今回はソラの前々世からの話です。
正直、今回は好みが分かれる内容だと思います。
ですが!作者に後悔は……あります。
正直もう少しうまくかけたんじゃないかなと思うんですがこれが限界でしたっ!
2018.11.26.2:00 リメイク
俺とアリシアは時間の1分前にギルドホームの目の前にいた。
「……ふぅ」
「先輩、緊張してますね」
後ろに立つアリシアがいつものように声をかけてくれる。
「……よくわかったね」
少しだけ、緊張がほぐれた感覚がしてアリシアへと応える。
「だって先輩、教員室へ呼ばれた時と同じ顔してるんですもん」
「え?そんな顔してた?」
「はい、してました」
少しの沈黙が流れるが、互いに少し笑ったことで時間になった。
「よしっ、気合も入ったし。いっちょ事情説明会と行きますかね!」
「はい!それはそれとしてあの件に関しては私も知りたいので助け船は一切期待しないでくださいね」
扉を開ける瞬間、アリシアが敵に回ってしまった……
ギルドホームに入るとそこには様々なメンバーが集まっていた。いや、最後に見たのは数年前のメンバーもしばしば見かけた
「遅くなった」
一声かけるとそこにいた全員が一斉に俺の方を向いた。
既に今から話すことを知っているメンバー……アリスやユージオ、ベルクーリやキリトとアスナなんかは落ち着いているが逆に数日前にあったばかりのシリカや今回はまだ会ってないリズ、そして、さっきまで一緒にいたクライン、エギル、ヒースクリフは真剣そのものの面持ちで俺を見ていた
そして、俺は語り始めた。
俺の始まり、『両義蒼空』の誕生から今の『両儀蒼空』になるまでの物語を。
今までどんな気持ちを抱えて生きてきたか、そして、最期に如何してあんな行動をとったか。
俺の1回目の人生は割りかし、普通な人生を送っていたと思う。
俺にとっては可愛い2つ下の弟と妹がいたし、小さい頃からずっと一緒だった幼馴染だっていた。幼馴染とはみんなで歌手のライブとかにも行ってたし。なんだったらバンドを組んで本気で打ち込んだりもしてた。
だけど、俺の生活が一変したのは高校に入ってからだった。
父が事故で亡くなり、それに続くように母も病気で亡くなった。
幸い、2人を養うだけの貯蓄は残されていたが、それに頼り切るわけにもいかないから俺は街で一番有名なレストランでバイトを始めた。週に5回、高校が終わる4時から10時まで。店長がいい人で他の人もみんないい人たちだったから俺も仕事を楽しめたし、もともとそれなりにできた料理の腕もかなり上がった。
幼馴染の中に
その子の家がいわゆるお金持ちの子だったんだ。
その子の家族が俺たちを引き取るって話も一度でたんだけど、それは友達として顔向けできないし、それに弟と妹が成人するまでは俺が面倒見るって決めてたからその話は断ったんだ。
……なんで断ったか?
だって、今まで対等の友達だったのにお金が絡むといろいろ変わるものとかあるだろ?俺はそれが嫌だったんだ。
まぁ、それは置いておこうか。
そのあと、俺が高校3年になった時、弟と妹も同じ高校に入学して、2人は俺に苦労かけないようにって優秀な成績をとって特待生として入学したんだ。え?特待生ってことは私立だったのかって?まぁ、その辺は置いといてくれ。俺もそこそこ頭の出来は良かったんだよ。
で、俺が高校を卒業してそのままレストランに就職するわけなんだが、卒業の時に妹と弟が内緒でバイトしてたらしくて、その時卒業祝いとしてコートと時計を買ってくれてさ。それも家に帰ってからいきなり渡されて……あの時は本当に泣いたね。まさか、この2人にプレゼントをもらう日が来るとは思わなかったし。
そこから俺は2人の為にひたすら働きまくった。
月の休みは出来るだけ削ったし、その分手当とか給金は良かったしね。2人が高校を卒業して大学に入った後もなんとか、やりくり出来るように必死こいたよ。2人が卒業して立派に就職するまではとにかく働きまくった。まぁ、それが祟ったのかなんなのか病気にかかってね。それで仕事を辞めざるを得なくなって、辞めて病院に入院したわけ。そこで初めてみんなに知らせたんだけどもうめちゃくちゃ怒られた。幼馴染にはなんで頼ってくれないんだって怒られたし、弟と妹にはいい大人になったのにギャンギャン泣かれるし、まぁもうなったものは仕方ないからってことで療養に専念したんだけど。
結果は察してくれ。
最後はみんなに看取られて旅だった。
……筈だったんだけどな。
なんの因果が、こうしてみんなに出会えた。
俺はいわゆる神様転生って奴に巻き込まれた。
本当に、生きる意味が見出せなかった。
俺の知っている人は誰もいなくて、心の休まる場所はなくて
それでもこの世界の家族に迷惑はかけたくなくて
だから、気晴らしにナーヴギアとソードアート・オンラインを手に取った。
本当に、初めてあの世界に入った時は感動した。
男なら誰だって夢見るだろう?異世界とか中世の街並みとか。
それが目の前に広がっていた。俺はあの瞬間、
だけど、この世界は俺に取っては能力が極限にまで活かされる世界だった。剣技の支配者によって早熟する俺自身の剣技。死の見える眼はありとあらゆるモンスターを一撃で葬り、武器が壊れれば複製していくらでも使い潰せる。
デスゲーム化したあの世界ではたしかに有効な能力だった。
だけど、俺が50層を越えるまで無名だったのは誰とも干渉しなかったからだ。
なんで、関わらなかったのかって?
それはこんな異能を人に見せるわけにはいかないからだよ。
だって気味悪いだろ?蒼く光る眼に無限に剣を生み出す能力、それに異常なまでの剣技の早熟。
ヒースクリフやアスナ、キリトに頭を下げられたから俺はあの戦いに参加したんだ。無名だった俺に攻略組のトッププレイヤーがあの世界の希望とも言える人たちが真摯にお願いをしてくれたから。
だから、偽りだらけの俺でもみんなと一緒に戦えた。
死を観る眼を押さえ込んで、使い捨てと思っていた武器を大切に扱い。異常なまで練達した剣技を怪しまれないように戦った。
あの戦いは攻略組にとっては大事件になりかけたけど、俺にとっては本当に大切な戦いだったんだ。
それからキリトは俺に構ってくれただろ?
俺の悪い噂だって、所詮噂だろ?って一蹴してくれたよな?
アレが本当に嬉しかった。だから、俺はみんなと関わろうと思ったし信頼しようと思えた。
それからはみんなの知る通りだよ。
俺はキリトと一緒に行動を続けたし、攻略組として活動を始めた。
アインクラッドにいた人は知ってると思うが俺がレッドプレイヤーを相手にどう呼ばれていたあの名前を変えてくれたのもキリトだった。
本当に、救われたんだ。
キリトに会えて、みんなに会えて、ああやって笑いあえたことが本当に嬉しかった。
そして、俺が最後にたどり着いたのはあのセントラル・カセドラル。
あの時、俺は2年間を共に過ごしたユージオに死んでほしくなかった。だって、あの世界ではユージオは死んだら本当に死んでしまう。アリスを必死になって探して、漸く会えて希望が見えたユージオに死んでほしくなかった。あの時、本気でそう思ったんだ。一番はアリスのことを考えていたけど、でも友人を……友達に死んでほしくなかったんだ。
だから、俺はあんな行動に出た。
もともと、俺はいる筈じゃなかった人間でそこにいないはずの人間だって心の何処かで思ってたんだ
あの時のこと、後悔はしてないし間違いだとも思わない。
だけど、これだけはみんなに伝えておきたかった。
「本当にすまなかった。何も言わないで1人で勝手に死んで」
俺はその場で大きく頭を下げた。
そして、そのままどれくらいの時間が流れたか、1分かそれとも5分経ったかわからない。けど、そうして時間が経過していくと『ぽん』と俺の頭に少し大きめの手が置かれた
「おりゃよ、お前が死んだって聞いた時よ。本当に目の前が真っ暗になった。お前の葬式にも参加した。でもよ、お前が死んだって俺は信じられなかったんだよ。いっつもみてえにケロっとした顔で声かけてくんじゃねえかってよ」
クラインはうつむきながら俺に語り続ける
「でも、おめえは俺に声かけてくんねぇんだよ。いつもみてえに『なに泣いてんだよクライン』って言ってくれなかったんだよ。そうなったらよ、俺だって認めるしかないじゃねえか。それなのに何十年も経ってからお前と初めて会ったここで、お前に会えるなんて誰も思わねえじゃねえだろ!」
涙でくしゃくしゃになった顔で俺をまっすぐに見て「だからよ」と続けた
「俺はお前が生きててくれて嬉しかった。前と違って心の底から幸せそうにしてくれていて本当に良かった。またいつもみたいに笑ってるお前が見れただけで俺はもう満足だ。だからよ、頼むから今度は絶対死なないでくれよ。もう、仲間がダチが死ぬのは見たくねぇんだよ」
「あぁ、約束する。今度こそ、俺はみんなの前からいなくならない」
あぁ、これは約束。
俺の中でここの全員に誓った【誓約】だ。
今度こそ絶対に破らない。今度こそ、全員で笑い合える日々が続きますように
その後のことを語るなら、リズには思いっきり殴られた。それはもう圏内じゃなければカーソルがオレンジ色に染まるくらいのSTR値全開のパンチを喰らった。もう、吹き飛んだ。文字通り壁に突撃する勢いで。シリカには数日前にあったばかりだが、今日の昼頃、記憶が戻ったそうだ。急いで攻略に向かおうとしたがレベル的に足りないと思い、リズの店に急行したらしい。ヒースクリフはいつも通りの鉄仮面だったがただ一言「これからは私も頼りたまえ」と残してギルド本部へと戻っていった。エギルは俺の頭に手を置いて「辛い時は俺に相談しろよ」といってキリトの方へと歩いていった。その後何か話していたが内容までわからない。そしてアリシアだがあの話のどこで引っかかったのかわからないが号泣していた。それはもう比喩でもなんでもない号泣だった。アリシアを慰めるのに親友であるロニエとティーゼが30分がかりでなんとか泣き止ませたが2人曰く俺が死んだ時以来だったらしい。そして夜になってそのままみんなでどんちゃん騒ぎだったのだが、それももう1時間も前の話だ。
そして俺は今ギルドホームの近くの湖のほとりで座り、風を浴びていた。ただ、ずっと月を眺めて静かに。すると誰かが歩いてくる音がした
「となり、座ってもいいですか?」
歩いてきた誰か、アリスの問いかけに俺は静かに頷く。
「此処が好きなんですね」
「そうだね。ここは君に出会う前のアインクラッドでも一番のお気に入りだったんだ。 静かで人気がなくて、湖に映った月が綺麗だろ?ここにきてぼーっとしてるとさ悩みとか、辛いこととか忘れられるんだ」
「今も悩んでることがあるんですか?」
その問いかけに俺は首を振った。
「ないわけじゃないけど、みんなに話せたからかな。ほんと、だいぶ軽くなったよ」
その答えにアリスは少し黙ると「……そうですか」とだけ返した。しばらく2人で月を眺め続けていると再びアリスが口を開いた。
「そう言えば、みんなはあの場で言っていましたが私からも言いたいことがあるんです」
隣に座ったアリスの顔を見るといつも以上に真面目な顔で俺を見ていた。その青く澄んだ瞳がまっすぐに俺の目を見ていた
「ソラの心が折れそうになったら私が支える柱になります。貴方が手を伸ばしたら私はその手を必ずとります」
「……アリス」
アリスは一呼吸置いて再び口を開く
「いいえ、違いますね。私は貴方のそばから離れません。例え、貴方がこの世界の敵になっても。例え、貴方が全てのプレイヤーに嫌われても。私は私だけはずっと貴方の味方でいます。だからソラは安心して、自信を持って生きてください。ソラが悩むなら私も悩みましょう。ソラが辛いなら、私も同じ辛さを分かち合いましょう」
それはアリスの心からの言葉だとわかった。
それと同時にどんなに重たい言葉かも理解した。
でも、その言葉が嬉しくて。嬉しくてたまらなくて涙が止まらない。
「ほんとに……君には泣かされるなぁ。いっつもいっつもなんでそこまで俺のこと思ってくれるんだ」
アリスは俺を抱きしめ、一言だけ呟いた
「それは私がソラのことを愛しているからですよ」
その一言で今まで溜め込んでいたものが全て壊れた。
泣いた。本当に今まで生きてきた中で一番泣いた。
『愛している』ただそれだけの理由で彼女はそこまでの覚悟をしていた。だから、俺も覚悟を決めよう。
もう、躊躇うことはしない。アリスを護るためならば俺が持てる全てで彼女を護ろう。それが【両儀蒼空】にとっての全てなのだから
次回から、『虚ろな剣を携えて』を投稿しているアクワさんとのコラボになります。
このSAOでの初のコラボ編お楽しみにください!