ。

 

 さて、準決勝の相手、葉蔭を降した江ノ高の次の相手。

 決勝戦の相手はあの鎌学。そう、鷹匠さんやら佐伯やらがいる鎌学を相手にしないといけないのだ。復帰して早々の相手が鷹匠さんの体当たりだと考えるとちょっと考えさせてもらいたい(迫真)

 

 それにしても、皆良い感じに能力が高くなっている。

 鎌学の選手がどれだけ成長してるか知らないが、今の江ノ高だったらどこの高校にも引けを取らないんじゃないだろうか。だから、ちょっと抜けて文化部で遊んでても良いかもしれない。

 べ、別に鷹匠さんのジャンピングヘッドの圧力と見た目にビビってるわけじゃねぇし?

 

 で、だ。

 この間見ることができたカールの動きを見て、少し思ったことがある。

 あの動きは俺の動きに似てるんじゃないかと。純粋な才能でサッカーをしている彼にこんなことを言うのはあれなんだが、俺の俯瞰視点のような感覚で全体を見渡し、必要最低限の動きでボールをカットしていた。

 まさに生粋のチート。

 これはもう拝んどくレベルだが、この動きを参考にして俺もカットができるに違いない。それと、ミドルからの強烈なシュートは参考になった。今までは日比野のフリーキックを参考にキャノンシュートをしていたが、あの小さい足の動きからあれだけの威力を蹴れると考えると……まぁ、当然威力が高くて動作の小さい方を選ぶよね。

 という事で練習練習っと。

 もう鎌学との決勝が近いから、その前にはある程度形にしておいて。いざという場面ですぐにボールを蹴れるようにしておかなければ。

 

「――ごめんね」

「なんだよ、急に」

 

 で、今日は決勝の前日。

 いつも通りに学校に登校している最中の事である。

 途中、奈々と出くわして一緒に歩いているのは良いものの、ずっとだんまりする奈々に話しかけられなかった。意気地のない男だと思ってもらって構わないが、この年頃の女の子の考えてる事が分からないのだからしょうがない。

 と、思った矢先に奈々が謝ってきたのだ。

 

「康寛が撃たれたって聞いて、もしかしたら、私がサッカーに誘ったのが原因なのかなって思っちゃったの」

「ふっ……海外でテロに遭うなんてちょっと運が悪かったぐらいの事だ。別に奈々が気に病む事じゃない」

「それでも! ……それでも、もしかしたらって考えちゃうの。ここに、康寛がいなかったかもしれないって」

「馬鹿が……俺はそんな簡単に死なねぇよ。そういう風(・・・・・)に生まれてきたからな」

「……え?」

「いや、なんでもない」

 

 変に勘ぐられても面倒だが、どうしてもそういう風……なんて言ってしまう。これが俺の運命だ、なんて真顔で言う奴がいたらそれはもうただの変態か、それともナルシストか面倒な狂信者だ。

 しかしまぁ……なんだ。ここまで奈々に思われてるってのは悪いことじゃない。ないんだが、駆とイチャイチャしてたんじゃないのかって話なんだが? 確かに傑さんとか、駆も結構どころじゃない怪我をしてるから、心配するのはしょうがないけどな。

 

「ま、海外にいると日本よりもテロに遭遇する確率はでかいのは確かだ。本当にそんな確率を引き当てるとは思ってもなかったが、今俺は生きてる。だから、な?そこまで気に病むな」

「……うん。うん……そう、だね」

 

 そしてまた無言タイムに突入。

 本日は晴天なり。風も冷たくないし、日差しもちょうど良い感じ。こんな日にランニングでもしたらいい感じに汗をかけるんだろうな。

 ……こうでもして別の事を考えてないと間がもたん。いや、そもそも俺の気持ちが全然間に合ってない。間に合ってないとか、俺は今何を考えてるのかも正直わからなくなってる。

 なんだ、閑話休題とか言って何か俺に話題でも何でも良いから振ってくれよぉっ!

 

「……明日の決勝、勝てる?」

「鎌学か。そうだな……俺がいるんだ。負けるわけがないだろ?」

「……フフッ、そんなに自信満々に言えるって、やっぱり康寛はすごいね」

「すごい、のか? いつも通りのつもりだけどなぁ」

「なら、康寛はいつもすごいってことだね」

「まぁ、奈々がそう言ってくれるんならそれで良いよ」

 

 別にくさい(・・・)事を思うつもりはないが、やっと奈々の笑顔を見れた気がする。俺が撃たれた後、ずっと落ち込んでるような顔をしてたから。しっかし、ホントに可愛いんだよなぁ……奈々って。


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