週1ペースで投稿を続けられればと思ってますが、マイペースに頑張ります。
1人ぐらい江ノ島高校FCにチートを混ぜてもなんて、欲まみれの考えから書き出しましたw
第01話
――俺がこの世界に生まれて早12年。
前世の記憶を持った俺は何一つ不自由なくこの世界でいち優秀な子供として成長していった。
確かに大人としての知識、性格、感覚を持っていたせいで子供たちとは一緒にいづらかった。そのせいで親や数少ない友人に心配されたりもしたが、最近はそれでも楽しめる事ができたし充実してきてるんじゃないかと思っている。
思い返せば、俺は不慮の事故で亡くなった。
前世の俺の記憶が正しければ、傍目にはそういう風に捕らえられるような最期だっただろう。
しかし、問題はその後で、よく俺が読んでいた二次創作の冒頭みたいな展開になり、あれやこれや、俺がその時の現状を理解できていないままに気がつけば不運の事故として片付けられるだけだった俺の最期に思いもよらぬ特典がついてしまったのだ。
……いや、特典自体は非常にありがたい。
ありがたいのだが、逆に今までの経験があるせいでその力を持て余しているというのが現状だった。
そもそも一般人の域を出ないような生き方しかしてこなかったと言うのに、そもそも努力や才能の最果てにたどり着いてしまったかのような
まぁ、今のところは普通に過ごしてられてるし、そこまで深く考えなくても大丈夫だろう。
月日は流れ、俺は高校生になった。
特にここに行きたいという願望もなかった進学先は、家から一番近いという理由だけで江ノ島高校というところに入学した。
どうせなら通ってた中学の近いところにでも通えたらよかったんだが、それは大人の都合。父親が異動するってことで、中学からは結構離れた高校に通うことになってしまった。
中学生の終り頃になってようやく体の使い方に慣れてきた俺は、それまでの三年間は帰宅部で過ごしていた。
当然、運動はすべて体育の授業のみとなってしまっていたのだが、友人の中には俺の運動神経に気づいてるっぽい奴もいてよく運動部に誘われていたが、今の今まで断り続けていた。
高校生ともなると、それに気づいてた奴はほぼいないのだが。
なんの数奇か、一人だけそれに気づいてて同じ高校に入学してきた奴がいたのだ。
「おーい、
「お、
それが、この
小さい頃からずっとサッカーを続けていて、幼馴染の
……と言う表現からもわかる通り、この二人は彼氏彼女みたいな関係だ。
それを当人たちは認めてないのが初々しくて見てて面白いんだが、どうしようもなく口から砂糖が出てしまう。そりゃもう滝のように。
閑話休題。
奈々とは中学からの付き合いで、同じクラスメートとして中学校時代を過ごした仲になるが、これといって何かしら友達らしい事をした覚えはない。
本当に体育の授業だけの絡みしかない。
その時、何度もサッカー部に誘われたのは結構な記憶として心に残ってる。
「ね、康寛は何か部活に入らないの?」
「う~む……高校生になったからなぁ。少しは記憶に残るような高校生活にしたいしな」
「じゃあさ、サッカー部は!?」
「またか……別にサッカーも悪くないがなぁ、前にも言った通り、俺は経験者でも何でもないんだぞ? それが高校生になってからだと遅くないか?」
「そんなことないよ! 康寛だったらすぐにレギュラーになれるって!」
キラキラした眼で見てきやがる……っ!
好きか嫌いかって言ったら、サッカーは好きな方だ。
しかし、それを実際にピッチの上でプレイしたことはない。あってもゲームの中だけだ。
まぁ、ここは奈々の言葉に従ってサッカー部に入っても良いんだが……
「ここって、サッカー部二つあったよな」
「え?」
「あいや、江ノ島高校のサッカー部って結構前から二つあるって話だけど」
「そ、そうなの?」
「まぁ、俺も人聞きだから大したことは分からないけど……二つもあるってことは結構デカい部活なんだろうなー」
普通に考えて同じ部活が二つもあるなんて考えられないからなぁ。
かなり多くのサッカー部員がこの高校にはいるってことなんだろう。
しかし……それだと俺みたいな未経験者が入っても良いものなのだろうか?
「ま、少し様子を見るよ。それまでどこの部活にも入らないから、駆にサッカー部の感想でも聞いてからにするよ」
「ふ~ん……そっか。じゃ、私から駆に言っておくね!」
「おう、よろしく頼んだぜ」
さってと……
久しぶりの高校生活でも楽しんでみることにしてみますかね!
――二度目の高校生活を過ごしてる俺に、勉学の面では死角は無い!
それなりに勉強もしてたし、記憶力もよくなってるせいか、前回の高校生活よりも楽に上位の方に食い込めそうだ。
それにしても、まさか担任がサッカー部の顧問だったとはなぁ。
しかも結構若い先生で、これまたかなり運動できる人と見た。
実際にサッカーしてるところを見てみないと分からないが、見た目でもかなり鍛えてるのがわかってしまう。
……これも、二度目の人生の特典ってやつだな。
なんだ? 俺はどっかのスカウトマンにでもなればいいのか?
「ね、ヤス!」
「うん? どした、駆」
放課後、まだ高校生になりたてで交友範囲の広くない俺に気安く声をかけてきたのは、中学からの同級生、逢沢駆だった。
こいつは中学の時に兄と事故に遭って、こいつは大怪我を、そして兄を亡くしたなかなかにハードな経験を持つ男だ。
見た目からすればなよなよしてる感じで、いかにも小動物っぽい奴なんだが、いざサッカーの事になると信じられないぐらいの熱量を発揮する奴で、傍から見ていてかなり面白い。
「どこか、部活に入る予定とかあるの?」
「そういうお前さんはサッカー部か?」
「うん!」
おーおー、満面の笑みを浮かべてらぁ。
こりゃ、結構良いメンバーなんだろう。
「俺はまだ決めてないな」
「なら、ヤスも一緒にサッカーしようよ!」
「いやぁ……未経験者だしなぁ。俺だとあんまりついていけないかもしれないぞ?」
「大丈夫だって! あの時みたいな感じでやれば良いだけだから!」
「いや、体育の授業の事言ってんだろ? そんな簡単なもんじゃないだろうに……まぁ、それでいいんだったら、やってやらんこともないけど」
「ホント!? なら、今からでも一緒に行こうよ!」
「お、おい!? いきなり引っ張るんじゃない! 自分の足で歩けるっての」
いや、まぁ……自分で部活を決めるつもりだったんだが。
無理矢理臭いがこうして勧誘してくれるのはありがたい。
それに、数少ない知り合いだし、練習相手になってくれるってんなら問題ないだろう。
「それにしても、そのサッカー部はどんな感じなんだ?」
「えっと……最高だよ!」
「……そっか」
「えへへ」
「何嬉しそうにしてんだか」
コツッと拳骨を駆の頭に落とす。
さして痛くもないだろうに両手で頭を押さえて走り出した駆の姿を見て、こういう高校生活も悪くないなと思う俺であった。