エイジ・オブ・ウルトロン:ニュー・ワールド 作:サンダーボルト
「はい!これであなたもフェアリーテイルの一員よ」
「わぁ♪見て見て、ウルトロン!フェアリーテイルのマーク入れてもらっちゃったぁ!」
「ギルドに入ったのなら、それが当たり前なんだが…そんなに嬉しいものか?」
「そりゃそうだろ。な、ルイージ」
「ルーシィよっ!!!」
右手にスタンプを押してもらったルーシィは嬉しそうにウルトロンに見せに行くが、あまり共感してはもらえなかった。隣で食事をしていたナツはルーシィの気持ちが分かるようだったが、肝心の名前を覚えていなかった。
「てか、ナツ…だっけ?それ…何食べてるの?」
「あ?飯に決まってんだろ」
「いや、燃えてるんですけど…」
「ルーシィ、お前もあの場にいたのなら見ていただろう?ナツは火を食えるんだよ」
ナツが火に包まれたパスタやチキンやドリンクをたいらげているのを見ていたルーシィは、ウルトロン達がサラマンダーと名乗っていた男と対峙していた時の事を思い出す。あの時、確かにナツは火を食べていた。
「火を食べるって…そんな魔法聞いたことないわ」
「勉強が足りないな。ナツが扱うのは
「竜が竜退治の魔法を教えるっていうのも変な話ね…」
「「っ!!」」
「今気づいたの…?」
「ついでに言えば、オツムが悪くても覚えられる魔法だ……ん?」
さりげなく毒を吐いたウルトロンの目に、マカロフと話をしている一人の少年が映る。
「マスター、父ちゃんまだ帰ってこないの?」
「む、また来たのか…。くどいぞロメオ、貴様も魔導士の息子なら…」
「分かってらい!!オレの父ちゃんはすっげえ魔導士なんだ!だから信じて待ってろって言うんだろ!?オレはただ、帰りが遅いから見に来てやってるだけだからな!!」
「う、うむ…分かってるならいいんじゃ…」
何か言おうとしたマカロフの言葉をさえぎってロメオが叫ぶ。その勢いに呑まれて流石のマカロフもタジタジのようであった。
「びっくりしたぁ…。あの子は?」
「うちのギルドのマカオって魔導士の息子のロメオよ。今、マカオはハコベ山に仕事に行ってていないけど…」
「でも、まだ帰ってこないのって言ってたけど…」
「うん…本当なら三日くらいで帰ってくる予定だったんだけど、もう一週間も帰ってきてないの。だから、マカオは毎日ここに来てるのよ」
「心配ね…」
「そうね。マスターも心配してるし、ロメオもああやって強がってるけど本当は一番心配してるし…」
ギルドを出ていくロメオの後ろ姿を心配そうに見つめるミラとルーシィ。そんな中、ナツは食事を終えるとともに勢いよく立ち上がった。
「ハッピー、行くぞ」
「え?行くって……うん、分かった」
ナツの表情を見て何かを察したハッピーが、ロメオを追うように出て行くナツの背中を追う。
「ナツ…?」
「ひょっとして、マカオを助けに行くつもりなのかしら…」
「おいおい、これだからガキはよォ…。んな事したって、マカオのプライドが傷つくだけなのに」
「ガキは未熟なものだ。だからこそ、大人には出せない答えを出せる」
「うむ…進むべき道は、誰が決める事でもない」
マカロフはナツを止める気は無いようで、放っておけとみんなに伝えた。やはりミラの言う通り、内心では心配していたのだろう。
「それにしても、ウルトロンったら自分だってまだ子供なのに、ナツを子供扱いなんてね」
「人間の年功序列を私に当てはめないでほしいものだな」
「………え?ウ、ウルトロンって二十歳前?」
「そうよ。こう見えてルーシィより年下なの」
「それどころか、ロメオともいい勝負だ」
それを聞いたルーシィが驚きで椅子から転げ落ちた。
「じょ、冗談でしょ!?アンタみたいなのが、まだ十歳もいってないなんて!!いや十歳超えててもおかしいけど!!」
「人間の常識で私を測れるとでも?」
「う…」
ある意味もっともなことを言われて、ルーシィは言葉に詰まった。
「……私もついていこうかな」
「あら、一目惚れ?」
「違いますっ!なんてゆーか……ほっとけないし」
「初仕事か。報酬は貰えんだろうが、株は上がるぞ」
「そーゆー事ハッキリ言っちゃうのね…」
ウルトロンに呆れつつ、ルーシィは急いでナツ達を追いかける。
「あなたは行かないの、ウルトロン?」
「ナツがいるんだ、そこまで心配はしていない」
「そう」
そう言うとミラはカウンターに戻る。ウルトロンはゆっくりと立ち上がり、ギルドの二階に行って
「仕事か?」
「ん?ああ」
「そうか。気を付けろよ」
「誰に言ってる?」
「へっ…」
二階にいたヘッドホンを付けた男と軽いやり取りを交わし、ウルトロンも仕事へと向かう。奇しくもその二人の頭の中では、同じ日の出来事を思い返していたのは知る由もない。