ペースも遅いので来週の投稿に間に合うか心配になってくる今日この頃。
評価が高いのは嬉しいけれど感想が少なくて不安になってしまうこの微妙な気分。
作者がそんな状態でありながらも投稿はします。
それでは、第4話です。どうぞ。
「大☆変☆DA――――!!」
出かけていたロキが大慌てでギルドへ飛び込んできた。
口調がおかしくなっているが。
「エルザが、エルザが・・・帰ってきた!」
「「「「な、何だって――――!?」」」」
ギルドは騒然、ルーシィは呆然。
「え、何? なんでみんな怯えて、え?」
そんなルーシィにハッピーが教える。
「エルザっていうのはこのギルドで最強の女性魔道士なんだよ!」
「さ、最強!?」
「あい、エルザ・スカーレット。皆がビビってる理由は・・・見ればわかると思うのです」
―――ズシィィン
いや待て、なんで軽く地響きがしてるんだ?
そして入口に現われた緋色の髪の女性。
帰ってきたエルザは巨大な角を担いでいた。
「今戻った。マスターはおられるか?」
そのエルザの質問に答えたのはミラ。
「お帰り。マスターは定例会よ」
「そうか・・・」
それを聞いたルーシィが定例会という言葉に首をかしげる。
その様子を見てルーシィの隣まで逃げてきたレビィが解説を始めた。
一方のエルザは・・・
「カナ、なんという格好で飲んでいる。ビジター、踊りなら外でやれ。ワカバ、吸いがらが落ちているぞ。ナブ、相変わらずリクエストボードの前をうろうろしているだけか? 仕事をしろ。それとマカオ!」
マカオの名だけ強く呼ばれたので呼ばれた本人は焦る。
「・・・ふぅ」
「何か言えよ!」
それだけに結局何も言われなかったことにツッコむのは仕方ない。
「全く、世話が焼けるな。今日のところはこれくらいにしておいてやろう」
その言葉に何人かが胸を撫で下ろした。
「(エルザって風紀委員か何か?)」
「(あい、それがエルザです)」
「(でも今日はいい方だよ。いつもは鉄拳制裁とかだから)」
ルーシィ、ハッピー、レビィが小声で話している。
さて、とりあえず訊くべきことを訊かないとな。
「なぁ、エルザ」
「どうした、ナツ」
「その角は?」
俺が指差したのはエルザがたった今床に置いた角。
「あぁ、これか。帰りがけに討伐した魔物の角だ。こいつの被害を受けていた村の人達が飾りを施してくれたんだ。綺麗だったのでギルドへの土産として持って帰ろうと思ってな」
装飾されているから俺が開発素材として貰うわけにはいかないけれども・・・。
「どこに置くんだ?」
「・・・・・・・・・orz」
硬直した後崩れ落ちた。考えてなかったらしい。
「(さっきとは全然違う・・・)」
「(あい、それもエルザです)」
「(あはは・・・実は天然なんだよね)」
三人が小声で会話。
「・・・仕方ない。これは私が自宅に持ち帰ろう。ナツ、それと・・・グレイは居るか?」
「ここに居るぞ。どうかしたのか?」
「服を着ろグレイ!」
「しまった! いつの間に!」
安定のグレイ。
「はぁ、まぁいい。ナツとグレイに頼みたいことがある」
「「・・・何だ?」」
エルザが俺達に頼みごと、しかも依頼から帰ってくるなりだ。
何かあると思うのは当然のこと。
「仕事先で少々厄介な話を耳にしてしまった。本来ならマスターの判断を仰ぐところだが、早期解決が望ましいと私は判断した。お前達の力を貸してほしい、着いてきてくれるな?」
「・・・それは一体?」
「出発は明日だ。午前7時、マグノリアの駅で落ち合う。準備を急いでくれ」
何も説明せずにエルザは帰ってしまった。
翌朝。マグノリアの駅。
エルザは7時ジャストにやってきた。
・・・大量の荷物を抱えて。
「エルザ・・・そんなに荷物が多いならもうちょっと早く来てくれよ」
「む、すまない」
そんなわけでエルザの荷物の検閲が始まった。
検査官は俺とグレイとハッピー。
毎回余計なものばかり持っていくのだ、この天然は。
俺達のそんな作業の間・・・
「君が先週入ったという新人だな?」
「はい、ルーシィと言います。星霊魔道士です」
「ミラから聞いているぞ。マスターからも期待の新人と評価されていると」
「あ、ありがとうございます」
作業をしていない女子2名が互いに自己紹介をしていた。
ルーシィが緊張気味になってしまったのは仕方ない。
マスターであるじっちゃんからも高評価だと聞けばプレッシャーも結構なものだろう。
「なぁ、何でルーシィも来てるんだ?」
「俺が誘った。あいつや星霊の実力を考えても連れて行って損は無い」
そんなこんなで荷物検査終了。
最終的に小さなリュック一つに収まった。
「エルザ、貸し1な。今度兵装開発に付き合え」
「うむ、それくらいでいいならいくらでも構わないぞ」
あ、ありのまま、俺の身に起こったことを話すぜ。
列車に乗ってワンリバースした後エルザが俺の意識を刈っていきやがった。
何を言っているかわから・・・まぁわかるだろうけど。
くそ、最近はそういうことをしなくなったと思っていたのに!
そして起きたら皆いなくなっていたでござる。
置いてくんじゃねぇよお前らああぁぁぁ! ・・・うぷ
「・・・お兄さん、ここ開いてる?」
「お、おぅ・・・うぷ」
「ありがとう。・・・ん? へぇ」
糸目の男が話しかけてきて、何かに気付いたような声を出した。
「うぷ、どうかしたのか?」
「その紋章、正規ギルドの
「・・・?」
酔いに耐えながらも首をかしげる。
すると突然蹴りが顔面目掛けて飛んできた。
咄嗟に手で掴む。
「正規ギルドが調子こいてんじゃねぇよ。
無言で足を掴んだ手に力を込める。
「い゛っ!?」
男が離れようとしたときに力を緩め、反動で男がこける。
「よくもやってくれたな!」
逆ギレした男の足元の影が動き、腕の形に実体化する。
飛んできたそれらの内、二つを手で掴んで握り潰す。
残った一つは歯で受け止め噛み砕いた。
「甘いんだよ・・・うぷぉぇ」
「な、何だこいつ!? 僕の魔法が効いてない!?」
次の瞬間、列車が大きな音を立てて急減速する。
俺と男は当然こける。
列車が止まったために余裕ができ、俺は周囲を見回す。
この車両に乗っていたであろう他の客は両隣の車両に避難し、こちらの様子を覗っている。
次に目に入ったのは笛。
ただ、その笛から
笛の見た目を一言でいえば『三つ目の髑髏』
男が慌てて拾ったところを見ると、こいつの所持品か。
「おい、その笛は何処で手に入れた?」
「っ!? 見られたからには!」
糸目の男が再び魔法を使い、今度は数十もの影の手が迫りくる。
しかし、俺が乗り物酔いしていない以上、それは何の意味もない。
男の顔面が蒼白になったのは、俺の全身から吹きだした炎が影を吹き飛ばしたから。
「もう一つ訊こう。その笛をどうするつもりだ?」
「くそっ!
しかし男は悪態をつくだけで答えない。
「
しかし・・・
『先ほどの急停車ですが、誤報によるものだということが確認されました。間もなく発車いたします。皆様にご迷惑をおかけいたしましたこと、お詫び申し上げます』
拙い、流石に動いている列車の中じゃ分が悪い!
ここは一旦外に出て合流すべきか。
幸い俺のよく知る匂いが近づいてきていることだしな。
何も言わずに窓を突き破って跳ぶ。
「ハッピー!」
「ナツー!」
飛び出した俺をハッピーがキャッチ。
直後にハッピーは反転して列車と逆方向へ。
そして前方に見えた魔導四輪。
運転席にはエルザが乗っている。
四輪が急停止したため、すぐそばに降り立つ。
「ナツ、無事か!」
「一応無事だ。只、お前の頼みを聞いている状況じゃなくなった!」
「何!? それはどういうことだ!」
半ギレで胸倉を掴みにかかってくるエルザを何とか抑える。
「列車の中で闇ギルドの奴に会った! そいつの持っていた物品から
「「「っ!?」」」
息をのむハッピー、エルザ、グレイ。
「そいつは一体どこの奴なんだ!?」
「
エルザの問いに答えた途端、一瞬だけ空気が止まった。
「ナツ、それは今エルザが追っている奴等だ」
「・・・マジで?」
「ナツ! 私の話を聞いていなかったのか!?」
「ちょっと待て! 俺はそんなの知らねぇぞ!?」
「バカモノオオオォォォォ!」
「うおぁっぶなぁ!?」
慌てて屈んだ俺の頭上をエルザのビンタが掠った。
「何故人の話を聞かなかったんだ!」
「それいつどこで話した!?」
「列車の中でに決まっているだろう!」
「あんたが俺の意識を刈り取ったんだろうが!」
「ハッ!? すまない、私を殴ってくれ!」
「野郎オブクラッシャァァァ!」
「グハッ」
「ほ、本当に殴った・・・」
「あいつらはお互いに遠慮しねぇんだよ。まぁ、同じS級同士だからってのもあるんだろうが」
「S級・・・? っていうかアンタは服を着なさい!」
「うぁっ!? いつの間に!」
「・・・ひょっとしてオイラ忘れられてる?」
「さっきのナツの話から考えると奴らが封印を解いた魔法というのはその物品か」
エルザが考え込む。
「で、その物品って何だったんだよ?」
「見た目は木で出来た笛。只、マウスピースが無くて目が三つある髑髏が付いていた」
「趣味が悪いね・・・ルーシィどうしたの?」
ハッピーの言葉にルーシィを見ると、何かに気付いたかのように目を見開いている。
「・・・私、それ知ってる」
「何!? それは本当なのか!?」
「う、うん。って言っても本で読んだだけなんだけど」
「それでも構わない。教えてくれ」
集団呪殺魔法“
曰く、元々呪殺に使われていた笛をかの黒魔道士ゼレフが進化させたもの。
曰く、その効力は、文字通り集団呪殺。
曰く、笛の音を聞いた人全てが呪殺の対象となる無差別殺害魔法。
そこから
走るのは四輪。その横を飛ぶのは俺を抱えたハッピー。
向かうは二つ先の駅、オシバナ。
「飛ばし過ぎだエルザ! いくらおまえでももたねぇぞ!」
グレイの言う通り、この速度で四輪を走らせ続ければエルザの魔力は底をつきかねない。
魔導四輪とは魔力を消費して走らせるもの。
その消費は速度の二乗に比例する。
「今は一刻も早く着かねば! それにいざとなれば棒切れでも持って戦うさ」
そう。今この状況においては運転手を交代する時間すらも惜しい。
「エルザ! これを使ってくれ!」
俺は自分の魔力を結晶化させてエルザに投げ渡す。
魔力を取り込む端子であるSEプラグに押し当てれば補助になるはずだ。
「助かるぞ、ナツ! ・・・!? あれは・・・」
「ナツ! 前!」
エルザが何かに気づいたように声を詰まらせ、ハッピーも俺に警告する。
見れば駅らしき建物から煙が上がっていた。
クヌギの駅はとっくに過ぎている。
だからあの駅はオシバナだろう。
そこが奴らの目的地だったようだ。
なんとしても、あの笛を壊さなければ。
あれは、あの笛の力は・・・
『毎回余計なものばかり持っていくのだ、この天然は』
換装という魔法があるのに着替えを荷物として持っていく。
しかも数日分どころか十数日分。
その中にはコスプレも紛れ込んでいるとか。
他にも置物とかテーブルとか椅子とかホントに色々。
ちなみに今回要らない荷物は駅員に預けました。
『君が先週入ったという新人だな?』
エルザは帰ってきたときに依頼終了の報告をし忘れてしまっていた。
その為、一度帰った後にまたギルドへ戻りマカロフの代わりにミラへ報告。
ルーシィのことを聞いたのはその時。
『貸し1な。今度兵装開発に付き合え』
ナツは本当に色々作っている。
しかしその殆どは実用化されずにお蔵入り。
お蔵入りとなったものは分解して新たな製品を作るために使われるのだ。
ギルドのクエストボードにはナツが制作を手伝ってほしいと出す依頼もある。
なお、今回エルザは無償で協力することを約束させられた。
『エルザが俺の意識を刈っていきやがった』
エルザと一緒に列車で仕事に行くとよく意識を刈られる。
最近は刈られてなかったので油断していた模様。うぷ
なお、超頑丈なナツの意識を刈れる理由についてだが、
ハッピー「あい、それがエルザです」
とのこと。むしろそれでこそエルザと言うべきか?
『うぷぉぇ』
乗り物酔いに加えて影属性を口にしてしまった。
多分ローグ君なら少しは回復してた。
『ナツが最も警戒している臭い』
いずれわかるさ、いずれな。
と言っても原作知ってる人ならわかると思う。
ギルドのメンバーの殆どはナツが「あの臭い」と言えばわかる。
なぜナツがその臭いを警戒しているかといえば・・・
それこそ「いずれわかるさ、いずれな」ということで。
『野郎オブクラッシャァァァ!』
エルザの「私を殴ってくれ」発言に対して本当に殴る人は少ない。
ナツ以外ではラクサスと昔のミラ、マカロフくらい。
とはいえ鎧越しなのでダメージは少ない。
ちなみにここのナツはS級である。