ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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41.Fourie 人の良心

 「確か、この辺りだよ」

 

 シガは、砂と風の舞う砂礫の惑星――リリーパへ訪れていた。まだ、自由探索許可が出ておらず、その為の正規任務も終わらせる意味で、『貴重物質運搬計画』を受けて、もう終わる所だった。

 

 「オレも度々、視界の端に覗いた事はあったけど、いつも見間違いかと思ってた。マジで生物とかいるのか?」

 

 砂嵐が吹き荒れるこの惑星は、凍土の極寒とは違った意味で過酷な環境なのだ。どこで造られているのか解らない“機甲種”と呼ばれる機械の(エネミー)に昔から頻繁に確認されているダーカー。正直、生身の生物が居ても、違法に捨てられたペットが野生化したものだと、ばかり思っていた。

 

 「おれも最初に見た時は驚いたよ。ちっこくて、耳が長い。水筒とかリュックとか背負ってたな」

 「おいおい。それって知能的な原生民って事になるんじゃないか?」

 「かもな」

 

 惑星リリーパの生態系? は“機甲種”とダーカーに板挟みにされてる。そこに知的生物が入り込み、尚且つ文明を築くには、それらの外敵から逃げて生き延びるほどの知能が必要不可欠だ。

 

 「外敵が多いから、今までアークスも敵だと見てたのかもしれないな」

 

 アフィンの証言から、その姿をなんとなく想像してみる。

 長い耳。服。リュック。水筒……

 

 「ぜひ会ってみたいね。ふふ」

 「相棒。たまに、お前が何を考えているのかわからなくなるよ……」

 

 シガの脳内には、バニーガールでリュックを背負ったマトイが、物陰で発見されて驚いている姿が妄想されている。アリ……だな!

 むふふ。と気持ち悪い笑みを浮かべているシガにアフィンは相変わらず、と言った様子で嘆息をつく。

 

 「ちなみにどういう理由なんだ?」

 「何が?」

 「今捜している人影の事だよ。そんなのを正規任務の片手間で気に掛ける事でもないだろ? 誰かの依頼か?」

 「ああ。ちょっとな」

 

 シガは、アフィンの言葉で、この依頼を頼まれた女性キャスト――フーリエとの会話を、もやもやと思い出した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「依頼の話をする前に、少しよろしいでしょうか?」

 

 女性には皆フレンドリーなシガであるが、女性キャストだけは、二人の知り合いの影響もあり無意識に苦手意識が出てしまっていた。

 

 「第二惑星リリーパの砂漠で、“小さな影”を見かけた事はありませんか?」

 「小さな影?」

 

 不意に出た彼女の単語は、何かを捜しているような口ぶりだ。とは言っても、リリーパ特有のエネミーである“機甲種”は大概が自分達と同じくらいのサイズで、“小さな影”、と言う程ではない。

 だが、彼女の言葉から思い返してみると探索中に、それっぽい影を見た様な気もしなくもない。

 

 「はい。接触をしたことがあるとか、どこにいるとか、そのあたりの事を知りませんか?」

 

 シガの心当たりがある様な様子に、フーリエは、ずいずいと近づきながら尋ねてくる。そして、彼女の頭と、彼の額がぶつかった。

 

 「うご!?」

 

 ゴンッと、石でも落したような音が響く。キャストの装甲は当然高い硬度を持つ。軽く当たったとはいえ、結構痛かった。やっぱり、キャストの女性は苦手だ……

 

 「あ、ご、ごめんなさい!!」

 

 慌てて距離を取る彼女は、頭を何度も下げて謝る。シガは内心穏やかではないが、大丈夫デスヨ、と額をさすりながら紳士な態度で対応していた。

 

 「……すみません。変な質問でしたね。忘れてください」

 「と言うよりは、その影に関係する情報は、いくつも報告されてるみたいですよ」

 

 リリーパへ最初に降りる前に、エネミーの種類や、ダーカーの情報などを入念に調べたのだ。その時、正確な情報は無くても、生命体らしき存在の目撃が多々あるらしい。

 

 「そこまでは、私も情報を掴んでいます」

 

 と、そこまで喋ったところで何かを思い出した様に、

 

 「申し遅れました。私、フーリエといいます。これでも一応アークスなんです」

 「フーリエさんね」

 

 苦手な女性キャストだが、名前だけはちゃんと記憶しておく。

 

 「実は私、その小さな影に命を救われたんです」

 

 リリーパの“機甲種”はアークスやダーカーへ攻撃を仕掛けてくる。その理由は未だハッキリとはしておらず、一説では防衛設備が生きていて、侵入者を排除する為に動いているとか。惑星規模の防衛とは……開発者たちはよほど神経を尖らせていたのだろう。

 そして、リリーパには頻繁にダーカーも目撃されている。こちらは認識する間もなく敵であるので、姿を見かけたら殲滅が最優先だ。

 そんな、リリーパの環境下で現地でアークス意外に“救われた”という経験はかなり珍しい部類だろう。

 

 「他のアークスとかじゃなくてですか?」

 

 良く見ると、フーリエさんの身体のあっちこっちに傷や、装甲に亀裂が入っている部分がある。“機甲種”は生物では無く自立型の機械だ。強力な武装を装備しており、生身ならもちろん、キャストでさえ脅威となる武器を保持しているのである。

 

 「はい。砂漠で怪我をして、砂嵐も酷く動けなくて――」

 

 砂嵐の特殊な地場で通信も使えず、もうダメだと思った時、例の小さな影が助けてくれたのだと言う。

 

 「色々あって戻って来れたのですが……命の恩人に、お礼も言えてないんです」

 

 不確かな目撃情報はあっても、ソレをはっきりと、見た者は居ない。

 彼女の依頼は自分を助けてくれた存在が、実在する者なのか、それともただの夢だったのか、それを確かめてほしいと言うモノだった。

 

 「まだ、私は修理中なので……身動きが取れないんです」

 「依頼は受けても良いんですが……正直、オレもまだ、砂漠の自由探索許可は持ってないんですよ。片手間になっちゃって、更に時間がかかると思いますけど、それでも良いですか?」

 

 彼女からすれば居るか居ないかと言う、曖昧な、この依頼を受けてくれるとは思っていなかったらしい。

 

 「はい! お暇な時で良いので、よろしくお願いします!」

 

 流石に女性の頼みは断れない。今はナベリウスの遺跡の自由探索許可を取ろうと思っていたが、コレを契機にリリーパの事を良く知っておこう。

 シガは、そんな前向きな思考で物事をまとめると、今度の目的を惑星リリーパの砂漠に決め、本格的に自由探索許可を取るべく惑星へ降りたのだった。




そしてリリーパに降ります。アフィンと出会うまで、まだ一つ二つイベントに遭遇します。

次話タイトル『Zeno and Echo 幼馴染』

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