火竜の遷悠   作:通りすがりの熾天龍

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最近忙しくてなかなか書けない状況です。
おかげでしばらく投稿できないかと。
少しずつ書いていければと考えております。
それでは、第5話です。


VS《鉄の森》

「駅内の様子は?」

「な、なんだね君?」

 

ゴッ!

 

「駅内の様子は?」

「は?」

 

ゴッ!

 

「駅内の様子は?」

「な、なんですかあなt」

 

ゴッ!

 

「駅内の様子は?」

「ヒィッ」

 

ゴッ!

 

「やめんかアホオオォォォ!」

 

スパァーン!

 

ハッピーに出してもらったハリセンで叩いてようやくエルザの頭突き祭りが止まった。

 

「ナツ! いきなり何をする!」

「こっちの台詞だバカたれ! 何駅員を気絶させてんだよ! それに今の人怯えてたぞ!」

「おい二人とも! コントやってないで早く行くぞ!」

 

グレイの言葉で言い合いを止めて全員で駅内に突入。

まず最初に見つけたのは倒れ伏した軍小隊。

一応全員生きているが、危ない状態の人も何人かいる。

手早く応急処置を済ませ、意識があった人から話を聞く。

やはりギルド丸ごと一つが相手だったようだ。

つまり鉄の森(アイゼンヴァルト)の連中はほぼ全員がこの駅にいる。

彼らの言葉を頼りに向かう場所は駅のホーム。

 

 

 

 

 

 

階段を上がった先のホーム、そこから一つ線路を挟んだ別のホーム。

そこに奴らは居た。

更に先の線路には奴らが使ったであろう列車が停まっている。

 

「カゲが言ってた通りだな。嗅ぎ付けていたわけだ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

言葉を発した男は大きな鎌を持っている。

恐らくこいつがエリゴールだろう。

 

「貴様等の目的は何だ? 呪歌(ララバイ)など持ち出して何をしようとしている?」

 

エルザがこちら側を代表して問いかける。

 

「やっぱ俺達の切り札も気付かれていたみてぇだな。とすれば当然、その性質についても知ってるんだろう? それを踏まえて、だ。列車ってのは短時間で長距離を移動でき、駅があるのは人が多く集まる街。更に、駅には必ずある設備・・・あれだ」

 

エリゴールが指し示したのはスピーカー。

それが意味するところは・・・

 

呪歌(ララバイ)の放送による無差別大量殺害か!」

正解(パーフェクト)だ、妖精女王(ティターニア)。音量を最大まで上げれば死の音色は街全体をカバーできる」

「・・・何のためにそんなことを?」

 

怒りを抑え、冷静になろうとしながら俺は訊いた。

 

「粛清さ。権利を奪われた者の存在を知らずに権利を掲げ生活を保全している愚か者共へのな。この不公平な世界を知らずに生きるのは罪。罪には罰を。故に、俺達死神が死の罰を与えに来た」

 

それに対して今度はルーシィが声を上げる。

 

「何が権利を奪われた、よ! 自分達で倫理もルールも破って、それで当然の処罰を食らって、なのに権利を主張する? その権利のためにこんなことをする? ふざけるんじゃないわよ!」

 

それでも表情を崩すことなくエリゴールは続ける。

 

「ここまで来て“権利”で満足しようなんて思っちゃいねぇ。ならば、次に欲するべきは“権力”だ。俺達鉄の森(アイゼンヴァルト)だけじゃねぇ。この魔法社会の裏に潜む全ての闇ギルドが権力を欲しているのさ。そして、俺達がその全てを牛耳る。そのための力が、今、俺の手の中にあるんだよ!」

 

そしてエリゴールは魔法を発動させる。

風の爆発。暴風の破裂。

ご丁寧に強烈な臭い付きの煙幕も混ぜている。

 

「《アイスメイク (シールド)》!」

 

グレイが咄嗟に盾を張り、煙幕の中から飛んできた鉄球を防いだ。

 

「もういっちょ! 《アイスメイク 旋風砲(エアロバズーカ)》!」

「オイラも行くよ! 《天翼(アークエーラ)》!」

 

続けて砲弾の代わりに風弾を打ち出すバズーカ砲で煙幕を吹き飛ばす。

同時にハッピーも(エーラ)の上位版となる天翼(アークエーラ)で風を巻き起こす。

煙幕が晴れた先には、線路を越えて俺達に襲い掛からんとする鉄の森(アイゼンヴァルト)の連中が。

 

「《火竜の咆哮》!」

 

広範囲型のブレスで俺が薙ぎ払い、

 

「換装《天輪の鎧》、《循環の剣(サークルソード)》!」

「開け、巨蟹宮の扉《キャンサー》!」

 

エルザとルーシィ、それと星霊によって吹き飛ばされた。

しかし、エリゴールがいない。

恐らく煙幕はこのためか。

臭い付きだったのは俺の嗅覚を警戒して。

さっきエルザを二つ名で呼んだことといい、向こうが持っている情報は意外と多いようだ。

 

「この場は私とハッピーとルーシィが受け持つ! ナツ、グレイ! お前達はエリゴールを追いかけるんだ! 奴は放送室へ向かうはずだ、頼むぞ!」

「「任せろ!」」

 

ダッシュで離脱、階段を駆け下りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ先に放送室へ向かおうとした俺とグレイ。

しかし、ご丁寧にも駅内の案内表示は大きなものから小さなものまで全て破壊されていた。

仕方なく手分けして全ての部屋を片っ端から虱潰しに捜索。

だが・・・見つからない。

そうこうしているうちに駅の半分を探し終えた。

そしてグレイと合流する。

 

「俺の方は全部ハズレだ。グレイは?」

「一応放送室は見つけた。ただ、放送機材は既に破壊された後だった」

「何!?」

 

ということはさっきエリゴールが言っていたことはフェイクか!

それでも鉄の森(アイゼンヴァルト)のメンバーが残っていた事をかんがえると・・・。

 

「ここを占拠した目的は、多分俺達の足止めだ!」

「っ! 急いでエルザ達と合流するぞ!」

 

恐らく、エリゴールはもうこの駅にはいないだろう。

 

「っ!? おい、外を見ろ!」

 

グレイの言葉に従い、俺達の位置から見えた小さな窓を見上げる。

 

「・・・なんだあれは!?」

 

見えたのは外も見えないほどの暴風だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「エルザ!」」

「ナツとグレイか。すまないが、かなり拙いことになった」

 

ホームにいたのはエルザのみ。

ルーシィとハッピーは別行動だろうか。

まぁ、それも多分、全員を倒した後からだろう。

 

「エリゴールの目的は此処じゃない。無差別殺人はフェイクだ! ここを占拠したのは多分俺達の足止めの為だ! 既に閉じ込められている!」

「だろうな。こいつらの本当の目的は私の方で聞き出した。真の狙いはクローバーの街」

「定例会! 標的はギルドマスターか!」

 

拙いことになった。

今、この駅は暴風の壁で囲まれている。

さっき試したが力ずくで破ることはできなかった。

 

「この風の壁は魔風壁というらしい。今ルーシィとハッピーにカゲという男を探しに行かせている。今ここにいる人物の中でこれを解除できるのは多分そいつだけだろう」

 

それを聞いてグレイが思い出したように言う。

 

「そうか! 確かそいつが呪歌(ララバイ)の封印を一人で解いたって話だったな!」

「あの影使い、解呪魔道士(ディスペラー)だったのか・・・」

「私達も探しに行くぞ。ナツ、鼻はもう大丈夫か?」

「あぁ。もう大丈夫だ」

「急ぐぞ! 一刻も早く魔風壁を解かなきゃなんねぇ!」

 

そして俺達は、手分けして捜索を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論を言えば、影使いは見つかった。

・・・瀕死の状態で。

 

 

背中から血を流しうつぶせに倒れる解呪魔道士(ディスペラー)の影使い。

そのすぐ脇には血が付いたダガーを持った一人の男。

影使いの背中から流れる血と男のダガーに付着した血は全く同じ臭いがする。

その事実が意味するところは・・・

 

「お前・・・自分の仲間を手に掛けたのか?」

「ぅ・・・ぁ・・・」

「自分の仲間を手に掛けたのか!」

「うわああぁぁぁぁぁ!」

 

悲鳴を上げて壁の中に魔法で逃げ込む男。

当然、逃がすつもりはない。

両手に炎を宿し、それらをぶつけ合わせて解き放つ。

 

「《火竜の煌炎》!」

 

壁ごと男を吹き飛ばす。

即座に接近して男の頭を鷲掴む。

 

「《火竜の握撃》!」

「づあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

零距離で破壊の炎を叩き込む。

男を放り投げてすぐ影使いのもとへ行き、傷口を焼いて止血。

 

「ナツ!」

「・・・エルザか」

 

彼女が一番近くにいたのだろう。

爆音を聞いて駆け寄ってきたエルザは俺の顔を見て足を止めた。

 

「ナツ・・・? 一体何があったというんだ?」

「影使いが瀕死状態。同じギルドの仲間に殺されかけてな」

「な・・・!?」

 

絶句するエルザ。

その後方から駆け寄ってくるハッピー、ルーシィ、グレイ。

俺達は応急処置をした影使いを連れて魔風壁へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どうする?」

 

エルザの言葉には誰も答えられない。

影使いの意識も未だ戻らず。

全魔力解放の滅竜奥義でも使えば破れそうだが、そんなことをすれば逆に俺達が生き埋めになりかねない。

 

「・・・あ!」

 

ハッピーが思い出したように声を上げた。

 

「ハッピー? 何か思いついたのか?」

「ほら、バルゴ! エバルーの屋敷では地面の中を移動してたよね?」

「「あっ!」」

 

何で今まで忘れていたのだろうか?

・・・多分思い出さないようにしていたからかもしれない。

 

「そうか。仕方ないとはいえあのヤバい外見の奴を呼び出すのか・・・」

「お、おい。震えてんぞ。そんなにヤバいのか・・・?」

 

グレイは俺が顔面蒼白で震えているのを見て若干顔を青くする。

 

「・・・ええい、背に腹はなんとやら! 我、星霊界との道を繋ぐ者。汝、その呼びかけに答え門を潜れ。開け! 処女宮の扉《バルゴ》!」

 

そして現れるヤバい見た目の女。

ピンクの髪に端正な顔つき、ルーシィと同じくらいの背丈の普通に可愛らしいメイド服の少女・・・あれ?

 

「「「誰!?」」」

 

俺とハッピーとルーシィの声が重なった。

 

「おい、これがヤバいってどういうことだ?」

「うむ。流石にこの見た目がヤバいとなるとナツの感性を疑わねばならんな」

 

グレイとエルザが俺を白い目で見る。

 

「い、いやいやいや。俺も今混乱してるんだよ。前に会ったときはホントにヤバかったっつーか、今はもはや完全に別人っつーか・・・おいルーシィ、マジでどうなってんの!?」

「あ、あたしも全然わからないわよ。あんた、バルゴ、なのよね? どういうことなの?」

 

俺がルーシィに訊き、ルーシィがバルゴに訊く。

そしてバルゴの解説は、

 

「私は御主人様の忠実なる星霊。御主人様の望む姿にて、仕事をさせていただきます」

「要するに姿をある程度自由に変えれるってことね」

「そのような認識で構いません」

「そう考えるとマジでエバルーの趣味は酷いな」

「あい。あ、そうだ! グレイとエルザにもあの時の姿を見せてあげてよ」

「かしこまりました。では―――」

 

そこまで聞いたところで俺とルーシィは慌てて飛びのく。

もちろん、俺はハッピーを抱えてだ。

 

「「――――――ッ!?」」

 

例の姿を初めて見た二人は顔を真っ青にして10メートルほど後ずさった。

グレイもそうだが、流石のエルザもこればかりは許容できるわけがないか。

 

「今すぐ元の姿に戻りなさい!」

「かしこまりました」

 

バルゴの姿が戻ったことに俺達は一息つく。

 

「悪いけど、正式な契約は後回しでいい? 今は一刻を争うの!」

「問題ありません。この風の壁を迂回する道を作ればよろしいのですね?」

「お願い!」

「かしこまりました。では、行きます!」

 

バルゴが通り道となる穴を残して地面に潜った。

俺は影使いの男を背負う。

 

「おい、ちょっと待て。そいつは敵だろ?」

「流石にこんな形で見殺しになんかはできねぇよ」

 

グレイの問いにそう返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達の・・・勝ちだ。今からじゃ・・・追いつける、わけが、ないからね」

 

魔風壁による檻から脱出し、一息ついたとき、意識を取り戻した影使いが言った。

だが・・・“それはどうかな?”

 

「ハッピー!」

「あいさー!」

 

俺の合図にハッピーが巨大な4枚の(エーラ)を展開する。

虹色に輝くそれは、普通の(エーラ)の約4,5倍の大きさを誇る。

これこそがハッピーの最速形態、《天翼(アークエーラ)》だ。

空気抵抗すらも無視し、マッハ1~2を出せる超高速。

 

「先に行ってエリゴールを潰してくる」

「ならば私達はゆっくり後を追うとしよう」

「なっ・・・!?」

 

俺とエルザの会話に驚愕する影使い。

 

「ハッピーは俺達妖精の尻尾(フェアリーテイル)のなかでも最速だ。対してエリゴールは魔風壁で魔力をかなり消耗してるはず。すぐに追いつけるだろうぜ」

 

グレイの言葉に影使いは絶句。

ハッピーが俺の背中を掴み、準備完了。

 

「頼むぜハッピー!」

「任せてナツ!」

 

そして俺達は線路沿いにクローバーへと飛び立った。




『強烈な臭い付きの煙幕』

強烈な臭いを叩き込まれると鼻が一時的に麻痺してしまう。
嗅覚が鋭すぎる故の弊害。
エリゴールの方はというと鼻を麻痺させることまで考えておらず、その場から臭いを辿られる事を警戒して強烈な臭気で自分の臭いを隠そうとしただけ。
ナツは鼻が利くという情報までは調べようとすれば調べられる。





天翼(アークエーラ)

ハッピーの最速魔法。
飛翔系魔法では最上級。
今のところこの世界でこれが使えるのはハッピーだけ。
翼の大きさが4,5倍程になる上に数も4枚に増える。
更に飛行時に空気抵抗を無視する付加効果もある。
最高速度はマッハ2.0で、その場合の持続時間は約5分。
現時点では。





『煌炎からの握撃』

ナツはブチギレした模様。
エルザがナツの顔を見て足を止めたのは殺意に溢れた表情をしていたため。





『バルゴ』

姫呼びエピソードは省いた。
次回彼女を呼んだときに回そうかな。
ゴリラメイドの姿はヤバイ。エルザでもビビるくらいヤバイ。

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