火竜の遷悠   作:通りすがりの熾天龍

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お待たせしました。
二週間ぶりですが更新です。

では、第8話、どうぞ。


ガルナ島

バリボリバリボリ。

 

やってきましたハルジオン。

俺とハッピーを含めてメンバー総勢7人。

当然の如く列車である。 うぷ

 

ガリガリゴリゴリ。

 

魔水晶(ラクリマ)うめぇ。

当然ながら属性は炎。

 

「あ! あの時のお兄ちゃん、また石食べてる!」

「だから見ちゃいけません! 早く行くわよ!」

 

ぐはぁっ

ナンカミオボエノアルオヤコダナー(棒)

 

「おいナツ! しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡って大体30分~1時間前。

 

「そう言えば、ミストガンさんが誰かの仕事に同行するのって初めてなの?」

 

電車の中でルーシィがそんな質問を投げかけた。

ちなみに俺ことナツはグロッキー。

 

「少し違うがこの大人数だとそうだな。基本的に俺は一人でクエストに行く」

「確か例外はナツとハッピー以外に2人だったよな?」

 

ミストガン本人が質問に答え、グレイがさらに訊く。

 

「ラクサスとギルダーツだ。昨日ラクサスはギルドに居たから面識はあるんじゃないか?」

 

ミストガンの言葉に首をかしげるルーシィ。

 

「いや、ルーシィは会っていないはずだぞ。ラクサスはルーシィが居る間に下には降りてこなかった」

「そのラクサスって人は、どんな人なの?」

「金髪で顔に傷のある青年よ。それに青のヘッドホンをしてるわ」

 

カナの説明した男を、確かにルーシィは見かけなかった。

 

「へぇー。じゃあ、ギルダーツって人は?」

「「「「「ギルド最強の魔道士」」」」」

「さ、最強!?」

 

ミストガン、ハッピー、グレイ、エルフマン、カナが息ぴったりに発した言葉を聞いて、ルーシィは飛び上がりかけた。

・・・なぜ飛び上がりかけたのかは不明である。

怯える必要などないのだから。

 

「んでもって俺の師匠だ・・・うぷ」

「ナツの師匠!?」

 

2年と数か月前からずっと帰ってきていないが。

 

「あい、オイラも凄くお世話になってる人です」

「へー、どんな人なんだろ・・・」

「会えばわかるさ、とだけ言っておくぜ」

「ギルド最強だけあって、彼は漢の中の漢だ!」

「会ったら会ったでいろいろと驚くわよ」

 

――閑話休題(少し話がそれてしまったな)――

 

「とにかく、俺と一緒に仕事に行った事のある人はその4人だけだ。チームを組んで行ったことは一度もない。基本的にソロ、偶にギルダーツかラクサスかナツとのペア。但し、ナツと組む時は必ずハッピーが一緒になるからチームみたいになる。・・・こんな答えでいいか?」

「えぇ、ありがとう」

 

ひとまずこの疑問は解決。

 

「後、運が良ければミストガンの素顔を拝めるかもしれないぜ?」

「止めてくれ」

「今のところミストガンの素顔を知っているのは同行した事のあるオイラ達とマスターだけだよ」

「へぇ・・・き、気になる」

「頼むから止めてくれ・・・」

 

ミストガンが項垂れたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒頭に戻って現在午後12時前後。

二手に分かれ、買い食いしながら港を捜索。

俺達が探しているのはガルナ島へ乗せてもらうための船である。

・・・駄菓子菓子。

全くと言っていいほど見つからない。

 

曰く、冗談じゃない。

曰く、あの島には近寄りたくもない。

曰く、名前も聞きたくない。

曰く、縁起が悪い。

曰く、行ったら呪われる。

曰く、海賊すらも避けて通る。

曰く、曰く、曰く・・・。

 

 

 

 

 

 

ガルナ島。

あれは呪われた島ということで有名だ。

しかし、その島がゼレフの悪魔と繋がりがあるという話は聞いたことが無い。

じっちゃんやミストガンに確認してみたが、それに関しては間違いないと言い切れる。

今回の『悪魔化』の原因はゼレフ関係なのかどうか。

恐らく9割以上の確率でそうだろう。

まずはガルナ島へ行く手段を見つけないと話にならないのだが・・・。

 

 

 

 

 

 

「成果なし。そっちは?」

「駄目だった。島の名前を聞けば誰も話を聞こうとしなくなる」

 

合流したはいいものの、全員で溜息をつく事態。

 

「おや、見ない顔だな。何かあったのか?」

 

そこに話しかけてきたのは一人の男。

 

「あぁ、ガルナ島に用があるんだ。でも誰も話を聞いてくれなくて」

「ガルナ島か・・・。すまないが、力になれそうもないな」

「デスヨネー」

 

もう一度全員で溜息。

気を取り直して立ち会議開始。

 

「で、マジでどうするよ?」

「俺の転送魔法も流石に使えない。距離が遠すぎるし、何より正確な位置がわからない」

 

流石のミストガンも今回の移動手段では戦力外。

・・・それを言ったら全員そうか。

 

「とりあえず一人ずつ意見でもテケトーに言ってもらおうか。ハッピー」

「あい、泳いでいく」

「道中サメが湧いてるらしいし体力の消耗がキツイ。次、グレイ」

「造形魔法で船を作ろうかと思ったが途中でほぼ確実に壊れる」

「だろうな。ルーシィ」

「じゃあ、ハッピーに全員運んでもらう、とか?」

猫竜形態(ドラゴライズ)にカナの協力があってもギリ二往復半。流石にハッピーが持たない。エルフマン」

「漢なら、無理を通して道理を殴るべし!」

「それって脅迫でもするつもりか!? 一番駄目な手段だろうが! ・・・カナ」

「海賊潰して船を奪う」

「・・・現状それが一番か。港に停泊中の海賊が見つからなかったらまた一からやり直しだが」

 

兎に角まとまったのでミストガンが代表して男に訊く。

 

「そういうわけだ。今この港に海賊船らしきものが停泊していないか教えてほしい」

「だ、大丈夫なのか!? 海賊ということは武装集団だぞ!?」

 

男が心配そうに声をあげる。が、それがどうした。

 

「超余裕。フィオーレ最上級のギルド(フェアリーテイル)舐めんな」

「心配すべきは俺達がやりすぎて船を壊さないかだがな」

「それならミストガンの結界があるから問題なし。そうだろ?」

「俺を便利屋扱いしないでくれ」

「あい、実際万能系魔道士な件について」

「そう言えばミストガンってマスターや評議員に怒られたことはあるの?」

「あたし達が知る限り、それは無いね。妖精の尻尾(フェアリーテイル)では珍しく」

 

ミストガンは普段居ないから怒られないのである。

まぁ、それ以前に騒ぎを起こさない性格なのだが。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)!? ま、まさかあんた達、魔導士なのか!?」

「ん? 確かにそうだが?」

 

魔道士かどうかを確認するってことは何かあるな。

 

「魔道士なら話は別だ。俺が船を出そう。その代わり、一つだけ頼まれてくれ」

 

風向きが変わってきたな。

 

「あまり時間を取られるような頼みなら無理だぞ。俺達は依頼でガルナ島へ行くからな」

 

男は一瞬考え込む仕草を見せたが、それを振り払うように膝と手を地に着いた。

つまり、土下座である。

 

「頼む! 島の人達を殺さないで助けてくれ! あの人たちに非は無いんだ!」

「いや、依頼人を殺すなんて普通ないぞ?」

「え?」

「え?」

 

・・・多分勘違いされてる。

 

「“島の人達を殲滅しろ”とか、そんな依頼じゃないのか?」

「違うぞ? 島の人達から“自分達を助けてくれ”っていう依頼だ」

「そ、そうか。よかった・・・。そ、そうだ。あんた達は島の状況を何処まで知ってるんだ?」

 

“島民の悪魔化”“ゼレフ関係という考察”について簡潔に伝える。

 

「そうか。だったら俺からも改めて頼む。島の呪いを解いてくれ」

「あぁ。俺達に任せろ」

 

交渉成立。

まぁ、単なる誤解の修正作業だったが。

 

「ついてきてくれ。俺が船を出す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日二度目のリバース。

船乗りの男も心配してくれたが、これはどうしようもないことなのだ。うぷ

 

「ナツー、そろそろ大丈夫?」

「・・・あぁ、なんとかな」

 

俺が落ち着いた為、全員揃って船の上の男、もといボボに礼を言う。

彼は船で移動中に自己紹介をしてくれた。

そんな彼が見せてくれた片腕は異形化してしまっている。

元々彼はガルナ島の住人で、呪いで異常をきたしてしまったらしい。

しかし、少なくとも彼から悪魔の臭いはしなかった。

船酔いから覚めた今なら、それは間違いないと言い切れる。

 

ちなみに、道中大波に襲われたがミストガンが難なくガードしてのけた。

 

「大波の対処まで任せてしまったというのにすまないが、俺はこれからハルジオンへ戻る。この島にも船乗りは居る。無事に呪いを解いてくれたら帰りは送ってもらうといい。最後まで付き合ってやれなくて悪いな。だが俺にも、帰れない事情があるんだ」

「何、気にするな。俺達は俺達の仕事をやるだけさ」

「安心してくれ。君の故郷は必ず正常に戻してみせる」

 

代表して俺とミストガンが言葉をかける。

ボボは頼む、と一言言い残して戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくぞ来てくださった。わしがこの村の村長、モカといいます。ほがほが」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)所属、ナツ・ドラグニルだ」

 

村へと移動し、島民達との顔合わせ&代表者同士の自己紹介。

 

「早速だが本題に入らせていただこう。まずはこれを見ていただきたい」

 

モカが背後に控える島民達にローブを脱ぐように促す。

ローブの中から出てきた人々の体は、皆どこかしら異常な形となっていた。

ある者は耳。またある者は腕。

例外なく、体の一部が悪魔というべき形に成り果てている。

しかし、悪魔の臭いはない。

 

「こちらからもいくつか質問させてもらいたい」

「我々に答えられることならばいくらでも」

「おぅ。まず、これを“呪い”だと判断した根拠は?」

「二つの理由から判断しましたな。まず、何十人という医者に見てもらい、このような病気はないということでしたので、まず病気ではないと判断しました。二つ目の理由は“月の異常”です」

「月の異常?」

「ほが。この島は古代からの月の光を蓄積し、島全体が月のように輝く美しい島でした。しかし、数年前、突然月が紫色に変化し、それ以来、この島から見える月は紫色のままなのです」

 

この島から見える月は、か。

とにかく続きを促す。

 

「わしらの姿が変わり始めたのはその紫の月が出始めてから。そしてもうひとつ。この呪いで姿が変わった者が紫の月の光を見たり浴びたりすると、全身が悪魔のような異形に成り果ててしまうのです。朝になれば今のような姿に戻るのですが。しかし・・・」

 

そこまで語り、モカは話しづらそうな様子を見せる。

 

「・・・呪いの効力なのか単に心が折れてしまっただけなのかはわかりませんが、理性を完全に失い、暴れだしてしまう者も出てきたのです。幽閉しても牢を壊してでてきてしまい、追放しても異形の翼で飛んで戻ってきてしまう。放置などすれば当然わしらの命が危ない。故に、心を失ってしまった者は殺すしかなかったんじゃ。かくいうわしも、自らの手で息子を、ボボを殺めたのです」

 

当然俺達は息を呑んだ。

それもそのはず。

モカの話の通りなら俺達を島まで送ってくれたのは死人ということになってしまうからだ。

しかし当のボボからは、間違いなく()()()()()がした。

その動揺を表に出さないように平静を装って言う。

 

「わかった。この件は俺達が必ず解決してみせる」

「お願いします。ですがもうすぐ夜になる。今夜はゆっくり休み、疲れを癒してくだされ。少々狭いかもしれませんが、宿を用意しております」

「助かる。俺達もこの件には万全の体制で臨みたいからな」

「わしらにできることがあればいつでも協力いたします。では、村の者に案内を頼むので、彼に着いていってくだされ」

 

こうして俺達は、島民に案内された家に泊まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に案内されてから数時間後、日が沈み、月が昇る。

その月の光は、確かに紫色になっていた。

紫色の月を目視で確認した瞬間、俺の頭に異常な激痛が走る。

 

「っが・・・!?」

「ナツ!?」

 

即座に理解できた。

紫の月の光が与える影響は身体ではなく脳に及ぶものだと。

 

「村の人達は異形化なんてしていない・・・っ」

「何だと!?」

「ぐ・・・紫の月の光は、記憶の方を歪めるんだ!」

 

拙い、意識が遠くなっていく。

 

「カナ! 急いでナツを隔離しろ!」

「わかってる!」

 

そんなグレイとカナの言葉を最後に、目の前が真っ暗になった。




『超余裕』

上から順に、グレイ、エルフマン、ナツ、ミストガン、ハッピー、ルーシィ、カナ





『ボボ』

ここでは途中で飛んで逃げることは無かった。
ちゃんと島まで送り届けた。
なお、原作同様に大波に遭遇したがミストガンが防いだ模様。





『ガルナ島の住人』

彼らは悪魔ではなく亜人という設定。
ナツが普通に人のにおいがすると言ったのはそのため。
便宜上彼らをガルナ族と呼ぼう。
月の光が集まりやすい場所に邪悪なる存在が住んでる訳無いじゃない。
彼らは月の光を浴びて魔力を生成する種族という設定。
もしかすると、どこかのギルドにガルナ族の魔導士が居るかもしれない・・・。





『モカ』

月を壊せ発言は無かったことにした。





『紫の月』

紫の月光はガルナ族に対しては緩やかに記憶を歪めていく。
しかし、悪魔に対しては強烈な頭痛を与えるほどに攻撃的。
しつこいようだが、ナツは自分の種族が悪魔だということを知らない。
本人を含む全員が、ナツが月光の影響を受けた理由は滅悪魔法習得の原因となった事件が影響していると思っている。
もちろん、その事件についてルーシィは知らない。
というわけで、次回はミストガンによる回想回を予定しております。





『カナによるナツの隔離』

カード化です。
ちなみに、この次点でのカナは同時に一人しかカード化できず、カードがカナから離れすぎるとカード化が解けてしまう。

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